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80 魔物狩り演習1日目5

(略しすぎています)

 パーティーの活動方針を話し合った後、自分はサリアたちと別れて会議室に来ていた。と言うのも、夕方から夜にかけて行う魔物狩り演習をどの場所で行うのかを知らせておく必要があるからだ。学園側は危機管理のために、生徒がどの方面に向かうかを把握しておきたいのだろう。

 そんな把握すべき事項であるのにもかかわらず、訪れた時には会議室に誰も居なかった。担当が責任持って情報をコントロールしていると思っていたのだが、割と適当な感じなのだろうか?まあいいか。でも、肝心の演習予定地を知らせる方法は如何に?適当な紙に太陽が沈む方向に向かいます的な謎の怪文書を置いておくぞ?

 知らせる方法が分からないので辺りを見回すと、会議室の中央にあるテーブルにこの施設周辺の詳細な地図が置いてあるのが目についた。よくよく見てみると地図の上にはピンが刺さっており、ピンの持ち手の部分にはパーティー名が書かれていた。このところから察するに、このピンと地図を使って予定地を知らせるようだ。簡単な説明が欲しいところだよ全く。聞いてなかっただけかもしれないけど。


 とりあえず、地図を見てみる。この施設を中心とした半径4kmの円が書かれており、その内側を演習可能な範囲としている。施設の東側は川があるので実質的に東側以外の3方向が演習可能エリアだな。魔物が多い森の奥へと向かう北側には多くのピンが刺さっており、演習に対するやる気の高さを感じるところだ。逆に魔物が少ない森の外縁側の南側にも多くはないがピンは刺さっており、パーティーの戦闘レベルに合わせて場所を設定しているように感じる。西側は森の奥に向かうはずだが、北側とは違ってピンがあまり刺さっていない。あまり魔物が出ないとかそんな感じなのだろうか?シンプルに謎だ

 この中でどこがいいかと言われれば断然西側だな。魔物の数が多くないとしても他のパーティーの戦いを邪魔することなく自由に戦闘を行うことができるからだ。それにシルフィアが扱う単一放射系光魔法は威力が高そうなので、周囲が他のパーティーに囲まれている状況で使用することはかなり危険を伴う。なのでそのような状況では魔法を使わない選択肢になるが、やる気満ーにも関わらず戦闘に参加しないで演習を終えると言うのはとてもかわいそうなところだ。


「ピンにパーティ名を書いて...とりあえずこの辺に刺しておくか。予定は未定だし」


 他のパーティーの邪魔にならなさそうな西側の演習可能エリア外縁に刺しておいた。森の中を往復で8km進むことになるので演習としてはハードな気がするが、時間で切り上げて途中で折り返してくるので問題ない。だって魔物を狩るのは程ーにしてピクニックしたいじゃん?せっかくみんなで来たんだし、ピリついた雰囲気でやるよりかは和気藹ーとしたいからな。


 ピンを刺し終えたし、会議室から出てサリアたちがいる部屋へと向かうことにする。会議室の扉を閉めた後、静かな廊下を進んでいるとどこかで見た事のある衛兵とすれ違った。その際に何かを確認するかのような視線を感じたりしたのだが、どこかであっただろうか?

 パッと見た感じ、新人の衛兵のようで身に纏っている装備との馴染みがないように見える。メイン武器は物理攻撃可能なMSDで槍の形状をしている。なんーかどこかで会ったな。あれは...。あれは?あ、快適なお風呂に入ろうとした時に邪魔してきた生意気な人だ。乙女?のお風呂を邪魔した恨みは大きいぞ...?正確に言うと、家に魔物の大群が押し寄せた翌日の朝にやってきた衛兵のうちの1人で、集団から先走ってやって来た槍装備の人だ。超絶とばっちりだが、マジ許さん。


 そんな新人衛兵槍装備君は会議室の方へと向かっているところを見るに、パーティーのインストラクターをやる羽目になったのだろう。衛兵本来の役割である町を見回る方が楽そうなものだが、どうしてこんな面倒そうな依頼を受けたのか疑問だな。もしかして、チョッチ人足らないから行ってくれないか的なパターンだろうか?新人だし何事も経験だぞとか言って押し付けられてそう...。と考えてみたものの、よくよく考えてみるとその人の上司はザックさんなのでそう言ったことはないだろう。となると、自分の意思で受けたのか。奇特な方で...。


 そんなことを思いつつ廊下を歩いているとエルバ先生と会った。見たところ忙しそうな感じではなく、少し手持ち無沙汰気味に考え事をしていて暇そうなので声をかけてみることにした。


「エルバ先生こんにちは」

「カオリちゃん、こんにちは。演習についての質問ですか?」

「いえ、何か考え事をしていらしたので気になりまして。演習の件についてですか?」

「そうなんです。演習のルールについて説明担当になったんですけど誰からも聞かれなくて。説明が悪かったのか考えていました」

「自分的にはすごくわかりやすい説明だったと思いますよ」

「カオリちゃんが言ってくれるならそうなんでしょうね」


 そう言っているエルバ先生の表情はまだ考え事をしているようで思考が晴れたような雰囲気になっていない。となると本当に考えていることは別のことかな。


「と言っている割にはまだ考え事がありそうですけど?」

「まあ、バレちゃいますよね...。カオリちゃんはゲセスター君の件を覚えてますか?」

「はい。変t...彼がどうかしましたか?」


 危ない危ない。変態言動ゲセスターとか言うところだった。自分の中で変な名前をつけてたから、反射的に出てしまいそうになるな。気をつけねば。


「その件が少し気になっているんです。実はあの事件の後、彼は学園からの処罰が下ったんですが公には内容が公開されておらず自主休講という形になっています。ですが、実際は短期間の出席停止が行われていました」

「処罰が公表されなかったのは外交的な問題からでしょうか?」

「そうだと思います。ですが、私が気になっているのはその先なんです」


 ん?そこではないとしたら何だろうか?


「彼は出席停止の期間を終えた後、学園に復帰しています。それ自体は何の問題もないのですが、彼のパーティのインストラクターを選ぶ件で少し怪しいことがありました」

「インストラクターは自分たちも選ぶ事ができましたが、表現が穏やかじゃないですね」

「ええ、学園は彼が魔物狩り演習でも事件を起こさないように見張るためのインストラクターが付くことを条件に、彼の参加を認めました。ですが、そのインストラクターは学園側から選ばれませんでした」

「え?学園側が見張りをつけると言いながらですか?」


 普通であれば、学園の観察下に置くことで問題を生じさせないようにコントロールするだろう。しかし、わざわざ学園外の人員を用意すると言うことは、彼をコントロールする気があまりないと言うことである。暴論かもしれないがこれが真だとすると、彼に見張り役をつけると言うことが建前となり、隠された事があることになる。


「そうなんです。そして選ばれた方が、新人の衛兵さんなんです」

「え」


 もしかしてさっきすれ違った新人衛兵槍装備君なんじゃないだろうか?諸ーの推測が正しかったとするならば、新人衛兵槍装備君も変態言動ゲセスター側だ。


「選定理由は衛兵さんなので問題が生じようとしても取り押さえる実力があるためだそうです」

「そうだとしても、怪しい人選な気がしますね。起きて欲しくありませんけど、今回の演習で何か起きそうな気がします」

「ええ、全くその通りなんです。その件で少し考えていました」

「確かに色々考えちゃいますね。とはいえ、今回はギルド側からも多くの方がいますし、大きな問題にはならないかもしれませんよ」

「確かにそうかもしれません。選定から外れていると言うことは彼の影響を受けてない方達なので、そういった強い方が見張っていると思うと少し安心してきました」

 

 先生の立場からこの件を知ってしまうと、生徒に危害を及ぼしかねない可能性がある以上考えてしまうことだろう。エルバ先生、心中お察しします。

 そのあと、エルバ先生と少し雑談をしてエルバ先生と別れ、サリアたちのもとへと合流した。

____________________________

 時は進んで太陽が水平線へと沈もうとしている頃、リリーガーデンのメンバーと共に施設から2km程度離れた森の中にいた。


「シルフィアちゃん、右奥のゴブリン頼める?」

「任せて...!」


 サリアからの指令に応えるべく、シルフィアは手に持ったMSDを操作して魔法を発動する。シルフィアの前方に光球が生まれた瞬間、目にも止まらぬ速さの光線が放たれた。光線はゴブリンの腹部を打ち抜き、ゴブリンは魔石へと変化した。


「リナちゃん、前方からウルフきたよ」

「ほいさ!」


 リナは瞬時にウルフと距離を詰め、大剣を振り上げる。その大剣に魔力が集まって光を放ち始めたかと思うと振り下ろされた。そんなリナの確殺オーラに慄いたウルフは距離を取ろうとするも、振り下ろされた大剣から前方に放たれた大量の石礫によって魔石と化した。


 リナやシルフィアに指示を出すサリアはと言うと、リナやシルフィアが次の戦闘が可能になるまでの隙をカバーするために、魔物の気配を感じ取っては魔法のウィンドスピアを使って魔物を屠りまくっている。サリアの表情は真剣そのもので戦闘に集中しているように見える。


 そんな姿を見て思う。これ、インストラクターいらないのではと。だって、チームワークもいいし、司令塔がしっかりしているし、個ーの動きもスムーズだ。まあ、強いて言うなら1体の魔物に対して1人が対峙する形となっていて、レイド戦みたいに1体の魔物に対して複数人で対峙していないくらいだろう。連携の確認ができないから問題なのであって、低級の狩りやすい魔物しかいない現状では問題がないのだが。なので、あれこれと指導することがないので暇だ。


 日がまだ高い頃にサリアたちと共に森の中を軽く散策して、普段とは違う戦い方が要求される点を共有した。その後に、サリアたちvs自分の模擬戦を行ったのだが、リナとシルフィアは森の中での戦いに苦戦していた。シルフィアは障害物で魔法が届かないことに苦戦し、リナは大剣を使った戦いに苦戦していた。

 だが、自分の眼前に広がる光景はそんな苦戦を感じさせるものはない。一体この短期間に何があったのだろうか。不思議だ...。


 不思議すぎたので思わず空を見上げていたら、戦闘が終わって魔石回収を済ませたサリアが声をかけてきた。


「カオリちゃんどうしたの?戦いで気になることでもあった?」

「あると言えばあるんだけど」


 と言葉を区切ったタイミングでリナとシルフィアが会話に合流してきた。


「なに話してるの?」

「どうかしましたか...?」

「カオリちゃんが戦いで何か気になることがあるらしいからそのことを聞いてるの。それで、どこが気になったの?」


 向上心の塊であるサリア、リナとシルフィアは興味津々な眼差しで自分を捉えて自分から出る言葉を待つ。何でもない話だし、期待されても困るんだけどな?


「昼間に模擬戦したでしょ?その時とは違って今は動きがとてもいいから不思議に思って」


 その言葉を聞いて白けたのか全員が白い目で自分を見てくる。自分が何をしたと言うんだ何を。


「もしかしてカオリちゃんは自分の強さを魔物と同じレベルと思ってる?」

「そうだよ。目の前にいたかと思うと真横にいたりするし」

「障害物を巧みに用いながら接近するので困りました」

「だって攻撃受けたくないじゃん?」

「「「それであんな動きされたら誰だってついていけないよ???」」」

「そうなの?」

「「「そうだよ!!!」」」


 森の中で動きにくいとはいえ、チームワークが素晴らしく良いので攻撃を受けようものならその隙で一斉攻撃を受けてしまう。そうなると痛いくらいじゃ済まされない。特にシルフィアの魔法には当たりたくない。当たったらその部分が蒸発すること間違いないほどの火力だからだ。だから避けまくっていたのだが、どうやらそれが不評だったようだ。


「でも動き遅くしたら攻撃当たっちゃうでしょ?」

「「「それでいいの!」」」

「そんなご無体な!」


 そんな和気藹々とした雰囲気で、サリアたちと共に森の中を探索していく。

 森には入る前に懸念されていた魔物の数が少ないと言うこともなく、至って普通の湧き方だ。出会う魔物は弱いものしか出ておらず、サリアたち3人だけで余裕持って対処できている。なので自分は周辺の魔物を把握するくらいで特にすることはない。実質駄弁って歩いているだけだ。もしかして、念願のピクニックなのではないだろうか?やったぜ。インストラクターをやれと言われた時には色々と懸念していたが何とかなりそうだな。あれ、これ言っちゃうとフラグになっちゃうか?


「カオリちゃん、前!前!」

「どうしたのサリアちゃ、っ~~」

「カオリちゃん大丈夫?」

「傷は...大丈夫そうですね」


 下を向いて考えながら歩いていたから木の枝に気づかずぶつかってしまったようだ。普通に痛いな。サリアたちに任せすぎて気を抜きすぎた。この調子だとなんだかんだと起こりそうな気がするのでさっき建てたフラグは折れたなガハハ。気を取り直して気を抜いていくとしよう。

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