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45 乱入者1

(略しすぎています)

「グァアアアアアアアアア」


 はいはい、ゴブリン系の鳴き声ですか...。え?ゴブリン?

 声がする方向を振り返ると自分の身長よりも大きく、筋骨隆々なゴブリンが立っていた。武器こそ持っていないにしろ、その体格から繰り出される物理攻撃技はとてつもない破壊力を秘めていそうだ。

 以前にオーガと対峙したが、それと引けを取らないほどのオーラを感じる。オーガと戦った時は自身の能力や魔法を存分に使用することができたため自分の優位性を保ったまま戦闘できた。だが、今はゲセスターの魔法発動妨害魔法により魔法が使えず、自身の能力も隠さなければいけないため、劣勢を免れないだろう。


「やばいですね...」


 某プリンセスとコネクトする感じのゲームに出てくるキャラが言いそうな事を呟く事で平常心を保つ。魔物相手となると、平常心を失って隙が生まれると命を失うことに繋がりかねないからな。


 状況把握のためゴブリンから目を切らさない様に会場内を見渡す。

 会場は魔物が突然現れたとあり、大混乱状態だ。ある生徒は悲鳴をあげ立ちすくみ、ある生徒は出口に向かって全力で走っている。この状況下で冷静な生徒はほとんどいない。まあ、入学して早々だし、魔物を初めて見る人が多いと言うのもあるのだろう。

 一方で教師陣は...って一番慌ててるな。右往左往したり身振り手振りで何かを話したりしている。特異な状況のため対応が一致しなかったり、良案が浮かばなかったりして慌てているのだろう。

 

 先生方の対応は決まりそうにないと感じていると、自分の後方で倒れているゲセスターのつぶやく声が聞こえてきた。


「あの銀髪を...ボコボコにしろ...」


 魔物から目を逸らす事ができないので、声から察するに意識が朦朧としている様だ。結界にぶつかった衝撃で脳震盪を起こしているのかもしれないな。と言うか魔物に頼ってどうするよ。それに魔物って頼み事とか聞いてくれないと思うのだが...。自分もお使い頼みたいよ?自分の家からスーパーまで遠いし。でも、そもそもの話、魔物に言葉が通じるの?教えて女神様〜。


 とか考えていると、ゲセスターの方から感じたことのない、異様な魔力が放たれたのを感じた。風、火、水、土、雷、光、無のどの属性でもない。魔力の中に感じるのは禍々しい何かだ。感じたこともない魔力だし、あまりに特徴がありすぎる。

 自身の感覚や現時点で把握している情報から消去法的に絞っていくと、闇属性の魔力だと思う。だが闇属性の魔力に関する情報がないため推論の域を出ない。


 更なる情報を得るため、ゲセスターから放たれた禍々しい魔力をたどっていくとゴブリンに行き着いた。


「嫌な予感...」


 ゴブリンを注視すると、禍々しい魔力を吸収するとともに、自分に対する敵意を増大させ、より一層のオーラを放つ。

 その事実はゲセスターが魔物であるゴブリンに命令したと実感させるに足るものだった。


「まじですか」


 何で嫌な予感って当たるんですかね?フラグ立ってました?そんな面倒なフラグはバッキバキにへし折って行きたいんですが!


 ゴブリンは咆哮を上げると、巨体に似合わないスピードで自分に向かって突進してきた。サリアとの魔物狩りの時に出会ったスピード型ゴブリンよりも速いな。


 ゴブリンの間合いに入らないようにバックステップを踏んだ。だが、ゴブリンはそのスピードについてきている。しかも、結界とゴブリン自身の位置関係を把握しているのか、自分の退路が少ない方向から向かってくる。


 もしかして、俊敏性だけでなく知能もあるのか。攻撃力もありそうだし、何でもありだな。もうチートだ、チートだろそんなの。チートでゴブリンだからチブリン...。いや、やめておこう。


 突然現れたチブ...ゴブリンの間合いに入らないよう距離を取りまくっている最中に、アナウンスが流れる。今更だが何事だ?


「皆さん、慌てずに避難してください!出口は複数箇所あります!必ず走らない様に...ってあなた何をしに!」


 ん?放送席に誰かが乱入した様だが。何事?

 バックステップを踏みつつフィールド上に流れるアナウンスに注意を割く。


「緊急事態につき、現在からこの場はギルドの指揮下に置かれます。皆さんは慌てず避難してください。」


 ってミカさんか。流石はギルドの受付嬢。魔物相手の緊急事態でも落ち着いている。毎年の様に街に魔物の大群が攻めてくる緊急事態があるみたいだし、それで慣れているのかも。何にせよ頼もしいな。ギルドが指揮することになる事はギルドメンバーからの増援とか見込める感じ?ゴブリンの相手をしてもらえる感じ?


「カオリちゃん、被害拡大防止のため増援が来るまで結界を維持したままとなります」


 え、自分1人で討伐しろってこと?

 そんな意味を含んだ視線を放送席にいるミカさんに投げる。


「そのゴブリンはエリート級で並の人では対応できません。ですが、カオリちゃんの実績ならば時間を稼ぐ事はできると思います」


 ゴブリンがめっちゃ強いから並の人が対応すると攻撃を食らって負傷してしまい、余計な被害が増える。だから並の人ではない自分が時間を稼げという訳か。それくらいなら魔法や武器が無い状況でも何とかなるかな。今の所、鬼ごっこ状態だし。


 了解した旨を示すべく、回避しながらサムズアップをする。分かるかな?


「ありがとうございます。ギルドから討伐できる人員を呼んできますので、それまで持ち堪えてください」


 ちゃんと伝わった様だ。そいつはgoood。

 

 その放送が終わった途端、ゴブリンは突然立ち止まった。

 立ち止まる要素無いし、何で立ち止まったんだ?とりあえず、ゴブリンの行動を観察するか。


 自分も立ち止まり、警戒したままゴブリンの行動を注視する。 

 ゴブリンは振り上げた拳で地面を砕いたかと思うと、地面を割ってできた塊を地面から拾い上げた。


 また地面がボコボコになるじゃん!謎行動でも相手に思いやりを持って!ん?もしかしして、その塊を投げてくる感じか?行動パターンが変わるとか聞いてないぞ。誰にも聞いてないけど!本当にゴブリン?中に人とか入っていないよね?


 自分の問に答えるかのように再度大きな咆哮を上げてフィールド内の空気を震わせた。

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