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2-94 事の顛末

(略しすぎています)

「結論から言うとこの件は帝国と共和国による戦況改善に向けた工作だと考えている」


 ん?戦況改善ってなんの戦況だ?この件は学園内で地に落ちている?勇者の地位回復とかを目論んだものじゃなかったのか?

 自分が何もピンときていない雰囲気を察してか、ジェームスさんはことの背景から話し始めた。


「まずは帝国の置かれた状況から説明しよう。帝国は魔法技術に関しては世界屈指の国でもある。しかし帝国には魔法に関連した資源が多くはなく他国からの輸入に依存しているため、帝国の魔法関連貿易は通年で大きな赤字となっている。その改善のため、獣人の国で非道な行為によって領地を拡大し、その土地に眠る魔法関連資源を自国に持ち帰っている」

「なるほど。魔法関連資源のためと言うのはシンプルでわかりやすい理由ですね。自分の知識では、帝国がその行為を行う理由が土地が肥沃ではなく十分な食料が得られない為とのことでしたので少し腑に落ちました」

「いや、今カオリさんが話してくれた説は一般的な話では正しい話だ。それはあくまで表向きの話だ」


 魔法が十分発達している上で魔法資源集めまくっていたら戦争でも拡大するのかなって感じになるし、表向きの理由は必要だよな。だが、そうせざるを得ない理由は他にあるのは間違いない。それは、他国で戦争を起こして領地拡大するために魔法関連の資源を使うのはおかしな話だからだ。


「なるほど。でも、理由はそれだけじゃないんでしょう?」

「もちろんだとも。一般階級以下に課した大きな税によって一部の民衆には不満が溜まっている。その負荷分散を目指して一般階級未満の労働力の確保を進めているのだ。皆まで言わんが指導者エゴ...のようなものかもしれん。いや、今の話は忘れてくれ」


 エゴに付き合わされる民衆も大変だろうに...。そんな言葉がジェームスさんから聞こえてきたような気がした。そのエゴに巻き込まれた身からすると、全くの同意見です。


「そこでだ。今回の起きた事象はそういった件を改善する起爆剤のような位置付けだと感じている」

「それは帝国や共和国の勇者の明確な功績と地位向上による内政安定化がそうですか?」


 そう言うと、ジェームスさんから感じる魔力が一瞬だけ不安定になった。多分正解を引いた感じのようだ。


「皆まで言わないつもりだったが、そこまで考えが及んでいるならば詳しい話をするとしよう。帝国と共和国は同盟を結んでおり、ほぼ同じ考えの元で動いている。そんな中、学園内で帝国勇者や共和国の留学生による問題行動とも呼べる行為は自国内にも話が及んでいた」

「当然そうなると民衆は政権や貴族に対して負の感情を抱きますね。内政が不安定な帝国と共和国では、反乱の起爆剤になりかねなかったと」

「その通りだ。そこで、2カ国が思いついたのが事件を起こして、自国の勇者たちに解決させようという話だったとみてる。上手くいけば自国の勇者が民衆の希望となるだけでなく、内政問題もなくなるからな」


 ここまでは、自分も想像していた範疇だ。だが、今回は帝国の勇者がメインで活動していたはずなので、共和国の学生や勇者が動いていないの理由が語られていない。ちょっと聞いてみるとするか。


「質問があるのですが、今回の件で共和国が動いていない理由としてはどう考えてますか?自分は共和国にとってリスクが高いことから裏での協力に留めたとみています」

「私もカオリさんと同意見だ。今回の件が失敗して世間に露見した時のことを考えるとリスクが大きすぎる。実際、既にエンシェント・タートルが突如として発生した理由が無さすぎてマスコミが騒ぎ始めているし、強引な工作が露見している。共和国はその工作を知っていたからこそ、裏での協力に留めたと見ている。実際はどうかわからないけどね」


 確かに、今回の件はかなり雑と言わざるを得ない。エンシェント・タートルが発生するだけの魔素濃度に達していない上に、それが複数体出現するというのはあまりに不自然で人的な関与が強く疑われる。共和国がやったと思われる魔物の大量発生の方は、事前に魔素濃度が高い状態を維持するなと不自然さを消すことに注力していた。それと今回の件を比較すると雲泥の差がある。共和国はそれを懸念したのだろう。


「事実、今回の工作では雑に動いているからか、既に複数の情報が耳に届いている。わが国の西部沿岸地域での密入国、実習区域での不自然な活動などなど頭が痛い。というか、わが国ながら警備がザルすぎないか?」

「そうですね...」

「やっぱりそう思うよねぇ...」


 お茶目か。


「そんな派手に動いてくれた帝国には表に出ないルートで各国からラブレターが送られているようだ。今回は我が国だけでなく、諸外国も巻き込まれているため当然だろう。そのため、世間には見えない形だが、帝国への締め付けは強まっている」

「それは魔法資源関連の弊国への輸出制限...ではないですね。経済上の協定打ち切りなどですか?」

「詳しいことは言えないが、そのあたりだ。帝国や共和国は締め付けすぎるとどう動くか分からない状況まで来ているから各国はかなり慎重に気を使っているようだ。実際我が国の官僚は頭を抱えておった」

「アステラ国としての落とし所は被害を受けた分の賠償請求くらいでしょうか」

「その通りだ。まるでどこかで聞いてきたかのようで怖い」


 まあ、今回の被害は物的な被害に留まっているからな。演習地の宿舎にある結界装置と特殊魔動騎兵の修理費くらいか。一体いくらふっかけたのか想像がつかないが、慰謝料という名の名目で結構盛ってそうではあるな...。


 そう考えていると、ジェームスさんは手を挙げて気配を消しまくっていたメイドを呼び、紅茶を淹れるように指示した。どうやら話はここまでのようだ。ことが起きた経緯の答え合わせも済んだし自分としては大満足だ。

 メイドさんは魔法のケトルで湯を沸かし、手際良く紅茶を淹れると静かにテーブルの上にティーカップを置いた。液面から立つ湯気からは上品な香りがしてきて、今すぐ飲みたい!それに、メイドさんが自分に視線を向けて微笑みを向けてきた。え、かわいい。余計に美味しく感じてきそうだ。というか、美味しくなる魔法がかかってるだろこれ!?


「カオリさんはそんなにこの紅茶が気になるか?」

「もしかして、顔に出てました?」

「それはとても。どうぞ、召し上がってください」

「では、遠慮なく」


 ティーカップを持ち上げてまずは香りを嗅ぐ。これは芯がはっきりしていながら、ボディー感もある上品な香りだ。これは期待できるぞ!

 そうして、一口啜ってみると、最初は甘くてまろやかな風味が口に広がるが、次第に薄れて行きすっきりとした後味になった。渋いところはなく、とても飲みやすい。茶葉がいいだけじゃなくて、茶葉の持つポテンシャルを最高に引き立てるメイドさんの技量あってのものだ。このメイドさん、できる!

 そう思ってメイドさんの方にちらっと視線を向けてみると、小さくピースをしていた。お茶目か!

 そう心の中でツッコミを入れていると、ジェームスさんが話しかけてきた。


「とても気に入ってくれたようだな。手土産として用意しておこう」

「ありがとうございます。とても美味しかったので嬉しい限りです」

 

 まさか手土産をもらえるとは思えてなかったが、嬉しいお土産だな。銘柄控えてどこかのお店で入手可能か調べてみよう。

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