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44 決勝戦2

(略しすぎています)

 ゲセスターの猛攻が続いている。


「結界が破壊された時は流石に驚いたが、魔法さえ封じてしまえば単なるうさぎと同じだなぁ!なあ、逃げることしかできないってどんな気持ちだ?惨めだよなぁ!キャハッ!」


 ゲセスターとの距離を保ってはいるものの、その攻撃ペースは衰えることはない。奴の魔力は無尽蔵なのか?無駄に硬そうな石礫を大量に飛ばしてきたり、岩をを投げてきたりしている。

 魔法から作った物は時間が経過すると消えてしまうが、着弾した時にできた穴はそのままになる。おかげでフィールドが穴だらけで、足場を確保するのが面倒だ。思いやりを持って攻撃してきて?


 「ああ、もう少しであの奴隷を抱ける!透き通る髪や汗ばむ体から発する蒸気、突く度に鳴く声を想像するだけで興奮してくる!そうだよなぁ!」


 かなり変態チックにエキサイトしているゲセスターだが、放つ魔法はかなりの威力があり、地面に着弾する度に轟音とともに土煙が上がる。その光景は側からみるとかなり派手に見えるだろう。だからか分からないけれど、会場はゲセスターが優勢と思っている様で女子の声援も収まり静かに見守っている様な空気感だ。爆音でよく分からないけど。


 だが、その土煙はレースカーテン的な役割を果たしており、土煙の外側にいるゲセスターからは見づらくなっている。それに加えて、攻撃タイミングや方法が洗練されておらず、飛翔速度がそれほど速くないのもあり、回避する事はまあ容易だ。身体強化魔法はなくてもサリアくらい動く事ができれば回避は難しくない。

 あ、今度は石礫を飛ばす魔法か。そろそろ新しい魔法でも飛んでこないかな?と言うかそもそもこの魔法の名前なんなの?


「強情な奴隷は、俺の棍棒を見せたらすぐに媚びてくるんだ。何でもしますからってな!キャハ!でも、やっちゃうもんねぇ!だって、壊したいもんなぁ!それでも反抗的な奴は何度も分かるまでやり続けるんだ...そしたら、折れるんだよ!その時の表情をみると最高に気分がいい!流石は俺様、貴族様!民の力は俺のもの!全ての物は俺様の物ってなあ!」


 おうおうおう。気が大きくなっているな?そんな感じでいるといつか足元を掬われるよ?気をつけな?それに魔法の狙いが雑になって散布界が広がってきているぞ?それに威力も落ちている。魔力切れが近いのか?興奮しすぎて攻撃しまくるからそうなるんだぞ?

 ゲセスターに心の声が聞こえたのか、一旦攻撃が止む。そしてゲセスターは神経を逆撫でする様な声で自分に声をかける。


「なあ、俺様からのプレゼントはもう気づいたか?寂しそうだから部屋にプレゼントしておいたんだがな!キャハ!」

「やはり貴方でしたか。そんな予感はしていました。」


 ゲセスターはセリフを吐きながら上着の内側から何かを取り出して、直剣の柄に入っている何かと取り替える動作を続けている。この動作に何の効果があるのか想像がつかない。だが、話しかけて来たタイミングと謎行動が始まったタイミング的に時間稼ぎをしている様な気がしなくもない。その動作がよほど重要なのだろうな?


「まだあるぜぇ、お前のMSDを破壊する様に仕向けたのも、試合中にMSDが無いように仕向けたのも俺様からのプレゼントだぁ!嬉しいだろ?」


 おいおい、色々自白しちゃったよ。これで、厄介ごとはゲセスターが手を引いていたことが判明したな。だが、自供だけなので客観的証拠がない。ここで発言を聞いたからと言って先生に突き出しても、証拠がないので何もお咎めがないだろう。

 だからと言って、色々と厄介ごとを吹っかけてきた奴が目の前にいるのに何もしないのは違う。そこで、少し挑発してやり返そうかと思う。散々侮辱的な発言を繰り返してきたし、これくらいはしてもいいだろう。挑発に乗ってくれたら戦況が有利になるかもしれないし、一石二鳥だな?


「自分に1つも嬉しい要素がありませんね。そう思うなら」


 一旦言葉を区切り、人差し指で自分の頭を刺しつつ言葉を放つ。


「ココ、見てもらった方がいいですよ」

「ああ?もう一度言ってみろ、二度と街を歩けなくしてやるぞ」


 ゲセスターが構えた直剣の剣先がプルプルしている。ゲセスターにめちゃブッ刺さってる感じが伝わってくる。効果覿面だ。なんか面白いのでもう一度言ってみよう。今度はゆっくりと。言葉を変えてシンプルに


「ココ、大丈夫ですか?」

「カオリィイイイイイ!お前は絶対ぶち犯す!!!」


 おお、こわいこわい。怒髪天とはまさにこの事だな。

 ゲセスターの沸点が低すぎて周辺の気圧が低すぎるんじゃないかと思わせるほど、挑発に乗ってくれた。シンプルに嫌がらせを少しやり返せた様な気がして気分がいいぞ。

 だが、ゲセスターはギアを上げたようでやる気万々歳状態だ。直剣を構え直しこちらへ向かってくるような仕草を見せている。これはちょっとまずいな。今は圧倒的火力のゲセスターに対抗できる策を思いついていないから、近接戦闘ともなればますます不利になる。全力で距離をとりつつ、回避する方向で行こう。挑発しておいて格好は悪いが安全第一だ。


「おらあああ!」


 ゲセスターは自分に詰め寄りながら直剣を振い、無数の石礫をショットガンで打ち出された散弾のように飛ばしてくる。先程までの攻撃よりも雑な狙いだが、石礫の密度が高い。挑発によって頭に血が上り、魔力操作や魔法のイメージが雑になっている。

 これまで通りに回避する事は...できそうにないな。とりあえず、これまで以上に素早く攻撃の範囲外に逃れるか。挑発して回避が余計にやり難くなったのは誤算だったなぁ。 即座にリングタイプの特製MSDに魔力を少し流し込み、身体能力を向上させる。能力向上せずとも驚異的な身体能力から回避は余裕だが、一応ね。一応。

 ゲセスターからやってくる大量の石礫から回避すべく、左足をバネのように使って地面を蹴り出し、右側に素早く移動する。


「逃げんじゃねぇ!」


 すぐさま同じ攻撃がやってくる。だが、これも同様にして回避する。


「チッ、まだ使えるMSD持ってやがるな!イライラさせるじゃねぇか!」


 自分が余裕ありげに回避する様子を見てか、ゲセスターは攻撃を止めて、大きく膨らんだポケットに手を突っ込んで何かを操作する。その操作とともにゲセスターから魔法発動妨害のために放たれ続ける魔力量が増加した事を感じた。

 当然魔法発動妨害効果は高まるが、アイスニードルや魔力刀など攻撃性の魔法を使わないと決めている今の自分にとっては効果がない。無論、身体強化魔法を発動し続けている特製MSDも妨害効果を受けない。さらに、ゲセスターから垂れ流されている魔力量を増加させずとも、すでに魔法発動は困難なレベルだった。なので魔力を放出するだけ無駄な気がするのだが。もしかして、この妨害魔法について詳しく理解していないな?もしくは自分の想像を超えた意図があるのか?


「これで後が楽しみだなぁ!オラァ!」


 今度は巨大な岩を生成して投げ放物線を描きつつこちらに飛んできている。さらに程なくして無数の石礫が自分を中心とした広範囲に飛んできている。

 これは通常のバフがかかった身体能力では左右に回避する事が出来ないな。回避の選択を取るとかなり素早く移動しなければならなくなるので、異常な能力を晒す事になる。それは避けなければならない。どうするかな。

 周囲を見渡しても何も使えそうなものはない。自分の装備はない、又は使えない状態。さらに、目に前から巨大な岩と遅れて無数の石礫が飛んできている...。ん?

 巨大な岩を盾するとワンチャン攻撃を防ぐ事ができるのでは?。岩の着弾時に飛び散る破片に当たらないように気をつけないといけないけど、それは...まあ、何とかなるだろう。


 考えている間に大きな岩がこちらに近づいてきている。着弾まで3、2、1、今。

 着弾と同時に身体強化魔法で瞬時的に脚力を強化して岩がやってくる方向に向かって地面を蹴り込む。強力な脚力によって自分の周囲に土煙を生じさせるだけでなく、地面を蹴った時に生まれた無数の細かな破片が岩の方向へ向かう。着弾した岩からも無数の破片が飛んできていたが、自分が生み出した破片に相殺されて土煙と変化する。

 程なくして、岩を挟んだ反対側から石礫がやってくる。だが無数の石礫は岩を破壊するほどの威力はなかったようで、岩に阻まれて自分に届く事はない。読み通りで何よりって感じだ。


「どうだぁ、俺様の攻撃は効いたかこれは流石に避けれな...は?何だ!何が起こっている!」

「単純に岩を盾にしていましたが何か」


 ゲセスターは何も理解できていない様子で混乱しており、かなりの隙を見せている。今のゲセスターでは魔法の発動ができないだろうし、自分に何らかの攻撃が来ることもないだろう。一撃入れるなら今が好機か。だが、魔法は使えないし、ナイフもない...。できることといえば、格闘による物理攻撃くらいだろう。これは考えていた中で本当の最終手段だが、今はそれしか攻撃手段がないからそれでいくか。

 そうと決まれば盛大な腹パンチをお見舞いしてやろう。

 特製MSDに魔力をほどほどに流し込み、身体強化魔法で身体能力をブーストさせる。そして、地面を蹴って低い姿勢のままゲセスターの元へと向かう。


 あれ、ちょっと魔力の入れる量をミスったのか?移動速度がめちゃくちゃ速いんだけど!体感は時速60kmくらい出てるよ!多分!やばば!


 とか思っていると、ゲセスターとかなり開いていた距離が残り10歩くらいにまで近づいた。ゲセスターはまだ混乱中なのか微動だにしていない。

 問題なく攻撃はちゃんと入りそうだ。だけど、ちょっと手加減して腹パンしておかないと拳が腹部を貫通しそうだ。思いやりのある攻撃は大事よ。


 地面と足裏との摩擦を利用してジョギング程度の速度まで瞬時に減速する。ゲセスターとの間合いが3歩程度まできたら、右拳を引いてタメを作る。そして、1歩の距離まで来たらそのタメを少しずつ解放していく。

 程なくして、拳はゲセスターの腹を捉える。拳に体重を乗せつつタメを解放して、力を伝達していく。それと共にゲセスターの足が宙に浮き、くの字に折れ曲がってゆく。そしてゲセスターは盛大に吹き飛んでいき、フィールド上に張られた結界と衝突した。


 ふー、すっきりした。私怨たっぷりの制裁パンチが合法的にできるのは素晴らしいな。これでちょっかいをかけてこなくなったらサイコーだな。


 ゲセスターは衝突時のダメージから回復しておらず地面に倒れている。その周りには乾電池みたいな物が転がっている。それは、側面が透明で、中身が見えるものになっており、中身が入っているものとない物が散らばっている。不思議に思ってそれに意識を集中してみると、魔力を液化したエーテルのような感覚を覚える。

 さらに、その感覚はゲセスターが握っている、不必要に柄が長い直剣の柄からも覚える。


 一般的にエーテルは魔法で動く魔動車など、魔力用いて動作する装置に用いられる。MSDとエーテルさえあれば、術者の魔力を消費せずに魔法の行使ができることから広く利用されている。


 この点を考慮して推察するに、ゲセスターの魔法はエーテル化した魔力を使って発動されていたものなのだろう。火力の高い魔法が放ち続けることができたのも、自身の魔力ではなく、エーテルを使っているからなのだろう。それに、ポケットから取り出した何かを取り出して、柄の部分に入っていた何かと入れ替える行動もとっていた。そう考えることに無理はないと思う。

 あれ?でも、ゲセスター魔力と、容器に入っているエーテルの魔力は違うと感覚が伝えてくる。普通は、異なる魔力同士だと魔力が反発して魔法がうまく使えないし、魔力の逆供給が発生したりしてとても危険なんじゃ...?


 ゲセスターが扱う魔法の秘密について考えていると、倒れているゲセスターの腕が少し動いた。まだ意識があるようだ。しかも、こちらに顔を向けて、何かを見ながら呟いている様だが、何を言っているんだろうか...。しかも口角が病的に吊り上がっている。勝敗はついているように思うが、この状況から何をするつもりなんだ。


 少しの間ゲセスターと視線が交錯したがゲセスターが立ち上がる事はなかった。これは勝負あったと思うのだが?。審判は早く勝敗を決めてくれ。

 そう思った矢先、会場に聞き慣れた声が響き渡った。

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