6 ギルド証と魔力と魔石の買取と
「魔力に属性が無い、と言いますと?」
身分証代わりであるギルド証の発行の手続きが終わった際に受付嬢のミカさんからの一言が気になった。なので、詳しい話をしてもらうことにした。瀕死のミカさんに。
普通の人は魔力に6大元素である、「風」「水」「火」「土」「雷」「光」のどれか一つの属性がついており、魔力の属性である系統の魔法は威力が上がったり発動が容易となるらしい。
「そうよ、属性魔法を極めたおかげで戦闘が楽になったって聞くわ。それでね、ごく稀に魔力の属性が無い子がいるの」
話を聞いていくと、魔力の属性が無い子は全属性の魔法を発動することが難しいらしい。しかし、魔法の効果や威力の割には魔力の消費量が少ないとのことだ。無属性の人がほとんどいないのもあり、無属性であることのメリットデメリットはこのくらいしか判明していないとのことだ。
「ところで、光属性の反対のような闇属性って無いんですか?」
「闇属性はは無いわね。少なくとも私は聞いたことないですね。でも、大昔には闇属性も存在したそうですよ。」
「大昔にはあったんですか」
「ええ、遺跡の調査に同行していたギルドの方に聞いたからなかなかの確度の情報ですよ」
遺跡を調査するとなぜ闇属性が消えたのか分かりそうではあるけれど、ミカさんに聞いても知らないようだ。話を聞いたミカさんも場所と名前を知らないあたり、調査に同行していたメンバーは強く口止めされているのだろう。何か裏がありそうであるが、情報がなさすぎて調査のしようがないのでお手上げである。差し迫って調査の必要が無いので放置でいいかな。
とりあえず無属性であると魔法の扱いが難しいということだけ頭に置いておくとする。魔法を使いまくった結果、稀な無属性の魔力保持者であることがばれて、モルモットされかねない。なので、人目の付く場所での魔法の使用はできるだけ控えることにしよう。
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一通り話が聞けたので礼を言う。
「ミカさん、情報ありがとうございました。しばらくこのギルドでお世話になると思いますのでよろしくお願いします。」
「カオリちゃん、こちらこそよろしくおねがいしますね」
ちょっと時間がたったけど、まだサリアは掲示板の前にいるだろうか。掲示板のあたりを見ると何やら考え込んでいるサリアの姿が見えたので、声をかけにとてとて移動する。カウンターでは誰かが倒れたような気がするがもはや気にするまい。ロリが移動する姿ってそんなにいい物ですかね?自分にはよくわからない。
「サリアー終わったよ。」
「あ、カオリちゃん。ギルド証の発行終わったんだね!これから魔石の買取について説明しようと思って待ってたんだ」
「ほんとに?ありがとう。でも、あの魔石はもう買い取ってもらってないんだ」
「大丈夫、私の分があるから。ついてきて!便利な方法教えてあげる!」
サリアは神か何かかな?くそ優しいんだが。
サリアに導かれカウンターの左横にあるATMのような機械の前に来た。本当にATMライクな感じで、タッチパネルで操作をするようになっており、魔石投入口やお金を引き出すところがある。
「ここで自動的に魔石の買取をやってるの。やる手順を見せるから見ててね」
機械の前にギルド証をかざしてから、魔石買取の欄をタップすると魔石投入口が開き投入して待つだけである。みたところ、投入された魔石は自動的に鑑定されて相場の金額がギルド証に紐づいた口座にお金が自動的に振り込まれるらしい。いたってシンプルである。ここまで自動化が進んでいるとは思わなかった。
「手順少なくて、早いしすごく便利だねこれ」
「そうでしょ、私もカウンターが混んでるときに使用したりしてるよ。あと、お金を預けたり引き出したりできるから使ってみてね」
「サリア、ありがとう」
身分証も発行できてお金も手に入り説明も一区切りついたからか、ちょっと気が抜けたからか、ぐ~。自分のお腹が鳴る。そういえば、転生してから今まで何も食べていなかったな。そう自覚するとだんだんお腹が減ってきた。
「ぷっ、いいお腹の鳴りっぷりね。出会ったのも何かの縁だし、これから一緒に晩ご飯食べに行かない?」
「是非ともお願いします。///」
他の人がいる前でお腹が鳴るのはなんとも恥ずかしい限りである。
この後、サリアに誘われて異世界料理を堪能してる最中に受付嬢のミカさんが乱入してきたのはまた別のお話。
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それにしてもどうしたものか、宿を借りようにもお金がない。食事を済ませてサリアとミカさんと別れた直後の事である。食後ということもあって、少ない手持ちがさらにない。魔石を買い取ってもらった3000ゴールドの半分を食事に使ってしまったからである。どう考えても1500ゴールドで泊めてくれるところはないだろう。
サリアからは食事中に難民が集まるキャンプ的なところに向かうと雨風しのげるところ貰えるよとのことだったが、幼い少女(外見だけ)が独り身で防犯的にどうなのとか、知らない人と肩身を寄せ合って寝るのはどうなのと、勝手な想像もあって行かないことにした。
「んーどうしようかなぁー。ギルドの休憩所的なところで休むかなぁ」
とも思ってはいるが、夜となっては人が減ってしまっているだろうし出入りするギルドメンバーが物騒な人だった場合はとても物騒ではある。なので、野宿ということになるとは思うけど街の外は魔物だらけでおちおち寝れたものではない。
ん?
「そういえば、太陽が出てる最中は魔物の数が少なかったような?魔物を狩って魔石を売ればお金になるし夜は魔物がり、昼は森で寝るとかいいのでは??」
今はギルドを出入りする人についてよくわかっておらず信用ができない。街の中は、ギルドよりも危険だろうと勝手に思っている。ならば、昼間は気楽に過ごせそうな森の中がいいのでは?。
「あとはトイレさえどうにかなれば...」
smallの方は甘い香りを漂わせるとして、bigの方は穴を掘って埋める羽目になるだろう。極限野宿生活ではあるが、トイレットペーパーみたいなものを自身の能力で生成すればなんとかなる気がする。かなり多くの精神的な何かを失う気がするけれど、より快適な生活を目指すためである。致し方なし。覚悟が決まれば後はやるだけ。
「えいえいおー↓」
やはり、トイレ問題は深刻に思う。