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2-77 相手からの先制遠距離攻撃と反撃

(略しすぎています)

 リリーガーデンとジェシカさんは月が分厚い雲に隠れて光が届かない暗い森の中を走り続ける。今は自分がパーティーの先頭を務めており、受動探知を使って邪魔になりそうな魔物たちを排除しつつ宿舎への道のりを切り開いている最中だ。

 サリアたちの疲労を軽減させるために足元が安定している獣道を突き進んでいるものの、サリアたちの体力が消耗してきているのか進行速度も下がってきている。多分、撤退するまでに体力を使った所為だろう。何もしてなくとも緊張状態が続くと体力減るもんだし。普通なら休憩を入れるタイミングなんだけど、止まると追いつかれて戦闘に突入してしまう。戦力的に厳しいため、追いつかれる前に宿舎からやってきているギルドの救助部隊と合流しておきたいところ。なので割とめっちゃ厳しい状況だ。


 追っ手の方は休まずに自分たちへと迫ってきている。サクッと能動探知をした結果、追っ手は魔物でも人でもない隊を先行部隊10と後続部隊16、最後尾部隊6に分けて、先行部隊はさらにスピードをあげていた。最後尾部隊は、魔物でも人でもない部隊の他にマニューヴェと帝国機関の4人の反応があり、各自が散り散りになって何か行動を起こしているようだ。部隊が別れて一度に会敵する敵の数が少なくなったとはいえ、戦闘力的にはこちらが圧倒的に不利だ。楽観視はできそうにない。

 先行部隊との距離は、多分10分くらいで追いつかれる感じだ。そろそろ行動に移さないとまずい。宿舎からの応援はあと20分くらいで到着しそうなのだが、最低でも10分間は戦闘する必要がある。これは先行部隊と会敵する前に部隊の数を減らしておかないと詰むこと間違いなし!この予想は当たるね!


「カオリちゃん、前!」


 サリアから声が飛んできたので、考えるのをやめて進行方向を向いた。すると、目の前にウルフが迫っており、噛みつき攻撃のモーションに入っていた。考えながら能動探知すると流石に戦況把握が雑になっていけないな。というか、このウルフステレス性能高すぎないか?こいつ、できる...。

 横目でサリアたちを見るとウルフに気づいて攻撃を加えるつもりでいたようでMSDを構えていた。だが、自分と魔物の距離が近すぎて攻撃できなかったようだ。サリアたちは疲れからか気づくのが遅くなった結果、気づいた時には自分の目の前に魔物が居たのだろう。こりゃサリアたちの体力が想像以上に減ってるのを物語っている。本格的にやばそうだ。こんなんで相手と戦えるのか?ってそんなのは後で、まずは目の前の敵だ。


「はいなっ」


 よくわからない声を出しつつ、右太腿のホルダーからナイフ型MSDを取り出して右手に持った。そして、間髪入れずに魔力刀を発動する。2歩先にはウルフが今まさに噛みつこうと口を開いて鋭利な牙を見せていたのでそれに合わせて、重心を低くしてナイフ型MSDを持った右手を下げた。

 そして、ウルフがナイフ型MSDの間合いに入った時、右手のナイフを振り上げてウルフの顎を串刺しにする。名称、走りながらのアッパー。そのウルフはナイフに突き刺されたことに気づかず、ナイフで真っ二つとなって魔石へと変化した。割と効果抜群だったようだ。


「もー、ドキドキしたよ。集中だよ!」

「サリアありがとう」


 さて、行動に移す前に邪魔が入ったが本格的に追っ手の数を減らすとしよう。


「みんな、ちょっと先頭頼める?追っ手の数を減らしておきたくて」

「「「了解」」」

「無理しないで、やばそうなら呼んでね!」

「「「はーい」」」


 撤退パーティーの先頭をサリアたちに任せて自分は最後尾へと移動する。そして、右手に持ったナイフ型MSDを右太腿のホルダーへと戻し、代わりに背負っている布に包まれたマスケット銃型MSDを取り出して使用可能な状態にした。


 撤退しながら色々考えた結果、マスケット銃型MSDで遠距離攻撃を仕掛けて数を減らすことに決めた。アイスニードルよりも遠距離の敵に高い火力を叩き込めることが決め手だった。魔力消費が少なくていいのもポイント高いところだ。

 ただ、森の中では障害物が多くて有効打を出しにくい。そのため、相手がある程度接近してくるまで待っていたのだ。それでも、木々の隙間から見えるわずかな射線を通す曲芸を披露しなければならない状況なのだが、弾丸の軌道を魔法で曲げて空から攻撃する迫撃砲のような神業よりかはマシだろう。

 問題は、使用可能弾数が19発なことだ。演習に持ってきていたマスケット銃型MSDの通常弾は20。そのうち、1発は帝国勇者が放った魔法への対処に使ってしまったのでその残り19発で数を減らすことになる。あれ?相手の数と合わない気がするけど...気にしたら負けってことで!って感じで開き直っている。最悪、宿舎から応援が来るまで持てばいいか。そうなるように運用しよう。


 体の向きを反転させて相手がいる方向へ向き、バックステップをしながら撤退するパーティーについて行く。そして、マスケット銃型MSDの弾倉に弾を込めて相手がいる方向に構え、MSDに魔力を流してスコープを出現させた。

 体が揺れまくっているが気合いで銃身を安定させてスコープを覗き込む。すると、木々の隙間から人に見える何かが走っているのが見え隠れするのが見えた。


「うげっ、これ人っぽいけど目が赤い。それに理性ある表情してない...」


 スコープ越しに見えたのは動きやすい革製?の装備に身を包んだ魔物でも人でもない何かだった。

 何これ。ぱっと見は肌は白く生気が感じられないゾンビのようなのに、体の芯通った動きをしている。ただ、そこには意志が無いかのように目は見開き、口をだらしなく開けている。人から精神を抜き取った器を無理やり何かで動かしているような感じだ...。気持ち悪いなぁ。

 ただ、かなり離れた位置にいる魔物でも人でもない者から感じる膨大な魔力はとても安定している。そこから察するに魔力制御技術が高い術師タイプだろう。この距離なら攻撃は届きそうにないけど、敵対行動があればすぐにでも...。


 そう観察していると、相手の方から先手を打ってきた。

 観察していた相手は雑に魔力を周囲に大量放出した。その波はすぐに自分たちがいるところまで到達し、自分やサリアたちの体を通り抜けていった。なにこれ?能動探知か?それにしてはかなり巨大な魔力で逆に自身の居場所を知らせるようなものだが...。

 その魔力の波はサリアたちでさえ感じられるほどに大きな魔力の波だったようで、サリアたちはそれぞれ反応した。


「なに今の?」

「体を揺さぶられたような」

「怖いですね...」

「きたか...」


 それぞれが言葉を発するが、ジェシカさんは思い当たる節があるようだ。あれが何なのか聞いてみるか。バックステップで相手の出方を見ているからジェシカさんの様子がわからないけど、声色で何となくわかるだろう。


「なにがきt」


 しかし、言葉は最後まで言えなかった。

 相手が動いてきたからだ。


 スコープ越しに覗いている相手の魔力反応が増大した。そして、強力な魔法を自分たちに向けて放ってきた。しかし、まだ相手との距離が十分離れており、森の木々が障害物となったことで自分たちのいるところまでは届かなかった。代わりに木々に衝突したことを物語る大きな破砕音が聞こえてくる。ありがとう、森の木々たち!

 そんな光景を見つつ、相手が放った魔法の解析をしてみる。感じる魔力属性は水、アイスニードルを無数に発射しているように見える。ただ、1つ1つに何か狙いがあるわけでもないが、1つの氷柱の威力はMSDで発揮できる威力を超えている。しかも、予備動作がほぼなかったぞ!?それに、広範囲を高火力で一掃するこんな魔法は見たことない!チートだチート!


 サリアたちは破砕音を聞いて不安を感じたのか、サリアたちから感じる魔力が揺らいだ。立ち止まっちゃいそうな気がするし、声をかけておこう。

 自分はスコープを覗いて相手との射線が通るタイミングを待ちながら言う。


「みんな、立ち止まらないで!そのまま走り続けて!自分がなんとかする」


 そう言うと、リナが聞き返してきた。


「何とかって!?」

「こう言うこと!ふぅーー」


 相手からの魔法攻撃で相手が自分たちの敵だと確定したので、攻撃を開始する。スコープを覗き、相手への射線が通ったタイミングで相手の頭部に狙いを定めた。そして、息を吐きながら魔力を込めてマスケット銃型MSDの引き金を引く。

 込めた魔力は薬室まで到達すると、薬室内で風魔法と無属性魔法を発生させた。それがトリガーとなり、風魔法で発生させた空気と無属性魔法で発生させた運動エネルギーの両方で弾丸を前に押し出す。そして、炸裂音と共に高速な弾丸が発射された。

 発射された弾丸の弾頭には魔力刀が生成され見えないほど速く、木々の隙間を縫って相手の頭部へと突き進む。そして、その弾丸は相手の頭部を確実に捉え、その大きな運動エネルギーで相手の頭部を吹き飛ばした。そして、相手は魔石に変わることなく体ごと吹き飛んで倒れた。

 相変わらずマスケット銃型MSDの威力がやばすぎる。これも十分チートだな。チートにはチートをぶつけるに限る。


「「「「うるさっ」」」」

「しょうがないじゃん!」


 みんなには大きな炸裂音が不評のようだ。まあ自分も思ってることだからわかる。だが、相手に大ダメージを与えられる手札があるのはとても心強い。相手からすると下手に近づくと大ダメージを喰らうのを躊躇ってくれるはずだ。いい抑止力になるはずだ。でもよく考えてみると、理性ないから抑止力って意味ない?もしかしてひたすら倒すしかない!?やっばいじゃん!

 そう思っていると、能動探知で自分たちを追う先行部隊がスピードを上げる反応があった。言わんこっちゃない!やっぱり理性ないやつだ!一斉に来られたら太刀打ちできないし、やるしかないな!オワタ!


「みんな、五月蝿くなるけどごめんね!」

「「「「だめー」」」」

「めっちゃ不評すぎない?」

「「「「もっと静かにして」」」」

「そんな無茶な!?」


 まあ、弾丸を発射する時の風魔法と無属性魔法の規模を変えてみるか...。その余裕があればだけど。


「「「「やってね!」」」」

「みんな心読まないでね!」


 とりあえず、撃ちながら調整してみるとしよう。

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