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2-46 学園からの知らせの背景と状況整理

(略しすぎています)

 アステラ国勇者組とリリーガーデンに加え、エミーさんのパーティーが加わった面々で森の中の拠点へと向かっていた。その道中で2回ほど魔物と遭遇したが、その際はエミーさんと自分で対処を行なった。それは、エミーさんパーティーと自分は疲れている勇者組とサリアたちには回復に専念してほしいと思っていたから休んでいてねと言ったからだ。自分が戦闘に参加して魔物をポコポコしたいとかほんの少しだけしか思ってないよ?多分。

 エミーさんのパーティーの実力が不明なため戦闘面で少し不安があったが、そんなことは杞憂だった。戦闘になるとエミーさんのパーティーは予想外にも連携が取れていて自分が出る幕はなかった。エミーさんを除いたメンバーの個々の戦闘力がそれほど高くなくて自分と同じ学年でも平均といった感じだ。しかし、エミーさんの細かなパーティー指揮と雷属性の放射系魔法による補助でパーティー全体の戦闘力を底上げしていたからだ。魔物を狩る時も余裕が感じられたし、単独パーティーで森の奥まで来られたことに納得だ。こりゃ、学園が総合戦闘力を見込んで勇者パーティーへの伝達役に指名したと言っても納得するところ。というか、自分も魔物と戦っていいですか?泣いていい?

 言葉に出さず心の中で涙を流していると、森の中の拠点に到着した。これからどのメンバーも休憩タイムに入る予定だ。あ、そうだ。みんなは魔物との戦闘で疲れているだろうし、自分が拠点周辺の警戒担当になれば魔物狩りができるんじゃね?エミーさんのパーティーはここに来るまでに連戦だし、サリアたちは一時休憩地点での警戒で疲れたといっている。勇者組はそれまでの戦闘で疲れている。となれば、現時点で元気に戦えるのは自分のみ!これで心置きなく暴れられるぞおお!周囲の目があるから散歩程度な感じになるけど、それでもいいのだ!むしろ栗拾い的な感じでちょうどいい感じだ。それでいこう!


「拠点に到着したので、各自休憩してください。自分は元気なので周囲の警戒をしています。何かあったら声をかけてね」


 エミーさんパーティーと勇者組から了解の声が聞こえてきたので、ルンルンで拠点の広場から森の方へと向かおうとしたら、サリアたちによって袖を掴まれていて移動ができなかった。

 振り返ってみるとサリアたちが少し心配そうな表情を浮かべていた。そして、サリア、リナ、シルフィアの順にそれぞれ声を発する。


「カオリちゃんずっと周囲を警戒してるよね」

「戦闘中もずっと危なくないか見てたし」

「カオリちゃんが休んでるところを見てないですよ...」


 そんな自分が心配で大丈夫かと問いかけてきた。サリアたちの主張はどれも正解だ。魔物狩りが始まってから周囲の警戒をしてるし、戦闘中も危険があったら動けるように準備はしていた。集中を要する場面もあったが、基本的には半分ピクニック気分なので疲れてはいない。ただ、あまり気分転換ができておらず精神的には疲れている。でも、体を動かしたり他のことをすれば気がまぎれると言うものだ。そのための魔物狩りだ。


「大丈夫。体動かしてなかったから疲れていないよ。むしろ魔物狩ってないから疲れてるまであるかも」

「「「あー」」」

「だから任せて」


 サリアたちは納得してくれた様子せ引き下がってくれた。だが、何を思って納得したのだろうか?話が早くて助かるから特に追求しないけど気になるな?


 何はともあれ魔物狩りが行える環境が整ったということで、サリアたちに手を振って周囲の警戒にかかる。まずは受動探知を使って拠点周囲の状況を把握だ。

 肌と魔力の感覚を研ぎ澄まして自分の体を通り過ぎる魔力の波を感じ取る。すると、50m程度離れた円周上に各国の情報収集部隊の反応があった。森の中に入ってからずっと着いて来ている様子だな。さっさとアステラ国勇者の事を諦めて帰ってほしいところだ。

 だが、魔物に関しては多くない。情報収集部隊が移動する際に、ある程度片付けてくれたのだろう。その為か、魔物は各国の情報収集部隊よりも外側に居る。つまりは周囲に魔物がほとんど居らず、魔物を狩りたい自分からするとありがた迷惑な状況なのだが...。また狩る機会を失ってるじゃん。


「ふぃー、なんだかなー」


 そう呟くと、突然背後から声がした。


「何がなんだかなですの?」

「ひっ...てエミーさんですか。脅かさないでくださいよ」

「別に脅かすつもりはありませんのよ?でも、少し話したいことがありますの」

「話したいこと?」

「ええ、勇者向けの魔法に関する話の件ですわ」

「その話に続きがあるんですか...」

「続きと言いますか、そうなった経緯が正しいですわね」


 ほう、事が起こったのは勇者の使う魔法が適当すぎてフレンドリーファイア問題勃発ってだけじゃないのか。気になるな。


「各国の勇者が使う魔法の制御が十分ではない話はしましたわよね?」

「そうですね。おかげでフレンドリーファイアが多すぎるとかなんとか」

「そのフレンドリーファイアに関する話ですの。各国の勇者は少なくとも負傷に至るフレンドリーファイアをしていますわ。それが起きる事自体に問題があると思いますけど、幸いにも多くが軽症で済んでますの」

「それは魔法の威力を考えるとラッキーですね。何か工夫してたんでしょうか?」

「聞いた話では威力を極限まで抑えるような指示や勇者のサブパーティーが指示を出すまでは魔法の使用を制限するなどしていたみたいですわ」

「そういった行動をとっているなら軽症も納得です。でも、学園からお願いが出た以上それだけじゃなかったと?」

「そうですの。一部の国たちは魔法の使用を制限するような行動をとっていないと聞いていますわ。特に帝国の勇者は酷い状況で、高火力魔法を乱発していたとか」


 会話の切れ目で遠くから鳴り響いてくる爆発音のような音が他国の勇者たちがいる方角から聞こえてきた。かなり距離があるにも関わらず音が聞こえてくるところから察して、相当な威力の魔法を使っているのだろう。そりゃ重症者も出るだろう。


「...それは現場が大災害になっているでしょうね」

「ええ。ですから、私自身は学園からのお願いが闇雲に魔法を乱発する勇者方へ向けたものと考えておりますわ。名指しにせずに勇者全体としたのは、角を立たせないためと見ていますの」

「なるほど...そう言った背景なら学園からのお願いも納得できますね。色々わかってスッキリしました。ありがとうございます。ですが、どうしてそれを自分に?」

「それは...」


 エミーさんはそう言葉を一度区切って、ほんの僅かな間の後言葉を続けた。


「カオリさんがアステラ国勇者と行動を共にしているからですわ。私たちと出会ってから、学園で見せていた元気な雰囲気を見ていませんので何かの助けになるかと思いましたの」

「それは助かります。各国の勇者たちがフレンドリーファイアで負傷させる中、負傷させていないことは彼女たちの自信になると思います」

「それはよかったですわ。それでは私の用は済みましたので仲間の元に戻りますわ。カオリさん、ご無理なさらないでいつでも交代をおっしゃってくださいまし」

「わかりました。その時はお願いしようと思います」


 そう言うと、エミーさんは小さくお辞儀をした後、エミーさんのパーティーの元へと向かっていった。それをある程度離れるまで見送って、周囲の警戒に戻る。

 そして、歩きながらエミーさんが諸々の背景を伝えてきた理由について雑に考えてみる。エミーさんがいったものは面と向かって勇者組に言ったらいいのにと思ってしまうのだ。だが、自分だけに言ってきた。それに、理由を言い出すまでの、ほんの僅かな間も気になっている。そんなエミーさんの行動は何か言えない事があるからそんな行動をとっているのだろうか?それとも、雑談をしにきたから?いや、それは一番ないか。でもわざわざ言いに来たあたり、エミーさんにとってなんらかの意図含まれているのだろう。それが彼女の自己満足か、おせっかいなのかは不明だが。

 視線をエミーさんのいる方へと向ける。特に変わった様子もなく、臨時連合パーティーのみんなと雑談をしている。ぱっと見は自然体だ。うーん。わからないな。ただ、エミーさんを含めてみんなワイワイと楽しんでいる様子だけはわかる。楽しいことはいいことだなうんうん。なんか、エミーさんが話してくれた事の意味の裏を勘ぐるのは悪い気がしてきた。

 そんなみんなを横目に見ていたのだが、シルフィアの様子に違和感を感じた。外見上は普段と変わりがないのだが、なんと言うか雰囲気が少し違うのだ。さらに、その視線はエミーさんの元へと注がれている。エミーさんと何かあったのだろうか?うーん謎だな?でもまあ、シルフィアも何かあった時にはハッキリと言うことができる。そのシルフィアが何も言わないのだから、特に困ったりしていないのだろう。タイミングがあったら聞いて見るとするか。


 謎が深まるばかりのエミーさん関連から目をそらすため、視線をサリアたちのいる方から正面へと戻して警戒のために周囲を見渡す。特に何もないので拠点の広場と森の境目を歩きながら、今まで得た情報にエミーさんから得た情報を加えて諸々の状況を整理していく。


 それはこの場所に集まった集団とその目的についてだ。今は各国の勇者たちとそのお付きのサブパーティー、情報収取部隊が集まっている。その目的は恐らく他国の勇者の戦力評価を通じた国家としての総合戦力の把握だ。

 その中で特に帝国は何かを起こしそうな流れがある。それは学園内における帝国勇者の評判が良くないことに起因する。特に帝国勇者の実力について、学園内で疑問符が付くようになってきている程度には評判が良くない。特に自分に難癖をつけてきたので模擬戦で決着をつけた時以降はその傾向が顕著になっている。帝国からすると、その評判はよろしくないらしく、帝国の機関がわざわざ警告するために襲撃?してきたくらいだ。別に貶そうとしているわけじゃないのに警告なんてされてもねぇ...。

 そんなこんなで、勇者向け魔物狩り演習で評判回復に向けた工作を何かをやって来るんじゃないかと踏んでいたのだが、全くといって帝国の機関が行動している気配を感じない。多分だけど、各国の目があるから派手に動くことができず、魔物討伐数という正攻法で評判の回復をする策を取らざるを得なかったのだろう。それが、ド派手な魔法を半分無差別的に乱発することで魔物を倒すとかいう災害的な感じになっているのだが...それはいいのか?知らんけど。

 そんな中で、学園から勇者向けにド派手な魔法の使用を制限するお達しが出た。正確には、魔法使用時に周囲を確認して巻き込み事故を防止しろというところなのだが、聞いた内容からは魔法の使用制限する意図が含まれている。このお願いが出た以上、ド派手な魔法の乱発で魔物を倒すことができず、チマチマと倒すしかない。それは、帝国勇者と帝国の機関がとっていた策を継続するのがより難しくなることを意味する。


 そう考えていると、遠くから爆発音が聞こえてきた。

 どうやら、まだまだ高火力魔法を使っている様子だ。ある意味災害区域だし、学園からのお願いの伝達に時間がかかっているのだろう。学園からのお願いを無視して帝国勇者と帝国の機関が正攻法を取り続けていると決めつけるのは早計か。だが、少なくとも数時間以内には学園からのお願いが伝わる。何か動きがあるとすればその時だろう。帝国がこの演習で用意した手札を読めない以上、何が起こるかはわからない。

 だが、幸いにも自分たちのいる地点は帝国をはじめとした他国の勇者たちとは距離が離れている。なので、ここは安全地帯というところだ。現時点において、自分たちはこのまま独自に動いていていいだろう。それに、何か動きがあるとすればきっと大問題が起きるとかだ。流石に今から魔物異常発生なんて起きないだろうけど、その時には宿舎に常駐している特殊魔動騎兵隊や宮廷魔導士がなんとかしてくれるだろう。面倒ごとには首を突っ込まないに限る。


 考えがまとまったとき、受動探知に魔物の反応をとらえた。その方向はサリアたちがいる方向のさらに奥の森の中から感じる。数は1。ノーマルタイプのゴブリンで特に脅威を感じないが、サリアたちが居る方向へと進んでいる。このままだと1分くらいで広場に辿り着く感じだ。


「...」


 ゴブリンの動向を注視しつつ、何も気づいていない風を装ってサリアたちが攻撃の射線上に来ないように移動する。そして、残り20秒となってもサリアたちの方へ向かうことをやめなかったため、リング型MSDに魔力を流してアイスニードルを発動した。

 一瞬で生成された氷柱は目に留まらぬスピードで飛翔するとゴブリンの頭を貫通する。そして、木の幹に突き刺さるとアイスニードルは光の粒となって消滅し、ゴブリンは魔石へと変化して地面に落ちた。


「勇者たちにもこれくらいできるようになってもらわないと。どんな訓練をすればいいかな?」


 何やら情報収集部隊の皆さんからざわめきを感じなくもないけど、これくらいのスナイプは普通でしょ?サリアたちだって魔物の居場所がわかっていれば簡単にできるだろうに。彼らは一体何にざわついているのだろうか?自分には予想がつかないね。

 周囲の警戒を継続しつつ、勇者向けの訓練プランを考え始めたのだが...。あれ?魔物狩りでリフレッシュするはずでは...?まあいいか。勇者たちに頑張ってもらわないとリフレッシュできない状況になりそうだし、リフレッシュのための先行投資だ。そう考えるとしよう。

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