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56 少しの休息と怪しい4人組について1

(略しすぎています)

「かおりちゃああああん!怪我無いですか?痛いところとかは?具合が悪かったりもない???」

「いででででで」


 ギルドの受付嬢であるミカさんにあやしい4人の人影について聞こうと声をかけたのだが、だいしゅきホールドを食らって絶賛絞殺されそうになっている、銀髪ロリエルフになった者です。普通に現在進行形で自分の体が痛いです。聞き込みどころの話ではないです!


「大丈夫?大丈夫そうね!」

「はえ?、え?」


 一瞬だけだいしゅきホールドから解放される。だだ、それも一瞬で間抜けな回答をするや否や、ミカさんに両腕でしっかりと頭をホールドされ、胸の谷間に収納される。


「カオリちゃんが住んでる地域で魔物の大群が出現してたんので心配していたんですよおおおおおおおお」

「むごむむ!むごご、ごむむむ」


 ミカさん!胸の間に押し付けないでええええ、息が、息がああああ!これ、がっちりホールドされて振りほどけないし!やばい、もう息が続かいない!あっ、でも柔らかなものに顔を包まれて気分が落ち着くな...加えてだんだんと視界が白くなっていく...それに、どこか優しい柔らかな香りが鼻腔をくすぐって幸せな気分にもなる。ああ、体が脱力してうごかないな。これって天国へ向かっている感じですかね?


「むごご...ご........」

「カオリちゃん?カオリちゃん、死んじゃダメええ!」


 それを見ているギルドの人たちから、小声で「カオリちゃん、R.I.P.」と同情を貰うような言葉を貰った。同情するなら助けてくれない?でも、今は幸せだし、まあいいかぁ。


 だんだんと慌てふためくミカさんの声が遠くなり、意識は白一色に染まった。

____________________

「ここは...?見知った天上...?」


 意識が浮上すると、ギルドにある食堂の天井が目に入った。どうやら天国には向かっていなかったらしい。

 周囲はテーブルを立てたもので覆われており、ちょっとした個室と化している。場所的に椅子の上に横になっているのだろう。だが、単純に横たわっているのではない感覚を覚えている。。

 逆光で見えないが、視界には双丘の影が映り、頭の感触は柔らかなもの上に乗っているような感覚だ。頭頂には手が乗っかっており、さするような動きがどこか心地いい。さらに、鼻呼吸するたびに感じるミカさんとは異なるフローラル香り。三途の川の向こうの花畑はここだった?三途の向こう側で膝枕されている状態で起きるとか、どれだけ善行を詰んだんだ自分は。

 

「あ、カオリちゃん起きた?」


 言葉を投げかけつつ、顔を覗き込んできたのはサリアだった。その表情はどこか安心した柔らかなものだった。


「ん?サリア?」

「そうだよ~サリアだよ~おはよう、カオリちゃん」

「サリアおはよう。でも、サリアさんはどうして自分を膝枕しているんでしょう?」

「それはねぇ、依頼報告でギルドに寄ったら、カオリちゃんがミカさんの腕の中で息絶えるシーンだったから?」

「どうして疑問形?あと、ちょっと感動的なシーンっぽい表現だけど、あれ、そういうのじゃないからね?」

「そうなの?扉開けたらヒロインが主人公の腕の中で息絶えるシーンのままだったからてっきりそうかと」

「それが実際は心配100%が織りなす胸中絞殺術でした(白目)。それはそうと、当のミカさんは?」

「カオリちゃんを私に託した後、他のギルドの受付嬢に両脇を抱えられて連行されていったよ。その後は見てないからカウンター奥で作業しているんじゃないかなぁ」

「そうかぁ。ミカさんに聞きたいことがあったんだけど、作業しているなら時間空けて行こうか」


 サリアの膝枕が心地よ過ぎてずっと今の状態で居たいが、サリアも大変だろうし起き上がるか。

 上体を起こしてサリアの膝の上から離れると、サリアが少し名残惜しそうな声をかすかに漏らしたのが聞こえた。もしかしてまだ膝枕をしてくれるつもりだったのかな?もしそうなら膝枕続行と行きたいところだが、起き上がった手前、再び膝枕をしてもらうのは気が引ける。ん~残念だ。


「もう起き上がって平気?」

「もう大丈夫。膝枕ありがとう」

「どういたしまして。ふぁあああ。なんか、カオリちゃんが起きたら急に眠くなってきたっ、ん~~~っ」


 サリアは体を伸ばして覚醒を促そうとするが、瞼は今にも閉じようとしている。かなり眠そうだ。急ぐ用事もないし、あやしい4人組についてはいつ聞き込みを行っても同じだろう。今は膝枕してくれたお礼に膝枕をするとしよう。


「サリア、眠いなら膝貸するよ~」


 自分の膝をポンポンと叩いて、膝枕する意思を伝える。サリアはそれを見て、微笑を浮かべつつ感謝の意を伝えた。


「ありがとう、カオリちゃん...もう限界だからそうするね~」


 そう言うと、サリアは並べた椅子の上に横たわり、自分の膝の上に頭を乗せると静かに目を閉じて寝息を立て始めた。超絶寝始めるのが早いな。もしかして、徹夜だったのかな?ギルドの依頼報告って言っていたし。


 横たわって寝ているサリアの服装を見てみると所々土や木の葉が衣服とすれた後が残っており、戦闘があった後である事が見て取れる。と言うことは、昨日の魔物の大量発生の対応に当たっていた感じか。そりゃ徹夜にもなるし、疲れもするな。

 そんな中、寝ずに膝枕していてくれたのが申し訳なく思ってくる。全然寝てくれてもよかったのに。


 寝息を立てるサリアの顔に視線を移す。その自然な寝顔はなんか可愛いくてずっと眺めていたくなる。

 手が少し手持無沙汰なのもあったのでサリアがしてくれていたように頭を撫でると、気持ちよさそうな寝顔になり、自分もほっこりしてこの寝顔をもっと見たくなった。


「なるほど、そりゃ寝ずに膝枕をしたくなるわけだ」


 しばらくの間サリアを膝枕して頭をなで続けるのであった。

_____________________________

 昼の鐘が鳴ると同時にサリアは目を覚まして上体を起こした。

 サリアの頭が膝から離れて心地よさげな表情を見る事ができなくなったことに少しの残念さを感じた。サリアはこの気持ちを感じていたのかと納得をしているところに、当のサリアが小さな声を出す。


「ん。私、膝枕されてる...?」

「あ、起きた?おはよう」

「おはよう、カオリちゃん。私どれくらい寝てた?」

「3時間くらいかな?」

「さ、3時間も寝てたの?」

「そりゃもうぐっすりと。幸せそうな寝顔だったよ」

「っ~~なんかそう言われると恥ずかしい。でも、カオリちゃんがずっと膝枕してくれてたおかげですっきりした。ありがとう」

「どういたしまして」


 サリアに返事したところで、パーテーション代わりのテーブルからの隙間から視線を感じる。気配を消しつつも抑えることができないロリへの愛を感じる視線はミカさんかな?


「ミカさん、おはようございます」


 どうやらミカさんで正解だったようで、ミカさんは顔を出して姿を見せた。


「あぁ、ばれてしまいましたか。尊い空間に私の精神は浄化されて声すらも発することを忘れていました」

「その割には熱視線を感じたり、鼻血が流れまくった跡がありますが...」

「ミカさんブレないなぁ...」

 

 サリアは呆れるような声を出しやれやれとお手上げのポーズしたが、ミカさんはサムズアップをしてそれに答えた。言外にそれが人生と言っていそうだ。


「それで、ミカさんがここに来たということは買取が終了した感じですか?」

「そうですね買取が完了しましたので、それの報告と確認に。それとカオリちゃんの具合を見にと言ったところです。カオリちゃん、先ほどはすみませんでした。具合の方は大丈夫ですか?」

「はい、もう大丈夫です。元気元気です」

「それならよかったです。てっきり天国へ送ってしまったのかと思って心配しました。反省反省~。それでは、買取科料に関するこちらの書類にサインをお願いします。サリアちゃんも買取が完了しているのでこちらにサインをお願いしますね」

 

 サリアと自分はミカさんから書類を渡された。そこには討伐数と買取金額、買取金額の詳細欄が並んでいた。


 買取が完了した魔石は約3000個であり提示されている買取金額は約600万ゴールドだ。一個当たり2000ゴールドくらいか。相場の単価2500ゴールドくらいなので、買取単価は低い。品質が悪かったり魔石が小さかったのが理由だろう。納得だな。

 提示された金額に納得してサインをして返却した。サリアも納得してサインを書いたようだ。


「2人とも緊急の魔物討伐、お疲れさまでした。疲れているところですが、キースさんが2人に聞きたいことがあるようです。お時間大丈夫ですか?」

「ギルド長がですか?自分は大丈夫です。サリアは?」

「私も大丈夫。でも、ギルド長がわざわざ聞きたい事って何かな?」


 ミカさんはサリアの独り言のような言葉を拾い、その疑問に対して答えた。


「魔物の異常発生した地域で魔物討伐をしていて気づいたことをキースさんご自身で聞きたいそうです。ギルド長がこのようなことをなさるのは初めてなのでよほど重要な案件なのでしょう」

「その地域で魔物発生以外の何かがあったとかかな?うーん。わからないなぁ」


 サリアは今一ピンと来ていないようだが、自分はおよその検討がついている。

 それは、ゲセスターと関わりのある闇の魔法を行使する集団だ。魔石に含まれていたごくわずかな闇魔力から、その集団が今回の魔物の大量発生を引き起こしたと考えている。恐らくギルド長もそのように思っているのだろう。

 キースさんはこの集団に関わらない方針で動こうとしていたが、街中での大規模な事案が発生したために見過ごすことができないのだろう。それが、ギルド長としての立場よりも上からの指示なのか、それとも本人の判断なのかは不明だが、何にせよ関わり方を変える必要があると判断したのだと思う。

_____________________

 自分とサリアはミカさんに連れられてキースさんの執務室へ移動した。キースさんは窓際にある横長のテーブルではなく、部屋の中央にあるテーブルを取り囲むソファーに座っていた。こちらに顔を向けて入室対応をするキースさんの雰囲気は少しピリついており、この件について重く受け止めていることがうかがえた。


 ミカさんは自分たちを執務室に送り届けると、一礼して退出する。残された自分とサリアは部屋の出入り口前でそれを見送った後、キースさんの方を向いた。キースさんは自分とサリアがこちらを向いたのを確認して言葉を発した。


「カオリちゃん、サリアちゃん。魔物討伐ご苦労だった。少し話をするからここに座ってくれるか?」


 キースさんに促され、自分とサリアは返事をしてキースさんの対面にあるソファーに腰掛ける。それを見たキースさんは一呼吸おいて話し始めた。


「2人も分かっているとは思うが、今回の街中での魔物異常発生は異例だ。そこで、この街を守る長の一員として私はこの件に関する情報を集めている。2人は何か気になった点はないか?」


 色々キースさんに話して意見を貰いたい話があるが、サリアにはこの件に深く関わってほしくないため、深い話はできないな。例えば、魔物大量発生中にやってきた4人組についてとか、魔石にごく僅かに闇属性の魔力が入っているとか。この辺を話すとかなりこの件に深くかかわってしまいそうなので、キースさんが既に聞いているようなことだけを話すとするか。


「役に立つ情報か分かりませんが、自分は気になった点が1点あります。それは魔物が何らかの目的を持って移動または攻撃をしているように感じた点です」

「ほう、もっと詳細に話してくれるか?」

「魔物は魔物の上位個体を除いて統率されていません。そのため魔物が移動する方向はランダムとなるのはご存じかと思います。しかし、今回の件では建物、人に向かって集まってきているように感じました」

「やっぱりカオリちゃんもそう思う?私も魔物たちは家や人に向かってやってきているように感じました」

「やはりか。実はこの件に関わった他のギルドメンバーにも話を聞いているが全員がそういう証言をしている。そうなると事態はますます深刻だな。他にはないか?」

「私は魔物とは違うんですけど、気になる人を見かけました。」

「ほう、気になる人か。サリアちゃん続けてくれるかな?」

「はい、魔物の大量発生を知らせる警報が鳴ってから2時間くらい経過した時でしょうか?従者の悪態をつきながら街の方面へ向かう4人組を見かけました。従者の様な3人は手練れの様な雰囲気でしたけど、悪態をついていた1人は素人の様な感じでした」


 ちょっと待て、それって魔物の大量発生中にわざわざ自分家の前まで来ていた不審者4人組なのでは?サリアがどこで見かけたのか不明だが、その可能性が高いな。


「ほう。4人組か。ちなみにこの地図の上だとどこらへんだ?」


 キースさんはテーブルの上に地図を置いた。サリアは地図上の自分がよく利用する最寄り駅から歩いて30分程度離れた点を指さした。


「この辺だったと思います。4人組は街の方向へに向かっていましたが、駅とは少し離れた方向でした」


 サリアが指さした場所は、自分の家の森を抜けて少し歩いた場所にある周りが農地で囲まれている場所だ。


「ふむ。確か、同じ区域で討伐していたギルドメンバーも同様な事を言っていたか?」


 キースさんは思い出すように地図上の点を指さしていく。すると、森の周囲を囲むように移動してから街へ帰っていく経路が見えた。なんでそんな経路辿っているんだ?シンプルに謎だな。


「ふむ。冒険者が魔物の討伐に失敗して帰るというような経路とは思えないな...。サリアちゃん、情報ありがとう。他に気になることはないか?」

「自分からはないです」

「私からもないです」

「それならば、以上で私からの話は終わりだ。カオリちゃんとサリアちゃんの情報提供感謝する。魔物討伐で疲れが溜まっているだろうから、ゆっくり休むといい」


 キースさんはソファーから立ち上がりつつ、柔らかな表情でねぎらいの言葉を発した。こちらもそれに応じてソファーから立ち上がって言葉を返した。


「お気遣いありがとうございます。今日はゆっくりと休もうかと思います」

「私もそうします」


 自分とサリアはキースさんの執務室から退出した。ドアを閉める間際にキースさんを見ると、キースさん表情は硬く、視線の先には地図があった。

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