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31 戦闘能力評価の説明と準備運動

(略)稚拙な表現等々、目をつぶっていただけると幸いです。

「みんなおまたせ~」

「お待たせしました」


 クラスが始まる時間前になるとリナとシルフィアが帰ってきた。シルフィアの手にはMSDが握られているが、短剣ほどの長さはなく、どちらかというとナイフに近い物であった。短剣よりも取り回しの良いナイフを選んだのかな?なんにせよ、物理攻撃型のMSDを借りれたのはいい事だ。


「シルフィアがMSDを借りれたみたいでよかった」

「でもシルフィアちゃんの持っているのって短剣っぽいけど、短剣は借りなかったの?」

「私が借りようとしたときには短剣タイプのMSDがすべて貸し出されてていて借りられなかったんです...」


 そんなに備品の数が少ないのかな?でも、MSDって魔法を破壊された場合はMSDが破壊される可能性があるから、それを嫌がって借りているのかもしれないな。短剣はサイズ的にも扱いやすいし、メイン武器として利用する生徒も多そうで学園の貸し出しの在庫から消えるのも納得というかなんというか。

 リナは、シルフィアの言葉を補足するように言う。


「先生が言うには、MSDの貸し出しが1週間前くらいからやってたって。それに、全学年が貸し出し対象だったのもあってすぐに貸し出せるものが無くなったみたい」


 全学年が対象ということは、新入生の自分達だけでなく、この学園の先輩方も戦闘能力評価が行われることになっているのだろう。それは貸し出しできるものが無くなってしまっているのも納得である。

 そんな中まだ貸し出しが可能であったナイフ型のMSDはかなりのマイナー武器なのだろう。森の中ではその取り回しの良さがいいのになぁー。広がれナイフ使いの輪。


「それはしょうがないね~」

「短剣を借りれなかったのは残念ですけど、私的には剣を振るう力もありませんし、軽くて取り回しのいいナイフでよかったのかもしれません」


 シルフィアは残念とは言いつつも、その表情は暗くはない。しっくり来たものでもあるのだろうか。

 などと回想しているとクラス担任のエルバ先生が入ってきた。時計を見るとクラスルームが始まる時間ちょうどであったので、解散してそれぞれの席に向かった。


__________________________


 教壇に立ったエルバ先生は出席確認をした後に今日から始まる戦闘能力評価について話し始めた。


「皆さんももう知っているとは思いますが、今日から1週間は戦闘能力の評価が行われます。さらに、模擬戦での勝ち点の上位者は選抜トーナメントに選ばれ、さらなる評価を受けることができるようになります。トーナメントに選ばれた人には特典がありますので、皆さん、張り切って戦ってくださいね~。それでは、その具体的な説明をしていきますね」


 話が長すぎたので要点だけを項目ごとにまとめると以下のような感じだ。


・組み分けの流れ

 演習場の大きな1区画を区切って4か所で模擬戦が行われる。最初の3日間はクラス内からランダムに4グループに分けて、グループ内で総当たりの模擬戦を行う。残りの2日間は総当たりでの勝ち点が高い順に4グループに分けられてランダムに模擬戦が行われる。


・戦闘

 1vs1で最大5分間の模擬戦を行う。模擬戦の勝者は相手を戦闘が続行できないような状況に追い込んだ方が勝ちとする。勝ちが得られる例としては相手の武器を弾き飛ばした場合、相手が攻撃を受けて飛ばされた時に受け身をとれていない場合が挙げられた。ただ、細かい規定等はなく、あくまで目安であると言及していたので、実際のところは試合の優勢具合で決まるというところだろう。ただし、致死性の高い魔法攻撃や物理攻撃を行っ場合は敗北となる。


・戦闘能力の評価

 模擬戦での立会人である先生や外部の人が戦闘能力の評価を行う。外部の人はこの国にある他の学校の先生方が9割で、雇われている衛兵や精鋭部隊の人が1割ということろである。

 その評価方法は5段階のアンケート方式で決定する。魔法の適切な使用、使用する魔法の規模又は複雑性、攻撃力、回避または防御力、総合的な戦闘内容が判定される。


 エルバ先生は戦闘能力評価方法について話し終えてクラスメイトからの質問を受けて回答した後、最後にと言葉を発した。


「演習場の方の準備が整っていませんので、皆さんは演習場に来ないで教室で待機していてください。準備が完了すると放送でアナウンスがありますのでその指示に従ってくださいね」


そして、先生も準備ががあるとのことで駆け足で教室から出ていった。エルバ先生、廊下は走っちゃいけませんよ?


 教室内はエルバ先生が出て行ったあと、席で待機することが緊張を誘うのか何なのか、そわそわしている人が多くなり、席を立って各々が行動し始めたりした。

。特に男子なんかは準備運動なのかシャドウボクシング風に拳を空間につきだしたり、それを回避するように動いてみたりと待ちきれない様子だ。普段は剣で戦っているのに...。

 時間の経過とともにだんだんと程度がひどくなるので、女子が「ちょっと男子ぃ~」と注意をしていた。この世界で「ちょっと男子~」の言葉が聞こえてきて、どこの世界でも変わらないんだなと少し感動したりした。演習場に移動していい時間となるまで、そんな騒がしい雰囲気のままであった。


 そんな雰囲気の中、サリア、リナ、シルフィア自分は再び集まって模擬戦の事について話し合うのであった。クラスの騒がし雰囲気に当てられてか、サリアたちは緊張せずに待ち時間を過ごせた。


 程なくして演習場での準備が完了した事を伝える放送が流れた。


「学園の皆さん、闘技場の準備が整いましたので、クラスごとに指定された闘技場へ順次向かってください」


 すると、騒がしかったクラスメイトは一変して静かなものになった。それに伴って教室内の空気が張り詰めて緊張の雰囲気が漂い始める。

 放送を聞いたサリアやリナは普段と変わらない仕草であり、特に気にしていないようだ。戦闘経験が豊富であるサリアが緊張していないのはわかるが、リナが緊張していない理由はどこから来るのだろうか?案外、前向きな性格というか、脳筋...いや、素早い剣を振ることができる筋肉...。前向きな性格からきているのかもしれない。

 一方、シルフィアは緊張気味になっているのか肩に力が入っている。それもそのはずで、シルフィアはこれからやったこともない戦闘(?)方法を自身が評価される場面で試すのだ。しかも、普段使わない武器を使ってだ。緊張しない方がおかしい。

 今から緊張していると金曜日までは持ちそうにないので、シルフィアと会話をして緊張をほぐしつつ、みんなで一緒に演習場の指定された区画に向かうのであった。

______________________________


 そんなこんなで演習場に着いてみると、普段見ていた演習場とは異なる風景となっていた。大きな演習場内に4つの区画が設けられて、区画内に魔力エーテルを用いた結界装置によってテニスコート2面分程度の結界が張られている。この結界の内側が戦闘フィールドのようで、結界の外側には戦闘能力の評価を行う人が3人程度、長机のある場所にいる。

 こんなのガチじゃん...。もうちょっと気楽な感じを想定していたけれど、がっつり評価する感じじゃん。唯一の救いが評価を行う人が柔和そうな人ばかりという点だ。外部の人が評価を行うとあって強面な人が居るとばかり思っていたけれど、そうではないので多少気が楽な気がする。


 とはいえ、100%気を抜いた戦闘はすることはできない。自身の能力をひた隠しする必要があるのだ。それに伴って、自身に課した自分が使用可能な魔法の範囲を厳密に守る必要がある。

 保有する魔力が無属性という貴重なサンプルであり、希少な種族であるスノウエルフである自分を狙ってくる曲者が居ないはずがない。というか居た。先日の問題を引き起こした男子生徒のリーダー的な奴である。

 さらに、一般的には無属性魔力保持者は魔法が自由に使えないという話であり、魔法を自由に使えるとなってはかなり目立つ存在になる。そうなれば、自分を知る存在が多くなり、普通とは大きく異なる自分を狙いにやってくる人が多くなる。被害妄想が激しいだけなのかもしれないけれど、用心に越したことはないはずである。なので、戦闘内容には気を付けていかなくてはならない。ふんす。


 演習場のフィールドを眺めつつ、鼻から息を粗く吐いて一息ついているところに、周囲を見渡していたサリアが何かに気が付いたようで話しかけてきた。


「みんな、あっちの壁に組み合わせ表があるよ。確認しに行こう」

「あっちにあったんだ!誰と戦うのかなぁ?」

「順番が気になりますね...」

「気になるね~」


 それぞれ微妙に異なる反応をしつつ、壁に貼られている組み合わせ表を確認しに行く。

 組み合わせ表の前にはクラスメイトが多く居るので、背が低い自分はクラスメイトの壁に阻まれて表を見ることはできない。背伸びしても何も見えないし、少し場所をずらしても、前に居るクラスメイトが動いてすぐに見えなくなる。クラスメイトの群れに割って入ったとしても弾き飛ばされそうだ。

 背が高いってそれなりに便利だったんだなと背が低いことに敗北感を覚えながら、表から離れたところで人が履けるのを待つことにした。


 ふとサリアたちから視線を感じたので振り返ってみると、3人とも少し表情が蕩けている。さらに、視線は全て自分に向かっており3人をそうさせた理由が自分にあるようだ。こちとら一生懸命組み合わせ表を見ようとしていただけだぞ?自分が何をしたというんだ。


「かわいい」

「かわいいよね」

「かわいいですね...」


 しかも3人とも手をわさわさしながら自分に向かって近づいてくる。だめだ、早く何とかしないと。とはいえ、どうすればいいのか?とりあえず、餌食にはなりたくないので


「なんか怖いからやめて~」


 とサリアたちから逃げることにした。サリアたちも緩く追いかけてきた。これどこまで逃げたらいいですかね?怖いんですが??でもまあ、緊張ほぐれるし準備運動的な感じと思えばいいのかもしれない。


 緊張が走る演習場の一画で少しの間だけゆるい鬼ごっこが開催されるのであった。

_____________________________


 サリアたちとの準備運動?の鬼ごっこが終了したときには、組み合わせ表前の人だかりはなくなっていた。ちょうどよかったねと言いながら、組み合わせ表を見に行くと、自分の番は第一試合であった。その開始時間は5分後くらいに迫っているのであまり時間もない。急がないとな~と思いつつ、サリア達の名前があるところを見てみる。するとメンバーが1つのブロックに被ることなく綺麗にブロックごとに分かれているようで、サリアはAブロック、リナはCブロック、シルフィアはBブロックであった。ちなみに自分はDブロックだった。

 初日から3日間はブロックごとにリーグ戦が行われるのだが、試合数やその待ち時間的に全員で一緒に集まることはできそうにない。集まれる時と言えば放課後くらいか。ちょっと寂しさはあるが、初日の自分の試合の巡りとシルフィアの巡りは微妙にかぶっているようで待ち時間も同じような時間帯であったので、待ち時間はシルフィアのところへ突撃するとしよう。


 待ち時間をどうしようかと第一試合である事を忘れて組み合わせ表を眺めていたらリナが声をかけてくれた。

 

「カオリちゃんの試合もうすぐじゃん!早くDブロックに行った方がいいよ!」

「あ、時間がもうない感じだね。リナ、言ってくれてありがとう。それじゃ、みんな、模擬戦に行ってくるよ~」


 テテテと軽く走ってDブロックに向かう。危なかった。完全に待ち時間をどうするかに意識が飛んでいた。模擬戦が始まる前から早々にポカをするところだった。教えてくれて感謝感謝。

 とはいえ、何やら後ろから先ほどと似たような視線を感じなくもない。それに、3人がつぶやく言葉も聞こえる。


「ちょっと抜けててかわいいよね」

「たまに見せる愛嬌って感じがまたいい!」

「走り方も何だかかわいいです...」


 なんかマスコット的扱いをされているような気がしてきた。

_____________________________

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