63 リナが聞いてきた学園行事の噂話
(略しすぎています)
チャイムと共に昼休みが終了となった。
本来は午後から戦闘演習があるのだが、今日は特別でエルバ先生から教室での待機するようにと伝えられていた。そのため教室で待機をしているが、10分経っても先生が来ていない。まだまだ会議はダンス真っ最中なのだろうか?
クラスメイト達は先生が来ていないこともあり、自習の時と同じように自由に過ごしている。自分もそのうちの一人であり、サリア、リナ、シルフィアと一緒に駄弁っていた。
そんな中、リナが授業に関する話題を振ってきた。
「それでね、他の子から聞いたんだけど、5月ごろに魔物狩り演習があるんだって。みんなは知ってるよね?」
「「そんなのあったんだ」」
自分とサリアは同じタイミングで声を発した。サリアも知らなかったようで首をかしげている。
自分はギルドに所属してバリバリ魔物との戦闘を行っているので、授業で魔物狩りをしてもそこで得られるスキルは知れていると思って授業に関する情報収集はしていない。自分は勉学に対して意識高い系ではないのだ。授業の前情報を調べるくらいなら、学園内で一番快眠できる場所を調べているな。うん。
「それって4人組を作って...森で魔物を倒す演習ですか?」
「そうそれ!シルフィアちゃんは知ってるようだけど、カオリちゃんとサリアちゃんは本当に知らないの?あと1週間後にあるし、準備は大丈夫?」
「「え、それ本当??」」
「本当の話だよ!例年では戦闘能力評価期間が終わって1週間くらいたったら魔物狩り演習が始まるの。今年は日程が変わるかもしれないけど、それでも大きな日程の変化ないって噂だよ」
魔物狩りの準備に関しては、森に住んでいた時と同じくMSDを持っていけば済む話だ。戦闘服もあるし、問題ない。あ、でも短剣MSDは壊れているから買わなきゃだな。
驚いたのは準備期間が1週間という長さにではなく、入学してから1カ月と少しくらいの戦闘能力で魔物狩りへレッツゴーするというところだ。かなり無茶が過ぎないだろうか?クラスメイトの模擬戦を見ていたがその戦闘能力は、クソザコゴブリン単体を倒す事ができるくらいだぞ。複数体で囲まれれば絶対勝てないレベルだ。自殺しに行く様なものな気がするのだが、そんな戦闘能力で大丈夫か?なんか、「大丈夫だ、問題ない」というフラグ満載の幻聴が聞こえてきそうだ。
サリアもその点が少し気になったのか、リナに魔物狩り演習の具体的な内容について質問する。
「その演習でどんな魔物を討伐するの?危なくない?」
「聞いた話ではスライムとかゴブリンがメインって聞いたかな。あまり危険な魔物が出ない場所に行くらしいから安全なんだって。でも、時々ウルフとかの攻撃性の高い魔物が出るって聞いてる」
リナの言葉に付け足すようにシルフィアが言葉を続ける。
「去年は...危険な魔物が出て数名ほど生徒が怪我を負ったみたいです。でも怪我程度で済んだのは...演習に同行している先生方が魔物がやってくるのに気づいて...すぐに生徒の方に駆け付けたかららしいですよ」
「先生が同行してくれるんだ。それなら安心だね」
サリアはリナとシルフィアの説明を聞いて納得したようだが、自分はあまり納得できていない。
森の中では攻撃性の高いオーガに出会ったり、魔物の大群と戦ったりと魔物に関する危険で満ちている。いくら先生が目を光らせているとはいえ、クソ素早いゴブリン君や純粋に強いオーガなんかに出会った日には先生が駆け付ける前に全滅するだろう。
生徒を守る先生がパーティの数だけ同行してくれるのであれば、まだ安心できる。さらに、街を取り囲む壁の内側で魔物狩り演習を行ってくれると、めっちゃ安心してピクニック感覚で演習に臨めるんだけどな~。基本弱い魔物しか出ないし。
「そう!私が話したいのは、その演習に同行する人についてなの!ついさっき聞いた特ダネ!なんとね」
リナは近くに寄ってくるようにと手招きした。自分を含む3人はリナに近づいて耳を耳を貸す。
「今年は同行する人が増えて、班ごとに割り当てられるんだって。しかも、増員された人はギルドに所属していてシルバーランク以上の人たち!」
「「「おお」」」
サリアとシルフィアはリナの目論見通り驚いているようだ。
自分はサリアたちとは違って魔物狩り演習がピクニック感覚で行えるかもしれない事への期待からだ。何事にも対応してくれる人が一緒に同行してくれるんだ、安心さは半端ないだろう。ピクニック感覚で演習に臨めるとなれば、かなり気が休まることになる。面倒ごとが発生しまくって気が休まっていなかった自分にとっては気を休めるいいタイミングになるだろう。やっとのんびりできるな?
「それは頼もしいです...戦闘のコツとか教えてもらわないとです」
「シルフィアちゃん、驚くにはまだ早いよ!その人たち、もしかしたら指名できるかもしれないの!」
「「「おお(?)」」」
ん?誰を指名するんだ?えっと、リナはギルドのシルバーランク以上の人を指名できるって言ったような...。自分はギルドに所属していてしかもゴールドランク。なんか面倒な未来が見えるような見えないような...。と言うか、確実に面倒な未来が見える。さよなら、のんびりライフ。続くよ、面倒ライフ。
落胆を隠しつつサリアたちに目を配ると、単純に期待を感じているのか目を輝かせている。高ランクのギルドメンバーから戦闘技術を学ぶことができるいい機会ととらえているのだろう。
リナはまだ隠し持つ情報があるようで、さらに言葉を続ける。
「さらに、今年は壁の内側じゃなくて、外側の森なの!」
「「「おおおお(!?!?)」」」
外側の森、すなわち自分が住んでいた森の中と言うことだ。学園側は正気か?死人出ちゃうよ?
サリア達は、自分と違ってより実践的な手ほどきが受けられると思ってか中々にテンション高く反応している。魔物の危険性を少しでも知っているサリアも同じ反応なので、パーティーに割り当てられるギルドメンバーをかなり頼りにしているようだ。
確かにギルドメンバーのシルバーランクレベルとなれば強さはそこそこあるはずだ。実際、魔物討伐数が一定以上または特定の魔物の討伐がなければそのランクにはならないため、強さも経験もある。だが基本的にパーティーを組んで行動しているので、実質的にパーティーを組んでいる時の戦闘能力を表している。
パーティーを組んだこともない生徒たちと組むことになれば、基本シングルプレイしかできないので実質的な戦闘能力はシルバーランクより下、ブロンズランク相当と言うことも考えられる。戦闘能力が戦績によってある程度保証されているとはいえ、侮る事の出来ない森の中で初心者パーティーのお守を任せるには荷が重いと思うのは自分だけだろうか。
リナが発した言葉に面々が驚いているところに、少し疲れた感じのエルバ先生が教室に入ってきて言葉を発した。
「はーい、皆さん席についてくださ~い。連絡事項があります~」
どうやら、ダンシング会議で決まったことを伝えにきたようだ。のんびりライフにつながるような無いようだったらいいなぁ。そんなことを思いつつ自分の席へと戻り着席するのであった。