38 サリアのトーナメントでの模擬戦の話
(略)稚拙な表現等々、目をつぶっていただけると幸いです。
今はいつものメンバーである自分、サリア、リナ、シルフィアのメンバーでカフェにて雑談会を開催している。自分は手を洗うために一時離席してトイレに来ている。
トイレの手洗い場で手を洗っていると、ふと鏡に映った自分の顔が目に入る。普段の感じではなく、少しばかり疲れたような表情をしていた。
まあ、今日は色々事件が起こったし、エルバ先生と事件について話し合ったりしたし、しょうがないわな。そう思いつつエルバ先生と話して決まった方針を回想する。要約すると次のような感じだったか。
自分については今まで通りの行動をする。
エルバ先生については学園長にこの件を報告してもらい、公平なトーナメントとなるように、トーナメント上での不正を監視する。
自分の方針について、エルバ先生は次のように言っていた。
「カオリさんってこの件の当事者ですので、相手に報復などの行動をとると事態に収拾がつかなくなります。なので、これまで通りの行動の方がいいかもしれません」
確かに、エルバ先生が言う通りだと感じた。下手に相手方の頭をポコったものなら、白黒つけるのが難しくなる。自分もそう考えて、相手に手出しをせずに過ごす方針で合意した。
被害を受けた身としてはもどかしいところだ。なのでもし、トーナメントで対戦することがあれば存分にポコらしてもらうとしよう。
エルバ先生の方針については、自分の意向も踏まえて色々話した結果決定した。
色々話していくとエルバ先生は学園長と繋がりがあるようなので、これを利用しようと思った次第だ。なんでも、エルバ先生は学園長の知り合いの教え子という関係で、学園の先生となったのも学園長に推薦されてのことらしい。世間は狭いな。
そんな訳でエルバ先生には学園長と話す機会を作ってもらい、この件について報告をしてもらう。万が一、この件に関わっている先生方に情報を握りつぶされたとしても、その上の立場にいる人物に届いてさえいれば何とかなるだろう。
さらに、エルバ先生にはトーナメント上での不正を監視してもらうことにした。
自分にはエルバ先生が付いたと相手側には知られている。ということは、自分にはエルバ先生による護衛?みたいなものが付いたようなものだ。そのため、待機する部屋に嫌がらせされることや、相手から水をかけられることもないだろう。しらんけど。
なので、何か起こるとすると、自分やエルバ先生が嫌がらせと気づかないが、自分に不利となるような事象となるだろう。そんな事象が発生する可能性が高いのがトーナメント上の不正だ。
例えば、MSDの性能差によって本来の実力で勝負ができないので、学園の低スペックMSDを使って勝負しますとか言って、自分だけMSDをボッシュートされるとかそんな感じが想像できる。
このような不正が生じないようにエルバ先生には目を光らせてもらうという訳だ。抑止力になるのかは分からないが、抑止力になることを期待している。また、何か不正が確認されればエルバ先生が動いて何とかしてくれるだろうという期待もある。
こんな感じだったか?細かいところはあまり覚えていないが...。こんなことを考えてばかりだと、せっかくのロリフェイスが貫禄のあるおばちゃんフェイスになってしまうな。それに、サリアたちが心配するだろう。
とりあえず、この思考を頭の片隅に置きつつ、疲れた顔を簡単なマッサージで解きほぐして手洗い場を出ることにする。
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「みんなお待たせ~」
自分がテーブルの前に戻るとサリアが机に突っ伏している場面であった。
「なにこれどういう状況?」
リナやシルフィアに状況の解説を求めてみると、シルフィアが解説してくれた。
「サリアちゃんがトーナメントで戦った時の話を聞きたいと思って...話を振ったらこんな感じに...」
「そうなの?その話は自分も気になっていたから、サリアに聞こうと思ってたんだけど...(チラッ)」
自分がサリアの方を見て言葉を発すると突っ伏したサリアがぴくッと一瞬動いたが、再び微動だにしなくなった。うーん?何かあったんだろうが、コミカルな突っ伏し方を見るにそこまで深刻な感じでもなさそうだな。
とりあえず、サリアの隣が空いていたのでそこに座る。
リナも気になっていたようで言葉を発する。
「私もシルフィアちゃんと一緒に見ていたけど、途中から形勢逆転されていたのが不思議だったんだよね(チラッ)」
リナもサリアを見ながら言葉を発する。サリアは2度ピクピクと動き、一度停止した。なんか面白いのでリナとシルフィアと共に少し見守ることにする。
「「「じ~~~」」」
あ、なんかサリア耳が赤くなり始めた。だが、サリアは起きない。さらに見つめることにする。
「「「じ~~~」」」
しばらく見つめていると、サリアは視線に耐えかねたようで、上体を起こして言葉を発した。
「もー、ちゃんと話すから、その視線は止めて~~」
顔を上げたサリアの表情は恥ずかしさ成分満載であった。
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サリアは一口紅茶を飲んだ後、口を開いた。
「あの模擬戦は私が手を抜いてさえなければ勝ってたの」
「そうですよね...前半は余裕そうでしたし...」
「魔法の威力も相手を上回ってた感じがあるし、勝つと思ってた!」
「そう、そこで相手の戦い方に合わせなければ勝ってたの!勝てると思って手を抜いてしまって...負けちゃったからとても恥ずかしの!穴に合ったら入りたい...」
半ばやけくそ気味にサリアはそう言う。確かにその通りで、サリアは魔法の威力や戦術の組みたては相手を上回っていた。だから自分も勝てるだろうと踏んでいたのだが、事の問題はそこではない。
「でも、サリアが後半に魔法を使っていたら結果は変わっていたんじゃない?」
ということだ。サリアは魔法を使わなくなったので、間合い的に不利となり劣勢に追い込まれている。だから前半に相手をなめてかかっていた件よりも、魔法を使わなくなった理由は気になるところだ。
「そうなの、魔法を使えてたら大丈夫だったの!」
「「"使えてたら?"」」
リナとシルフィアも魔法の使用について気になっていたようで解説を求めている。文言から察するに魔法を使えない理由があったようだ。
「あの時はいつも通りウィンドカッターを発動しようとしていたの。でも、何回発動しようとしても魔法が発動しなかったの。だから、MSDが壊れたんだと思ってそれ以降は魔法を使わなかったの」
「MSDって壊れたならしょうがないね」
「それは残念ですね...」
魔法が使えなかったのはサリアのMSDが使えなかったからという理由だとすると気になる点がもう一つある。サリアは短剣タイプのMSDとハンディタイプの魔法特化MSDを持っていて、その両方を戦闘に使う時もある。そのため、戦闘中に短剣のMSDが使えなくなったとしても、ハンディタイプのMSDを使えばいい話である。
「壊れたのは短剣の方のMSD?」
「それが、両方なの。片方だけ壊れる事しかなかったから、こんなこと初めて」
両方なのか。それは何と不運な。
「2台同時に壊れる事なんてあるんだね」
「かなり珍しいですね...少なくとも私の周りでは聞いたことが無いです」
「そう思うよね?これ使ってみて」
と、サリアは壊れているであろう2つのMSDをテーブルの上に置いた。
見た感じ、物理的損傷を受けているようには見えない。
「サリア、自分はこの短剣を借りるね」
サリアに断ってから短剣の方を手に持って魔法を軽く発動することにする。
だが、発動しようと短剣に魔力を流し込んでみたが、MSDに繋がる魔力的反応はなく魔力刀が発動することはなかった。MSDにある魔法を発動するために必要な核自体が無いようなそんな不思議な感覚だ。核が壊れるとこんな感覚なのか。
短剣に流した魔力は、魔法を発動できなかったため、魔力は魔素となり空気中へと拡散していった。
「確かに壊れてるね。この短剣」
「でしょ~?もー、手を抜かずに戦っていれば壊れる前に勝てたのに~~」
サリアやリナも、ハンディタイプのMSDを扱ってみたようだが、サリアの言う通り、魔法の発動ができなかったようである。
だが、よくよく考えてみるとMSDが2台同時に壊れるというのは不思議だ。
サリアと自分の模擬戦や魔物狩りでMSDをハードにこき使っているところ考えると、今回の模擬戦での魔法のぶつかり合いはそう大したものではないように思う。そのため、魔法を行使するMSDの負担もそこまで大きいものではないはずだ。なのに”同時に”MSDが壊れたのは何か引っかかりを感じる。
まあ、自分に色々あったし、神経質になっているだけかもしれない。そう思ってサリアたちには言わないことにした。
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