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55 朝方やってきた人たち

(略しすぎています)

「ぐっすりと寝たなぁ...ん~~っ、はぁ~」


 けだるげな体を起こし腕を伸ばして覚醒を促すが、体の方は寝足りないようで体が重い。感覚的にあと5時間は欲しいところ。それか、お風呂にでも入って溶けていようか?

 部屋は窓から入る朝焼けで照らされてかなり明るい。時計を見るとまだ5時くらいだ。いつもよりもかなり早く起きてしまった。

  

「あ、そういえばお風呂入っていないじゃん」


 昨日はあまりの眠さに速攻でベッドインして汗を流さないままだった。そのため、肌がべたついているし髪の艶もなくボサボサだ。お風呂に入ったほうがいいだろう。というかお風呂に入りたい!疲れた体に効くとか言っていたバスボムを入れて浴槽の中で溶けていたい!そうと決まればお風呂に行こう。そうしよう!


 ベッドから立とうとして視線を動かすと、脱ぎ捨てた軍服ワンピースやら靴下やらが床に転がっているのが目に入った。


「あ~...。洗わないとなぁ。着る服が白ワンピースしかなくなる」


 軍服ワンピースのほかに唯一持っている服は白ワンピースなのだが、解放感を感じすぎるので、外となると色々な意味で視線からの防御力が心配だ。その防御力の低さから、どこぞの受付嬢が鼻血を噴出しかねない。


「しょうがないから洗濯物はお風呂のついでに洗うか~。気を取り直して、おっ風呂~」


 ルンルンで靴下やら投げ捨てられた下着やらを拾っていると、大規模な何かがこちらに向かってくるような感覚を感じた。


「ん?嫌な予感がするのはなぜだろう」


 魔力を飛ばして家周辺だけでなく、広範囲の状況を詳細に把握する。

 家の周辺には...魔物はもうほとんどいないようだな。そいつはgood。この家が更地になる危険性がほぼなくなったのはいい事だ。と言うことはさらに遠い場所からの反応か?

 範囲を広げると...家から2kmくらい離れた場所に20人いる。その集団が動く方向には...自分の家しかないな。と言うことは自分に用がある感じで、暢気にお風呂に入っている暇は無くなる...よね。そのままのペースで来ると25分くらいで着くだろうし、のんびりしていられないな。


「あぁ、朝風呂が恋しい。ゆっくりとした朝の時間を過ごそうと思っていたのに~~」


 新しい下着や靴下を取り出し、脱ぎ捨てた衣服と共にダッシュで洗面所へと向かう。

 洗面所に着くと洗濯籠に洗濯物を入れ、洗顔したり髪を整えたり歯を磨いたりして身支度を整える。超速で整える。いつもの3倍くらい焦って整える。


 寝間着を脱ぎ、新しい下着や靴下を履いて軍服ワンピースに袖を通す。汗臭くないかと服をクンカクンカしても、フローラルな香りしかしてこない。うん。いつもの謎だ。まあ、刺激臭していないからヨシと言うことで(謎)。


 身だしなみが突貫工事ながらも外に出ていけるレベルに整ったので最終チェックもかねて鏡を見る。


「これでいい感じ?」


 鏡に映る銀髪ロリエルフの身だしなみはいい感じだ。髪のハネは無いし、皮膚に油が浮いていることもないし、服装も乱れていない。これで問題なく対応できるな。

 そう安心した時、頭頂からアホ毛が誕生した。


「急いでいるときにアホ毛爆誕しないでえええええ!」


 治らない寝癖との戦いを少しの間繰り広げるのであった。

_____________________________

 アホ毛との悪戦苦闘もあり20分くらい身支度に時間を要した後、謎の集団を出迎えに門柱の方へ歩いて向かう。


 周囲は昨日の戦闘が嘘みたいに静かになり、風で木の葉がすれる音しかしない。素晴らしく良い朝だ。面倒な人たちを相手しなくてよいならばどれだけ良い朝だったか...。のんびりライフを返してほしいよ。


 集団より早く正面ゲートに着いたので結界の外で待っていると、遠くに集団でやってくる人が見えた。その中でかなりの若い男がこちらへ駆けてくる。

 身なりを見るに、MSDっぽい槍と防御力が高そうなしっかりとした素材で作られた装備を身に纏っている。装備は高価な感じが伝わってくるが、そんな重そうな装備はあまり冒険者は好まない。となると...衛兵か?


「どうもおはようございます。この家に住むカオリです。ご用件は?」

「ここに強い魔力反応がある!目的はなんだ?この街のせん滅か?国家転覆の準備か?」


 は、はぁ?いきなり何を言っているんだ?なんにせよ、こういう人は相手の意見も聞かずに自分の意見を通したがる面倒くさい人だ。というかこのやり取り、前もあったよな?

 加えて、持っていた槍をこちらに向けて構えている。かなり好戦的で困るんだが、そもそも戦うのだったらこちらに駆けてくる前に魔法でも打てばいいと思うのだが...。功でも焦っているのか?


 やれやれと諦めモードで人畜無害アピールをするため両手を挙げて戦う意思が無い事を伝えつつ、魔力反応について心当たりがあったので伝える。


「その反応は魔物からドロップした魔石でしょう。それより、ザックさんはいますか?」

「は?ザック隊長だと?」

「呼んだか?」

「うわああああああ!!」

「なにがうわあああだ。勝手に動くなと言っただろう」


 コントかな?(2回目)。ザックさんは若い男に拳骨をくらわせて後ろに下がらせた。


「久しぶりだな、カオリちゃん。ちょうど一カ月くらいか?」 

「ザックさんお久しぶりです。そうですねその節はお世話になりました。今日はどういったご用件で?」

「実はこの周辺に魔力反応があってその確認に来たんだ。カオリちゃんがいると言うことは今回も大量の魔石だろう?」

「そうです、今回も大量の魔石です。また地獄を見ました」

「昨晩は魔物が大量発生していたからそりゃ地獄を見るだろう。見たところ怪我がなさそうで何よりだ。だが、カオリちゃんはどうしてそんなところに?魔物狩りか?」

「半分正解です。この家は私の家なので、それを守るために魔物を狩り続けていたというのが理由です」

「そうかこの家を。って本当か?」

「そうですよ?先日の魔物狩りの報酬でマイホームを手に入れました。ほらこんな感じに」


 手を結界に伸ばして通り抜ける事を示す。さらに、インターホンとなっているMSDを操作して門柱に繋がっているゲートを開く事で家の関係者であることを示した。

 それを見てザックさんはマジか...とショックを受けて小声でつぶやいている。


「(この年で持ち家だと...これほど広い家となると莫大なお金が...冒険者になろうかな...いやでも待てよ?カオリちゃんはエルフだし見た目に反して長生きして財産を貯めてやっとの事だきっとそうだ)」

「......」


 隊長の立場であるとはいえ、あまりの報酬をもらえていないのかな?色々と突っ込みたいことが聞こえてきたような気もするけど、苦労人してそうだしそっとしておこう。


「(週1で新しいMSD買うのやめようかな。そうしたら幾分かお金が溜まって...)」


 そりゃお金が溜まらないわ!ちょっと同情してしまったの返して!それに、自分の中でザックさんのイメージが崩れ去る音したよ?ダンディーなイケおじ返して!


 このままだと話が逸れて宇宙になりそうなので咳ばらいをして、話を戻すことにする。


「それで、ザックさんはこれからどうするんですか?」

「え?あぁ、そうだな。一応本部からの指令で来ているから、魔力反応の原因をこの目で確かめないわけにはいかない。だから、魔石の在処に案内してくれないだろうか?」

「そういうことですか。では早速案内します」

「よろしく頼む」

「あ、それとザックさん」

「なんだ?」

「魔石の運搬って頼めたりします?」

「今回も任せておけ。この確認が終わったら引き上げるからな。ついでだ」

「ありがたいです。(今回はちゃんと報酬は出しますので期待してくださいよ~)」

「(普段は報酬を貰わないところだが、今回は貰うことにするよ。ちなみにどのくらいだ?)」

「(一人3万ゴールド。ザックさんはその2倍で)」

「よし!これから魔力反応があった場所に向かう!行くぞ!」


 ザックさん...ちょろいな。ちょろすぎて買収とかされていないか心配になってきたぞ?

________________________

 ザックさん一行を魔石の山が連なっている場所に案内して、強い魔力反応が大量の魔石であることの確認を行ってもらった。その後、魔石を拾い集め、魔動車でギルドへと向かった。


 運搬中の雑談で教えてもらったのだが、前回の魔石運搬を手伝って行ってくれた隊員たちは、今回の同行している隊員に全員含まれているそうな。通りで魔石が魔力反応の原因であることを不思議に思う人が居なかったわけだと納得した。

 ちなみにザックさんに拳骨を入れられた若い隊員は前回の魔石運搬ではいなかったそうだ。それを聞いたら、隊の中で一人だけがあのような反応になるのもやむなしだなと一人納得してしまった。


 道中は何事もなく無事にギルドに運び込むことができた。ごく微量な闇属性の魔力反応があったので、てっきり謎の集団が魔石を奪いに来るのかな~とか思っていたがそうならなかった。ごく微量だし、問題ない感じだろうか?

 

 何はともあれ、運搬が完了したのでギルドの外に移動して、ザックをはじめとする隊員たちに報酬を手渡した。ザックさんに手渡しした時、業務を行うようなトーンで報酬を受け取っていた。だが、実際のところはウキウキだったのだろう。目がキラッキラだった。今日の勤務が終わったらMSDでも買いに行くのだろうか?持ち家の購入が遠のくぞ?

 隊員たちは報酬を貰えるとは思っていなかったのか、驚きつつも喜んで受け取ってくれた。前回の分のお礼が十分にできたとは思っていないが少しはお礼ができただろう。


 報酬を渡し終えてザックさん一行を見送る際に天使ちゃんなる単語がまたもや聞こえてきたが誰の事なのだろうか?1か月前もその単語を出していたし、隊員さんたちの中では割とホットな話題っぽいな。この世界に天使が現れたのだろうか?それともアニメ的なサブカルチャーのキャラクターをそう言っているだけなのだろうか?もし後者だったら少しは話題を提供できそうな気がするな。その時が来たら机の引き出しから現れた天使に撲殺される奴とか話そうかな?にわかだけど。


「見送ったことだし、ギルドの中に戻って運び込んだ魔石の買取手続きでもしますか~」


 買取の待ち時間に、自分の家の付近にやってきたあやしい人影について聞き込み調査をするとしよう。 

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