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2-58 即席パーティーによる調査

(略しすぎています)

 宿舎を出発した調査隊は帝国の情報収集部隊の1人が死亡した現場付近である、西側演習区画の最縁部へとやってきた。道中で遭遇する魔物は多かったが、見つけたら即討伐されるくらいには個人の練度が高く、不自由なく現場付近に到着することができた。そのおかげで、自分の出番はなく当初の予定通り索敵をこなすだけとなった。楽できていいことだ。

 パーティーの連携としては即席パーティーの割にはできている方といったところだ。これはジェシカさんや5人のギルドメンバーに支えられている点が大きい。元々5人のギルドメンバーで動くことが多いらしく、連携はお手のものだ。その連携にジェシカさんや自分が合わせて動くといった形でうまく連携をとっていた形だ。なので、即席パーティーの割にはスムーズな戦闘ができていたと思う。

 ただ、少し問題だったのが宮廷魔導士のブライアンさんだ。当初は結構俺できますよ的な口調で尖っていたのだが、ブライアンさんはギルド流の柔軟な連携についていけなかった。魔法の火力や発動スピードといった魔法技能は十二分に高かったが、その運用は定型的なものが多く、咄嗟の魔物出現や思いもしない方向からの攻撃には隙を見せていた。多分、教練通りの戦術は問題なくこなせる一方で、実戦のように状況によって適切な戦術に切り替えなければならない不確実さを含む戦術は苦手なのだろう。多分戦闘経験が不足しているからだろうな。部隊の隊長であるペーターさんがブライアンさんを新人って言っていたし驚くことはない。

 こんな調子なので、ブライアンさんも現場付近に来る頃には当初のビッグマウスは消えて大人しく指示に従ってくれている。ありがたい限りだ。この調子だと、何かが起こっても問題なく退却できそうだ。パーティー行動の懸念点が解消されてありがたい。


 だが、当の目的である調査はうまく行っていない。


「多分現場はこの辺りのはずですが...皆さん何か見つかりましたか?」

「師匠、まだ見つかりません!」

「こっちもだ!」

「俺っちもダメだ!」


 何せ、見晴らしの悪い森の中、月明かりは雲に遮られて暗闇、そして明確な場所までは指定されておらず調査範囲が絞り込めていない。どう考えても上手く行く要素はない。少なくとも深夜にやるものではないね。それに何といっても調査に特化したメンバーではなく調査に関しては素人である事。これもう苦行ですよ。苦行。

 自分も視覚的に探しつつ、受動探知でそれっぽい魔力反応を探していたりするのだが、この地域は各国の勇者チームが魔法を放ちまくっているせいで残留魔力が多く、絞り込むことができていない。せめて、死亡した帝国の情報収集員が保有する魔力の基底を覚えてくるんだった。完全にやらかしました。

 ただ、死亡する程度には出血が多いことから血液と共に体外へ流出した魔力も多く、残留する魔力量も多いはずだ。これを手がかりに調査を進めたいところだ。能動探知を使えば一瞬とまではいかないまでも、かなり効率的な調査ができるだろう。だけど、この能力はあまり人に知られたくないからなぁ。緊急事態以外は封印したいところ。


 考え込んでいると、ジェシカさんが話しかけてきた。


「師匠、次の場所に移動しましょう。このままじゃ何も見つかりません」

「ん?わかりました。ではもう少し西に移動しますか」


 ジェシカさんは何か急いでいる?死亡した事件に関する証拠が見つからなくても別に問題ない調査なのにもう少し気楽でいいと思うんだけど...。人が死んでいるんだから真剣になる気持ちもわからなくもないけど、様子からはそれだけじゃない気がするんだよな...。


「ではさらに西に移動するぞ。何か見つけたらその時は報告を頼む」


 とても張り切っちゃっているし...。これじゃ誰がリーダーかわからなくなるな。

 ジェシカさんの表情を見ると平静を装ってはいるが表情は硬く、感じ取れる雰囲気からも落ち着きがないような気がする。こりゃ死亡した帝国の情報収集員と何か関係があるかも。でも繋がりってなんだ?ジェシカさんって連合国の関係者だし、接点は無いと思うんだけど。


 他の調査メンバーに周囲の索敵と対応を任せつつ、感覚を研ぎ澄まして広範囲に拡大させた受動探知で違和感を探る。魔物が多いし、残留魔力も多いから頭が疲れるな...。

 進行方向以外を探るが違和感を感じる反応はない。集中しまくっているので、それなりに探索範囲は広いはず。なのにそれらしい反応がない。本当に場所はこの付近で合ってるのか不安になってきたぞ?ちょっと気持ちを切り替えるために、進行方向を探ってみようかな。


 進行方向である最縁部に注意を向けて受動探知を行う。すると、進行方向から右に逸れた位置に違和感を見つけた。魔物とは異なる強力な魔力反応と、強力な魔力とは異なっている薄い魔力だ。恐らく前者は魔石、後者は薄く散らばっているあたり魔法の痕跡と言うわけでもない。これはビンゴだ。

 さて、これをどう伝えるべきかな。受動探知ができると知られるとこれまた説明に困るので、自然に促したいところだけど...。うーん?何かいい案プリーズ。

 露骨に悩んでいたのが表情に出てしまったのか、ジェシカさんが声をかけてきた


「ん?師匠、どうかしたか?」

「何か違和感が前方から感じられるので気になっていました」

「魔物か?」

「いえ、単なる勘ですが...」


 としか言えない。周囲に痕跡がないか視覚的に調べると、反応があった方向へ続く獣道が見つかった。折れた木の枝の表面はまだ新しく、分け入ったことで落ちた茂みの葉がまだ青々しいので、最近何者かが通ったのだろう。これを言ってみるか。


「何かこの獣道が不自然なんですよね」

「確かに...師匠に言われてみればそういう気がしてきた。最近何者かが通った跡がある」

「行ってみますか?」

「そうしよう」

「それでは声をかけますね。おーい。皆さん、こっちに進みませんか?なんか怪しい道を見つけました」


 自分の声に応え、パーティー全員が獣道を辿るルートを進行する。よし、いい感じに誘導することができたぞ。結果オーライだ。

 ただ、現場の様子はまだ分からないところが大きい。だが、現場の状況によって起きていることを予想することができる。例えば、周囲に戦闘の痕跡があれば魔物をまず考え、複数の魔力が混在して残留しているなら人との戦闘だろう。この辺には魔法を使う魔物がほぼいないし。

 だが、予想できないのが周囲に戦闘の痕跡がなく、現場に残留した魔力が1人のみの場合だ。この場合とても厄介なことになる。現場の状況からは戦闘に慣れた人が単独で大量出血死をしている不可解な状況となるので、自分たちの知らない手段や方法で死亡したことになる。しかも魔石っぽい反応もあるので謎が深まるばかりだ。頭が痛くなるね!

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