2-63 眠れないので自販機前に来た話
(略しすぎています)
どうも、夜も更けてきて静まり返っている部屋の中、寝れないのでベッドの上で横になりながら天井のシミを数え始めている銀髪ロリエルフになった者です。今日は色んな出来事があったので疲れて眠れそうなのですが、逆に神経が昂っちゃって眠れないそんな状況です。
ギルドメンバーのモリスさんや宮廷魔導士隊長のペーターさんに報告を済ませた後、宿舎内の割り当てられた部屋に戻ってくるとサリアたちが待ち構えていた。そんなサリアたちから元気におかえりの歓迎を受けた後、調査中にどんな事があったか聞いてきたのでそれに答えたりした。もちろん、仲間であるサリアたちが事件に巻き込まれないよう、サリアたちにはマニューヴェ率いる闇の魔力を扱う集団に関連しそうな魔石型MSDや闇魔法による魔物の統率などは話さなかった。なので、集団に関する情報がないサリアたちは自分が話す状況に疑問符が生まれまくっていたが致し方なし。
そんなサリアたちは疑問を埋めるべく話し合いを始めた。自分は状況について知らない体で話に参加していたが、サリアたちは魔物の大群事件について魔物にとって魔石が超重要だったから起きたものという結論を導き出した。目の前に美味しそうなお肉があれば釣られるのと一緒で、魔物にとって魔石がとても欲しかったという事らしい。
サリアたちの結論が自分が隠したいことにだいぶ近づいていたので、危険な集団である闇の集団に辿り着かないかとてもヒヤヒヤしたりしていた。「実は魔石じゃないんじゃね?レアなオーパーツ的な何かで魔物が操られていたんだよ」とか話が出てきた時には背中に冷や汗をかいたね。途中、シルフィアに「事件の緊張が抜けてませんか?」とか聞かれた時には顔に不安が出てないか気になったよね。追求はなかったし、多分情報を隠していることには気づいていないはず。おそらくそう!
その後、サリアたちと一緒に宿舎の大浴場に行って貸切状態の湯船を堪能したり、部屋に帰ってパジャマパーティーをして賑やかに過ごしたりした。程よい時間で切り上げてみんなで就寝したのだが、自分だけが眠れないまま周囲から寝息が聞こえてきた。あれだけ一緒に騒いだりしたのになんで自分だけ眠れないの?仲間はずれ感あってちょっと寂しいよ?
そんなこんなで、天井のシミを数えて1時間が経つ。いつまで経っても眠気が来ないし少し散歩でもしよう。というかこの演習場に来てからまともに眠気がきてない
。この魔物狩り演習に便乗した何かが起こりそうな状況だけに、無意識に気を張っちゃってるのかも...。どうしてこうも事件が起こりまくるんですか?自分はのんびりした学園生活を送りたいんです!
「ふぃー...」
やりよう何気持ちを込めた溜息を吐いてサリアたちを起こさないよう静かに起き上がり、フリフリの寝巻きから軍服ワンピースの戦闘服に着替える。戦闘に使うナイフ型MSDを足のホルダーに差し込み、ブーツを履いて外出する準備を整えた。
「これでよし」
サリアたちが眠っているベッドの方を見ると、サリアたちは寝息を立てて静かに眠っている。サリアはとても気持ちよさそうにニヤニヤしながら眠っている。羨ましい。自分もそんな感じに眠りたいね。
「ちょっと行ってきまーす」
小声で呟きながら、ドアを開けてゆっくりと部屋の外へ出る。廊下には誰もおらず静かだ。だが微かに、廊下が続く先から声が聞こえてくる。多分宿舎を警備してくれているギルドメンバーたちの声だろう。そっちに行けばギルドメンバーから調査に関する質問をしてくるだろう。そうなれば賑やかな会話をすることになるだろう。だが、今はゆっくりとしたい気分なので静かなところに行きたい気分だ。人のいない場所に行きたいところ。
謎に誰にも見つからないように宿舎内を歩き回って、人がいない場所を探し始める。ロビーはもちろん人がいる。会議室は私的に使っちゃだめ。食堂は警備してくれている人の休憩所になってる。大浴場にも人がいるようだ。
「こんな時家なら甘い紅茶でも飲みながらゆっくりできるのになぁ」
事件が起こって騒がしい場所だけに、家の快適さが身に染みる。気持ちを切り替えるために、何か飲み物でも飲もうかな。甘い飲み物を飲んだら眠気も出るはず。
宿舎内の一画にひっそりとある自動販売機の前まで移動して、魔法の光に照らされた飲み物を見ていく。
「あるのは...コーヒー、お茶、紅茶くらいかな?」
ジュース類は売り切れている。多分、調査隊が帰投した時にパーティー状態になったからその時の影響だろう。こんなところにまで影響が波及するなんて考えてないよ?くそう...。こうなったら、紅茶ですの紅茶。優雅に紅茶を飲んで寝てやりますわ!カフェイン摂取したら眠気が舞い込んでくるものですの!
「お購入ですわ!」
「お購入...?カオリちゃんは何を買ったんですか?」
「ひょぇっ!?」
唐突にかけられた声に驚きながら、声の主の方を向く。すると、制服姿のシルフィアが不思議そうな表情で自分を見ていた。
「もう~シルフィア驚かせないでよ~」
「びっくりしてるの...ちょっと可愛かったですよ...」
「ちょっと楽しんでる?シルフィアのいじわるぅ」
そう言いながら、自販機の取り出し口から買った飲み物を取り出してシルフィアに買ったものを見せる。
「買ったのは紅茶だよ。甘いのが欲しかったんだけど、売り切れてて」
「本当ですね...甘いの全部売り切れてますね...。それでも...こんな時間に紅茶なんて飲んで大丈夫ですか...」
「ん?大丈夫!眠れないから」
「それ大丈夫じゃないやつですね...」
シルフィアは自分がヤケ買いしたのに気づいているようで、諦めたように言った。実際事実だし、何も言うまい。って、シルフィアは部屋でスヤスヤ寝てたはずじゃ?
「ところで、どうしてシルフィアはここに?寝てたんじゃないの?」
「えーっと...私も寝れなくてずっと起きてました...」
「それじゃ、自分が部屋を出たのを知ってる?」
「とても静かに出ていきましたね...行ってきまーすって呟いてましたっけ...?」
「バッチリ聞かれてる...」
シルフィアもめちゃ静かに寝息立ててたように見えて、あれ起きていたんだ。部屋から出る時の呟きも、聞かれるなんて思っていなかったからちょっと恥ずかしい。というか、お購入ですわ!って聞かれてたよね!?バッチリ復唱してたし、シルフィアが聞き逃してくれている世界線じゃない!そっちの方が恥ずかしくなってきたうおおおおおお。今すぐ布団の中に包まりたい!
そんな考えも知らないシルフィアは視線を自動販売機の方に移して呟いた。
「私も何か飲もうかな...」
そう言って自分と同じホットの無糖紅茶を選んだ。
「それ寝れなくなるんじゃない?」
「大丈夫です...。私も眠れないので...!」
そう言ってドヤって表情で自分を見てくる。だが、その表情も束の間、シルフィアはハッとした表情となって言葉を付け足してきた。
「あ、お購入ですわ...!」
「わざわざ言わなくていいからああああああ!それは忘れて!」
「嫌ですわ...!」
「ぐぬぬ...可愛いから許す...」
「そんな可愛い私とお話しませんか...?」
「お茶会のお誘いですの?ぜひご一緒したいですわ」
「カオリちゃん、お嬢様口調が板についてますね...」
なんでだろうね?紅茶ばかり飲んでいたからかな?とりあえず、シルフィアと一緒に喋れそうな場所に向けて宿舎を彷徨い始めることにしよう。




