81 魔物狩り演習1日目6
(略しすぎています)
どうも、午前0時ごろになって宿舎に帰ってきた銀髪ロリエルフになった者です。戦績報告などのために会議室に立ち寄っています。付き合わせるのもどうかと思うので、サリアたちには先に部屋に帰って寛いでもらっています。別れる時には何やら楽しそうなことを話してそうな感じだったので、用事を終わらせて早くそれに混じりたいところです。多分夜の女子会とかでしょうか?
会議室には誰もおらず、自分1人だけの寂しい空間となっている。そんな空間の中央にあるテーブルには、大きな地図の他に前に来た時にはなかった表が新たに置かれていた。よくよく見てみると、今日の戦績を記入する表のようだ。びっしりと書かれているところを見るあたり、既に1日目を終了したパーティーが多いことが伺える。トータル3日間あるし、体力を温存する感じでいくのだろうな。自分たちのように初日から飛ばしている方が特殊なのだろう。
自分たちのパーティー、リリーガーデンの戦績は5時間で50体の魔物を討伐するというものだった。サリアは魔物狩り経験者だが、リナとシルフィアは魔物狩りに関して初心者だ。その2名が10体ずつ魔物を倒しているのだから戦績としては上々だろう。魔物との戦闘時にサリアが指示してくれていたおかげで、誰も危険な状況に陥ることはなく、初心者かと思えるほどのスムーズさで戦闘をこなすことができた。おかげで演習のインストラクターとして自分が教えることがないまま、終了を迎えたのでとても暇だった。うん。自分の感想はさておき、演習初日にしてパーティー目標である「魔物10体程度討伐」を達成する最高の戦績となった。greatですよ。
他のパーティーはどんなものかと戦績を見てみると、魔物討伐数が2桁に届いていないものがほとんどだった。そのため、いかにリリーガーデンの戦績が高いかが窺える。パーティーメンバーである自分も鼻が高いというものよ。今日の戦闘に参加していないのでなんとも言えないが。
「戦績を記入するところは分かったけど、ドロップした魔石はどうする?」
会議室内を見渡すと部屋の壁際に何やら大きな装置が鎮座しており、魔石鑑定はこちらと書かれた張り紙があった。どうやらこの装置に魔石を投入して戦績の記録を取るらしい。鑑定後の魔石は装置の横にあるロッカーの空きスペースに入れるとのことのようだ。
なるほどね。ドロップした魔石を鑑定装置に投入し、得た結果を戦績がまとめられた表に書く。鑑定後の魔石はロッカーに投入しすると。それを全てこなして戦績評価の報告が完了すると言った流れのようだ。かなりきっちりしてるけど、流れがわかるとシンプルで良いな。
ただまあ、高価そうな魔石鑑定装置まで用意しているところが気になるっちゃ気になる。演習での魔石買取が膨大になるからここであらかじめ鑑定しておくとかいうやつだろうか。それとも演習の評価に必要だからなのだろうか。とりあえず、両方考えてみることにする。
まずは、鑑定の買取数から考えてみる。ざっと計算して、今日1日で500個の魔石があるわけだし、3日間となれば1000を超えるのは余裕だろう。その数の魔石鑑定をするとなると自動とはいえかなりの時間を食う。なので、時間短縮のためにあらかじめ鑑定しておくという説。あり得る。
次に演習としての評価に必要という観点から考えてみる。魔石に固有の情報が含まれることを考えると、それを鑑定することでどの種類の魔物を討伐したのか鑑定することができる。さらに、魔石には固有の情報を含むため、鑑定済みの魔石を再度鑑定装置に通して戦績を水増しするなんてことはできないだろう。そう言った考えからすると、嘘の戦績を報告してくる事案というものがあったからそれを防ぐために用いている可能性が高いな。
さらに巨大な箱に魔石を入れるのではなく、小さいロッカーに魔石を入れるようになっているあたり、パーティーごとに魔石を保管するようになっている。なので、戦績をまとめた表と魔石の数が一致するか確認することも可能だ。貴族間の争いで嘘の戦績をでっち上げられると学園側はそれを元に評価することになる。それは実際の実力を評価したい学園側としては問題なので、公平に演習の評価できるようにしているのだろう。あり得る話だ。
こんな感じに考えてみたところ両方に筋が通った話でができるあたり、両方とも正しそうな感じだ。知らんけど。
脳内でまとまった考えを投げ捨てたところで、魔石鑑定装置に魔石を投入して鑑定作業を終わらせることにする。操作はギルドにある鑑定装置とそう変わらないため、スムーズに行うことができた。その時にパーティー名を記入できるようになっていたので、記入して鑑定書を2部出力しておいた。1部は鑑定済みの魔石とともにロッカーの中に。もう1部は自分で保管するためのものだ。この報告の流れの趣旨を考えると、自分で鑑定書を保管するのは何かと便利そうだ。
魔石と鑑定書を空いているロッカーの中に入れ、鍵をしておく。ゲセスターのパーティーや貴族間の争いなど、何かと不安要素が多い。そのため、手順を踏まないとロッカーが開かないよう外枠に鉄の板を差し込んでおいた。無理やり開けようとするなら扉が変形するとか一部が破損するとかするだろう。こうやるのも、後々に便利そうだからだ。
「悪意ある者への自己防衛がすぎる気がするけど、まあいいか。早く部屋に戻ろー」
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部屋に戻るとそこには森の中に入った装備のまま自分の帰宅を今か今かと待ち構えているサリア、リナ、シルフィアの姿があった。ベッドには座らず、3人とも窓際にあるテーブルを囲む椅子に座っていた。
「おかえり!」
「おかえりー」
「おかえりなさい」
三者三様のおかえりを聞いて少し心揺れるものがあった。こんなものはただの挨拶に過ぎないのだが、転生する前はその挨拶さえない環境で暮らしていた。この世界に来ても一人暮らしなので「おかえり」を言ってくれることはない。そんな寂しい生活に慣れきっていただけに、何気のない言葉はこれまでの生活と今の間にコントラストを生んだ。それによって今と昔が想起されそれぞれの気持ちが混ざり、少し心が揺れ動いた。
だからほんの少しだけ返答が遅れた。というセンチメンタルな感覚を覚えたのもあるが、シンプルにおかえりって言われた時どう返すんだっけ?とか考えてしまったからだ。長年のボッチ生活を舐めるでないぞ?
「ただいまー。ごめんね、ちょっと時間かかっちゃって」
「いいのいいの、戦績報告は重要だからね!でもここからは急いでもらうよ。カオリちゃん!」
リナは元気よくそう言った。え?何を急げというんだ?確かに、サリアたちは自分を待っていたようではあるが...。何かと視線を泳がせると、各々のベッドの上には下着や部屋着、タオルが丁寧にまとめて置かれていた。
「お風呂セットの準備?」
そういうとリナは分かってるねと言わんばかりに言葉を発する。それに続き、サリアやシルフィアも続く。
「そう!部屋にも浴室あるけど大浴場あるからみんなでそっちに行こうかなって」
「みんなで行くと楽しそうだからね」
「ですです」
「いいね!準備するね」
「「「はーい」」」
ノリで返事をしたが、楽しそうなことってお風呂に行くことだったんだな。てっきり夜の女子会的なものかと思っていただけに、戦績報告に少し時間をかけてしまった。ちょっと申し訳なさがあるので、手早く用意しないと。
カバンの中からゆるさが特徴の部屋着と下着を取り出してっと。次に、部屋に置いているタオルをとって...。それを適当なトートバッグに入れてと。こんな感じでいいかな?
「もう大丈夫だよ~」
「待ってました!」
「どんな感じのお風呂なんだろう?」
「気になりますね...!」
準備完了の言葉を聞いてみんながドアに向かって動き出すので、それについていくように後を追う。心なしかテンションが高いのは、汗を流せる喜びというよりも、みんなお風呂が好きだからだろう。うんうん。自分も好きだぞー。気分的にリフレッシュできるのもあるが、体に溜まった疲労が溶け出し超絶疲労回復できるしな!
そんなみんなのテンションに釣られてルンルンで大浴場の入り口までやってきた。入り口にはタイムテーブルが書かれた紙が貼られており、クラスごとに時間帯で分かれているようだ。時間が遅いこともあり、今は自由に入浴できる時間なので入っても問題はないようだ。ならばレッツゴーだな。
だが、2つの大浴場の入り口を視界に捉えると、自分は思考のために立ち止まることになった。赤い暖簾と青い暖簾があるからだ。
oh...。ちょっと待ってほしい。何が大丈夫で、何がならばレッツゴーなのだろうか。色々まずいだろう。この世界に来るまではちょっと忙しい男子高校生をしていた。だが、女神様によってこの世界に転移した結果転性してロリになった。身体は女子、頭脳は男子、その名はカオリ!語呂悪し!だがそれ以上に、色々とまずい。これまで1人だけのお風呂やらトイレやらで視界にとらえなければ問題ない状況だったが、みんなでお風呂となると...見えてはいけないところがとても見えることになるのでまずい気がするぞ!気がするじゃなくてまずい!間違いなし!それに行くにしても、その問題を自覚したしのがついさっきで、心の準備ができておりませんのよ?あれ?動揺しすぎて語尾がおかしくなって候!?
「どうしたのカオリちゃん?」
「あれー?もしかしてカオリちゃんは恥ずかしい?」
「女の子同士だから大丈夫ですよ...!」
サリア、リナ、シルフィアは動かない自分が裸を見せることを躊躇っていると思っているようだ。そんなの問題のうちに入らないよねと、すかさず自分の背後に回り、背中から押して赤い暖簾をくぐらせようとする。
「ちょ、まっ、今心の準備を」
「それは後からなんとかなる!だいじょうーぶ」
「みんな初めはそうですよ」
「そうだよー?」
「わわっ、待って~~!」
そうじゃないんだよーーー!うわわっわわ、力強すぎない?
背中を押されてずるずると赤い暖簾の方へと移動していく。だが、それだとなかなか前に進まない。床との素晴らしい摩擦力に感謝だな!この間に如何にこの場を切り抜けて部屋でシャワーを浴びるかを考えねば。
往生際悪く抵抗を続けている自分がこの場から逃げようと考えていることを察した3人は一度背中を押すのをやめた。何事かと首を動かすと、3人は何も言わぬまま頷いていた。そして、サリアとリナは自分の背中を再び押し始めた。今の何だったの?ちょっと気になるけど、暖簾をくぐらない様に抵抗しながら、この場から逃げる方法を考えることに集中しよう。赤い暖簾はすぐそこで、もう猶予はない。
「カオリちゃん、大変そうですし...着替え持ちますね」
シルフィアよ今の状況に手助けしてくれるのかな?とりあえず渡すか。これで暖簾の前の壁使って抵抗できるな!このまま引き摺り込まれるようならここで最後の抵抗してやるぞ!
「あ、シルフィア、ありがとうこれで」
そう言いながら、サリアとリナに抵抗しつつ、シルフィアにお風呂セットを渡すと、シルフィアはにっこりした表情で受け取った。そして、シルフィアは背後の2人に向かって頷いた。その瞬間、シルフィアが背中を押しているサリアとリナと頷いていたことを思い出す。これは罠かっ!
その瞬間、背中を押していた力が弱まった。背中から押される力を押さえ込むように後ろ向きに力をかけていただけに、体勢を崩して後ろへ倒れようとする。そのため、受け身が取れるように腕を広げた。だが、自分のすぐ背後にいるサリアとリナが自分を受け止めたので床に倒れこむことはなかった。しかし、その代償は大きかった。
受け身を取るために左右に広げた腕がサリアとリナに両脇からロックされたのだ。こうなると腕を使った抵抗をすることはできない。なので、腕を使う最後の抵抗が使えなくなった。マジこの3人策士しすぎてやばいぞ?なんせ頷くだけでこの状況を組み立てるんだからな。っと感心してる場合じゃない!このままでは時間稼ぎもできない!やばばばばば!
サリアとリナに腕を掴まれ、後ろに引き摺られながら暖簾の元へと向かう。床との摩擦を信じて靴を床に押し付けるも、些細な抵抗にすぎず、ずるずると引っ張られていく。あっこれダメなやつだ。終わりです!
無駄な抵抗と察した自分はこれ以上抵抗せず、2人に引っ張られるままに赤い暖簾の下をくぐった。まさかこんな形で女湯デビューを飾ることになるとは思ってもみなかったぞ。精神的に生きて女湯から出れるのだろうか。ものすごく不安である。




