62 学園再開と情報整理
(略しすぎています。)
どうも、そろそろお昼時が来る時間ですが、学園の教室で机の上に突っ伏している銀髪ロリエルフになった者です。眠いのと若干気分が憂鬱です。あと、突っ伏し過ぎて腕が痛いです。
学園は戦闘能力評価期間の終盤で発生した魔物騒ぎで休校となっていたが、今日から再開とのことで生徒は続々と登校してきている。登校している生徒たちを見ていると、魔物騒ぎを気にしておらず、むしろネタのように受け止めているのか危機感を全く抱いていない。多分だけど、自分たち1年生は魔物と対峙した事がない人が多く、そもそも魔物の危険性を分かっていない感じで、他の学年は「魔物が出たってゴブリンだろ?www」的な軽い感じで流しているのだろう。ゴブリンだって強いよ?スレイヤーさんでも苦戦するよ?
一方で、先生方の方は他国から留学生の面倒を見ている立場であり外交問題に発展しかねない問題に、危機感を感じまくっているようだ。先生たちは会議に会議を重ねているとのことで、今も会議真っ最中といったところ。でも、生徒には何も伝達されてないところから、具体案が決まっていないのだろう。その会議、みんな踊ってない?パーリーピーポーエブリデーしてない?
そのため、今日は午前中に予定されていた授業は全て自習に置き換わっている。クラスの皆は勉強熱心なところがあるのか、講義で使う本を開いて流し読みしたり魔物に関する情報交換をしているようだ。魔物がどうのこうのと話しているのでそう言うことなのだろう。
サリア、リナとシルフィアの3人は席を立って、それぞれクラスメイト達と話しているようだ。何を話しているのか聞こえてこないのだけど、内容は多分変わらない感じなのだと思う。
かく言う自分は微動だにせず突っ伏しているので、周りには睡眠学習をしていると映っているだろう。それを見てサリアたちも気を遣ってくれているのか、声をかけてきていない。
実際のところは睡眠学習ではなく昨日の出来事や魔物騒ぎで分かったことなどの情報を整理している。窓から差し込む光とちょうどいい室温に誘われて寝ているわけではないのだよ。こちとら、イベント盛りだくさんでその情報整理に追われ続けた結果、昨晩は眠れなくなって絶賛寝不足だよ。しかも、最終的な結論がまとまらずにグルグルと思考だけが回転し続けて永久機関完成しちゃってるよ?
そのぐるぐると回転する思考の中心には、「街中での魔物大量発生や学園の魔物騒ぎをなぜ起こそうと考えが至ったのか」と言う謎がある。
この2つの事件には闇魔法と魔物の共通点があり同一の集団が2つの事件を起こしたものと考えている。闇魔法に関しては世間一般的に認知されていない魔法であり、歴史から消されたほどの属性魔法だ。そんな超レア級の魔法を使っているとなれば同一の集団による犯行とみて間違いないということだ。
さらに、街中での魔物発生について、昨日行った森での調査で円形に植物が謎に生えていない謎な場所が新たに多数見つけた。それぞれに重そうな装置を設置・運搬したと思われるので大規模に人員を動員して事件を起こしたものと考えていいだろう。
こんな感じで、謎の団体と事件との関連性や、事件のからくりが明らかになってきた。ただ、明らかになっていないものがある。それは背景と目的だ。これを分かったならば、事件に巻き込まれないように前もって回避することができるので、素晴らしきスローライフを送る事ができるだろう。長閑な学園生活を過ごしたい自分としては是非とも明確にしておきたいところなのだ。
一連の事件を起こした目的についてわかる事と言えば、その目的が謎の団体にとってかなり重要なものであるということだ。大規模に動員して事件を起こすには表の世界で活動を余儀なくされることから団体が明るみに出るリスクを負う。だが、実際のところは大規模に動いていることから、少々のリスクを冒してでも成し遂げたかった事があったということになり、目的が重要なものであるということになる。
ではその成し得たかったこととは一体何だったのだろうか。自分はそれをずっと考えているものの、結論が出ていない。
魔物を発生させてこの街に被害を出すことが目的ならば学園で多く被害を出せばいい話である。大量の人員を動員するほど計画的に動けるのだから、魔物の異常発生を長期間持続させることが容易にできるだろう。だが、現状はそうなっていない。全てが中途半端で終わっている。
この街の住人に魔物へ注意を向けさせることが目的ならばそれはそれで成功していると思う。実際、学園の生徒でさえ魔物に対する関心を抱いている。街の住人なら猶更関心を持っているだろう。だが、それならなぜ街の中心部で事を起こさななかったのだろうか。その方が注意を向けさせることが容易だろうに。
こんな感じで、色々考えていてもしっくり来ていない。事件の規模が規模だけに「魔物の異常発生を生じさせて何かしたい事がある」と言う事に焦点を当てて考えることは間違いないと思うんだけどなぁ...。もう一回考えるかぁ?と言う感じに、無限ループを繰り返しまくっており、到底このループから脱出できそうにない。
もうしかして、今わかる現状ってここまでなのかな?そうだとするとこれ以上考えたところで無駄の極みだ。考えるのも飽きてきたし、やめるか。それに、机に突っ伏していると腕が痛くなってきてそろそろ限界が来ているし、思考を止めるにはちょうどいいタイミングだ。
上体を起こし、同じ姿勢で凝り固まった筋肉をほぐすために腕を天井に伸ばして体を伸ばす。
「ん~~~っ」
腕を下ろすと、よほど血行が悪かったのか一気に血液が染み渡るような感覚を覚える。この感じだと、額に寝た跡がついているよなぁ。なんか恥ずかしいから前髪で隠しておこう。
前髪を整えた後、瞼をゆっくりと開いて一呼吸する。明るさに慣れない目でまぶしさを感じながら周囲を見渡すと、クラス内は今も歓談していたり自習したりしていた。その光景を見ていると、各々がのんびりしている雰囲気と適度なざわめきが前の世界の自習の雰囲気と変わらないように感じてきた。これがテスト前となれば話は別になるのだろうが。
「(変わらないものねぇ...)」
窓の外に視線を向けて元居た世界と変わらずゆっくりと流れる雲を見ながら、宛て先のない呟きを発して今までの事を振り返ってみる。
転生してから色々あって生活も大きく変わった。家が無いところからスタートして野宿したり、魔法を使ったり、魔物をポコしたり、何より銀髪ロリエルフになったり。前の世界からの変化に驚くばかりだ。
それに引きつられて自分も大きく変化したと感じる。特に精神が。初めはレースフリフリの純白おパンツを履くのかと血反吐を履いていたように思うが今は慣れてきている。男としての精神は今や遠くに離れて今にも天に召されそうだ。男の精神回復してね?そうでないとアイデンティティ崩壊しちゃうよ?あっ、でも絶賛女の子だし回復するタイミングがない...これは詰みでは?。オワタ。
この世界でも変わっていない事と言えば...なんだろう?睡眠とかのんびりライフへの欲求?。変わった者が多すぎて変わらないものが見つからないレベルだな。
ある日の1日で言うと、元居た世界では朝教室に着くと昨日やっていたドラマの話題やらゲームの進捗がどうのこうのでにぎやかさを感じながら寝たり、昼になると教室を抜け出して屋上で流れる雲を見つつ昼ご飯を食べたてのんびりしたり、夕方に静かになった教室で起きると謎の寂寥感を感じたり...ってよく考えなくともかなりのボッチだな?
それに比べて今の世界では、朝教室に着くとサリアたちと会話して、昼は一緒にご飯を食べ、夕方には近場のカフェでお茶会開いたり...めっちゃエンジョイしてるじゃんこれ。マジで前の世界の原型無くて同一人物とは思えないなガハハ。
転生によって変わらないものが無いレベルで変化してアイデンティティが崩壊しかかっているが、案外悪くないとも感じている。それはやっぱり、学園の友達であるサリアたち、学園外の気さくに話せるミカさんやザックさんなどなど、人とのつながりが充実しているからなのだろうな。孤独な生活を続けた自分としてはかなり忙しくて仕方ないがそれでも、楽しい生活を過ごせている。この繋がりを大切にしていかなきゃな。
流れる雲を追うのを止めて、視線を教室に戻す。すると程なくしてチャイムが鳴り、昼休みが始まることをを告げた。その時、ケモミミが生えているクラスメイトは自然とチャイムの鳴るスピーカーの方に耳を向けた。
うおおおおケモミミが一斉に同じ動きをしている。眠気や憂鬱な気分も吹き飛ぶほどに感動的だぁ...。これは前の世界では体験できない素晴らしい光景!アニメの中でしか見れなかった貴重な光景だっ!一斉に動き始めるものの、慣性でふさふさの毛が動き終わるのが微妙に違う点もいい!
それに前の世界から変わらないものを今見つけた!それは、オタクの血だっ!うおおおおケモミミ尊いマジ最高!
顔に出ないように注意しつつ、心の中で涙を流しながら感激しているとサリアが横から話しかけてきた。
「どうしたの?カオリちゃん、何かいいことあった?」
「ひゃっいなんでしょうか?」
普通に驚いたので無駄に背筋をピンと立ててかしこまってしまった。サリアよ、ちょっとオタクの血が騒いでいるだけなので何もないですはい。顔に出てたかな?ポーカーフェイスもまだまだ修行が足りないようだ。
「そんなに驚くなんて、いいこと考えてたんでしょ~」
本当の事を言う訳にもいかないので、少し誤魔化したことを言っておく。
「ないない。やっとお昼ごはんだな~と思ったくらい」
「カオリちゃんは食べるの好きだもんね~」
何かといいタイミングでお腹が鳴りすぎて食いしん坊キャラになっていないか?自分。サリアの中で自分はどういう風に思われているのか時々心配になるぞ?
「ちなみに、今日の昼ごはんはハンバーグ?」
「今日は鳥の香草焼きだよ」
「香草焼き...おいしそう!1つ分けてくれる?」
「いいよ、いつも通りサリアのおかず1つと交換ね」
「やった!」
サリアが喜んでいるところにリナとシルフィアがやってきた。
「くっ、今日はサリアちゃんの方が早かったかぁ」
「リナちゃん...これで5連敗ですね」
「カオリちゃんのお弁当おかず交換でこのサリアさんに勝てるとでも?」
「っむむむ!次は絶対勝つよっ!」
謎のおかず交換先約バトルが勃発してお昼ご飯の会が開始されるのだった。
のんびりと空を眺めながら昼食もいいが、わちゃわちゃとみんなで食べるのもいい。今日はそういう風に思いつつ時折笑いながらランチタイムを過ごした。