75 パーティー連携練習
(略しすぎています)
どうも、学園内の演習場で攻撃を避けまくっている銀髪ロリエルフになった者です。サリア、リナ、シルフィアの3人からの攻撃を避けるのはかなりの運動量なので、ダイエットにはちょうどいいかもしれません。昼食後ということを除けばですが、うぇっぷ。
どうしてこんなことになっているかというと、来週に迫った魔物狩り演習に向けて連携プレイを練習しておくためだ。サリアはギルドに所属しており、パーティーでの戦闘経験がある。一方で、リナとシルフィアは戦闘経験が無いとのことなので練習しておこうということなのだ。人数の関係上で3人対1人の形となっていて、森の中で想定される数多くの敵と相対する形ではない。なので、想定する戦い方とは違ってくるのだが、やっておいて損はないだろう。昨今の森の中やら家の周りやら色々物騒だし。
「もー、カオリちゃん止まって~」
「何をしても、簡単に避けられちゃう!」
「でも、それがまたいいところです...」
「「シルフィアちゃん!」」
「えっ、あ...魔法放っても当たらないです~」
「「そうそう!」」
え、何々?絶賛回避に集中していて流れがよく分からないけど、自分の情に訴えかけて動きを鈍らせるなんて流れか?でも、そんなことしないよ?だって皆の攻撃に気合が入っていて、当たるとめっちゃ痛そうなので。
「うお~~!」
バックステップを踏みながら考えていると、リナが俊敏さを生かして間合いを詰めながらの大剣の一振りがやってくる。リナとの距離は7歩ほど。満月大根切りでもするかのように振り上げられた物理攻撃可能なMSDである大剣には魔力が集まっており、打撃と共に魔法攻撃を放つようだ。距離が詰められているので、近距離の範囲攻撃がくる感じだろう。となれば、回避する先は空中か、リナの真横だな。
視線を一瞬リナから移して、リナの5歩後ろにいるサリアに注目する。サリアは魔法補助特化型MSDで魔法の発動準備を終えており、何らかの攻撃がやってきそうではある。多分、自分が横方向に避けたら魔法がやって来る感じか。空中も同じような感じでヤバいな。
サリアから3歩後方にいるシルフィアの方に視線を向けると、魔法補助特化型MSDを構えており、まばゆい光がシルフィアの眼前にある。魔法の発射準備満タンですな。空中は絶対ダメそう。こりゃ、気合でリナの真横に行くしかないな。
回避方法を定めるや否や、リナの大剣は地面への加速を始めて、大剣に集まる魔力が変質し始めた。行くならこのタイミングか。
「っ!」
身体強化魔法が書き込まれているリングタイプのMSDに魔力を通して、身体強化を自身に付与する。そして、後ろに飛んでいる体の勢いを右足で地面をとらえて殺し、殺した勢いで右脚にたまった力を解放して鋭く前へと加速する。さらに加速して、リナの脇を素早く通過する。
「えりゃ!」
自分の動きを追えていないリナはそのまま大剣を振り下ろして、魔法を発動させたようで、その轟音が背後から聞こえてくる。見えていないので変わらないけど、予想通り範囲系の魔法だろう。というか、その威力完全に自分を殺しに来てませんかね?かね!?
リナの攻撃を回避したので次はサリアからの攻撃だ。サリアは何らかの攻撃を用意しているようだが、どうするのだろうか。自分の背後にはリナが居る。どう出るか。
サリアの様子を窺うと予想していましたと言わんばかりの表情をしており、これから行うであろう魔法攻撃をやめるつもりはないようだ。となると、範囲系で射程がリナに届かないような範囲魔法だろうか。だとするとこのまま直進するのはダメそうだ。
前に進もうとする体を左足で踏ん張って止め、右斜め後ろに飛ぶ。
その直後、サリアの攻撃は予定通り行われ、サリアの周囲に複数のウィンドカッターが円を描くように飛びまわる。多分技名はウィンドストームと言ったところだろうか?その攻撃はシルフィアに当たらないが、自分がサリアへ進んでいたら必ず当たるような絶妙な軌道で飛んでいる。切れ味がよさそうな鋭い風切り音を立ててぶんぶんと回っている。こりゃ、当たったらミンチになる事請け合いだな。この魔法を放つとは...サリアの殺意が高いよぉ...。
さて、次に警戒するのはリナとシルフィアだ。視界の左端捉えたリナは体勢を整える最中で攻撃はなさそうだ。となると、シルフィアだな。シルフィアとの距離は十分にあるが、シルフィアの放つ魔法は鋭く速いので気が抜けない。さて、何が飛んでくるかな。
シルフィアはサリアの攻撃が避けられることを予測していたようで特に驚いておらず、視線は自分を捉えている。だが、シルフィアのまばゆい光が更に輝いてすぐにでも飛んできそうである。あまり悩む暇はなさそうだ。右か左か...。右後ろに飛んでいるので反対方向に向かうには勢いを殺す必要で時間がかかる。そうなると、右方向に飛ぶしかない。距離を稼ぐためにヘッドスライディングするか。
左脚を踏ん張り、力一杯に右に飛ぶ。その瞬間、元居た場所を極太の光線が通過した。回避中も光線から肌を焼くほどの熱量を感じてその威力に戦々恐々だ。さらに光線は演習場の耐魔法壁に衝突し、その衝撃によって轟音と共に土埃を巻き上げた。おいおいおいおいお(略)!これ上級魔法のフォトンレイでしょ!これ死ぬわ!灰残らず蒸発するわ!
ヘッドスライディングから素早く立ち上がり、火力が高すぎることに抗議する。
「みんな殺す気?」
「いや」
「だって...」
「カオリちゃん」
「「「絶対避けるからいいかなって!」」」
「よくなぁ~~~~い!」
闘技場に抗議を上げる幼女の声が響き渡った。
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模擬戦にしては火力が高すぎる問題はさておき、3人の連携はいいように思う。初めての連携とは言え、多段の攻撃手段を用意していたり、各々の役割を意識したものになっていたりと予想以上の連携だ。仲良しパーティーなだけある。これなら、単体の低級魔物くらいならば危険なく討伐することができるだろう。そいつはgood。これならパーティー指導を行う役をほっぽり出してピクニック気分でいても大丈夫そうだ。
そんな期待以上の連携を見せる3人に言いたいことがある。避ける役、そろそろ変わってくれない?あ、だめですか。そうですか。はい。