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2-95 事態の説明と模擬戦のお誘い

(略しすぎています)

 紅茶とお茶菓子を堪能しつつ、ジェームス国王と雑談をしたりした。その内容は自分の学園での生活だったり、国王のお茶目な一面だったりと目的のないものばかりだ。メイドさんも時折会話に加わるなど、まったりした時間を過ごした。まさか国王さんと一緒にそんな事をする日が来ようとは誰も思うまい。

 ジェームスさんは腹の探り合いがない会話にとてもリラックスしていたようで、ダジャレや冗談も言うなど近所のおじさん的な発言もあった。なんか、立場あると普段は迂闊なこと喋れないから大変だよな。がんばれ、ジェームスおじさん。


 そんなこんなで、ジェームス国王との話に一区切りついたとき、ジェームスさんがチラリと部屋の壁にある時計を見た。自分もその視線につられて時計をみると、11時ごろになっていた。思いの外長く話していたらしい。

 ジェームスさんは時刻を見て何かを思い出したようで、自分に声をかけた。


「もうこんな時間か。実はもう少しカオリさんに用があったのだが、それをすっかり忘れていた。宮廷魔導士隊長のペーターが今回の件で聞きたいことがあるようだ。そろそろこの部屋に来るようだが」


 ジェームスさんがそう言葉を区切ったところで、ドアを挟んだ向こう側からペーターの魔力を感じた。どうやら本日のメインイベントのようだ。ジェームスさんと話して気が抜けたが、気を入れ直すとしよう。

 自分が息を短く吐いて気持ちを入れ替えた時、ドアをノックする音が聞こえた。


「宮廷魔導士のペーターです」

「うむ。入れ」

「失礼します」


 そう言うとペーターさんが部屋に入ってきた。ペーターさんは分厚い紙の資料を手に持っていたので、チラ見すると報告書(案)という文字が見えた。今回の件の報告書を作成するにあたり、自分の視点がなくて全容が掴めないってところだろう。自分から聞き出すことが盛りだくさんなのか、至る所に付箋が付いていた。これは気を張っておいて正解だな...。


「おお、ペーター。ちょうどいいところに来てくれた。今、ペーターとの話があることを伝えておったのだよ」

「それはいいタイミングでした。国王もご一緒されますか?」

「そうするとしよう。今回の件を知るには両方の話を聞いておいた方が良さそうだ」

「承知しました」


 そう言うと、ペーターさんは自分の隣にあるソファーに座り、資料をテーブルの上に置いて話し始めた。


「今回の件はカオリさんのおかげで被害が最小限に収まった。感謝する。ありがとう」


 ペーターさんは感謝の言葉を伝えると共に、頭を下げてきた。自分がそれを素直に受け取ると、ペーターさんは話を続けた。


「この件について報告書という形で当時の状況をまとめる必要があり、カオリさんに時間をとって頂いた。我々が知り得た情報のみではどうしても不明な事があるので、そこをご存知なら教えて頂きたい」

「わかりました。自分がお答えできる事なら何なりと」


 もちろん喋れない事もあるけどね。エンシェント・タートルを倒した魔法とかね。あれを知られては面倒になるし。


「ありがとうございます。お言葉に甘えるとします。まずは、大筋からの確認になります」


 ペーターさんはそう区切るとテーブルの上に置いた資料を捲り、今回の件概要まとめページを見せてきた。当時生じた状況が宮廷魔導士と特殊魔動騎兵の視点で時系列順に並べられている。そこの中に、ペンの赤文字でカオリさんの動きと書かれていた。まあ、演習最終日は宮廷魔導士と情報交換していないので自分の動きはわからなくて当然だ。


「演習最終日でのカオリさんの動きを知りたい。教えてくれるだろうか?」

「もちろんです」


 そう言って自分はペーターさんの質問に答える形で当時の状況を説明した。

 当日夜、リリーガーデンと共和国勇者の補助メンバーであるジェシカと共に、帝国と共和国の強い要望によって帝国勇者一行を探すため演習地西部へと向かったこと。その後、見たことのない統率の取れた魔物の集団に襲われたり謎の集団から襲撃されたりしたことや、謎の集団の仲間割れのような状況が発生して逃れられたこと。救助パーティーにシルフィアを預け、自分はエンシェント・タートルを討伐したこと。その後、寝たり迷ったりしたら夜が明けたことを伝えた。

 一部は本当のことを言わずに知らない事にした。マニューヴェの事や謎の集団が帝国によるものであること、狂化人間の事などだ。全てを知っているが、なんで知っているのか問いただされると色々困る事になりそうだからね...。


「なるほど...。我々の知らないところでそんな事があったとは。カオリさんも大変だっただろう。そうなると、あのレーダーにあった統率の取れた動きは魔物によるものか」


 ペーターさんは呟きながら紙の資料に聞き取ったことを書き加えていく。色々点と点が結ばれているよで、ペーターさんの表情が明るい。余程自分の動きが分からなくて頭痛の種になっていたのだろう。


「確かにこの状況では騎兵隊と連絡が取りようがない。エンシェント・タートルへの攻撃タイミングも騎兵隊が攻撃に巻き込まれないように配慮されていた。何も問題はなかった事になるな」


 ペーターさんの呟きに反応してジェームスさんが呟いた。


「ほほぅ...。これ程の状況に巻き込まれていながら大きな負傷なく乗り越えた事が奇跡のようだ。どこぞの勇者の話を思い出す」


 ちょい待って、どこぞの勇者の話って何?洞窟にあった勇者の話か?それともまた別の話なのか気になる。その勇者の話を詳しく!と思って口を開こうとした時、ペーターさんが話し始めたので聞くことを諦めた。残念。


「最後になるのだが、エンシェント・タートルをどう討伐したか聞きたい。両方討伐した際に使用した魔法は同じで合っているだろうか?」


 これは回答が難しい質問が来たな。正確に言うと違う。1体目は物理的なエネルギーで倒して、2体目は自己保有魔力を暴走させて倒した。それをどう実現させたのかが聞かれているのだが、2体目はどう説明しようか...。豪速球で魔石投げたらなんか討伐できましたって事にならないかな?ならないか...。

 回答に詰まるのも印象悪いし、喋りながら考えるか。


「同じ魔法ですが、倒し方が異なります。1体目は魔法銃による高火力射撃で倒しました。その攻撃で魔法銃にダメージが入ったので、2体目はその辺の魔石を低速で発射するに止め、エンシェント・タートルの魔力暴走を引き起こしました」


 色々端折っているけど間違いは言ってない。間違いは。1体目は弾丸を魔法銃と自身の能力使って加速させた攻撃だ。2対目は自身の能力と自身の魔法で加速させた魔石のぶん投げだった。間違いはない。


「魔石を」

「投げた?」


 ジェームスさんとペーターさんは揃いも揃って同じところに反応した。仲良しかな?だが、普通の魔石だとそうはならんやろってなるのよな...。魔物って魔力を食べるので、魔石を食べたところで魔力基底の変換が入り無害化される。純粋な魔石を撃ち込まれたところで同じ状況になるはずだ。だが、自分が魔石に加工を加えて、撃ち込まれた対象の魔力基底を書き換えて自身の魔力を有害化する魔法を発動するようにした。こんなこと言えるはずもない。第一、魔石に魔法陣書き込むとか無理だからMSDがあるわけでツッコミどろこしかない。言わないのが一番。


「ええ、襲撃された魔物から落ちた魔石を投げたらあんな感じに」


 これは嘘だが、多分同じ事になるはずだ。襲撃してきた魔物は狂化人間の事で、狂化人間には自身の魔力基底を別の基底に変換する魔法も施されていた。魔力基底の相性によっては同様の現象を引き起こすことができるはずだ。


「落ちた魔石を」

「投げた」

「「ホァ」」


 いや、2人揃って芸人か。そんなツッコミをできるほど心臓に毛が生えていないので、心の中にしまう。


「そんなところです。私も正直何が起きたかわかりません。2体目の討伐時、魔力の波がエンシェント・タートルから拡散していたので、保有する魔力が暴走して爆発したと推測しています」

「なるほど。カオリさんも具体的なメカニズムは知らないようですし、2体目討伐に生じた現象は不明。魔力暴走と思われるとの表記にしておきます。それで、あの状況でしたか...」

「詳しい事は分からないが、口ぶりからかなりの被害があったのであろう。魔力暴走の波の影響はどの程度だったのだ?」


 自分はその状況を十分に知らないから気になるな...。人が死んでるとか死んでないとか知りたいし...。


「国王、結論から言うと当時の被害は魔動特殊騎兵7機と機体搭乗員の一時戦闘不能になります。搭乗員は一時失神状態に陥りましたが、機体の耐魔法壁のおかげで搭乗員への被害は最小限でした。それがない状況だと死亡していた可能性があります」


 おお、全員無事でよかった。読み通りでほっとしたぞ。


「離れた宿舎からでも体を揺さぶられるかと思うほどの魔力の波を感じ取ったので、現場では相当なものだったと思います。搭乗員に後遺症はなく経過も良好です。特殊騎兵は魔力回路損傷の恐れからメンテナンスに入っており、現場で使えるまで1ヶ月はかかるかと」

「ふむ。となると、安全保障上の影響はあるか?」

「結論から言えば軽微です。各地の戦力バランスが多少崩れるため、その修正のために動く必要はありますが深刻ではありません」

「そうか。ならば良い。今回の件で諸外国も気を利かせて戦力を寄越すかもしれぬ。その点を含めて今後もバランスに注意するように」

「承知しました」


 なんか戦力バランスがとても繊細なようだな。なんの事かわからないが、一触即発の雰囲気が漂っているのだろうか。まあ、関係ないし放っておいてヨシ!藪を突いて蛇を出すことはないのだ!

 そう考えをまとめていたら、ペーターさんから声がかかった。


「あ、カオリさんにはもう一つお願いがあるのだが聞いてくれるか」

「物にもよりますが、なんでしょうか」

「隊員との手合わせを願えないだろうか。この件以降、カオリさんの実力を図りたいと思う人が増えていてね。隊員たちのいい刺激になると思うのだ」


 自分の隠さなければいけない実力を暴かれそうで、戦うのは遠慮したいところなんだけど...。これをやっておかないと後々尾を引きそうだしな...。悩むぞ...。


「お礼に我々ができることならなんでもさせてもらう」

「なんでもって...なんでもですか?」

「法や道徳に背かなけれななんでも」

「やります」


 なんでもに釣られて言っちゃった。我ながら自分、チョロすぎる。

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