第十二話
どうすればこれがああなってあれがこうなるのか。
目の前の珠美さんは相変わらずのぼさぼさ眼鏡だ。
僕の朝食への文句は続いていたが言い疲れてだんだん眠くなってきたらしい。
テレビの前のソファーに寝転がりながらうとうとし始めた。
「いやいや帰りましょうよ。僕もいろいろ忙しいですし。」
先方はじろりと僕を一睨みすると
「昨日寝てない。」
眼鏡をテーブルに置きいよいよ本格的に寝る体勢に入っている。
いや、知らないしとは思うのだがいろいろと強く出られない理由もこれまでに数多ある。
「夕方、飲みに行くよ。」
もやもやとしたよく聞き取れない声が先細りになり夢の中に没入し始めているのがわかる。
「いや、今日は先約があるんで。無理です。」
「うそうそ。ないない。そんなわけあるか。」
もう声とも言えないもにゃもにゃの捨て台詞を残し彼女は夢の世界に行ってしまった。
「まいったな。」
先約というのは嘘と言えなくもないが予定は確かにあった。
傘を返しに行くつもりだった。あの店に。
来訪者を残したまま出掛けてもよかったのだが爆睡しているし一応女性で無用心だし何となく気が引けた。
オーナーは夜の部があると言っていた。
とりあえずたまった洗濯物に手をかける。