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2-48 演習1日目お疲れ様お茶会

(略しすぎています)

 藤本と自分は無事に戦績報告を終えたので、戦績報告を行った部屋から廊下に出た。そして、宿舎内の割り当てられた部屋へと歩いて向かう。

 歩いている最中に感じる学生からの視線は帝国勇者に向けられたものとは違って嫌な視線ではない。それは今の所アステラ国勇者組がマイナスとなる出来事を起こしていないからだと勝手に思っている。ついさっき、アステラ国勇者の藤本がエミーさんのお茶会に攻撃魔法を放ってしまったが、怪我がないとあって話が広がっていないのかもしれない。それ以外のマイナスな話を聞いていないし、嫌な視線を向ける理由がないからね。

 あと、森の中で感じていた視線も感じられない。魔物狩りをしていた時に情報収集部隊から視線を向けられていたが、宿舎の中に入った瞬間に感じられなくなった。そこから察するに、情報収集部隊は勇者の戦闘能力以外の情報を必要としていないのだろう。流石にオフの時まで情報収集してきたらストーカー認定して対応を考えないといけなかったが、そうじゃなくて安心した。宿舎ではのびのびと休めるな!やったぜ!

 今の環境が思ったよりも良かったので、心の中でガッツポーズをしていると、藤本が声をかけてきた。


「カオリ師匠はこれからどうされるんですか?」

「自分たちはこれからお茶会ですね。サリアたちはやる気満々でした」

「これからお茶会ですか!?リリーガーデンのみんなは元気ですね。私たちなんてヘロヘロですよ」

「魔物狩りは慣れですよ慣れ。回数こなせば大丈夫になりますよ。でもその調子だと...誘っても参加はできなさそうですね」

「そうですね。流石に私を含めてみんな疲れちゃってて、すぐに寝ちゃうと思います。誘っていただいて嬉しいところですが、私たちは明日に備えて寝ようと思います」

「無理するのも違いますからね。わかりました」


 2人で話をしているとお互いの部屋の前についた。藤本と自分は立ち止まってそれぞれの部屋の前に立ち、別れの挨拶をする。


「それでは、また明日」

「はい師匠、明日もよろしくお願いします」


 自分は手を挙げて藤本に反応を返す。それを見た藤本は軽くお辞儀をしながら、割り当てられた部屋の扉へと入っていった。その時ちょっと体の重心がフラついたので、相当疲れているのだろう。勇者組は特訓三昧で気を張りっぱなしにしていたから無理もないな。

 それじゃ、自分も部屋に入るか。


「帰ったよー」


 声をかけながらドアを開けると、サリアたちがニコニコな表情で待ってましたと言わんばかりに駆け寄ってきた。思わぬサリアたちの行動に両手を上げる。何事?


「どうだった?」

「参加してくれるって?」

「準備したほうがいいですか...?」


 あー、お茶会に勇者組が参加するか気になっていたのか。


「残念ながら。疲れてるから休むって」

「「「そんな〜」」」

「また明日だね」


 残念そうにサリアたちはそのまま廊下へ出ていく。それにしても、サリアたちは勇者組と今日初めて出会ったにも関わらず、すごく仲良くなった。特に森の拠点で休んだ時から勇者組との距離が縮まったように思う。一体何を話したらそうなるんだ?というか、何故廊下に出ていくんです?

 疑問に思っていると、廊下を歩いているサリアたちから声がかかる。


「カオリちゃん早くー!」

「食堂行くよ!」

「第一弾始めますよ...!」

「だ、第一弾?」

「「「夜はこれからだよ!」」」


 これは寝られそうにないな!?サリアさんたち明日もあるのよ?はっ!もしかして魔物狩りは夜になってからだから朝まで起きてても問題ないと考えてるパターンか?これは長丁場になりそうだ...。


 戦々恐々としつつ、宿舎内の食堂へと移動した。食堂の中にはあまり人がおらず、用意された席の2割程度しか埋まっていない。席は選び放題だ。そんなスカスカな状態にも関わらず、食べ物の匂いが鼻腔をくすぐる。お腹が減る匂いだ。


「今日は何があるかな?」

「私はお肉が食べたいかも!」

「リナちゃんはガッツリ行きますね...」

「自分もその気分かも」


 みんなで券売機の前に来てメニューを見る。定食系は鳥の香草焼き定食、ミートソースパスタセットにハンバーグ定食しかない。だが、デザートはそれなりに用意しており、クッキー系からケーキまで用意している。メインの食事の選択肢は少ないが、デザートが多いのは評価したいところだ。

 この辺は前回の魔物狩り演習の時に把握済みだ。だが、券売機の様子が前回とは違っている。その様子に自分を含めてサリアたちのテンションが爆上がりする。


「え、値札がない?」

「ボタンのところにないよね?」

「何か紙が貼ってますよ...」

「えーっと、何を選んでも無料。ただし、1人4品まで」

「「「「神じゃん!」」」」

「みんなで持ち帰ってお茶会だね!」


 勇者向けの演習とあって学園側の羽振りがいいな。選び放題でお腹いっぱい食べることができて素晴らしい!アステラ国として、他国からの視察員や高官が来ている時に羽振りのいい姿を見せようとしているのかな。何にせよ参加している身からすると美味しいものを食べられる神サービスだ。yattaze!色々頭を悩ませることがあったが、これなら参加してもお釣りが出るくらいハッピーだ! 

 でもちょっと待って!?そんなに神サービスが提供されちゃうとお茶会がさらに盛り上がっちゃうじゃん!デザート祭りで眠れないね!覚悟決めました!朝までお茶会ナイトfooooo!

_______

 それぞれメインの食事を食堂で食べて、デザートを部屋に持ち帰った。部屋に設置されたケトルでお湯を沸かし、持ってきたポットに茶葉とお湯を入れる。茶葉がポットの中で踊っている間に、デザートで埋め尽くされた小さなテーブルの上にカップを用意した。そして、紅茶を入れて始まる。リリーガーデンのお茶会が!


「「「「今日もお疲れ様ー!」」」」


 食堂から持ち帰ったデザートのほかに、それぞれが買い込んで持ち込んだ大量のお菓子も用意している。尽きることはないほどのお菓子でお祭り騒ぎだ!


「さてまずはこのケーキから...んーおいひー」

「サリアちゃん、それもらってもいい?」

「いいよー」

「あっほんとだおいしー!シルフィアも食べてみなよ!」

「それじゃ...私も...んっ!みずみずして美味しいです...!」

「おー、それはいいn」

「はいカオリちゃん!」


 サリアはそう言うと、ケーキの一部を突き刺したフォークを自分の口に押し込んできた。いきなりのことだが、お茶会の回数をこなすうちに読めてきたのでもう驚かない。間接キス?そんなものはもう慣れっこだ。慣れって怖いなぁ。あ、美味しい。重くなくしつこく無い甘味が口の中に広がって幸せ空間だぁ。


「おいしー」

「ねっねっ、カオリちゃんのもいい?」

「いいよー、あっでも待って。まず一口食べてからね」

「「「早く早く」」」


 そのままサリアたちに渡すと食べ尽くされちゃうからな。とりあえずカップを持って紅茶を含み、口の中をリセットする。そして自分が持ち帰ったスイーツであるプリンをスプーンで掬い、1口食べる。


「ん!これは...!」

「「「これは!?」」」


 つるりとした舌触りにと共に強いカラメルの甘味がくる。そして、焦げた砂糖の香りが鼻腔まで届き、甘苦さを感じさせる。カラメルの甘味が消えていくと、丸みのある甘みが姿を表す。カラメルの甘苦い味と対比する、卵が感じられるクリーミーなコクが口の中いっぱいに広がる。

 街中から離れた僻地とも言える演習地でこんなプリンが食べられるなんて!素晴らし過ぎる!


「美味しい!」

「「「じゃ私も!」」」


 そんなテンションでデザートやお菓子を食べていく。この調子なので、勇者組が参加したとしても早々に疲れておやすみタイム突入しただろうな。それに、今日はいつものお茶会と違ってスイーツやお菓子の数が多いのだ。藤本の休むという選択肢は正解だっただろう。

 何はともあれ、美味しい紅茶にスイーツで最高すぎる!これで明日からの活力が湧いてくる!んーおいひー!幸せ!

 スイーツ幸せスパイラルに浸っていると、リナが自分のケーキの上に載っていたイチゴを素早い手つきで奪っていった。


「あ、いちごもらっちゃおー」

「あ、食べようと取ってたやつ!むぅー」


 気を抜いたらこれだからのんびりもできない。お茶会がハードコアモード仕様だが...こんな時もあっていいよね。

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