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2-68 会議の結論と釈然としない事

(略しすぎています)

 会議室から自室に戻ると寝起きのシルフィアと靴を脱いで素足になっているサリアとリナが居た。

 サリアとリナに何で素足になってるのか聞くと、模擬戦をしたり剣の素振りをしたりして体を動かしてたら足元が泥だらけになったからとの事。脱がれた靴や靴下を見ると泥が結構付着していて、ぬかるんだ地面の上で動き回っていたことを物語っていた。地面が泥だらけなのは認識してたけど、模擬戦してたらヒートアップしちゃったみたい。やっぱり戦闘狂なのでは...?

 そんな自分の思考を読んだのか表情に出ていたのか分からないが、サリアは他の生徒も体動かしてたよと一言追加で言ってきた。目線を逸らしながら。あ、これ、分かりました。自覚あるタイプの戦闘狂です。

 一方のシルフィアはベッドの上で体を起こして目をこすりながら目を覚まそうとしていた。シルフィアにおはようの挨拶をすると間の抜けた挨拶が帰ってきたが、眠気が勝っていて瞼が全然開いていない。かわいい...。髪の毛は少しボサついてて寝起きでゆるゆるなテンションに母性がくすぐられる。それに...お世話したい!そんな湧き上がる母性に敗北したりお願いされるなどして、シルフィアの髪の毛に櫛を通すことになった。母になった覚えはないんだけどね!お願いされたからなんだからね!そんなこんなで、髪に櫛を通していると、髪の香りがふわっと香ってきたりしてドギマギしたりしたけど余裕で母性が勝ってました。はい。とてもいい香りでした。何も言いませんよ、自分は。


 各々で準備を行なった後は、みんなで昼食をとりに食堂へ向かった。広い食堂だが、多くの席が埋まっていて、かなり賑わしい状況になっていた。座れるか不安だったが、食券を買って注文品を受け取った後でも席に座ることができた。券売機に並ぶ通路側だったけど、座れただけラッキーだ。

 そうしてみんなで食事を取っていたとき、宿舎内に放送が流れた。


「日程変更の連絡です。本日14時より学園へ帰る予定でしたが、本日未明の大雨で土砂災害が発生し道路が寸断されました。そのため、日程を変更し明日10時に学園へ帰る予定に変更となりました。現在はーー」

「Oh...」


 思わず声に出てしまった...。まじで?もう1泊するの?あれだけ言っておいたのに!?絶対何か起こるっしょこれ不安なんですけど!?

 その放送を聞いたサリアたちも驚いて声が出ていた。


「「「え、そうなの?」」」

「リナちゃん、何か聞いてる?」

「いや、何も情報入ってきてないよ。ってなんで私?」

「リナちゃん、こう言うイレギュラーな話が大好物でしょ?」

「リナちゃん...大体の事知ってますからね...」

「本当に何も知らないよ。カオリちゃんはなんか別の驚き方だったけど何か知ってた?」


 リナ鋭いな...。先ほど会議に飛び入り参加して事の経緯を先に聞いていたから別に驚きはなかった。むしろ、その後の予定変更で驚いたのだ。あの時は今後の予定が決まってなかったからね。途中で退出したから会議の結論は知らないのよ。


「実はそのことで話し合いに呼ばれていたから、先に知ってたんだ」


 そんな回答にリナが質問してきた。興味深々の様子で目を輝かせている。リナの面白そうなネタに突っ込んでいく姿に若いなぁと感じてしまうところだ。おっと、自分はまだ精神年齢高校生くらいですよ?十分若いですとも。


「1日伸びるかもって?」

「いや、そこは初情報。話し合いで知ったのは、土砂崩れで帰れないから今後の予定どうするってところまで。その話し合いでちょっと意見したんだけど、結論出る前に退出したから日程変更までは知らないよ」

「もしかして、私とリナが帰ってきた時にいなかったのって会議に参加してたから?」

「サリア正解だよ。寝起きにジュース買おうとフラフラ宿舎内を彷徨っていたらモリスさんに見つかって、話し合いに参加する事になったんだ」

「寝起きから大変ですね...」

「そう、まさかモリスさんと出会うなんてねー」


 そう言った時、通路の方から聞き馴染みのある男の声がした。


「俺がどうかしたって?」


 声の主の方を向くと、疲れた様子のモリスさんが手を挙げていた。モリスさんがここに居るのと、今の放送があったと言うことは会議は終了したようだ。いつから続いていたのか知らないけれど、モリスさんがここまで疲れた表情をしていることから長時間続いていたのだろう。ご苦労様だ。


「モリスさん、先ほどぶりです。ちょうど魔物狩り演習の件を話してました。その調子だと押し切られた感じですね」

「ああ、そうなんだよ。結局もう1日伸びる事になった。全く、どうしてあいつらはそこまで粘るんだ?理解ができねぇ」

「結局そうなりましたか。自分が喋った甲斐もありませんね」

「いや、そうでもねぇんだよ。帝国と共和国以外はそれで納得して帰る方に傾いたから結構助かったってぇもんよ。それに、」


 モリスさんが言葉を続けようとした時、さらに宿舎内に放送が流れた。


「外出制限についてです。明日までは防犯や事故の防止を目的として宿舎外に出ることを禁止とします。なお、昼間に関しては許可された場合のみ外出が許されます。勇者の皆様に関しては、各国の指示に従ってくださって構いません。繰り返しますーー」


 放送を聞く限り、本来予定になかった今夜実施の魔物狩り演習は生徒と勇者組全員の実施じゃなくて勇者組限定になったか。それに、勇者組は各国の指示に従えって言ってるあたり、各国のお偉いさんの責任の下でなら魔物狩りしてもいいよという話みたいだな。

 話し合いでは魔物狩り演習を行う流れだったから、どうなるかヒヤヒヤした。でも、演習を行うのが勇者組の一部のみに限定されるなら戦力の分散も最小限に抑えられる上に、厄介事が起きたとしても全員が宿舎にまとまっているので対処しやすい。まあまあいい感じの案が出てくれてちょっと安心だ。

 放送を聞いていたモリスさんはやれやれと言った感じに両手を上に上げながら、続きを話す。


「とまあ、こんな感じよ。俺たちゃ宿舎内の警備に集中できる事になった。いいところに落とし込めてよかったぜ」

「最初の案に比べたら大分マシになりましたね。モリスさんお疲れ様でした」

「カオリちゃんも意見してくれてありがとうな。ギルドも学園も助かったぜ。それじゃ、俺は昼飯を食べるとするわ。サリアちゃんに、リナちゃん、シルフィアちゃんもまたな」


 そう言うと、モリスさんは手を振って食券を買いに行った。歩く体の重心が少しブレてるからかなり疲れている様子だ。よくここまでまとめてくれたもんだ。

 さて、今日の予定は宿舎内でダラダラするだけとなった。藤本坂本藤本のアステラ国勇者たちは多分宿舎から出ないだろうし、この後はのんびり宿舎で過ごせる事になりそうだ。のんびりサイコー。

 そう気楽に思っていると、サリアたちが興味津々な視線を飛ばして話しかけてきた。


「「「カーオーリーちゃん?」」」

「な、なんです?」

「「「この話、詳しく」」」


 これは根掘り葉掘り聞かれる事になりそう。のんびりする時間を自分にくださいませんか?


「詳しくも何も、モリスさんが言ってた事は自分も今知ったよ?最初は各国のお偉いさんが今日も魔物狩り演習をするって流れだったけど、自分の意見を聞いて帝国と共和国以外が考えを改めたってくらい」

「カオリちゃんは...なんて言ったんですか...?」

「魔物やら事件やら色々起こってて危ないからって帰ろう。無理なら宿舎に立て篭もろうって言ったよ」

「普通ならそうなるよね。それじゃ、学園側はどう考えてたの?」

「学園とギルド側も自分と同じ。魔物狩り演習するのにも反対してた」

「物騒ですし...普通ならそう考えますよね...」

「でもさ、帝国と共和国が考えを改めないってことは今日もするってことだよね?危険な状況下なのにそれって不思議じゃない?」

「確かに。リナちゃんの言うとおり不思議だね」

「カオリちゃんは...何か知ってますか...?」

「それが何も知らない。話し合いの中で帝国や共和国のお偉いさん方は他国の方と同じ意見で、演習の機会を活かして経験を積ませたいって言ってた。だけど、それだけじゃない気がするんだよね」


 そう。サリアたちが疑問に思っているように、自分もそこが引っ掛かっている

。戦闘経験なんてものは適当に森に行って魔物ぽこぽこしてたら稼げるものだ。別にこの魔物狩り演習じゃなくても機会は沢山あるだろう。この機会にこだわる必要がないのだ。

 なのに、やけに魔物狩り演習に拘っているのが解せない。なんらかの思惑があるのだろうが、それを見えないのが心をモヤつかせる。良からぬ事につながらなければいいのだけど。杞憂で終わってほしいところだ。

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