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72 サリアの事1

(略しすぎています)

 どうも、現在大自然の森にサリアと魔物狩りに来ている銀髪ロリエルフになった者です。サリアとの魔物狩りはとても久しぶりな気がしています。

 そうなったのも、サリアと一緒に魔物狩りをするのはつい先日までは戦闘能力評価期間があり、自分、サリア、リナとシルフィアの4人で一緒に特訓をしていたからだ。入学してから1週間後くらいに特訓し始めたから、実質3週間くらいは空いていることになるかな。そんな感じなので、定期的にサリアと魔物狩りに行く約束をしていたのをすっかり忘れててサリアに誘われてから思い出した。すまん、サリア。


「サリア、そっちにウルフ行ったよ!」

「了解っ!」


 サリアはMSDを使って素早く体の正面に圧縮した空気の針を生成すると、魔物であるウルフに向かって針を飛ばす。飛翔しているスピードはそれなりに速く、低級の魔物ならば避ける事ができない程だ。そのため、飛翔する空気の針は瞬時にウルフの元へと到達し、ウルフはサリアから放たれた魔法に反応することができずに脳天を貫かれて魔石となった。


「サリア、腕を上げたね。今のって前よりも魔法の発動が早くなってる気がする」

「ありがとう。皆との模擬戦の効果かな~。魔物が前よりも遅く見えるようになった気がする」

「それだけサリアの判断力が増してるってことだね!それに、今使った魔法のチョイスもよかったと思う」

「魔物が居たところは木々が多かったからね。範囲のあるウィンドカッターよりかはウィンドニードルがいいかなって思って。前の私ならウィンドカッター使ってた。模擬戦様様だね~」


 サリアは入学に行った魔物狩りの時と比べてかなりの戦闘能力が上昇していると感じている。特に状況把握と状況に適した戦術を瞬時に判断できるようになり、魔物を狩る手際がかなり良くなっている。それを、1カ月という期間でここまでのものに仕上がっている事というのだから驚きである。成長とはすばらしきかな。


「そういや、今倒した魔物で5匹目くらい?」

「そう、5匹目。魔物が少ないよね」

「サリアもそう思った?これじゃ粘ったところで数は狙えそうにないなぁ~」

「2時間でこれだもんね~」


 太陽は水平線に沈み空の青さが深みを増した頃に森の中に入ってから2時間が経過している。陽が沈むと魔物は増えるので、普通ならばもっと魔物に出くわしてもおかしくないと思うのだが...。もしかして、家の周りに魔物が発生しすぎて感覚がマヒしてるのかなぁ?それとも、街の中でも魔物の湧き方に差があるように、森の中でも魔物の湧き方に差があるという類の問題なのだろうか?


「ここだと魔物の数は少ないのかな。サリアはどう思う?」

「この辺りに来たことは数回あるけど、数は今日より多かったと思う。魔物があまり出ない日もあるし、今日はそういう日だったんじゃない?」

「そんなもの?」

「そんなもの~」


 森の奥に向かって歩いてきたのでそれなりに魔物が多く居るはずだ。だが、ギルドで自分よりも長く魔物狩りをやっているサリアが言うからにはそうなのだろう。それに、ギルドで最近は街の外の魔物があまりいないとか言ってたような気がするが、あまり問題視もされていなかった。

 だけども、短期間だけでも森で生活していた自分としては何か引っ掛かりを感じる。虫や魔物、動物が動く音が聞こえたり聞こえなかったりの感じで極端に静かという訳でもない。なので、今の森の状況が異常という訳ではないのだろうが...。


「カオリちゃん?考え込んで何か気になった?」

「ん?何でもないこと考えてた。今日の晩御飯は何にしようかな~って」

「そんなことだったの?なんか真剣そうな感じだったのに。心配して損したかも」

「え~、そんなこと言わないでよ~」


 心配されるだけだし考え事は茶化しておいた。今の状況に引っ掛かりは感じるけど、それ以上の事もない。だから事を大きくすることもないしな。

 茶化しながらそう考えていると、遠くだが魔物が居る事を感じた。先手を打たれる前に一度立ち止まることにする。そのことを伝えるため、小声でサリアに指示を出す。


「サリア、ストップ」

「魔物?」

「そう。距離はあるけど一旦止まったほうがいいかなって」


 魔物の反応を注意深く感じることにする。今回は魔力の反射で相手を知るアクティブ探知ではなく、相手が持つ魔力を直接感じるパッシブ探知で情報を得ることにする。魔力の放出で探知してたらここに自分が居ますって伝えるようなものだしな。

 感じた魔力からだと魔法を使って攻撃するタイプの魔物っぽい感じである。しかも、今まで出てきたものよりも若干強い個体みたいだ。普段から魔物との戦いに慣れているサリアはその魔物の反応を捉えられていないところから、スニークスキルはかなり高そうだ。並みの人ならば視界が悪い夜の森の中でその魔物と戦うことは厄介になること間違いないだろう。それはサリアでも例外ではないと思う。


「魔法メインの魔物だね。数は...」

「数は?」


 そう言って注意深く周囲を探る。すると、遠くから自分たちを取り囲むように3匹いることが分かった。ただ、動き方的に自分たちを監視しているといった感じでもない。まだ気づかれていないようだ。だが、このまま進むと盛大なドツボにハマる気がするし、引き返した方がよさそうだ。こういう時の勘はよく当たるからな。


「3匹。自分たちを囲むように居るけど、まだ気づいてない感じ。気づかれる前に森の出口方面へ移動して退路を確保しよう」  

 

 その言葉を聞いてサリアは首を縦に振り、了解の意を示した。そして、呼吸を合わせてサリアともに森の出口へ向かって引き返し始める。

 例の魔物たちの動きは...変化が無いな。動きが変わったことに気づいていないようだ。これなら、無事に気づかれずに行けそうだ。

_____________________

 森の中をこれまでと変わらないスピード歩き続けること数分、魔物の包囲網から抜け出せる位置に差し掛かった。その時、1匹のウルフが進行方向をふさぐ形でいる事が目視で確認した。幸いウルフはこちらに気づいていない様子なので、先手を打てる。だが、厄介そうな魔物との位置関係からすると、ここでの戦闘を起こすと気づかれる...よな。

 歩くことを止めて、どうするべきか悩んでいるとサリアが一歩前に出た。


「あのウルフなら行けそうだね」

「行けそうって?ちょっ待っ」


 サリアはMSDに魔力を流し込みウィンドニードルの発動を行う。それと伴い、サリアが魔法を発動したことにより魔力の流れの変化が空間を伝播する。魔法をメインで扱う魔物だし、周辺の魔力反応には特に敏感そうなのでヤバい気しかしない。マジヤバ山脈チョモランマだ。


 サリアが発動した魔法によって空中に魔力の塊が生成され、それが変質して空気の塊になろうとした。

 ちょうどその時だ、包囲網を形成していた魔物の1匹が反応した。相手から伝わってくる魔力が大きくなったのだ。恐らく、魔法を発射する前兆だろう。サリアに伝える時間がないので自分で何とかしなければいけないな。とりあえず、魔物から発射される魔法に備えて動けるように身構えるか。


 自分が身構えている一方で、新たな魔物の脅威に気づいていないサリアはウルフに向かってウィンドニードルを放った。そのウィンドニードルは真っすぐウルフへと向かい、ウルフを貫通した。


 ウルフにウィンドニードルが貫通した丁度その時、警戒していた魔物の反応が最大を迎えた。この感覚は魔法が発射された感じだ。発射されたものは見えないけど、伝わってくる魔力の感覚からは相当速いスピードで飛翔しているし、威力はめちゃくちゃ高いといったものでもない感じだ。だが、当たり所が悪ければ致命的だ。そんな魔法の狙いは...サリアか!ですよね!でも、エイムが良すぎるにもほどがあるぞ!


 魔法に対処するため、純白なナイフ型MSDに必要最低限の魔力を通し、魔力刀を発動する。


「やっt」

「伏せて!」


 振り返りながら魔物の討伐を伝えるサリアの言葉を遮るように言葉を発し、一歩先に居るサリアを攻撃から守るために前に押し倒す。押し倒しながらもサリアの元へと迫る魔法に注意を向けるべく、横目で魔法がやってくる方向を見る。飛んでくるものは5cm程度の大きさで石の様な材質で尖っている。土魔法の類のものだろう。装備で防御力を上げているとはいえ、直撃すればただでは済みそうにないな。でも、これくらいなら魔力刀を発動したナイフで受けることができそうだ。


 ナイフを飛んでくる石の軌道上に動かして、ぶつかった衝撃に耐えることができるように腕に力を入れる。その直後に、石がナイフに衝突した。それと同時に、飛んできた石は吹き飛ぶほどの衝撃をナイフに伝えて霧散する。めちゃ威力高すぎでしょ?最近の魔物はどうなってるんだと疑問に思ってしまうね。


 吹き飛ばされるほどの衝撃は押し倒す力を加速していく。このままだと、サリアは頭をぶつけることになるので、空いている腕でサリアの頭を抱えて衝撃に備える。程なくして、サリアと共に地面に倒れ込み、サリアの頭を抱えた腕に衝撃が伝わった。


 魔法放ってきた魔物からの追撃の有無を探るために、地面の上に倒れてサリアの上に覆いかぶさったまま、少しの間周囲の状況を把握してみる。

 魔法を放ってきた魔物からの追撃はなく、こちらへ来る素振りもないようだ。感じた反応にとりあえず魔法を放ってみたという感じで、どうやら見逃してくれるようだ。こちらは体勢を整えないと反撃できるような状況にもないので、その行動はありがたい限りだな。


 サリアの体の上から降りて隣に座り、声をかける。

 

「サリア、大丈夫...?」


 押し倒したサリアを見ると、顔面蒼白のまま固まっている。焦点は定まっておらず呼吸はかなり浅い。そんなサリアの予想外の状況に焦りながら、サリアの外見を隈なく確認して血がにじむ場所は無いか確認する。


「外傷はない。頭は保護したし脳震盪でもない。けど、色々やばい」


 外傷なら対処は分かるけど、そんな特徴はなく今のサリアの状態を説明できるものが無い。だから、何をどうすればいいのか分からない。でも、どう考えても大丈夫でない様子だし、何かしなくちゃ。あわわわ。


「あぁ...ぁあああ」


 少しパニックに陥っている最中もサリアの表情は次第に恐怖に歪んでいく。せめて恐怖を取り除ければと思い、サリアの上体を起こして抱きしめた。


「大丈夫、もう大丈夫だから」


 声をかけながらやさしくサリアの背中をさする。時間が経つにつれてサリアの硬直した体はほぐれていき、荒れていた呼吸も元通りに戻っていく。やがて、もとの落ち着いた状態に戻っても、何だかサリアが脆くて崩れそうに感じて、サリアを抱いたまま背中をずっとさすっていた。

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