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2-74 演習区域の違和感

(略しすぎています)

 リリーガーデンとジェシカさんはフラワーズとモリスさんに見送られながら宿舎から出発した。やっぱりというか、面と向かってダミー依頼をふっかけてきた帝国と共和国のお偉いさんは見送りに来なかった。せっかくダミー依頼を受けてあげたというのに薄情だねぇ。


 出発の間際にモリスさんから宮廷魔導士隊長のペーターさんが見送りに来る予定だったことを伝えられた。ペーターさんは急な会議に参加せざるを得なくなったそうで、ペーターさんはモリスさんに気をつけてとの伝言を預けたとの事だ。国のお偉いさんに近い存在であるペーターさんがわざわざ伝言を残すのだから何かが起こることは確実。なんか、現実を突きつけられたみたいで嫌だ。

 モリスさんにペーターさんへ伝言を残すか聞かれたので、宿舎を頼みましたって伝言をお願いした。帝国機関が引き起こす事件の規模感を図り損ねるところだが、国のお偉いさん方を宿舎に足止めしている事を考えるとそれなりの作戦が実行される可能性がある。リリーガーデンやジェシカさんのみを対象としている工作が行われようとしているが、視点を広げると相当大きな規模の事件が起こっている。否定する要素が少ない以上、この考えは外れてもいないかも。何か起こる事を予感しているペーターさんは、きっと宿舎に何か危機が訪れる可能性がある事を読み解いてくれるだろう。どのみち、宿舎に何があっても自分は対応できないので、ペーターさんに全力でぶん投げるしかない。よろしく頼んだよ?


 そんな感じに警戒感MAXで森の中を指定された場所に向かっている。時折遭遇する魔物たちを倒してはいるが、違和感がある。


「それにしても...静か」


 そのつぶやきをサリアが拾う。


「静かってこの状況でも?えいっ」


 視線を向けるとサリアは遭遇したゴブリンをハンディータイプの魔法補助特化MSDで発動したウィンドニードルで倒していた。単に魔物と遭遇してそれを倒しているのだが、それにもどこか違和感を感じて首をさらにかしげる。


「そう。魔物の動きがちょっと大人しいというか何というか...」


 その言葉にリナとシルフィアが反応する。


「そう?いつも通りと思うけど?」

「気にしすぎじゃないですか...?」


 そう言われれはそうかもしれないと思う程度には自信がない。でも、数多くの魔物をポコポコしてきた経験から目の前で起きている事が微妙におかしい事を伝えている。


 ジェシカさんは気になっているのか、更なる説明を要求してきた。


「師匠。具体的に言うとどのような感じですか?」

「えっと...魔物に攻撃の意思があるけど感じる気迫がちょっと弱々しいというか、普段ならもっとガツガツ来るのに大人しい気がしてる感じ?」


 そう答えると、サリアたちも何かひっ掛かるものがあったのか微妙な反応が返ってきた。


「「「うーん?言われてみれば?」」」

「動きにキレがないような?」

「う、うおおおお?って感じ?」

「集中力がない感じ...?」

「「それだー!」」


 シルフィアの意見にサリアとリナが賛同した。確かに集中力がないと言うのが適切かも。なんか疲れてるような気もするし。魔物に疲れるって概念が当てはまるのか疑問だけど、実際の動きからそう読み取れちゃうのよね。


 なんで魔物にそんなことが起こっているのか謎だ。正直見当もついていない。

 宿舎を出発してからというもの、神経を尖らせて周囲の警戒をしたり異変を探したりしているが普段の環境から微妙にズレているくらいだ。そのズレというのも、魔素が多いことと魔物の数がちょっと多いくらいだ。魔物の数に対して魔素がかなり多いのが気になるところだが、魔物たちの活動に異変が生じることは起きていないと思う。

 見落としていることがあるのか?少なくとも以前に演習区域内に異常や異物が無い事を確認している。ここに来てからも受動探知で探りまくっているがおかしなことは見つかっていない。加えて、魔素濃度について以前の魔物異常発生の時と比べて急激な濃度変化を感じておらず、誰かが介入したような形跡も感じられない。さらには、魔物から闇の魔力は感じていない。

 これらは人為的な痕跡が無いことを示していて、闇魔法を扱う集団を率いているマニューヴェや帝国機関による工作がまだ始まっていないことを伝えている。自然現象と言わなければ何と説明をつけていいのかわからないね!


「それにしても、師匠は兎も角、サリアちゃんやリナちゃん、シルフィアちゃんは私が気づかない魔物の違和感も感じ取れていて素直に驚いた。もしかすると私よりも実力があるかもしれないな」


 なんか、ジェシカさんが感心しながら語り出した。


「「「え、そうなの?」」」

「まだまだ力不足だって思ってた」

「私なんて大剣振り回すだけだよ?」

「ビーム撃ってるくらいですが...意外です...」


 サリアたちは本気でそう思っているらしい。だが、サリアたちの実力は全学年のクラス代表として来ているどのパーティーよりも高い戦績を上げている。戦績を上げやすい要因として、チートみたいな自分の索敵能力で魔物と遭遇しやすかったり、アステラ国勇者パーティーのお供をしたりしてパーティー戦力高くて倒しやすかったりといった面がある。でも、自分の関与を無しにしてもサリアたちの戦績はかなりのものだ。学生にしては実力がありすぎるといってもいいと思うの。自分。


「そのどれもが洗練されていて、実戦でも動きに澱むところがない。正直なところ、学生なのが信じられない」


 ジェシカさんベタ褒めだな。


「勇者よりも強いと風の噂に聞いていたが、今までの戦闘を見ていたら相違ないと思えてくる。もしかすると、宮廷魔導士としてやっていけるかもしれない程だ」

「「「えへへ」」」


 嬉しそうなサリアたちだが、警戒を怠ってる訳ではなく目線が遠くにいる魔物の方向に向いている。ジェシカさんの言ってることが間違いじゃないことが伝わってくる。分かりみがあり過ぎて大きく頷く赤べこの人になっちゃうね。みんなすごいなぁ。

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