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71 インストラクター選びとパーティー名

(略しすぎています)

 エルバ先生とのお茶会が終わり、いつも通り授業が始まった。魔物狩り演習まで1週間切っているので、この一週間は魔物に関する特別授業が集中的に行われるようだ。これまでの授業にあった魔物に関する話は魔物の成り立ちといった基礎中の基礎なので、魔物を狩るときには役に立たない感じのものが多い。このまま生徒を魔物が居る森に放り込むことは危険だと判断したのだろう。特別授業では実践的な内容が多く含まれていた。それが理由か分からないけれど、魔物狩り演習が楽しみ過ぎるクラスメイトはいつもよりも熱心にノートをとっていた。普段からきっちり勉強した方がいいよ?時折寝ている自分が言うものではないけどね。


 そんな調子なので、休み時間となると魔物狩り演習に向けた話で大賑わいだ。特に昼休みとなると、新しい情報を交換したり、有効そうな装備について話したりと、あちらこちらで話題が上がっていた。そんな調子なのでクラスメイトは魔物狩り演習ガチ勢のようだ。なので、魔物狩りを普段からしてますと言った時には根掘り葉掘り聞かれてのんびりする時間が無くなること間違いなしだな。こわ...近寄らないでおこうとか思っていた。

 思っていたのだが、リナとシルフィアがガチ勢に片足を突っ込んでいたようで、昼休みにお弁当を一緒にしたときにはサリアや自分に対してあれやこれやと質問攻めにあった。弁当を広げた後の第一声から、もう逃れられぬ運命を感じたよね。早々に昼休みをのんびり過ごす事を諦めることにした。


 そうした昼休みを過ごして今に至る。教室の机の上で伸びているところだ。

 昼休み終了後の授業は本来、演習場での戦闘演習がある。しかし、今日は教室で一時待機するように伝えられていた。何の話があるのだろうか?まさか今日の戦闘演習もできませんとか言う話だったらクラス内大乱闘間違いなしだぞ。もしそうなら安寧の地を求めて図書館へ行かねば。

 そんなことを思いながら突っ伏していると、エルバ先生が教室に入ってきた。


「はーい、皆さんちゃんといますね?それでは、これから魔物狩り演習のインストラクターについてお伝えします。まずはプリントを配るので回してくださいね」


 話というのは、ギルドの依頼にあったパーティーに付く護衛と指導を行う奴についてだったか。教室内大乱闘にはならなくて安心したぞ。

 同行するパーティーについては、いろいろな事情を考えて既にサリアたちのパーティーにすると決めている。一応、ギルドに掛け合って自分側からパーティーを選ぶことができるようになっているが、自然と自分を選んでくれるように仕向けないと周りに波風が立つ。その時の条件として、魔物狩り演習当日まで自分が担当することが分からないことが必須だ。そうでない場合は色々勘ぐられて、下手を打つと面倒なことにを引き寄せかねないからな。


「それでは簡単に説明しますね。魔物狩り演習では皆さんが組むパーティーに1人だけインストラクターが付きます。皆さんは今からパーティーを組んでいただき、そのパーティーに同行するインストラクターの希望を紙に書いて提出してもらいます。特に希望がないパーティーは空欄で大丈夫です。それでは、皆さん始めてください」


 その合図とともにクラスメイト達は椅子から立つと、瞬く間に移動してグループを作っていた。その様子からパーティーはもう決まっているようだ。後はインストラクターを誰にするかどうかを決めるだけの様だが、あらかた検討はついているのだろうか?なんか聞き耳立てていると名前が上がっていたりするし、既に有力なインストラクター情報は得ている様だ。めちゃめちゃ行動が早いな。さすがガチ勢。

 クラス内を観察していると、サリア、リナとシルフィアがやってきた。サリアたちの表情はやる気に満ちており、この魔物狩り演習に対するやる気が垣間見える。ピクニックかと思ったらギルドからの依頼だったことに残念さを感じている自分とは大反対だぞ。

 みんなで机を囲むと、リナがこの時を待っていましたと言わんばかりに意気揚々と話を始める。


「まずは、パーティーはサリア、カオリ、シルフィアと私のメンバーでいいよね?」

「おーけー」

「いいよ~」

「大丈夫です」

「それじゃ、パーティーはこれで決まりっと」


 流れる様にパーティーが結成されたことに素晴らしく涙した!だって、転移する前はお情けでパーティーに入れてもらう感じだったからな。その違いといえば感動レベルだ!って、まあ、休み時間は寝てたし、友達付き合いしてこなかったのが悪いんだけどね。でも、逆に言うと今回は友達付き合いが大成功を収めていると言うことだ!素晴らしいな!


「次は、パーティー名だけど...まだ考えてないよね?」


 え、パーティー名も考えないといけない感じ?何も考えてなかったからこれといった案は思いつかないけど、どうせ考えるなら響きがいい感じのものにしたいな~。あ、でも厨二的なものは止めておこう。あ、あいつら暗黒仮面騎士団だぜ~とか指さされながら言われた日には恥ずかしさで何もできなくなりそうだ。何としてもそれは阻止せねば。

 サリアとシルフィアは自分と同様にパーティー名に関して何も考えていなかったようで、思考を巡らせているようだ。ここは、リナの疑問形で聞いてきたことに甘んじて考えるのは後回しにするとしよう。


「そうだね、まだ考えてないから後にするのはどう?せっかくだし、時間かけていい名前にしたいかな」

「確かにその方がいいかも!それじゃ先にインストラクターを決めちゃおう」

「「「さんせ~い」」」

「私が集めた情報の中で一番良さそうな人はギルド所属のアンバーさん!人柄もよくてめちゃくちゃ腕も立つすごい人って評判だよ!」

「前にサリアちゃんが...お世話になってたって言ってた人ですね」

「その人なら安心してお願いできるね。でも、このリストに載ってるかなぁ?」


 サリアはアンバーさんについてある程度の情報を持っている。だからか、依頼で忙しいアンバーさんがインストラクターとして選べる中にはないのではと思っているようだ。


「いない...ね」

「いないですね」

「載ってないね」

「そ、それじゃ、気を取り直して2人目に良さそうな人は衛兵のザックさん!男の人だけど門番の長だけあって中々に強い人!気さくでかっこいいって評判だよ」


 おお、ザックさんか。色々お世話になっているし、お互い顔見知りの存在だ。人柄もいいし信頼できる人だ。


「ザックさんは確かにいい人だね。魔物狩りで街の外に出るときは一声かけてくれるし人当たりもいいよ。だけど、すごい人気がありそう」

「リナちゃんやサリアちゃんが言うならいい人なんでしょうけど...男の人は苦手なので...最終手段でお願いします」

「それなら、3人目によさそうなモリスさんもダメそうだね...」


 無性ひげがあるモリスさんも選ばれていたのか。親方気質なところはあるけど、いい人なのは間違いないな。ただまあ、女の子パーティーだし女性で固めたいところだ。そうでなければ、お互い気を遣って疲れてしまいそうだし。

 リナがチョイスした人選が中々にいい人たちだけど、女性がアンバーさんだけなのでどうしたものかなぁ...。自分を選ばせるか?第1候補で?それを自分で仕向けるのも何だか違うような気がするしなぁ。仕向けるなら第3候補くらいに書かせるのがいいよね。

 そう考えていると、サリアがリストにある名前を指さしながらリナに質問した。


「リナちゃん、この人について知ってる?このカオリさんっていうゴールドランクの人初めて聞くんだけど...ってどうしたのカオリちゃん?」


 サリアがいきなり自分の名前を口に出したのでビクついてしまった。確かにサリアたちに自分を選ばせるという使命があったのだが、自分が仕向けなくとも、早々に名前が出てきたことに驚いてしまった。もしかしてサリアは自分の思考を読んでる?ちょっと都合のよさを感じるけど、とりあえず静観しておこう。


「いや、何でもないヨ?」

「そう?それじゃ、リナちゃん何か情報掴んでる?」

「カオリさんについて?色々話は入ってきてるよ。何でも、オーガを1人で倒したりとか、1人で魔物の大群を封じ込めたとか...話のスケールが違いすぎて雲の上の人って感じ」


 ごめんなさい。その雲の上の人、目の前に居ます。すごい近い人です。


「そんな経歴だからか、めちゃくちゃゴールドランクに上がるのが早かったって聞いてるよ。あとは、女性だって話が多いね。色々すごすぎて何が本当か分からないよね」


 そう。その話は全て正しいこの自分が保証します。なんたって、この自分だからね...。


「あとはこの街で色々活躍しているって噂くらいしか分からないかな。サリアちゃん、その人が気になった?」

「カオリさんについて実績についての話は聞くんだけど、姿や内面がはっきりと分からない謎の人物だから気になって」

「サリアちゃん、私もそれ感じてたの!いろんな人に話を聞いても全然情報が出てこない。なのにみんな知ってるってすごい不思議だった!」


 まあ、基本的にソロでやってるから自分がどういう人か知らないんだろう。だけど、実績が派手だから名前だけが売れてる感じ?多分そんな感じだからリナの気持ちは分かる。


「でしょ?私も気になってたし、どうせなら選んでみたいなって思ってきたの。腕も確かだし悪い噂も聞かないから、私は悪くはないと思う。皆はどう?」

「私は賛成!」

「女性ですし得られるものも多くてよさそうです」


 中々に肯定的のようだ。ならば、この流れに乗るしかないな。


「自分もいいかな」

「それじゃ、みんなの反応もよさげだし、第1希望はカオリさんにしよう!」

「「「さんせ~い」」」


 というわけで、魔物狩り演習のインストラクターは、自分が流れを作るまでもなく、自然な流れで自分が第1候補となった。あまりの都合のいい展開に少し怖さを感じたぞ?

____________________________

 その後、あれやこれや話し合いつつやっと第3希望まで決まった。その後に待っていたのは、後回しにしていた地獄とも言えるパーティー名を決めることだ。それっぽい名前に落ち着くのに時間がかかるだろうなぁ。


「それじゃ、最後にパーティー名を決めよう!どういう名前がいい?かっこいいとか?」

「私は可愛いのがいいですね...お花から名前取ったりするのもいいかも」

「私は言葉の響きがいい感じがいいかな」

「自分はそれらしい名前の意味が込められてる感じがいいかも。長い事使う名前になりそうだし愛着の湧く名前にしたいかな」

「うーん、それだと私の案はダメそうだね...。ヴァルキリードライブとか語感は良かったんだけどな~」


 リナよ、確かに語感はとてもいい。だけどそれは版権に引っかかりそうだから駄目、って異世界だから特に関係はないのかな。


「花の名前からとって、かつ、可愛く語感のいい感じ...。あ~、あんまりいいの思いつかない~!」

「それなら、いつもの状況から発想を得るのはどうでしょうか...いつもカフェで純粋に楽しんでるとか?」

「それで言うと、陽気に買い物したりとか?」

「みんなと華麗に模擬戦したりとか?」

「カオリちゃんとの模擬戦って華麗な感じになってるのかな?」

「どちらかというと、遊んでもらっている感じかな?」

「でも、クラスの子から見ると剣舞みたいって言ってましたので...あながち間違いじゃないかも?」


 うーん。これに当てはまりそうなのは...。花から名前をとる...というとそれに込める意味としては花言葉だな。そうなると、当てはまりそうなのは...百合か!百合には確か純粋や華麗、陽気の花言葉あったし、これしかなくない?


「それに当てはまりそうなのはリリーかな?リリーが集まった集団って意味でリリーガーデンとか?」

「花言葉がすごいあってますね...!」

「語感もいいし!」

「可愛くてちょっぴりカッコいいし!」

「「「いいかも!」」」


 踏み台になればいいかなって安直な案を出したというのにすごい食いつきだ。予想外過ぎる。


「それじゃ、リリーガーデンで決まりでいい?」

「「「異議な~し」」」


 滅茶苦茶パーティー名決めるのに難航するかと思っていたのに、一瞬で決まってしまったので拍子抜けだ。こんな感じでパーティー名が決まったけどこれでいいのだろうか?なんか後から頭を抱えそうな気がする...。

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