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2-33 知らないところで起きていた問題

(略しすぎています)

 校舎へ爆速で移動すると、同じく駆け足で出入り口に駆け込んでいる人が多くいた。始業時間ギリギリに登校してくる学生は自分以外にも多くいるようだ。異世界でも遅刻ギリギリを攻めているのは予想外すぎるな。案外元いた世界の感覚と変わらないのかも?なんか親近感が湧いて安心する。遅刻しそうだけど。

 そんなことを思いながら早足で教室へと向かい、教室の後ろのドアを静かに開けると自分をのぞいた全員が着席していた。時計を見てもまだ始業前で遅刻じゃなくて安心したぞ。

 そーっと教室に入って自分の席へと向かっていると、サリアとリナ、シルフィアが振り向いて視線を送ってきた。特に気配を消さずに入室したのだが、自分に気がついたようだ。土日の間に特訓した成果が出てきている様子。こりゃ来週に控えた2回目の魔物狩り演習が頼もしいな。


 挨拶のためにサリアたちに手を小さく振って自分の席に座ると、程なくしてエルバ先生がやってきて朝のホームルームが始まった。


「皆さんおはようございます。今日の欠席者は...いませんね。欠席者なしっと...。それでは皆さんへ連絡事項があります」


 ん?今日は連絡事項があるのか珍しいな?それに心なしか、雰囲気が固いような気もする。こりゃいい報告ではなさそうだ。


「学園内の生徒へ向けての連絡となります。先日の金曜日に学園内での私闘がありました。幸い怪我人はおらず、大ごとにはなりませんでした。ですが、私闘は規則で禁止されています。主義主張が相容れないからと言って相手に暴力を振るうことは問題です。対話で解決してくださいとの事です」


 私闘?自分が帝国勇者と対戦したのは水曜日だ。しかも一応模擬戦という形になっている。なので、自分のことではないようだ。エルバ先生の話から察するに、相手の考えが受け入れられないから戦闘するという血気盛んな人がいたようだが、そんな短気な人もいるんだな。魔法という普通に殺傷能力がある力を持っているだけにめちゃくちゃ物騒な話だ。そう言うところには頭を突っ込まないようにしよう。絡まれても基本的に逃げる。それがいい。うんうん。


「連絡事項は以上となります。皆さんも気をつけてくださいね」


 エルバ先生はそう言い終わると一瞬だけ自分やサリアたちへ同情の視線を向けてきた。ん?どういうこと?自分たちに関係しているのか?もしかして、すでに巻き込まれていて回避不可能だったりする?

 疑問符を浮かべていると、エルバ先生はホームルームの終了を告げて特に話す事なく教室から出て行った。


 視線の意味がわからないので当てずっぽうで考えていると、サリアたちが自分がいる場所に集まってきた。


「みんなおはよう」

「「「カオリちゃんおはよー」」」

「今日は遅かったね、ギリギリじゃん」

「ほんとギリギリセーフ。間に合ってよかったよ」

「カオリちゃんらしくないけど、何かあったの?」

「特には何も。図書館で調べ物してたくらい」

「「「あーなるほど」」」

「え、なんで納得してるの?」

「カオリちゃんは...集中して調べ物をして時間を忘れてしまって」

「予鈴で時間に気づいて」

「図書館から急いで教室までやってきたってところかな」

「まさにその通りですはい」


 まるで見て来たかのようにドンピシャで言い当てられすぎて怖いレベルだよ。土日の特訓で千里眼でも使えるようになったか?それは特訓してないぞ?

 あ、エルバ先生の言ってた私闘について、情報通のリナなら何か知ってそう。話を振ってみるとするか。


「そういえば、リナはエルバ先生が言ってた私闘って知ってる?」

「知ってるよ。今朝私の耳に入った新鮮な情報で、夕方の学園の屋外通路で起こった女子学生同士の軽い小競り合いがきっかけだったみたい」

「でもそれって普通にありそうな事だよね。エルバ先生が注意してくるレベルだから大ごとかなって思ってたんだけど」

「「確かに」」


 やっぱりリナは知っていたか。さすがは学園内に情報網を構築しているだけある。でも、サリアの言う通りで普通の小競り合いなら問題にはならないはずだ。なんならそこら辺にありそうな話だし。


「ところがどっこい、小競り合いがヒートアップして魔法を使った私闘にまで発展しちゃったの!幸い偶然通りかかった先生が止めに入らなかったらみんな怪我しちゃってるレベルで凄かったみたい」

「そこまでなるってよっぽど腹が立ったんですね...」

「リナちゃんはどんな理由でそうなったか聞いてる?」


 サリアに問われたリナは半ば諦めるような表情をして言った。


「聞いてるよー。リリーガーデン最高って言ってたグループと帝国勇者最高って言っていたグループが偶然下校途中に出会った。そして互いに聞き逃せない事から言い合いになって、私闘にまで発展したってところ」

「「「あー...そういう事」」」


 oh...。それでエルバ先生は自分たちに視線を飛ばして来たのか。しかも、もう問題に巻き込まれてるじゃん。巻き込まれてるついでに現状を考えてみるか。

 問題行動を起こした生徒がリリーガーデンの名前を出すと、リリーガーデンがそんな人たちの集団から応援(崇めている?)しているのだと勘違いされてしまう事になる。すると、リリーガーデンとしてのイメージダウンに繋がって周りから冷ややかな目で見られるようになる。結果、何もしていないリリーガーデンのイメージが勝手に下がっていく。そりゃエルバ先生も同情するわ。


「それって私たちが原因じゃないけど、私たちのイメージ悪くならない?」

「悪くなりますよね...しかも、何もしなければもっと悪い印象が付きそうです...」

「だよねー。どうしようか。カオリちゃんは何か意見ある?」


 リナに話を振られたので、意見するために考えてみる。

 何もしないのは悪い印象を払拭することはできないから、その選択肢はない。となると、何かするわけだが...。適当に教室でルール的なものを宣言したからと言ってその意図が正しく伝わらないだろう。そもそも、問題を引き起こしてくれる存在に届かないかもしれないな。となると、そういった存在を一箇所に集めて宣言するのがいいだろう。

 あ、そう言えばリリーガーデンを崇めている存在に対して、戦闘面の講習会的なものを開こうとか先週話してたな。その件と抱き合わせで話する場を設けたら人も集まっていい感じになるだろう。よし、採用!


「みんな、この件に関して先週言ってた講習会をする場所でリリーガーデンとしての見解を伝えるのはどう?」

「「「カオリちゃん!それいい!賛成!」」」

「それなら今日中に話を拡散しておいた方がいいね!その講習会的なものいつにしよう?」

「明後日は忘れちゃうだろうし、明日はどうかな?」

「少し急ですけど...話に悪い尾鰭がつく前に対応できるからいいと思います」

「それじゃ、明日の放課後開催。集合場所はいつもの演習場にする感じでいい?」


 リナがみんなに問う。自分としても面倒臭いことは早く済ませたいところなので、リナの意見に賛成だ。場所としても誰でも入れるし、誰にも迷惑がかからなくていい。なんならそのまま講習会をやれそうなのでいいかも。


「「「賛成!」」」

「それじゃ、やるぞー!」

「「「「えいえいおー!」」」」


 重大過ぎる問題が起こる前に対処するに限る!すべてはサリアたちと一緒にのんびりした学園生活を送るために! 



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