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2-71 捜索依頼の返答

(略しすぎています)

 サリアたちと話し合った部屋から出ると、みんなでお偉いさん方が居た会議室のドアの前まで移動した。ドア越しに部屋の中の音は聞こえないけれども、ドア越しには黒い空気感が伝わってくる。それを感じ取ったサリアたちは自然と警戒感が上がり、体に力が入る。

 それを傍目に自分は一呼吸置いてからドアをノックして声が掛かるのを待つ。すると、帝国のお偉いさんの声がした。


「リリーガーデンの皆さんかな?入りたまえ」

 

 その言葉を聞いてドアノブを捻り、みんなで中へと入る。部屋の空気感は予感していた通りで、肌にネットリと張り付いて感触を確かめるような嫌な雰囲気だ。そんな中、みんな揃って部屋の中央にある机の前まで移動した。


「それで、結論はどうなったのか聞かせてくれないか?」


 帝国のお偉いさんの直球な問いかけに応じて自分も直球で返す。


「皆さんからの依頼を受けることにしました」


 自分の返答を聞いて、帝国と共和国のお偉いさんの口角がわずかに上がったような気がした。学園側は肩を撫で下ろして息を吐き、ギルド側はどこか心苦しそうにしている。何れの反応もごく僅かなものだったが、その反応の違いは自分たちの考えた筋道と状況が近いことを示した。

 自分たちの考えが馬鹿げた発想で被害妄想マシマシであると否定してほしかったが、逆に現実味を帯びてきた。これは残念だ。


「それはよかった。早速で申し訳ないが、夜の森での遭難は事を急する。早めに出発してもらえないだろうか」

「それでは、今から30分後にでも。場所は西側演習区画外縁ですか?」

「ああ、言ってなかったがその場所で間違いない。他に質問はあるか?」


 反射的に緊急事態が起こった時には助けに来てくれるのか?と聞こうとして口を噤む。こんなことを罠に嵌めようとしている相手に聞いたところで無意味な質問だ。聞くだけ時間の無駄だな。


「...いえ。ありません」

「それでは退出してくれて構わない。いい知らせを期待している」

「では」


 自分は踵を返すと、サリアたちに視線を送って部屋から出ることを伝えた。部屋の外に出るべくドアの前まで無言で歩き、ドアノブに手を掛けようとした時再び声がかかった。


「ああ、言い忘れていた事があった。夜の森は危険だ。気をつけておいた方がいい」


 何を言っているんだ?一応自分はギルドで最上位クラスのメンバーだぞ。めっちゃ近代化されたこの世界で森の中で原始的な生活をしたことがある人にそれ言う?それに、一応森とお友達のイメージがあるスノウエルフさんなんですけど?何か?

 いや、冷静になってみると違うな。帝国のお偉いさんのことだ。こんな無意味な事は言わないだろう。これは表面上は気を遣っているように見せているが、相手からの宣戦布告の類だ。全く、面倒なことをしてくる奴らだな。

 踵を返すことはせずにそのままの姿勢で言葉を返す。


「ご忠告ありがとうございます。見慣れぬ魔物に注意することとします」


 国の犬たちが襲ってくることは分かってるからどこからでも来いって気持ちで言ったけど、ちゃんと伝わっているだろうか?まあ、無意味な会話だし気にしても時間の無駄だな。

 そして、ドアノブに手を掛けて部屋から退出し、廊下に出た。そして、ドアが閉まる音を確認した後みんなの方を向いた。すると、サリアたちも自分の方を向いていた。

 そんなみんなで向かい合った状況で、自然と出た言葉がサリアたちの言葉と重なる。


「「「「ふぃー。やりきった」」」」


 自分も知らず知らずのうちに緊張していたようだ。多分自分は余計なことを言って問題をややこしくしないかと気を張っていたのだろう。サリアたちと緊張の種類が同じかどうか分からないけど、みんなと同じ気持ちになったみたいでちょっと嬉しい。


「それじゃ、出発の準備しよ」

「「「了解!」」」

「って言っても特にやる事ないけどね」

「確かに!魔物狩り用の装備を取りに行くくらいだね」

「緊急用のアイテムとかって...ありますか...?」

「「「それだ!」」」


 シルフィアに言われるまで完全に失念していた。回復ポーションが何本かあるし、魔力がなくとも結界が張れる緊急用MSDとその魔力カートリッジの予備がある。これらはサリアたちが戦闘時に負傷した事を想定したものになっている。だが、今回は要救助者の勇者御一行が負傷していてその治療が必要になるかもしれない。回復アイテムを多めに持って行かなきゃだ。

 そもそも、捜索する勇者が該当する場所に居るかどうかも怪しいし、そもそも勇者捜索の依頼がブラフの可能性だってある。だが、本当の依頼だった時は状況がかなり厳しくなる。そうなると困るのは自分たちだ。回復アイテムは持って行った方がいいだろう。

 この回復アイテムの入手先だが、宿舎に備蓄しているアイテムを貰うくらいだろう。前回の魔物狩り演習で発生した魔物の異常発生の供給を生かして、大量の在庫を用意しているはずだ。問題なく分けてくれるだろう。この辺は気にしなくてもいいだろう。


「それじゃ、部屋にMSDを取りに行ってからその辺取りに行こー」

「「「おー」」」


 むしろ気にしなくちゃいけないのは、相手の出方だ。相手はおそらく帝国か共和国の関係者。だが、その出方については検討すらたっていない。

 おそらく実行部隊は帝国側が用意していると見ている。その理由としては、この演習地で帝国に関係した出来事が多く起こっているからだ。帝国に関係した不可解な事件、帝国の情報収集員が殺害される事件、自由奔放に暴れている帝国勇者たちなど、この場で起きた事件には全て帝国が関連している。どう考えても怪しいったらありゃしない。そんな理由だが、案外当たるもんだと思っている。

 自分は亡くなった帝国の情報収集員は自国の関係者に殺害されたと考えているが、その殺害方法は未だ不明のままだ。分かっているのは魔物による殺害じゃないって事くらいで、殺害方法につながる説明ができずにいる。もし、帝国による奇襲があった場合は同じ殺害方法を試してくる公算が大きい。出発まで時間があるし、この辺をもう一度考えてみるとしよう。

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