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2-55 心ここにあらずなシルフィアとちょっとした決意

(略しすぎています)

 魔石回収兼戦闘補助員をやっている銀髪ロリエルフになったものです。宿舎へ移動しながらもリリーガーデンとアステラ国勇者組は魔物狩りのためにゆっくりと移動している最中です。目についた魔物を片っ端からぽこぽこしているおかげで、回収した魔石を入れる袋もパンパンになってきました。そろそろ重いし切り上げたいところです。はぃぃ...。あ、ヘルプですねー。あちらのお客様はアイスニードルで天国に招待しておきますねー。


 ヘルプを出したシルフィアがいる方向には2体ほど魔物がやってきていた。シルフィアは目線と身振りで、左側の魔物に対応すると伝えてきた。なら、自分は右側に対応するか。

 シルフィアに目線と身振りでそれを伝え、リング型MSDに魔力を通してアイスニードルを発動して鋭い氷柱を魔物に向かって放つ。魔物は高速で飛翔する氷柱に反応することもできずに貫かれて魔石となった。

 自分の対処が終わったのでシルフィアの方を見ると、フォトンレイを発動して魔法を放つ瞬間だった。だが、その魔法に違和感があった。注意深く魔力の流れを見ると、シルフィアの体を流れる魔力にムラが生じている。それに、フォトンレイはいつもよりもキレというか、光線という感じで固まった光の柱みたいな感じではない。集中できていない時や疲れている時は魔力操作が雑になって今のシルフィアのようになる。でも、シルフィアの体の重心はブレておらず、疲れていない様子だ。となると、気になった何かがあるのかな?うーん?そんなシルフィアを放置してもいいけど、戦闘に集中できていないと事故の元だし小休憩でも挟んでもらおうかな?

 そんなことを思いながらシルフィアを観察していると、シルフィアが放ったフォトンレイが魔物を貫いて戦いが終了した。キリがいいし、とりあえず声をかけてみるか。


「シルフィア少し休憩する?」


 その言葉を聞き取ったシルフィアは少し遅れて反応を返した。だが、自分の言葉が予想外だったのだろう、少し間の抜けた言葉が返ってきた。


「え...?私は大丈夫ですよ?」


 振り返りながらそう言うシルフィアだが、シルフィアの進行方向に木の太い枝があることに気がついていない。このままだと太い枝に頭をぶつけてしまう。いつもなら気づいているのに。らしくないな。ってその前にシルフィアに声かけておかないと!


「シルフィア、前!」

「え?」


 シルフィアがそう言って正面を向いた時、木の太い枝がシルフィアの額に衝突して鈍い音を立てた。気が抜けていたのかシルフィアは体勢を保つ事ができず、よろめいて尻餅をつく。酷く頭を打ったけど大丈夫かな?


「みんなごめん、フォローお願い!」

「「らじゃ」」


 反応したサリアとリナに自分とシルフィアの分の魔物狩りを頼んで、シルフィアの様子を見ることにする。シルフィアの正面に駆け寄って膝を折って怪我の具合をみる。ぱっと見の状態ではシルフィアの体に外傷は見当たらない。ポカンとした表情をしていて何が起こったのか把握できていない様子だが、目は振れていないし焦点は自分と合っている。この様子だと脳震盪は起こしていないだろう。ちょっと安心だ。

 さらに詳しい怪我の具合を把握すべく、太い枝と衝突したシルフィアの額の様子を伺うために手でシルフィアの髪をかき上げて額を露出させる。額には軽微な擦り傷があるくらいで特に怪我もない。このくらいならポーションを使わなくても、冷やしておいたら大丈夫かな。コンクリートみたいな硬いものじゃなくてよかった。

 シルフィアの髪をかき上げた手を退け、ポーションを使わなかった代わりに頭を軽く撫でて気を紛らわさせる。痛いの痛いの飛んでけー的なおまじないだ。


「大きな怪我なくてよかった。痛い箇所ない?」


 そうシルフィアに声をかけるが、シルフィアは自分の顔を見つめてキョトンとした表情になっている。だが、その瞳は自分ではなく、遠い誰かを見ているような気がした。


「シルフィア?」

「あっ...はい。どこも痛くないです。カオリちゃん...ありがとうございます」

「枝にぶつかるなんてらしくないよ。何か気になることでもあった?」

「......特にはないですけど...今日は何を食べようかなって思いまして...えへへ」


 その間は絶対に「特にはない」で済まされる間じゃないよね?一瞬そう思ったが、シルフィアの何かを隠している愛想笑いで追求をやめた。しかも、取っ手つけたような理由まで言ってくるあたり、聞いてくるなと言ってるようなもんじゃん。気にはなるけどしょうがない。シルフィアの流れに乗るとしよう。


「もう、食い意地張ってるんだから。集中してね」

「そうします」


 シルフィアはそう言って立ちあがろうとしたので、シルフィアの頭を撫でる手を止めて手を差し出した。シルフィアは差し出した自分の手を掴んで立ち上がる。その表情もいつも通りのものに戻っていて、もう大丈夫そうだ。少し口角が上がっててふにゃふにゃしている感じはあるけど。まあ、撫でていたせいだろう。


 さあ、シルフィアはなんとかなったし周囲の状況はどんなものかな?そう思って周囲を見渡すと、サリアとリナが戦いながら自分とシルフィアの様子を見ていた。しかも、2人の視線は恨めしそうな感じだ。えっ、何なに?自分は単純にシルフィアの怪我の様子を見たくらいですよ?撫でたけど。


「もー、シルフィアちゃんずるい!」

「私たちもなでなでして!」


 そう言うこと?でも、魔物たちがいる中でもなでなでが優先されるくらい優先度高いのは何故?もしかしてサリアとリナは甘えたがっているのか?そうならそうと言ってくれれば、なでなでしたのに。ハッ!待て、流されるな自分よ。いかんいかんサービス精神多めだとキャラがブレてしまうぞ。クールビューティーカオリちゃんを目指しているんだからそう言うのは控えておかないとだ!


「もー!師匠たち集中してくださいよぉ!」

「私たち必死で!」

「やってるんですから~!」


 リリーガーデンが呑気にやっているから、アステラ国勇者組はそう言いたくもなるか。冷静に考えると、現在地は集中していないと足元を掬われる夜の森の中だ。しかも、今は魔物増量タイムセール付き。ここは勇者組の言う通り、気持ちを切り替えて集中するとしよう。

 

「ごめんごめん!ヘルプは必要?」

「「「超必要!」」」


 そんな勇者組は疲れてきているのか、突如出てくる魔物への対応が後手に回っている。この調子だとずっとヘルプしないと宿舎まで持たないな。戦い方を変える必要があるな。


「シルフィアはもう戦えそう?」

「はい、大丈夫です」


 シルフィアはしっかりとした眼差しを向けてそう言った。よろけた様子もないし、戦闘しても大丈夫そうだ。


「これから忙しくなるけど、お願いね」

「任せてください...!」


 さて、この状況下でどうするか考えるか。

 勇者組は単純に疲労で戦闘力が下がってきている。疲れていないように見えるサリアやリナ、シルフィアも魔物との連戦で魔力や体力が消耗しているのは間違いない。全員が余裕を持って安全に宿舎に帰ることを考えると、魔物狩りはこの辺が潮時だろう。早く宿舎に戻れるようにフォーメーションと戦術の変更をするとするか。


「宿舎への進行速度を上げます。それに伴い、フォーメーションを変更します。リリーガーデンは進行方向、アステラ国勇者組は後方や側面の対応をしてください!魔物との戦闘は最低限で!ここ重要!」

「「「「「「了解!」」」」」」


 息ぴったりでいい返事だ。予想以上に魔物と戦ったり、帝国勇者に襲われたり、なんかジェシカさんたちが様子を伺いに来たりと色々盛りだくさんな事が起こったが、全員無事に宿舎に帰れそうだ。そう思いながら、合図を出して宿舎への進行を再開する。

 その合図を受けたシルフィアは自分の脇を通ってサリアたちのいる前方へと向かって持ち場についた。自分に背中を見せるシルフィアは、胸の辺りに手を当てる仕草をした。


「カオリちゃん...ありがとうございます」


 シルフィアからそんな独り言のような呟きが聞こえた気がした。何に対しての感謝か分からないけど、声をかけるのはやめておくか。多分そのことを聞くのは今じゃない気がする。時が来れば話してくれるだろう。

 そんなシルフィアは何事もなく、サリアやリナと共に戦闘行動に移行した。発見した魔物に魔法攻撃を仕掛けるシルフィアの背中は入学当初と比べるととても頼もしいものに思えた。入学当初の模擬戦で魔法が使えなくて弱々しかったシルフィアと今のシルフィアを比べると、全く別人のように頼もしい。それに自身の行動に自信が感じられて、魔法行使を含む行動に迷いがない。とても成長したなと感じずにはいられない。自分も負けてられないところだ。もっと上手く立ち回れるように成長して、のんびり学園ライフを過ごす!もちろんサリアやリナ、シルフィアと一緒に!そう決意を新たにした。

もうそろそろ物語を進行させたい(と思いながら書くべきことが書けていないことに気づいてしまう)今日この頃。

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