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92 オーガとの戦闘と魔物たちの導き

(略しすぎています)

 オーガは自分に向かって一歩を踏み出して地面を揺らした。威嚇されているのかな?その割には攻撃の構えをしていないし、リラックスしているような気がする。もしかして、脅威判定されてないとか?

 もしかするとそうかも。自分の魔力は体外に放出しないように制御しているが、学園において強者ほど自然に魔力を放出しまくっている傾向にある。これは魔物の世界でも同じような感じがする。自分の場合、魔力が体外に放出されていないので弱い存在と見られているのだろう。でも、みくびってくれた方が好都合ではある。なんせ、一番最初の攻撃が入るチャンスが増えるからな。


 自身の右腿に付けたホルダーから白い刀身をしたナイフ型MSDを取り出し、右手でそれを持って体の前で構える。体の重心を低くして素早く動けるようにしておき

、素早い攻撃が来ても対応できるように自己強化魔法をかける。我ながらかなりパーフェクトな臨戦体制だぞ。これならいつ攻撃が来ても回避できる。

 あ、でも今の攻撃的な体勢だと警戒されちゃうか。余裕綽々に近付いてきているオーガに自分が弱い存在であることを認識してもらわなければ隙ができないので困る。そのために、怯えた人が言いそうなセリフを言うとするか。


「わ、わー。オーガさんこわいよー。コナイデー」


 発言が棒読みすぎな上に、その内容と攻撃的な姿勢をとる自分の間に壮大な矛盾が生じている気がして無理があるような?。魔物は言葉が通じないから気持ちの問題な気がするが...。


 しかし、オーガはそれに反応して自分に向かって進むのを止めた。オーガは臨戦状態である自分を警戒したのか、眼力が強くなったり、筋肉に力が込められている辺り自分を敵と認識したようだ。しかも隙がなくなったし、最初の一撃計画は終わりです!やっぱり棒読みじゃ、誤魔化すのはダメだったみたい。魔物も違和感ってわかるんだな...。一つ勉強になったぞ。今度から迫真の演技をするとしよう。演技できる自信ないけど!


 警戒された上にオーガがヤル気満々な以上、こちらも気合いを入れる必要があるか。こうなればせっかくだし、以前に戦ったオーガと今の成長したオーガの強さを比較するいい機会だ。魔石を食べて成長した目の前のオーガの強さについて知っておくことは悪いことではないだろう。食べた魔石の量と強さの関係が今後の役に立つかもしれない。

 全力で相手してしまうと一瞬で決着が決まってしまうので、相手の実力を測るような感じで手を抜きながら戦うか。サリアたちには今生の別れ感を醸し出しておいて申し訳ない気持ちもあるが、今は隅に置いて目の前の相手に集中するとしよう。ここからが自分の魔物狩り演習だ。


 強いオーラを放つオーガと相手するには程よく気合いを入れる必要が出てくるだろう。そうなれば、魔力の補充や慣性の移動の際に自身の能力の再構成やエネルギー変換を使うことになり、開眼すること間違いなしだ。周囲に人が居ないので開眼状態を見られても何ともないが、念には念を入れて開眼しているのを見られないように布で目を囲むとしよう。疑心暗鬼にもほどがある自己防衛策が役に立ったからな。


 自身の能力で細長い布を生成して、頭に布を巻いて眼を隠す。その間、オーガは一歩も動くことなくそれを見守る。オーガにとって絶好の攻撃チャンスなんだが、戦闘中に目を隠すとかいう行動の意味不明さに違和感が勝ったのかな?もしかして、違和感は魔物に効くのかも?


 そう思いながら、開眼状態にして周囲の魔力を視えるようにする。

 よし、オーガの姿はバッチリ見えているな。月明かりもなく、なかなか光も届かない森の中では開眼状態の方がめっちゃ見える。紅く瞳が光らなかったらチート級でいつでも使いたいくらいだな。

 戦う準備は整った。オーガは15歩程度離れたところからこちらの動きを見守っている。


「さーて、どこからくる?」


 そう呟いて、オーガの方へ1歩だけにじり寄る。それに反応したオーガはさらに警戒を高め、上体を低くした。さらに警戒を上げて本気で相手しないといけない敵と判定したのだろう。オーガの強さを測るには好都合だ。

 だが、オーガはこちらの動きを探るだけで動きを見せないな。ならば、自分から戦いの火蓋を落とすことにするか。とりあえず、模擬戦で使っているようなアイスニードルを使うとしよう。もちろん、この世界での普通のアイスニードルだ。


 指輪型MSDにイメージを乗せた魔力を送り、アイスニードルを発動させる。ワンテンポ置いて魔力が氷柱に変質し、オーガの左膝に目掛けて飛翔する。


 オーガは何の苦でもなくアイスニードルに反応して体を右方向に動かし、氷柱の軌道上から外れる。回避したオーガは体勢が崩れることもなく、いつ自分が攻撃してきても動けるような状態を保っている。まあ、このくらいは避けられるか。


 そう考察していると、オーガにさらなる動きがあった。オーガは回避した時に右足に溜め込んだ力を使って右足で地面を蹴り込み、自分との距離を詰めに来た。さらに、オーガの体に魔法に関する情報が含まれる魔力が駆け巡った。

 筋骨隆々だけあって蹴り込む力も強く、自分へ向かってくるスピードはめっちゃ速いな。それに、オーガの体を駆け巡る魔力からして、自己強化魔法をかけたのか。しかもその魔法の発動はめっちゃ速い。純粋に魔法の扱いがめっちゃ上手いな。


 オーガは自分との距離が5歩程度となると、右拳を背中に引いて溜め状態を作った。さらに、右拳に魔力が集中した。自己強化魔法だけでなく何かの魔法を付与したか。MSDも無しに自己強化魔法を使いつつ高速に魔法を起動するとは、この世界の常識に照らして目の前にいるオーガはぶっ飛んでいるな。そんな魔法の扱いに長けたオーガの魔法攻撃だ、拳をまともに受けるとやばいこと間違いなしだ。とりあえず、向かってくるオーガの左方向に回避するか。


 瞬時に右足を地面に食い込ませ、上体を低くしたままオーガの右下の方へ素早く移動する。それに反応して早めに右拳の溜め状態を解放したオーガだが、軌道が自分と交わることはなく、オーガの右拳は自分の頭上を通り過ぎる。

 あ、でもちょい待って!拳が想像以上に速いし、巻き込み風と衝撃波っぽいの感じる!髪の毛持ってかれてない?大丈夫そう?ロリながら頭頂禿げになるのは嫌だよ!?


 自分を通り過ぎたオーガの右拳は空を突き、衝撃波と共に石礫を撒き散らす。それらによって拳の延長線上にあった草木は糸も容易く粉砕され、地面が抉れていく。

 回避して正解だったな!こんなの食らったらひとたまりもなく肉塊になりそうだなおい!絶対当たりたくない!掠ったとしても大怪我を負いそうだ。やばすぎです!でも、髪は大丈夫でした!安心です!


 オーガに背中を向けないように、回避した時の慣性を利用して左足を軸足にオーガの方へと体を回転させる。視線の先のオーガも同様に空を切った拳の慣性を利用して体を回転させ、自分の方へと体を向ける。オーガの体の軸はブレておらず、すぐに次の攻撃を打てるような体勢だ。そこら辺の魔物とは格が違うことを見せつけてくる。

 一撃を交わし合っただけだが、前に出会ったオーガと比較して攻撃力が強く、体の使い方がいいように感じる。相手の力を見極める力もあるようにも感じる。もしかして中の人いるんじゃない?いたら居たで困るけど。


 今度はオーガの右膝目掛けて普通ではないアイスニードルを発射する。今度はいつもの2倍のスピードで飛翔させる。オーガは魔法の発動に反応するが、自分との距離が近いことや回転した時の慣性で右足に重心が残っていないこともあり、体の重心を左に大きくずらしてバランスを崩しながら回避する。流石に、それには対応できないようだ。だが、アイスニードルの発動とその狙いに気付けていることは純粋にすごいと思うぞ。魔物ながらあっぱれだな。


 回避したオーガはバランスが崩れて左足に重心が乗り右足がフリーとなる。そのため、オーガに向かって右側に隙が生まれた。それを逃すほど自分は魔物に対して甘くはない。そこを攻撃するため、右手にもったナイフ型MSDに魔力を流して魔力刀を発動しながらオーガの右側の懐へ飛び込む。それに対して、オーガは隙があることに分かっていたのか、自分が飛び込んでいく最中に魔力を重心が残っている左脚に集中させたのが見えた。

 これ、上体を無理やり捻って下半身を回転させて、左脚を攻撃に使うつもりだな?だがそうなると、自分の攻撃を左脚で受ける代わりに体のバランスが今よりも崩れる。そうなるとオーガには不利だ。それは知能が高いオーガの事だ。それを見越した魔法を発動させているだろう。となると、自分が近づけないようにする広範囲系の魔法が展開されるはず。このままオーガに突っ込んで攻撃すると、魔法から防御する手段がないためモロに攻撃を受けることになるな。攻撃中止だ。


 左足を地面に食い込ませて、オーガに向かって突っ込んでいた体を無理やり止める。さらに、左足に溜め込んだ力を解放して素早くオーガから10歩ほど距離をとり、ナイフを顔の前で構えて上体を低くし、攻撃を受ける体勢を整える。

 その時、オーガは予想した通りに上体を軸にして左脚を回転しながらの攻撃を放った。左脚から放出された魔力は無数の石礫へと変質し、オーガの周囲に向かって飛翔する。それらによりオーガの周囲にあった草木が轟音と共に粉砕される。

 自分へと飛んできた石礫は魔力刀を発動したナイフで切り裂くことで凌ぐ。飛翔する石礫のスピードはなかなかに速い。自己強化魔法がなければ対応することが難しいレベルだ。これはどこからどう見ても悪魔的な攻撃だな。リナやシルフィアはもちろんの事、サリアでも凌ぐことは難しいだろう。無理言って返して正解だ。


 回転蹴りをしたオーガは体勢を大きく崩した。これは直ぐに動ける体勢ではない。魔物の強さも大体知ることができたし、タイミング的にはそろそろ潮時だろう。楽しませてもらったお礼に一瞬で魔石に帰してやろう。

 リング型MSDに魔力を通して普通ではないアイスニードルを発動する。魔力壁を貫通するほど硬く威力があり、且つ飛翔速度が速い氷柱の情報を魔力に込める。入学試験で使ったとっておきのアイスニードルだ。受け取ってくれよ。

 氷柱に変質した氷柱は体勢を崩したオーガに一直線に飛んでいく。一瞬の間に氷柱は筋骨隆々なオーガの元へと到達し、そこに何も障壁がないかのように容易く貫いた。貫いた時に失われたエネルギーは衝撃となってオーガの体を破壊する。負荷に耐えられなくなったオーガは光の粒となって霧散し、大きな魔石が地面の上に生成された。


「ふぃー。素晴らしいオーガニックオーガだった。さて、ドロップした魔石はどんなものか」


 魔石を拾い上げて魔石を確認する。若干濁った紫色の魔石であり、感じた事のある禍々しい魔力の存在を感じた。どうやらこのオーガは一連の魔物大量発生騒ぎに関係があるようだ。オーガが魔物騒ぎで生まれた魔物を食べただけの単なる被害者ならいいが、これが闇の魔法によって操られていたとなれば背後には...。


「うぇぇ、考えない考えない。こういうことってめっちゃ当たるからなぁ...。さて、この魔石を持って直ぐに宿舎に帰るとするか。サリアたちが心配してるだろうし、早く無事なのを伝えるとしよう」


 あ、でも、開眼してるから帰れないじゃん!仕方ない、もう少し周囲の魔物を倒しながら時間を潰すとするか。

________________

 それから10分くらい経った頃、感じたことのある魔力反応が接近してきているのを感じた。これは...ゲセスターか。それ加えて2名の魔力反応が見られる。1人はゲセスターよりも強い魔力反応がある。ただ、魔力制御が上手くないのか感じる強度が変化している。これは学生みたいだな。もう1人は魔力反応が強くはないものの強度が安定している。魔力制御がうまそうなあたりインストラクターだな。これは新人衛兵槍装備君か。

 何の理由でやってきているにせよ、緊急事態でありながら宿舎方向ではなく魔物が多い自分の方向にやって来るなんて面倒な事になること間違いない。どうしたら回避できるかな?適当に移動して行方をくらませるのはありだな。


 周囲を観察してみると、森の奥に向かう方向が魔物の数が薄い。普通に考えると森の奥の方だが、そっちの方には魔物だらけの袋小路が待っている。となると魔物が多い宿舎方向だな。とりあえず動くとしよう。


 そうして物陰に隠れたり木を伝いながら移動して魔力反応が出ないように移動する。だが、それに追従するように進路上の魔物の数は多くなってゆく。何でだ?

 普通に考えると、魔素濃度は濃いところから拡散していく。なので魔素を垂れ流している装置がない宿舎方向は魔素が薄く魔物の数が少ないはずだ。だが、そうなっていない。自然な事ではない事が起こっている。いや、逆に何らかの意図が働いているのか!そう考えてみると、森の奥へと移動させるように魔物の数が調節されているように感じる。しっくりくるな。

 自分に合わせて調節されているとなると自分の位置がバレているはずだ。おそらく、魔物から伝わってくる反応から自分の位置を把握しているんだろう。しっかり自分を補足している上に魔物を使って誘導してきているんだ。どこへ逃げたとしても逃してくれそうになさそうだ。強引に宿舎に戻るのはありかもしれないが、サリアたちが巻き込まれることを考えると素直に森の奥へと向かうのが一番か。


「とても厄介なぁ...まあ、しょうがない精神で相手の策に乗るとしますか」


 ゲセスターに関連した人たちが操っているであろう魔物たちの導きに従って森の奥へと進んだ。

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