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2-47 魔物狩り演習1日目の戦績報告

(略しすぎています)

 時は過ぎて今は宿舎のロビーに1人でいる。それは魔物狩り演習での戦績報告をするためにアステラ国勇者組のリーダーである藤本とロビーで待ち合わせているからだ。他のメンバーは各パーティーに割り当てられた部屋で休憩タイムに突入してリラックスしている。勇者組とリリーガーデンの部屋が隣同士だったが、勇者組はかなり疲れている様子だったので女子会1stラウンドをせずに各部屋で休んでいるかもな。

 と言うのも、特に勇者組は戦闘時に気を張り詰めながら戦っていたから精神的に疲れが溜まっていたようで、演習を切り上げる時には魔法発動までのタイムラグが演習開始時よりも長くなっていた。そんな中で魔物を狩り続けるのは事故の元になるので、アステラ国勇者組とリリーガーデンは早めに切り上げることにしたのだ。


 早めに切り上げたとは言え、爆速で宿舎に戻った訳ではない。特訓したり魔物狩りをしたりしていた。

 まず、休憩後にアステラ国勇者組の再特訓を行なった。勇者組は未熟な魔力操作が引き起こす事故について認識したことから、魔力操作の再特訓をする流れとなった。特訓内容は森の中に入る前にやったことと同じことをしたが、その際に1つ制約を設けることにした。それは魔法発動が可能な最小レベルの魔力を使うことだ。魔力操作が不十分な勇者組にはかなりハードルが高いようだったが、1時間程度の特訓終了前にはそれぞれ何かを掴んだのか、魔法の威力はかなり下がって精度が少し向上していた。改善点は色々あるが、これなら直撃しても重症レベルでなんとかなるだろう。

 エミーさんとそのパーティーは勇者組の特訓が開始すると、宿舎に戻りながら魔物狩りをすると言って森の中の拠点から一足先に離脱した。一緒に拠点で休憩をしていた時は特に不審なことはなかったのだが、シルフィアはエミーさんとそのパーティーを見送る時に、不思議な視線を送っていた。猛烈に疑いにかかっているという視線でもなければ、友好的な視線でもない不思議な感じだ。1度だけでなく何度も気になっている感じなので、タイミングが合えば聞いておくとしよう。


 それで、勇者の特訓も終わり魔物狩りを再開した。やったことはシンプルで、森の中の拠点から宿舎の方向に移動しつつ、索敵に反応があった魔物を狩るものだ。

 その際、戦闘は勇者組メインで戦ってもらった。誤射が起きた時には魔法の使用に躊躇いを感じていたようだが、特訓によって勇者組の自信が出たのか、魔法の使用を躊躇うことなく戦闘を行っていた。だからなのか、勇者組の戦闘は想像よりもスムーズで、早めに宿舎に戻ることができた。かなり精神が消耗したようで最後は少し発狂気味だったような気がしなくもないが、無事に戻れたのでいいだろう。

 道中の索敵はサリアたちに任せたのだが、かなり安定した索敵をしていた。その中で、サリアたちはまたもやすごい成長を見せた。それは、サリアたちの受動探知できる範囲は自分からすると狭いものの、その範囲内でなら魔物と人を区別することができるようになったことだ。元々筋が良くて受動探知が雑踏の中でもある程度使えるようになっていたとは言え、今日だけで魔物か人かの区別ができるようになったのはすごいことだ。多分学生が活動する程度なら十分な能力になっているだろうな。ここからさらに成長していくことを考えると末恐ろしさを感じるものだ。


 あ、そうそう。宿舎に戻る道中では豪快な音は聞こえてこなかった。おそらく、学園側からのお願いが全勇者パーティーに行き渡ったのだろう。自由奔放に魔法を放ちまくっていた帝国勇者組がそのお願いを聞き入れることは予想外だったが、平和なのはいいことだ。そのためか、自分たちが宿舎へ向かう道中にすれ違いで森の奥に向かうパーティーと出会ったりした。多分演習区域に平和が訪れたから本格的に魔物狩りを開始したのだろう。気持ちはめっちゃわかるぞ。


 とまあ、宿舎に帰ってくるまでにこんなことがあった。なかなかに盛りだくさんだ。

 そんなことを考えていると藤本がやってきた。手を挙げてここに自分がいることを藤本に伝える。すると、それに反応した藤本は自分のところに駆け寄ってきた。


「すみませんカオリ師匠、待ちましたか?」

「いや、待ってないですよ。それじゃ戦績報告に行きましょうか」

「はい師匠!」

「あとごめんなんですけど、その師匠って呼び名どうにかならないです?」


 勇者組は再訓練をしてからこの調子で何かと持ち上げてくる。元々師匠と呼んでいたが、その本気度が増したのだ。恥ずかしいので人がいるところではやめてほしいのだけどね...。


「何をおっしゃるかと思えば。私たちを導いてくれたのですから師匠とお呼びするしかないでしょう?もしや先生呼びの方がいいでしょうか?」


 あ、ダメそうですね。何かしら持ち上げる呼び名が改善しないのは勇者組の精神が消耗しているからだろう。うん。


「あ、うん。そっちの方がいいかもー...」

「わかりました先生!」


 自分の呼び名について雑に諦めていると、帝国勇者の4人組が戦績報告する部屋に繋がる道から姿を現した。そんな彼らを見ていると、少しピリピリした雰囲気を感じ取れる所作に加えて表情には苛立ちが浮かんでいた。そんな彼らは自分たちに気づかないまま、割り当てられた部屋がある方へと向かって行った。

 藤本は何か知ってるのかと視線を向けると、藤本も帝国勇者たちを見ていた。そして、同じクラスメイトとしての想いからか少し心配そうに呟いた。


「田川たち、大丈夫かな?」

「帝国勇者たちに何かあったんですかね?同じクラスの藤本さんは何か知りませんか?」

「いえ、詳しいことは何も。ですが、この演習で実力を示すんだーって息込んでましたから...。何か不都合な事でも起こったのかな?」

「何かあるとすれば学園側のお願いでしょうか?」

「あー...そうかもしれません」


 話を聞く限りだがおおよそ予想通りな展開だ。帝国勇者組はこの演習で実力を示すために大火力魔法を連発して魔物を無差別的に倒しまくる算段を立てていたのだろう。だが、それが学園側のお願いによって封じられたことになる。なので実力を示す計画が台無しとなってイライラしていた感じだろう。少々短絡的すぎる考えだろうか?

 それに多分だが、帝国の機関はこの事について織り込み済みの計画を立てているはず。今後、何かしらグレーゾーン的な手段で行動を起こして来そうな感じがするが、何をしてくるか読めないので怖いところだ。

 周囲を見渡すと、自分たちのように帝国勇者組を見ている生徒たちがいる。しかし、帝国勇者組を崇めるような視線を送る生徒はおらず、誰もが腫れ物を扱うような視線を送っている。多分関わりたくないって感じかな?ヒソヒソ話をしている表情から察して、帝国勇者組の評判はかなり悪いものになっているようだ。エミーさんの話では帝国勇者組が大暴れして生徒に大怪我を負わせていたみたいだし、その行動が生徒の中で広まっているのだろうな。完全に身から出た錆で評判を落としている以上、救いようがないな。


「同郷の身として気になるところですが...戦力報告に行きましょうか」

「そうしますか」


 気持ちを切り替えて、ロビーに集まった目的である戦力報告をするために会議室へと向かった。魔石鑑定装置に魔石を流し込んで鑑定したり、魔石をロッカーに保管したり、集計係の先生に鑑定結果を提示したりして戦力の報告を済ませてきた。もちろん、鑑定結果が書かれた紙を持ち帰ったりした。このクソ雑魚セキュリティーをアテにするもんじゃない。自己防衛だからね。

 1日目の戦績は道中で色々な出来事があったが、リリーガーデン43体、アステラ国勇者組64体の魔物を狩っていた。どれも魔物のランクは低いが、その数はなかなかなものだ。その証拠に、アステラ国勇者組の総合順位は1位、リリーガーデンは他国の勇者の下位に位置する。現時点において負傷したり負傷させたりといった戦績ポイントの減算をしていないことから、実質的にアステラ国勇者組とリリーガーデンでトップを独占しているはずだ。それに、他の生徒たちの戦績は20体後半なので、他国を含めた勇者組とリリーガーデンの戦績はかなり差が開いている。なかなかに素晴らしい戦果と言えるだろう。

 だが、思った以上にリリーガーデンが他国の勇者たちと同等の戦績を上げている以上、他国の情報収集部隊から注目されることになるのは間違いない。絶対良からぬことが起こるだろこれ...。平和ピクニック魔物狩り演習終了のお知らせでオワタ。笑えない状況に頭痛がしてくるね!それにリリーガーデンは戦闘中の様子が情報収集部隊に監視されていた以上、リリーガーデンの戦力評価は既に完了しているはずだ。なので今更戦闘能力を隠すのは不自然というもの。ぬーーー、どうするかな?いっその事開き直るか...?


「そんなに頭抱えてどうしたんですか師匠?」

「あ、先生じゃないのね」


 色々とどうにもならなくなってきたが、こっちもダメそうだ。

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