表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/192

2-56 戦績報告とロビーで話をするギルドメンバーたち

(略しすぎています)

 リリーガーデンとアステラ国勇者組は宿舎へと無事に帰ってくることができた。だが、道中の魔物の数は多かったため、勇者組は疲労困憊でリリーガーデンもしっかり疲れている。サポートに回っていた自分も大量のヘルプをしないといけない状況に自分も結構疲れてしまった。結構魔物を狩ったし、最終日の明日は魔物狩りしなくてもいいよね?サリアたちも結構疲れているし、それでいいと思うの。


「戦績報告終わったら部屋に戻るね」

「「「りょうかーい」」」

「勇者組の戦績報告はどうしよう?自分がやっておこうか?」

「師匠、お願いします。体が重くてもう限界です」

「「ですです~」」

「わかった。ゆっくり休んでね」


 疲れた代わりに魔物をかなりの数討伐し、なかなかいい戦績を上げることができた。回収した魔石は魔石回収袋の中に収まらず、各自のポケットやポーチの中まで溢れかえるほどだ。この感じだと、今日も魔物狩りの総合戦績の1位を獲得していそうだ。それも大差で。1日目はリリーガーデンが他国の勇者たちよりも実際の戦闘能力が優れていることに気づかれないように気をつけていたが、もうそんなことは無理なレベルだ。吹っ切れたとはいえ、少し目立ちすぎのように思う。自分たちの戦績が埋もれるくらい他国の勇者様には是非とも頑張っていただきたいところだ。


「あ、みんなのポケットの中の魔石回収するの忘れてた。でも、袋の中パンパンだしどうしよ」


 微妙に困っていると、シルフィアがもう1つの魔石回収袋を差し出してきた。


「それなら...これ使ってください。宿舎のロビーに...置いてあったもの回収してきました...」

「シルフィアありがとう。これずっと持ち歩いてたの?」

「いえ...帰ってからです...」

「わざわざとってきてくれたんだ、ありがとう」

「どういたしまして...」


 シルフィアは嬉しそうに口角を上げている。感謝を伝えた甲斐があるというものだ。


「それじゃ、みんな魔石をこの中に入れてね」

「「「「「「はーい」」」」」」


 そうして、各々が持っている魔石を魔石回収袋に入れてもらうと、袋の半分が埋まった。みんな魔物狩りすぎでしょ?1チームあたり100超えてるんじゃない?


「それじゃ、いってくるね。リリーガーデンのみんなはまた後で」

「「「いってらっしゃい」」」


________

 そうして戦績を報告する部屋に行く。部屋の中は昨日と同じく誰もいない。時間がずれているとは言え不用心な部屋だなと思いつつ、魔石を鑑定装置に投入して自動集計を開始した。機械音を聞きなら待っていると、鑑定終了を知らせる音と共に鑑定終了の文字が表示された。鑑定書の印刷ボタンを押して出力された紙を見つつ、結果を確認する。


「おおー、リリーガーデン187体にアステラ国勇者組132体。狩りすぎ」


 思わず独り言が出てしまうレベルの戦績だ。なんせ、1日目はリリーガーデン43体、アステラ国勇者組64体だったから、2倍以上の討伐数アップでさらにぶっちぎりな討伐数だ。トータルの討伐数は200前後でむしろ怖いくらいよ。

 鑑定結果をポケット中に仕舞い、それぞれの戦績を表に記入をしていく。記入欄はほとんど記入済みで、既に多くの生徒が今日の演習を切り上げているようだ。全体的に昨日よりも討伐数が伸びていているから、横槍が入ったから切り上げたのではないことが読み取れる。いいことだね。さて、全体の順位はどのくらいかな?


「今回も1、2独占だろうけどね...ん?」


 おかしいな?自分たちの戦績を追加してもさらに上位がいた。誰だと訝しげに見ると帝国勇者組だった。目を凝らしてみても擦ってみても何も表示は変わらない。


「よ、400!?」


 自分たちが先ほど申請したスコアを加味しても、帝国勇者組は現時点でトップの戦績だ。いくら大量殲滅的な感じで大規模魔法をぶっ放していたとしても、魔石回収の時間を考えるとこの戦績はシンプルにおかしい。魔物の位置を把握しているなら可能な数だが、彼らの能力を思うと不可能なレベル。

 帝国勇者の戦績記入欄を見ていると、昨日と今日の欄に記入されていた。昨日の欄には二箇所記入されていて、前見た時からさらに魔物狩りを行なっているようだ。追加された数も100を超えているあたりおかしい。虚偽報告か?

 戦績表に虚偽の報告をしたとしても鑑定結果と照らし合わせるからすぐに露見してしまう。無計画に魔法を放ちまくるとはいえ、それは彼らもわかっているはず。となると本当のことか?本当に謎すぎるぞ...?


 首を傾げながら部屋の外に出てロビーに戻ると、モリスさんと大勢のギルドメンバーが喋っていた。何か知っているかもしれないし、ちょっと聞いてみるとしよう。

 そう思ってモリスさんたちに近づくが、明らかに雰囲気がおかしいことに気づく。いつもののんびりしたものではなく魔物が出た時のように緊張感があるのだ。これは確実に面倒なことが起こっている様子。ここは気づかないふりを通り過ぎよう。帝国勇者たちのことは誰かが噂をしているだろうし、それを聞くことにしよう。気にはなるけど、それ以上でも以下でもないからね。


 モリスさんたちに気づかれないよう、宿舎の割り当てられた部屋へと進もうとする。しかし、他ならぬモリスさんによって呼び止められた。オワタ。


「おーい、カオリちゃん来てくれ」


 さすがは長年ギルドで活躍しているモリスさんだ。気配察知が凄すぎる。くそう。面倒ごとに巻き込まれることに、心の中で涙をしながらモリスさんたちに手を振って反応を返し、集団の輪に入った。


「モリスさん、それに皆さん、どうかしましたか?」

「ああ、実はさっき死人が出ちまったんだ」

「死人!?学生ですか?」

「いやチゲぇ。帝国の情報収集員だ」


 what?どういういうこと?なんで帝国の情報収集員が死ななきゃいけないんだ?


「その様子じゃ、カオリちゃんもさっぱりって様子だな」

「死因は何ですか?魔物による外傷ですか?」

「傷口からおそらく他殺で人による犯行みてぇだ。遺体は宿舎の中に運び込まれているが、現場の状況はまだ詳しく調べられてねぇ。詳しいことは今から調査しようってところだ」


 傷口からわかるくらいには他殺の線が濃いのか。頭の回る人たちならば証拠を隠そうと魔物に襲われた様に偽装するはずだ。しかし、それをしていない。謎が深まる。最低目的がはっきりしていないと危なくて宿舎の外に出ていけない。というか、帝国の情報収集員を殺したのが人ならば、この宿舎も安全とは言い難い。これは困ったことになったぞ。


「そこで、宮廷魔導士の奴らとジェシカさん、それにうちのギルドから数名出して調査に向かうところよ。他の奴らは周辺の警備をしようと思っているんだが、カオリちゃんは何か案があるか?」

「正直、何が何やらでいい案が思いつきそうにないですね。ですが、人による犯行なら宿舎の中も危ないのではないでしょうか?」


 そう言うと周りのギルドメンバーはハッとした表情となり、驚いた。だが、反論が無いあたり腑に落ちている様子。


「!?それは確かに。宿舎の外の警備は程々に、宿舎の中をメインで警備する方がいいな。そうなると戦力は宿舎に集中してぇな」


 モリスさんはそう言うと、学園側へ言伝するようにギルドメンバーに指示を出した。さらに、他のメンバーに警備のための班わけをする様に指示を出し、テキパキと物事を進める。さすがモリスさんだ。頼りになる。そう半分聞き流していると、急に自分に話が振られた。


「すまねぇが、カオリちゃんにお願いがあるんだ...ってどうしてそんな奇妙なポーズをしているんだ?」


 顔はモリスさんの方を向いているが、身体はサリアたちが待つ部屋に帰る方向に向いて、足を踏み出していた。無意識に面倒ごとから逃れようとしていたらしい。自分の身体よ。もう諦めて楽になろう...。


「いえ、気にしないでください。それで、どんなことですか?」

「遺体が見つかった場所の調査に同行してほしいんだ。死んでしまった奴は手練れだったみてぇだ。その相手が魔物か人か分からねぇ奴に殺されている以上、頼りになる戦力がほしい。頼めるか」

「まともな戦力になるかわかりませんが、任せてください」

「何言ってんだ、カオリちゃんを差し置いて強い奴なんていねぇ。頼りにしてるぜ」

「それで、出発はいつ頃ですか?」

「5分後ってところだ。何かあるのか?」

「特に何も。ただ、パーティーメンバーに声をかけてくるので待ってもらおうかと思ってました」

「そのくれぇ待つって。行ってきな」

「ありがとうございます」


 そう言ってギルドメンバーが大勢いるロビーから離れ、サリアたちが待つ部屋へと向かう。そして歩きながら色々考えてみる。

 帝国勇者組がめちゃくちゃ戦績を上げているのがどうでも良くなるくらいの出来事に驚きが隠せないぞ。まさか死人が出ているなんて夢にも思わないじゃん?死人が帝国所属の人だし、もう謎しかないところだ。

 このことサリアたちにはなんて話そう?とりあえず正直に話すとしても、心配かけるだろうし...。うーん...。


 廊下でふと立ち止まって窓の外を見ると、空は雲で覆われ、月明かりが差し込まず暗い森が見えた。今後の出来事を予感させるような風景と天気にテンションがちょっと下がりそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ