29 結界改修作業
(略)稚拙な表現等々、目をつぶっていただけると幸いです。
今週投稿分はこの話のみになります。
結界の本格的な改修をするぞと意気込んでいる銀髪ロリエルフになった者です。
結界の改修が必要となったのは、一昨日の金曜日に起こった演習場での出来事だ。そこで問題を起こした主犯格がなんとも粘着質なタイプに感じたので、自分の家を特定されて家や自分に被害が及ぶのが時間の問題である可能性が高い。そのため、曲者が侵入できないような結界にいち早く改修する必要がある。
昨日は結界について図書館で調べものするだけで終わってしまったので、今日こそは結界を完成させたい感じだ。
そういう感じで、今は自室で紅茶を片手に、結界の魔法陣を組み上げることにする。窓の外のきらめく湖を眺めつつ、ふかふかの椅子に座り紅茶を飲むという、かなりリラックスした環境ではあるけれど、その時の方がいいアイデアが出ると思う。あ、今日の紅茶はうまくいれることができたな。何が良かったんだろうか?蒸らす時間かな?...とまあ、脱線してしまうけれど、いいアイデアが出るはず。出るはず。
話を結界について戻すと、昨日図書館の秘密の部屋で見つけた書物から結界に関する新しい情報を手に入れた。それは、結界は基本的にすべての通過を拒絶するという点だ。聞こえはいいけれど、それはいくつかの点が問題視していないからだ。その点はおおよそ次の2点に集約される。
1.光、熱が通過しない。
2.気体、物体が通過しない。
1.の場合は結界の外から中を観察できないだけでなく、結界の中から外の状況を観察することができない事を表している。また、熱を通さないので断熱性はかなり高いものの、逆に言えば調理などにより発生した熱が結界内にこもり続けることになるということだ。そうなると、熱が結界内にたまり続けて結界内温暖化待ったなしということになる。
2.の場合はそのもそも物体が通過できないので、呼吸に必要な酸素や庭にある植物に必要な窒素などが無くなっていく点が問題となる。生命の危機である。
これらの問題を解決するには、基本となる結界の魔法陣に例外処理を施す魔法陣を組み込むことで解決する。例外処理を施す魔法陣は例の本にサンプルとして記載されていたのでサンプルの中から選んで組み込むことができる。本当にいい本だった。
例の本の気になる内容は全て紙に移したが、結局省くところが無かったので複製本みたいになってしまった。その複製本は、自身の能力の再構成を使って頭の中にいれてある。マジでこの能力は便利だな。
そんな感じで結界の魔法陣を組み上げるために、例外処理を行う様々な魔法陣のサンプルを元に4つほど決めた。
1.特定の魔力を持つ生命体を通過
2.日常範囲内の自然現象を通過
3.1.の例外を一時的に認める。
4.特定のアクションが生じた場合、特定の領域のみ結界の効果を無効化
1.は結界から外せない要素である。魔力には生命体の情報が宿っており、ヒトだけでなく猫や犬、魔物にもある。生命体の情報は決して同じものはないとのことなので、その情報を含む魔力情報を結界に組み込んでおけば、その魔力を持つ者だけが結界を通過できるという感じだ。
2.について、気体の流れや光、音を自然現象の範疇を超えない程度のものだけを通過させるものだ。通過させるものの程度が、自然現象の範疇という極めてあいまいな表現ではあるが特に問題は生じないと思う。。
3.は例外として入れる人を決めておかなければ結界の内側に客人を招き入れることができない。そのため、例外を登録できるようにしておかなければならないが、おおよその目途はついている。その方法は以下のような感じだ。
1.を機能させる魔法陣の生命体の情報の個所を空欄にしておいて自分の許可がないとこの魔法陣が発動しないようにしておく。客人には結界の外にある石に触れてもらい、そこで読み取った魔力情報を例外処理の空欄に当てはめるという物だ。多分これで大丈夫だろう。
4.はマスターキーのようなものだ。大人数が来ることを想定していないが、万が一そうなった場合、3.の例外処理の魔法陣に書き込む欄が埋まってしまうことが考えられる。そういった場合に対応するためのものだ。
例外的な要素が決まったので、頭の中の複製本にある魔法陣を元に魔法陣を頭の中で組み込む。組み込み方はいたってシンプルで魔法陣の中に魔法陣を組み込むと終わりという感じだ。レゴブロック感覚で組み立てることができたのでかなり楽だ。そのため、結界の魔法陣の組み上げにはそれほど時間がかからなかった。
ただ、それなりに時間が経っていたようでカップの中身は空になっていた。
ちょうどカップに入った紅茶も空になったことだし、次の作業に移ろう。
えいえいおー。
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これらの要素を組み込んだ魔法陣を用意したら、お次は現在の結界を動かしているMSDを新しい魔法陣が動くようにする。そのために、結界をうごかしているMSDがある屋敷の地下に来た。毎日魔力を供給するためにこの場所にやってくるのだが少し物々しい空間だと感じる。前のオーナーさんは雰囲気を出すために、だいぶお金をつぎ込んだのだろうな...。
現在使っている結界のMSDはかなり柔軟性が高いようで直接魔法陣を変更することもできるようなタイプとなっていた。魔法陣の入力方法はアナログな手に書いたものか何かをスキャンする方法と、記録媒体的な何かで入力できる方法がある。今回はスキャンする方法でMSDに魔法陣を読み込ませることにする。
自身の能力を使って紙に魔法陣を書いたものを生成して読み込ませる。これだけで魔法陣の読み込みができるので、文明のすばらしさを感じる。
ただ、問題は読み込んだものがすぐに使えないという点である。
「えーっと、このタブに必要な項目を記入して、トリガーとなる項目を記入してください?」
「魔法陣に入力される情報が不明です??魔法陣1と魔法陣2に入力される項目を選択してください???」
という感じでとても不親切極まりない項目だらけで、何を記入すればいいのかの把握から始めなければならず、かなり手間取ってしまった。記入したらしたで、謎のエラーが出まくるために発狂しかかったのは秘密である。
よくわからないなりにもいい感じに結界用MSDの設定が完了したので最後は結界の外に置くMSDだ。このMSDは魔力情報を読み取り、結界を動かしているMSDに伝達する役目を担う。このMSDはいわばインターホン代わりとなるものなのでいいものを設置したかったけれど、今用意できるものは屋敷の中に転がっていた小さいMSDしかなかった。それに、そのMSDを使う上での最大の問題は結界用のMSDとは異なり、MSD自身で魔法陣の書き換えができないものだ。
詰みじゃん。これは買いに行かないといけないパターンか?でも、結界が無い状態では家の守りが心もとないし、どうしようか。まあ、窓際で紅茶でも飲んでたら思い浮かぶだろう。
そんなこんなで再び自室に戻り窓際で紅茶をすすりながら思考を巡らす。あ、今回はあんまりおいしくないな?いれるときの温度が悪かったかな?
紅茶で思い出したけど、そういえば、だいぶ前にお茶したときにサリアがMSDに関して何か言ってたな。
「...一部のMSDは核に刻印を施すタイプなんだけど...」
MSDの刻印の施し方か...。確か、MSDのうち書き換えが不可能なものは、核に魔法陣の刻印を施すことによって魔法の発動がなされる。刻印を施すことは、刻印の方法が違うとはいえ書き換え可能なタイプも同様だったと記憶している。となると、この屋敷に転がっていたMSDの核を自身の能力を使って一旦分解して再構成を可能にした後、核を再構成するときに魔法陣の刻印を施せば対応した魔法が発動できるはずである。まあ、魔法的な作用がうまく働いていた場合は再構成できないために失敗に終わりそうな気がするが、人工的に作れるものだからなんか行けそうな気がするな?やってみるか。
まずは、自身の能力を使って分解を行う。分解するMSDを手に持ち、分解していく。分解しているときの感覚からして、核は”ほぼ”純粋な魔力で構築されている。核の魔力の純粋さは魔石が上回っているけれど、核の魔力密度の高さはかなりのものと感じた。この”ほぼ”というところが核を精製するための工程に当たるのか、それがあるから核として利用できるのかは不明である。なんにせよ、やってみたら何とかなるだろう。 また、MSDの核以外の場所について、MSDが魔術を扱う装置であるために何か魔法的なsomethingが施されているのかと思ったが、分解したときの感覚からそうではなさそうだ。そのため、魔力供給なしにMSDが自発的に動いているという訳でもないということが分かった。核以外にも魔力的な反応があったので、魔力の通りをよくするためか、受動的に働く魔法陣が小さな核に組み込まれているのかもしてない。
MSDの原理について思考が飛びながらも、頭の中で結界の外に配置する用の魔法陣を核に配置していく。核のサイズは小さいので、複雑な模様の組み合わせである魔法陣を手彫りで彫り上げることは一筋縄ではいかないだろうな。自身の能力の便利さを感じる。マジ升。
刻印された核と何も刻印されていない核を生成して、その核を見比べる。魔法陣が彫られていない部分はきれいな紫色で透明感がある一方で、魔法陣が彫られている場所はすりガラスのようになっている。なんか視覚的に綺麗な結晶である核が台無しになっているような気がするな?
一息つこうと、ティーカップを傾けると空になっていた。これまたそれなりに時間が経っていたようだ。代わりに水を飲んで一息ついた後、今度は外に出て客人が結界に通れるようにできる装置を作ることにした。
結界からの出入りを想定している屋敷の境界を表す門の外と内に、刻印された核を埋め込んだモニュメント的なものを作ることにした。装飾は少な目のシンプルな六角柱で無骨さ満載であるがこの辺は後から何とかなるので問題は生じないだろう。そんな感じのモニュメントはインターホン的な役割を果たすと思う。多分だけど。
そうして全ての結界のを発動させる用意が整った。結界を起動させるために再び結界用MSDがある地下に行き、目の前に立つ。緊張して固い動きをしつつ、結果用のMSDにある魔法起動用のボタンを「うまくいってくれ~」とお願いしながら押した。「よろしくお願いしまあああああす」とか鼻血を出しながらボタンを押したわけではないよ?。ほんとだよ?
その直後、MSDがエラーを吐くことなく正常起動を示す表示に切り替わったしたのでとりあえず魔法陣が起動したみたいだ。MSDから出る魔素も以前の結界ほど多くなく効率的に動いている感じがある。1日あたりの魔力の消費量が減ってそうな気がするので、毎日魔力を魔力タンクに補充する必要もなくなるかもしれない。
屋敷から出て結界を確認すると、特に何も変わったことはないほど違和感が無い。以前の結界では光が屈折して歪みが見えていたりしていたが、それもないためかなり結界の魔法陣が優秀であることを示している。
あまりにも違和感が無さ過ぎて結界が正しく機能しているのか疑問に思ったので、結界がある場所に向かって石を投げてみる。すると、結界があると思われる場所で石が跳ね返されていた。正しく結界が機能しているようだ。とてもgooodだ。
そんな感じで結界改修は大成功に終わった。一時はどうなるかと思ったが、今日中に何とか出来て良かった。これで曲者が来たとしても結界の内側に入ることができないから安心して眠れることができる。すばらしい安眠環境が守られるな!
結界も出来上がって、家を空けておいても大丈夫となったので安心して出かけることができる。色々頭も体も使ってお腹減ったからおいしい物でも食べに行こう。
えいえいおー。