2-69 違和感のある捜索依頼
(略しすぎています)
サリアたちと昼食を摂った後、自分とサリアたちは自室にてのんびり過ごす事にした。宿舎の外に出ることが制限されているため、運動することも魔法の練習することもできない。なので、駄弁ったりお菓子を食べたりしてまったりして楽しくサリアたちとおしゃべりして過ごしていた。
これだよこれ、自分が目指す日常ライフはこんな感じなのよ。そう心で涙しながらまったりした時間を楽しんでいた。道路が寸断されてるために物資が補充されなくて、食堂のケーキが売り切れ状態で食べることができなかった。サリアたちと残念だね~って言い合ってたけど、そんな時間をサリアたちと一緒に過ごせることが嬉しくて、ケーキがないことはあまり気にならなかったりした。
のんびり過ごしていたら夜になっていたので、夕食を取るためにサリアたちと共に食堂へ向かう事にした。部屋の外の廊下に出ると、多くの学園の生徒たちが廊下で立ち話をする声ですごく賑やかだった。宿舎から外に出れないからそうなるよね。この宿舎だけ戦闘のない世界すぎて平和だ~。面倒ごともないし、最高だ!
会議室の方からは悩ましげな雰囲気を感じなくもないが、気にしたら負けなので気づかないふりをして食堂へ行って夕食を食べる事にした。サリアたちも気にしていない様子だったし気のせいだろう。面倒事回避センサーも誤作動することもあるよね~。
サリアたちと食堂で夕食を食べてまったりしていたところ、ジェシカさんが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「カオリ師匠とリリーガーデンの皆、こんばんは」
「ジェシカさん、こんばんは。どうかしましたか?」
「実はリリーガーデンにお願いがあるんだ。少し会議室まできてくれるだろうか」
ふむどうしよう?なんか面倒事回避センサーが引っかかった会議室に行くんでしょ?気のせいなんだろうけど、乗り気はしていない。だって、会議室に行かないとできないお願い事だよ!?9割碌な事ないね!
とりあえずサリアたちの様子を伺ってみる。みんなもそれぞれの表情を見て様子を伺っている。サリアとリナはとりあえず行ってみる?って感じで話だけでも聞こうとしている。シルフィアも同様だけど、何か引っ掛かることがあるのか100%その考えではない模様。この中だと一番ネガティブな考えしているのは自分だけだ。
「話だけでも聞いてみよっか」
「「「そうしよー」」」
「というわけで、まずは話を聞こうと思います。判断はそれからで大丈夫ですか?」
「師匠ありがとうございます。それで構わない」
みんな首を傾げながらジェシカさんを先頭に会議室へと向かった。
____________
「えぇ...」
会議室に入った瞬間思わずそう呟いてしまった。なぜならば、その面々が昼前の会議に参加した面々と同じだったからだ。各国のお偉いさんに加え、モリスさんと学園側の人員だ。いやー、これは面倒事回避センサーの誤作動じゃなかったねぇ...。
面倒事の予感が的中してしまいがっかりしていると、学園側の1人が入室したことに気づいて声をかけてきた。
「ジェシカさん、連れてきてくれてありがとう。リリガーデンに捜索のお願いがあってここに来てもらったんだ。まずはその経緯から説明する」
捜索の言葉に気を引き締めて真面目に話を聞こうとしているサリアたちだが、自分はそうなる気が起きなかった。なんせ集まってる面々が総揃いで怪しいもん。話の裏を考えながら聞かないとお願いがどの程度大変かわからないからね...。
「実は帝国勇者と共和国勇者組が演習区域外縁で動けなくなっているんだ。先ほど救難信号が上がって、場所はある程度は判明している。その場所に向かって勇者たちを連れ帰ってほしいのだ」
まじかー。一応、勇者パーティーは各国の管理下の元で魔物狩りが許されているとは言え、助けてくれか...。いや...いいんですよ?そういう事故だってあると思うの。だけどね、よりにもよってなんで区域の外縁な訳よ?
100歩譲ってそれはいいとして、演習区域が不安定で危険性が増している状況下で、よりにもよって捜索対象が帝国勇者と共和国勇者かー。共和国はまあいいとして、帝国勇者からは難癖つけられまくってるし関わりたくないところ。というか、そもそも何でリリーガーデンに白羽の矢が立ってるわけ?
そう思っていると、シルフィアが恐る恐る手を挙げた。
「質問...いいですか?」
「どうぞ」
「なぜ私たちを指名したのですか?」
それはそう。シルフィアも同じことを思っていたようだ。だって動けなくなった人を回収するだけなら別に単独パーティーの少数精鋭じゃなくてもいいはずだ。それに、学園の他のパーティーだっていいし、ギルドメンバーでもいい。何故リリーガーデンが選ばれた理由は何なのか気になるところだ。
シルフィアの質問に帝国のお偉いさんが回答する。
「その質問には私が答えよう。まずは、皆も知っての通り不安定な状況下にある。宿舎には宮廷魔導士やギルドの皆さんが宿舎を守るべく待機している。そのため、捜索には戦力を割くわけにはいかないのだ。そこで、学園内で最高の戦績であるリリーガーデンに協力を願いたいのだ」
確かに理に適っているが、自分たちの戦力は知れている。単独パーティーでなら不安定な状況下にある演習区域を駆け巡ることができるだろう。しかし、保護対象がいるなら話は別だ。演習区域が通常ならば問題ないだろうが、今は不安定な状況下。リリーガーデンにはその余裕はない。少なくとも自分はそう判断している。
自分が沈黙して思考をしていると、サリアが手を挙げた。
「はい」
「どうぞ」
「魔物の数が多い状況と聞いています。その中で勇者たちを守りながら戦うのはリスクがあります。人員の増加はありますか?」
サリアの質問にリナとシルフィアは同調する。みんなも同じ問題を認識しているようだ。
「それは我々も認識しているが、残念ながら大幅な増員は宿舎警備の観点から認められない。警備に関わらない人員で2名程度ならば増員してもいいだろう」
「それなら、私が同行に名乗りをあげよう。私なら抜けたところで問題はないはずだ」
ジェシカが同行に名乗りを挙げた。それを受けて帝国のお偉いさんは背後に支えている人と話をした後、その回答を出した。
「連合国勇者のお付きであるジェシカさんが同行してくれると心強い。こちらからもぜひ頼む」
「「「「ジェシカさんありがとうございます」」」」
普通に人数少ないので戦力が1人でも多いとシンプルにありがたい。助かり祭りだ。
ん?普通に喜んでいたけど、なんか盛大な矛盾してない?勇者お付きパーティーって結構な戦力のはずだけど、それを警備から除いても大丈夫?自分なら宿舎を守るために人を削りたくないなら、絶対にしたくない選択肢の1つだ。でもなんでそれを許可した?しかも決断までが早い。事前に決まっていたかのようだ。
というか、人といえば各国お抱えの情報収集員が沢山いるはずだ。それは動かせないのか?そっちを動かした方がリリーガーデンが捜索するよりも確実だと思うのだが...。質問してみるか。
「はい」
「どうぞ」
「勇者を見守っている人員がいますが、各国の皆さんはそれを動かすことはできないのですか?」
自分の質問に各国のお偉いさんは瞳孔をわずかに大きくさせた。自分の問いかけに少し沈黙の時間が流れる中、帝国のお偉いさんが先人を切って答えた。
「帝国と共和国側はすでに勇者側で防御体制をとっているはずだ。他国の方は本来の任務の性質上動けないだろう」
そう言うと各国のお偉いさんは同調して同じように返答した。まあ、本来いないはずの人間なので動かすことができないか。増して、そう言った性質の人員たちが、他国の人員と行動を共にするなどお互いにリスクでしかない。そりゃ動かすことはできない。各国のお偉いさん方が、迂闊なことは言えなくて黙るのも致し方なし。これは変なことを聞いてしまった。
また沈黙して考えていると、帝国のお偉いさんは催促を迫ってきた。
「あらかた聞くことは聞けたと思うのだが、リリーガーデンは引き受けてくれるだろうか」
自分だけで言うと答えはNO。即答で突き返したいところだ。でも、これはパーティーとしての依頼だ。返答はメンバー全員で合意した意見じゃないといけない。ひとまずサリアたちの意見が聞きたいところだ。少しばかり時間をもらうとしよう。
「ひとまずメンバーで話し合いたいと思います。ちなみに、辞退は可能ですか?」
そう問うと帝国と共和国のお偉いさんの雰囲気が一瞬だが、ほんの微かに揺らいだ。誰も気づかない程度だが、確かに揺らいだ。これ帝国と共和国の間でなんかあるだろ。依頼に対して俄然NOと言いたくなってきたぞ。
そう思っていると、学園側の人が答えた。
「一応辞退は可能です。私たち的には適任がリリーガーデンだと思っていて引き受けてくれることを期待しています」
「そうですか。わかりました。ご意向を含めて、ひとまず話し合いをしたいので10分程度お時間をいただけますか?」
「わかりました。良い返事を期待しています」
「それでは。みんな行くよ」
そう言って、サリアたちと共に部屋を出て会議室のドアを閉めた。視線をサリアたちに向けると、疑問符が頭に浮かんでいた。
だって、どう考えてもこの依頼怪しすぎるでしょ。矛盾した増員の許可と辞退が許されるか質問した時の帝国と共和国の動揺。それに、ギルドメンバーではない未熟な学生パーティーでの捜索。絶対裏に何かある。
それに辞退できると言っていたが、この感じだと辞退は不可能に近い。とりあえず、さらば平和。おかえり、面倒事。さあ、これから入れる保険に入って面倒事を回避するとしよう。保険屋さん、ごめんください!ここから入れる保険ってあr、ないですか。そうですか...。




