52 家が魔物に襲撃されている件
(略しすぎています)
「しかも、警告音ってことは相当ヤバいのでは!?」
この結界を改修した時、結界が攻撃を受けて魔力消費量が一定以上になると警告音が鳴るように設定したのだ。適当に設定したら頻繁に鳴るので、それの10倍くらいに設定している。そのおかげもあって夜に攻撃を仕掛ける魔物が居ても一度も警告音が鳴らずにぐっすり安眠だった。
だが、今回は違う。鳴り響く警告音は、結界に対する攻撃が激化してしていることを明確に表している。それだけ多くの魔物が居るということになるが....。
魔力を体から放ち、それが返ってくる反応で魔物の反応を探る。
結界の内側には反応が無いので結界はちゃんと機能しているようだ。だが、問題は結界の外だ。
「羊が1000匹くらい!?」
もちろん魔物の数である。結界周辺だけでも1000体程度で、この館を取り囲む森全体なら4000体以上の反応がある。これなら結界の警告音が鳴ってもおかしくはないな。うん。でも、安眠妨害は許せないな!
何でこんなに魔物が居るのか分からないけど、結界が心配だし結界用のMSDが置いている場所に行くとしよう。
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結界用MSDが置いてある屋敷の地下に来て、結界を起動してるMSDを確認していく。
「MSD損傷、なし。起動魔法陣、正常。魔法陣負荷率、0.1%。魔力効率、適正。うーん。ヨシ!問題なし!解散!寝る!」
これなら周囲の魔物が一斉に結界へ攻撃してきても耐えることができるな。加えて、魔素の生成もほとんどない高効率駆動だ。結界内の魔素濃度が上昇する心配もないだろう。これなら警告音の設定を変えただけで安眠することができるな!ガハハ!
「ついでに、魔力タンクの方は...」
目線を結界用MSDからその隣に設置されている魔力タンクに目を移す。
「もう半分切ってるじゃん!良くナシ!問題あり!集合!寝れない!集合する人なんて誰も居ないけど!ボッチですけど!」
魔力消費量が異常なほど多い。普段の状況で魔力タンクに入っている魔力で10日程度結界を維持することができる。魔力を補充した日付を確認すると、昨日となっていることから、たった1日でタンク半分程度の魔力を消費している。しかも、アラームが鳴っていない時間を考慮した場合たった数分間で消費した計算になる。これは桁違いの魔力消費量だ。
「何はともあれ、まずは魔力供給だな」
魔力タンクに魔力をエーテル化したものを自身の能力で生成して注ぎ込む。自身の魔力保有量が多い事もあって、特に何事もなく魔力タンクは魔力エーテルで満たす事ができた。
だが、魔力消費量が多いために減っていっているのが目視で確認できる。これ、魔力タンクから離れられない感じ?一夜を共にする感じ?魔力タンクを注ぎ続けるための存在感じで魔力ATMになる感じ!?嫌すぎるな。
だけども、この結界を維持しないと館を取り囲む壁は破壊され、この屋敷は跡形もなく消え去る未来しか見えない。大金払って買ったのに1カ月と少しで無に帰されるのはいただけない。それは困るのでどうにか対処をしなければならないな。
それに、どうやら自分の目は開眼しているようだ。というのも、魔力の流れや結界の外の魔物などを把握することができるようになっているからだ。
開眼することで生じる肉体的デメリットはないが、碧眼から紅眼となる。この世界において赤く光る眼は魔人族として捉えられるためこの目を見られることは避けなければならない。
「人に見られないで、結界を維持しつつこの事態を乗り切方法...どうするよ自分」
A.魔力タンク前で張り付く。これは屋敷に引きこもることができて素晴らしいが、その前に魔力が尽きてしまうだろう。
B.結界周辺の魔物をポコしまくる。結界周辺の魔物を排除することで結界にかかる負荷を減らして結界の魔力消費量を抑えることができる。だが、結界を張っている領域はかなり広いため、どうしても攻撃できない領域が生じてしまう。そうなると、結界の魔力消費削減も期待できそうもないか。それに、ずっと結界の外で活動していると人目に付く確率も高くなるだろう。
C.AとBのコンビネーション。ダッシュで結界周辺の魔物をポコしてから魔力タンクに魔力注入の流れを組み合わせ。魔力は結界の外の木などを分解して魔力に変換することで補充することができるし、魔物の量も減らすことができる。外で活動する時間も少なくできていいかもしれない。
「よし、プランCかな。そうと決まれば魔力タンクを満タンにしてから実行!」
そう決意したところで、結界とは異なる警報音がかすかに聞こえてきた。このまったりした感じは都市警報っぽいな。聞いてみるか。
「魔物警報です。この地域一帯で魔素濃度の急上昇と魔物の大量発生を観測しました。住民の皆様は身の安全を第一に考えた行動をとってください。繰り返します...」
マジか、この場所だけでなく地域全体か。これは増々面倒なことになっているな。それに魔物注意報ではなく警報が鳴ったということは、この事態を重く受け止め衛兵や冒険者が駆け付けてくる可能性がとても高い。そうなれば自身の異常なまでの能力と開眼を知られてしまう可能性が増える。厄介だな。
これは周囲の人気を気にしながらプランCを実行する感じで行くしかないか。人を感知したら速攻で家に引きこもろう。そうしよう。
「そうと決まればレッツゴー、魔物狩り。えいえいおー」
まずは魔力タンクに魔力エーテルをぎりぎりまで注ぎ込む。そして、階段を駆け上がり、玄関の扉から外へ出る。
「急いでても戸締りは重要っと」
小さな結界を玄関ドアの鍵に施し、自身の能力を使って自分の運動エネルギーを増加させる。一瞬で加速した体は砂埃を上げながら地面と平行に移動し、瞬く間に結界までたどり着く。そして、結界に負荷がかからないように自身の運動エネルギーを殺してから結界の外に出る。
結界の外は森が生い茂っているため暗く、魔物を視認することが難しいが、開眼しているおかげで魔物の位置を容易に捉えることができる。
「やっぱり開眼したときは魔物をポコりやすいな」
銃弾程度の速度かつ最高硬度のアイスニードルをMSDを介さずに放ち、確実に魔物を屠っていく。魔物は高速で飛来する拳程度の大きさの氷柱に貫かれ、鳴き声を上げる暇もなく魔石へと変化していく。
魔物相手だと手加減とか考えなくていいからある意味楽だな。ただ、容赦がなさすぎるか?易々と地面や木を粉砕して、周囲の光景が空から砲弾が降ってきたかのようだ。
「これは少し考えないと、後の整地がヤバそう?」
地道に元の光景に戻す作業を考えるとげんなりしたので、アイスニードルの大きさを直径1cm長さ2cm程度としてみる。試しに魔物に放ってみると、威力は弱くなったものの、当たり所さえよければ氷柱1つで倒すことができた。木や地面に放ってみても粉砕されることはなかったので、ちょうどいいサイズ感だったようだ。今日はこのサイズで魔物を倒していくとしよう。
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時折倒木や石ころなどを分解して自身の魔力を補充しつつ、魔物をポコしていくこと3分。程よく周辺の魔物をポコり尽くしたのもあり、一旦魔物をポコるのを止めて魔石回収をすることにした。
足元に落ちている魔石を拾ってみると、その魔石の見た目は普段の魔物からドロップする魔石と違いが無い。だが、魔石から感じる力にどこか違和感がある。試しに自信の能力で分解してみると、ごく僅かにだが闇属性の魔力を感じた。
「これは...」
さらに、魔石に含まれている魔力は単なる属性が付与された魔力という訳でもなく、その魔力自体に個人を指し示す情報が含まれていた。つまり、周囲に漂う自然な魔力を吸収したという訳ではなく、何らかの目的を持って魔物に闇魔法をかけた人物が居るということだ。その人物と魔物の大量発生の関係性は不明だが、魔物の大量発生と関わっていてもおかしくはない。
「さらに面倒な事態に発展する予感がするな...。ああ、ゆったりライフを送りたい(白目)」
文句を言いつつ、素早く魔物を倒してドロップした魔石を拾い集めた結果、200個くらいの数になった。持って移動するのも面倒なので、近くの結界の内側に投げ捨てて魔石の小山を築いておいた。後で1カ所に集めるとき、自分に文句を言うんだろうなぁ。
何はともあれ魔物ポコすフェーズは終了だ。魔力タンクの場所に帰るか。
踵を返しながら魔力で探知を行った。返ってきた反応からして、魔物を一掃した場所の外から魔物が押し寄せてきているようだ。
「これ無限魔物ポコり編突入した?そういえば前もこんなことあったなぁ...」
遠い目をしつつ、結界維持のために魔力タンクの元へと向かうのであった。
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