53 家が魔物に襲撃されている件2
(略しすぎています)
「ふう。これで8セット目完了っと」
結界用MSDに魔力を供給する魔力タンクに魔力を注ぎ終え、自室で椅子に深く腰掛けて紅茶を飲んでいる銀髪ロリエルフになった者です。現在、動きすぎて疲れたので休憩中です。魔力を使った探知で魔物の状況を把握しているのでヤバくなったら動き足す精神でいます。ふぃ~。
討伐を繰り返していけば結界の周りにいる魔物は減っていくだろうと思っていた。だが、討伐すれども魔物の数は減っているように思えないほど多い。それもそのはずで、魔物発生の元となる魔素の濃度が依然として高いままなのだ。
通常ならば魔物が発生するとその分魔素が消費されて魔素濃度は低下していく。だが、現状はそうなっていない。恐らく、倒した魔物が発生するために消費した魔素量よりも周囲の魔素量が十分高いのだろう。満員電車の中から1人だけを降車させたとしても、車両全体の人の密度がほとんど変化しないのと同じ感じの奴だ。本当に無限魔物ポコリ編に突入したような気がする。朝までポコりナイトですか?いくら若い幼女だと言っても睡眠は必要だよ?睡眠は成長につながるんだよ???
そんな感じで現状に不満を垂れ流していたところ、魔力を用いた探知に反応があった。
「この反応は...人かな?」
正面ゲートの30mくらい先だろうか、4人居るようだ。魔物大発生中の危険地帯に何の御用だろうか?もしかして、応援か?それにしては数が少ない。わざわざここに来たことが気になる。でも動きたくないし...。
「あの4人組の情報を得る方法は何かないかな...」
正面ゲートの近くにいるし、ここから見たり聞いたりする事はできないな。ん?正面ゲート?インターホンがあるじゃん!この距離だったらギリギリインターホン的な奴で音を拾えるかもしれないな?ワンチャンやってみるか。
カップに入っている紅茶を一口飲み、自室に置いているインターホンの受話器に手を伸ばしてインターホンが収音した音を聞いてみる。
「...使えねえ!貴様ができる......ったから用意して...」
魔物が活動する音やうめき声によってあまり聞こえてこないものの、聞こえてくる声色から揉め事のようだ。こんな危険地帯に来てまで争っている場合ではない気がするが?それにしても、どこかで聞いたことのある声の様な気が?気のせいか?
「...ません、...様...」
これは女性の声か?お姉さん的な声だな。
「...チッ...帰る。本当に使え...」
その言葉を合図にして4人の声が遠ざかっていく。どうやら家から離れていくようだ。いや、帰るんかい。何のために来たんだ?
紅茶を一口飲みつつ、正面ゲート付近にやってきた4人組の事を考えることにした。
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「考えれば考える程、おかしさが目立つのがおかしい」
まず、救援に来た冒険者か衛兵だと考えてたが、その点はおかしい。
魔物がうじゃうじゃいる場所に来るならメンバーの数が少なすぎるのである。簡単に1vs10という状況になるような環境へ4人で来る時点でおかしい。普通に考えると戦線が崩壊して終わりだ。それに、救援する対象が居る敷地を目の前にして帰っていくのもおかしい。普通に考えて、そこまで来たならパワーで突っ込んで救助していくだろう。
次に、この状況を知らせに来た誰かというのも考えたが、その点もおかしい。
広域で魔物が発生しているから安全な場所に身を隠してという放送があった。なので、人が来ずともとるべき状況は伝わっている。普通に考えて、そこまで来たらなパワーで突っ込んで知らせていくだろう。
さらに、魔物から逃げるため安全な場所に移動する民というのも考えたが、その点もおかしい。
自分の家は結界によって魔物から守られており、安全と言える。そのため、危険な地からこの家へ逃げてくる人はいるだろう。だが、家の周りは魔物が大量発生中であり、普通に考えると、そんな危険地帯を突っ切ってまで来る人はいない。それに、そこまで来たならパワーで突っ込んできて結界内に入れてくださいと言うだろう。
「ん~。もしかして前提が間違っている感じ?」
これを考える前提として、この状況で「被害を受けた関係者」の中から考えるというのがあった。これが間違っているとすれば、あの4人組については、この状況を「被害を与えた関係者」か、この状況の「無関係者」ということになる。大量の魔物発生している地域に突っ込んできた以上、無関係者という線は無くなるので、被害を与えた関係者となるのだろう。
「その前提で考えてみるか」
この状況を作った者の関係者だとする。そして、少人数でこの館に近づき、「使えない」と言って帰っていく。
まるで、この家が被害を被ることを期待していたが、被害を全く被っていないため、この状況を作った部下(又は身分階級がしたの人)に使えないと吐き捨てて帰ったような感じだ。納得できるような気がしなくもない。とすると、あの4人組は自分に対して何らかの負の感情を持つ者たちであり、自分に痛い目を見てもらいたい者たちの仕業と言うことになる。
だが、魔物の大量発生はこの家の周りだけの問題ではなく、自分以外の人を巻き込んだ騒動となっている。普通に考えて、自分だけを狙うのならば、自分の家の周りだけに魔物を発生させれる状況を作ればいい話である。
「うーん。前提は合っている気がするんだけどなぁ。それなら、自分の件は第二目標的な感じか?」
この状況を作った主目的がありその副次的な効果としてこの家の被害を確認してきたと言う線も考えることができる。その主目的については、情報が少なすぎて「この街又は地域に対して害を与える」という漠然とした憶測しかできない。当てずっぽうもいいところだ。
この4人組について、ギルドで聞いてみたら新たな情報が得ることができるだろうな。この付近で怪しそうな4人組を見ませんでしたか~?といった、行動に関する情報を得ることができそうだ。
目的まで調べようとするならば、何か関連した情報を知っていそうなギルド長にも色々聞いてみたいが、闇属性の魔力が絡んでおり情報規制されている以上、肝心なことは話してくれないだろうな。ギルド長に君に言わせたいから~(言いなさい(圧))とか言ったら、こころぴょんぴょんしながら話してくれないだろうか。いや、それはそれで絵面が怖いからやめておくか。
「これ、肝心な情報を仕入れる手段ないな?詰ーんだ詰んだ」
両手を挙げてお手上げポーズしたところに結界の警告音が鳴り響く。
うるせぇええええ(略)!今度は何事だ?
魔力を用いた探知を行って結界の外の魔物を捉えるが、数に変化が無い。魔物の数は結界への負荷に関連するが、数に変化がないため結界への負荷が警告音の原因ではないだろう。
結界に関わる事と言えば結界を駆動させるMSD関係?MSD的には問題ないだろうから、魔力関係か。あ。
部屋にある時計を見てみると魔力タンクに魔力を補充してから十数分経っていた。そりゃ、魔力タンクの残量が少なくなって警告音も鳴る訳だ。
「すっかり魔力タンクの事を忘れてた...。あぁ、のんびりしたい...」
外の状況がヤバくなったら動き出す精神を貫くのは状況が許してくれないらしい。
カップに残っていた紅茶を飲み干し、急いで魔力タンクの元へと向かった。
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