2-38 魔物狩り演習の詳細と学園からギルドへの依頼
(略しすぎています)
どうも銀髪ロリエルフになった者です。教室の窓から入る眩しい朝日に照らされて、若干の暑さを感じながら自分の席でのんびりしています。今は朝のホームルーム中でエルバ先生からの連絡事項を聞いています。昨日は操られたエミーさんがリリーガーデン主催の講習会へ妨害をかけてきましたが、エルバ先生からはその事については何も触れられていませんでした。その件は一応、芝居であったという話で通しているので学園側が問題として捉えいないのだと思います。もしかしたら、情報を何も掴んでいないだけかもしれませんが...。
何事もない事に安心してエルバ先生の話を聞き流していると、エルバ先生のテンションが急に上がった。一体何が始まるんです?
「それでは、本日の特大ニュースです!」
なんだ?ニュース?今日は普通の水曜日だから特にイベントとかないよね?そう首を傾げながら、エルバ先生の話を聞く。
「勇者さん向けの魔物狩り演習が来週から行われます。その演習にリリーガーデンが参加する事になりました!はい拍手!」
クラスメイトのみんなはその情報を聞いて沸き立つ。純粋にマジかすげー的な感じに声をあげて、その驚きと応援の言葉を伝えている。
その情報か。自分はその情報を月曜日に知らされていたので、聞いても特段驚くことはない。けど、注目を浴びて一斉に応援の言葉を投げられると照れる。のんびりしていて返す言葉も考えていないので、赤べこみたいに首を振って反応を返す事にしよう。
一方のサリアたちはそんなクラスメイトの反応に負けない反応を見せた。
「「「えー!私たちがですか!?」」」
サリアたちはそう言いながら、ガタンと椅子を鳴らしながら席を立った。
なかなかいい反応ですなー。エルバ先生はさぞその反応に満足しているだろう。そんなことを高速赤べこしながら思っていると、エルバ先生がサリアたちに反応を返した。
「え、カオリちゃんから聞かされてませんか?」
「「「え」」」
エルバ先生の言葉を受けて、サリアたちが一斉に自分の方へ向く。急に変わった流れに教室内が静かになる。そしてクラスメイトはサリアたちの方を見ると、一斉に自分の方へ向いた。
そこでようやく思い出す。サリアたちに伝えるのを忘れていたことに。しゃーなし。一か八かだが、伝家の宝刀である可愛さで誤魔化す作戦で行きますか。
「え、あー伝えるの忘れてた。ごめーんね?」
「「「かわいいから許す!でも、それ反則!」」」
本当に許された...。けど、反則だって言ってるし内心は僅かに怒っていそうだ
。一応普通に謝っておこう。
「本当にごめんね。普通に忘れてた」
「「「いいよー」」」
ふぃー。これで今は許された。後で何か聞かれそうだけど、それは甘んじて受け入れるとしよう。それはそうと、そんな流れを作ったエルバ先生よ...。よくわからないこの場の空気をなんとかして。
そんな無茶振りな要求を視線とともにエルバ先生に飛ばす。エルバ先生はその視線を受け取ると「ごめんなさいね、てへぺろ」って感じの視線を自分に飛ばしてきた。ぐぬぬ。先生も伝家の宝刀を使える側の人だったか。許す!
「ふふっ、さすがリリーガーデンです。仲がいいですね。それでは演習の詳細を説明します。基本的には先日あった演習と同じく、パーティー単位で動いて魔物を狩って行く事になります。日程は2泊3日であり、その期間中で狩った魔物の種類とその討伐数でランキングが作成されます」
ここまでは前回の魔物狩り演習から変更点はないな。
「今回の演習は自主性が重んじられていますので、パーティーにインストラクターは付きません。パーティーの力だけで魔物の討伐をする事になります」
自分としてはこの方針はありがたい。ストイックに魔物を狩りまくるのも、のんびりピクニック気分にするのもパーティー次第だからだ。自分たちのペースで魔物を狩れるならば危険に遭うことも少ないだろう。少なくとも魔物からは。
「そんな魔物狩りですが、なんと!リリーガーデンはアステラ国勇者パーティーと一緒に行動することとなりました!はい拍手!」
「「「え、えええええ!!!!」」」
なるほど、なるほど。アステラ国勇者パーティーとリリーガーデンが一緒に行動するのか。そりゃ、雑魚な魔物相手だと楽な演習になりそうだ。うんうん。うん?今、なんて言ってた?
「「「カオリちゃん???どう言うこと???」」」
サリアたちはそう言って自分へ視線を向けてきた。クラスメイトたちも同様に自分へ視線を向ける。そんなことしても知らないよ?本当に!
「いや、いやいや!それは知らない!今初めて聞いた!」
「「「本当にー???」」」
「信じて!本当ですともー!」
エルバ先生の方を見ると少し笑っている様子だ。こりゃエルバ先生確信犯か。
覚えてるからなーと視線を送ると、エルバ先生はごめーんねって視線を送ってきた。ぐぬぬ...。可愛いから許す!反則だけど!
____________
時は過ぎて放課後になり、サリアと一緒にギルドへやってきている。これからサリアと魔物狩りに行くのだが、魔物の情報とか依頼があるかギルドに寄る流れで来た。
「来たのはいいけど」
「なんかすごい賑わってるね」
ギルドの扉を開けると大勢の人がいてかなり賑わっていた。これから何かがあるのか?そんなことを思いながら室内を見渡すとギルドの掲示板と受付カウンターに人が多く集中していた。一体何が起こっているんです?
サリアと一緒に首を傾げていると、丁度通りがかったモリスさんが声をかけてきた。
「よお、てんs、カオリの嬢ちゃんとサリアちゃんじゃねぇか」
「「モリスさんこんばんは」」
「今日も息ぴったりで仲良いな」
「そりゃもう仲良しだもん」
「「ねー」」
モリスさんはこりゃ敵わなねぇはずだなと言いながらポリポリと頭を掻く。モリスさんは一体何で張り合っているんだ?ってそんなことを聞くタイミングじゃないな。ギルドで何が起きているか聞かなきゃだ。
「モリスさん、今日のこの騒ぎは何なのか知ってますか?」
「ああ、そいつは新しい依頼がさっき貼られたからな。かなり割のいい依頼だからって皆受けてるぞ」
「それってどんな依頼ですか?」
「それが単なる魔物の生態調査ってところよ。この場所に何匹魔物が居たと報告するタイプのやつなんだが、なんとそれだけで日当3万ゴールド!正直2度見した」
「それって実質ピクニックしたらお金もらえるってことじゃないですか」
「そうなのよ。だからみんな参加登録しに来て騒いでいるというわけよ。楽に稼げすぎて怖いレベルだぜ」
「となると、気になるのは依頼主と参加可能人数ですね」
「それが、依頼主が国立第一魔法学園なのよ。実質国依頼だからか、依頼登録者数の上限もないときた。羽振りが良すぎるにも程があるってもんよ」
国立第一魔法学園というのは自分が通っている学園だ。そんな学園が魔物の生態調査?となると魔物狩りと関係がありそうだ。
「それっていつ開始する依頼なんですか?」
「来週の月曜と火曜日だな。ここから距離あるから現地で泊まりにはなるが、かなり割りがいいから気にならねぇところだ」
時期的にビンゴだな。魔物狩り演習は来週の水曜日から開始だから、その前に異変がないか事前調査しておくのだろう。前の魔物狩り演習では魔物災害が発生したから、その対策として学園や国は事前調査を行いましたっていう実績が欲しいのだろう。その時は闇魔法を扱う集団であるマニューヴェが暗躍していたが、正直なところ相手が上を行きすぎて同じ事前調査をしたとしても役には立たなそうだ。やらないよりかはマシだが。
「それなら私たちも参加しようと思えばできるね」
「ところがどっこい、参加制限があってな。学園の生徒は参加登録不可なんじゃよ」
「「えーそんなー」」
自分としてはその依頼に参加できたら、現場の事前調査ができて問題回避に貢献できるしお金ももらえてハッピーだったんだけどダメか。
「その辺は多分学園の授業の関係と見てますぜ」
「カオリちゃん、それって魔物狩り演習をするから?」
「多分そう」
「そりゃ、つい最近やったやつとは違うってのか?」
「それが前の演習とは違って、各国の勇者育成を目的とした演習なんですよ」
「なるほどねぇ...そりゃ力も入るってもんよな」
モリスさんは一旦言葉を区切ると、声のトーンと声量を落として言葉を続けた。
「勇者の周りの話は色々聞くけどよ、帝国勇者の周りだけはいい話は聞かねぇ。注意しておいた方がいいぜ」
「モリスさん、情報ありがとうございます。気をつけておきます」
「そうします」
ギルドにまで帝国勇者の周りがやばいことが知られているとは...。こりゃ本国にまで情報が伝わるのも時間の問題で、近い未来に帝国の機関が何かしらの工作をしてくることが確定しているようなものだ。気を引き締めないとな。




