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84 魔物狩り演習2日目2

(略しすぎています)

 サリアたちと部屋に戻ってみんなで寝ることになっていたが、みんな寝ることができずに単なるお茶会になっていた。みんなで寝るとは一体なんだったのか...。自分に気を遣ってくれたのかな。

 自分はみんなに断って寝ることを選んだ手前、早々にベッドインして寝る体勢に入った。けれど、サリアたちのチラッとこちらをみる視線を感じたり、早く寝ないかな?的なものを感じたりして眠るのに苦労したのは言うまでもない。なので、頭から毛布を被って布団の殻に閉じこもることで視線に晒されない環境を作って寝た。サリアたちからは布団越しに残念な雰囲気を感じたりしたのだが、そこまでサービス精神多めではない。なんせ睡眠は重要だからな!

_____________________

「ふぁ~」


 眠気覚ましに息を吐きながら起きると、サリアたちはまだ眠っていた。寝起きで頭も回らないしどうしようかな?なんて思っていた所、リナから寝言が聞こえてきた。


「ケーキ、パンケーキ、かおりちゃん。むにゃむにゃ...」


 それって自分が食べられてない?美味しくないと思うよ?しかもなんでその並びで自分なんだ?


「あまーい香りでおいしいー」


 なるほど。たしかに自分の汗からは甘い香りがする。甘いものの並びで納得だ。でもね、完全に食べられてますこれ。人を食べる時が来るとは新しい時代の幕開けを感じる...。

 そんな謎の感想を抱きつつリナの方に視線を向けると、寝相が悪いのか暑いのかは不明だけど、掛け布団を足でベッドの隅に追いやっていた。この際なので寝顔も拝見すると、めっちゃ美味しそうなのが伝わってくる程に幸せそうな表情をしている。そんな表情を見ていると、こっちも幸せに感じてくるぞ。そうか、なんとなくサリアたちが寝顔を見たがっていたのがわかった気がする。多分、幸せそうな表情をしていると見てる側も幸せを感じる。そして、それが気になる子なら尚更と言うところだろうか。その辺はわからんけどね。

 食べられているのが自分なので複雑な心境ではあるが、自分が美味しいらしいので口に出してツッコミを入れなくてもいいかと思ってしまっている。食べられるのはもちろん嫌だけど、「美味しくない、ペッ」なんて言われるよりかは十分にマシだ。そんな寝言を聞いた日には「何で食べたの????」とツッコミを入れながら猛烈に叩き起こす自信があるぞ。

 夢の中の出来事とはいえ、今度から汗をかいた後の甘い香りが周囲に漂わないように気をつけようと心に誓いながら、夢の中の自分に手を合わせておいた。


 この際だし、サリアやシルフィアの寝顔を見ることにするか。

 視線をリナの隣のベッドで寝ているシルフィアへ移すと、シルフィアは寝言も立てず、丸まって静かに眠っていた。シンプルにかわいい。丸まって寝るのは猫族だからだろうか?少し気になるところだ。

 シルフィアの寝顔を覗き込んでみると、単純に口角が上がっても下がってもいない感じの表情だけど、何故か見ている方は心が安らぐ。さっきの複雑な気持ちなんてどこかに置いて、ただ寝顔を見ていたい...。そんな気持ちにさせてくれる。脱力しきっているからそう感じるのだろうか?不思議なものだ。


 さて、最後はサリアの寝顔だな。この感じだとサリアの寝顔もいい表情をしてそうだ。なんとなくだけど、リナと一緒で美味しそうなものでも食べていそうな表情をしてるような気がする。そう思って、サリアの寝顔を見に行くと予想に反したものだった。

 前髪は汗で湿っている上に眉間付近に力が入っているためか、とても苦しそうに見える。呼吸も少し浅くて早いので、悪夢でも見ているのだろう。みんなで合宿的なイベント中だと言うのに悪夢を見るなんてついてないな。

 そんな感想を抱いた時サリアは寝言を呟いた。


「ん、んん、お母さん...」


 その言葉を聞いて以前サリアが話してくれた過去を連想した。多分、その悲しい過去の夢を見ているのだろう。確か、その過去の場所は森の中だったように思う。親しい仲間とともに森の中で散策しているという構図が悲しい過去を思い出させていたのかも。

 とすると、昨日の演習でサリアが常に集中して細かく指示を出していたり魔物を瞬殺したりしていたのも、思い出した過去の所為なのかもしれないな。今の自分は過去の自分よりも強いから過去のようにならない。そんな言葉を自分自身にかけていたのだろう。さらに、魔物の討伐数や魔物討伐の手際の良さを自分自身に示し、言い聞かせている言葉に説得性を持たせることで脳裏によぎる光景からくる不安感と抗っていたのだろう。


 せめて、夢の中でも安らぎがあるようにと、寂しそうなサリアの手を優しく包み込んだ。すると、サリアの手は自分の手が掌の中にあることを確認するように僅かに握ってきた。自分もそれに応じて僅かに握り返すと、サリアの浅い呼吸が深い呼吸へと変わり、眉間に入っていた力も抜けた。

 そして、サリアから微かな呟きが聞こえてきた。


「カオリちゃん...」


 まるで自分の行動が見られているかのような返答に少し驚いてサリアの顔をみると、まだ寝ているままだった。

 サリアの夢の中に素晴らしいタイミングで自分が出てくることに驚きだ。寝ている人に適当に呟きまくると夢の内容をコントロールできるらしいけど、ただ手を握るだけで自分が出るなんて思いもよらないぞ。何にせよ、悪夢を中断させた夢の中の自分、goooood jobだ。

 そんな戯言を脳内で発していると、眠ったままのサリアは呟いた。


「ありがとう...」


 感謝の言葉に「どういたしまして」と返すと、サリアの表情は柔らかなものとなった。その後、しばらく観察を続けていたが苦しい表情になることはなかったので安心した。寝顔はこうでなくちゃな。

 そんな柔らかなサリアの寝顔を見ながら、のんびりした時間を過ごすのだった。

___________________

 そんなことがあり、リリーガーデンが活動する時間となった。魔物狩り演習のため、自分、サリア、リナとシルフィアの4人は昨日に引き続き、同じ森の中を進んでいた。太陽は沈み、ただでさえ光が届きにくい森の中が一層暗くなっている。時折木の葉の間から見える月明かりが地面を照らすが、辺りが見える程強くないため森の暗さを強調するだけになっている。そんな中、シルフィアが光魔法を使って視界を確保しつつ森の中を進んでいた。


「魔物いないね」

「それに動物もいない感じがします...」

「だよねー。サリアちゃん的にはどう思う?」

「こんな事は初めてだからわからないかな。普段行く森の中だと、ここまで魔物に出会わないことないし...」


 かれこれ1時間くらいは森の中を進んでいるが1匹も魔物に出会わなかった。時折魔力を薄く伸ばして魔力探知をしているが、魔物らしき反応は皆無だ。なので偶然出会わないというわけではなく、少なくとも自分たちの周辺には魔物がいないと言うことになる。それもそのはずで、魔物が生まれる元になる魔素がかなり薄い。何やら自分の家の周りとかその辺で体験した時の状況と似たような感じがするのだが...。もしそんな状況に陥ってるならうんざりだな。


「昨日はあんなに魔物が居たのにね」

「「「不思議だね~」」」


 そう、不思議な事はまだある。魔力を薄く伸ばして探知しているのだが、反応が返ってこない場所が複数あるのだ。障害物に向かって声を上げたら反射して返ってくるように、魔力も同じく反射して返ってくるのが普通だ。だが、全く返ってこない場所があるのだ。その場所は自分たちが通るルートから逸れて400mくらいの位置に点在している。さらにその場所は動いていないので、動物や魔力反応を隠しまくっている不審人物というわけでもない。おそらくなんらかの物が置かれているのだろう。過去の同じ状況から察して多分、魔素を吸収する装置かなんかが置かれているのだろう。あー、考えたくもないー。考えるなー、顔を左右に振って思考を消し飛ばすんだ...!なんか他のことを考えるんだ。いや、お風呂のことは思い出すんじゃない!桃色ぷるんぷるん!すばらしき雑念がっ!いや、考えるな自分!首振りをさらに早くして無の境地に達するんだ!!


「さっきからカオリちゃんどうしたの?」

「会話に乗ってこないですし...」

「顔をブンブン振ってるし」

「「「おかしくなった?」」」


 3人は立ち止まって自分の様子を伺ってくる。どうやら、みんなが気になるほど首を振りまくっていたらしい。雑念が強いだけに加減を間違えたようだな。少し引いているように見えるのは自分だけだろうか?何にせよ聞かれたし、サリアたちに向かって返答するとしよう。


「いや、雑念振り払ってただけだよ?」

「雑念って何のこと?」

「気になりますね...」

「私も気になるかな」

「何でもないよ、何でも。」

「「「本当に~?」」」

「ほんと、ホント」


 と、視線を逸らしつつ適当にはぐらかしてみる。追求はないものの、リナやシルフィアの表情はにまにましているあたり自分が考えていることとは違うことを想像しているようだ。まったく、何の想像をしているんだ...自分にはワカラナイデスネ。

 一方でサリアはリナやシルフィアとは別の想像をしているようでいつもと変わらない表情をしていた。そこから察するに自分が今の状況に関することについて考えていると思っているのだろう。心配させるのも何なので正解を聞くつもりはないが、魔物と遭遇していない状況に不安感を感じているのかもな。

 それにサリアの表情に薄く疲れが浮かんでいるのが気になる。多分、不思議な状況を把握し続けるためいつもよりも集中して状況把握をしていたのだろう。戦いに慣れているサリアならば、このまま森の奥に進んでも余裕がありそうだが、帰りのことを考えるとだいぶ辛そうだ。

 このまま森の奥に進んで予定地に辿り着くだけの時間は十分にあるが、魔物に出会える可能性は十分に低い。となれば、魔物狩り演習の趣旨に照らしてもこのまま進む意味はないだろう。これ以上進んでも得られるものがないし、帰るのが得策だろう。みんなで立ち止まったし、引き返すにはいい機会だ。


「みんなちょっといい?今日の魔物狩り演習についてなんだけど」

「「「いいよー」」」

「魔物が出ない以上、引き返そうと思います」


 それを聞いて、魔物狩りの経験が浅いリナとシルフィアはシンプルに疑問に思ったようだ。


「えー、もう帰るの?」

「まだ始まったばかりですが...」


 といった不満たっぷりな返答が返ってきた。やる気満々で魔物狩りを楽しみにしていただけに、無理もない。だけど、魔物狩りができないのでは無を得るだけなのでわかってもらうことにする。


「魔物が多いか多くないかはその日によって変わるの。昨日は多かったけど、今日は特別少ない日。今日の魔物の出現具合を見極めて切り上げて帰ることも大切だよ」


 サリアはそのことについて既に頭の中にあったのか、自分の意見にすぐに同調した。


「カオリちゃんの言う通り、日によって魔物の数が変わってくるの。今日はハズレの日だと思って帰ろう?」

「「サリアちゃんまで?」」


 まだリナとシルフィアは納得していないようだ。今日は一回も魔物に遭遇しなかったのもあってここで引き返すほど疲れが溜まっていないのかもしれないな。代わりと言っては何だが、模擬戦でも考えてみるか。


「動き足りないなら、宿舎付近で模擬戦でもしよ?ね?」

「「よし、乗った!」」


 考えていた通り、戦闘し足りないのが納得していなかった原因なのかもしれない。それにしても何だこの素晴らしい手のひら返しは...。まあ、御し易いと言うことで気にしないことにしよう。


 そう言うことで、森の中から引き上げて宿舎の方へと戻ってきた。道中は魔物と遭遇することはなく、特にこれといった事は起きなかった。それに、自分たちが向かっていた方面に来ていたパーティーとも遭遇する事はなかった。そのパーティーたちについて、戦績報告するついでに戦績を確認すると、既に魔物討伐数は0の記入があった。魔物がいないと踏んで既に引き上げていたようだ。判断が早いようで。


 さて、これからサリアたちとの模擬戦だ。サリアは疲れている様子だが、魔物と戦えなかったために暴れたりない2人がいる。多分その2人は殺意マシマシ大災害級魔法でも放つ勢いで来るだろうし、全力で逃げ回るとしよう。

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