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13 ギルド長面会と物件購入

(略)稚拙な表現等々、目をつぶっていただけると幸いです。

 ミカさんに案内されギルドの最上階にあるギルド長の執務室前に案内され、ドアの前にいる。ミカさんは案内すると業務に戻っていったので現在一人である。廊下には人影もなく静寂が満ちており緊張がさらに強くなる。ギルド長ってどんな人だろうか?長というからには仕事を淡々とこなしていくが冗談も通じないような人?それとも、表情はそれなりに動くけど、ヒトを殺ってそうな目をしてるような人?なんにせよ、優しい人のイメージをすることができない。緊張って怖いな。せめて見知った人一人でもいればなーあばあばばばば。

 とにもかくにも、扉を開くしか道はない。とりあえず、シュレディンガーの猫的な考えで柔和な人物がいると仮定して入れば柔和な人が出てくる確率は50%だ。某プリンセスたちと接続するゲームの限定ガチャよりはるかに高く、古来?から行われているじゃんけんの勝率よりも高い。これは勝つる。


 意を決してノックをし、入室許可の返答を待つ。この時間が妙に長く感じ、自分の周囲だけ時間が遅くなっているようにも感じる。

 

「カオリちゃんだね。入ってくれ」

「はい、失礼します。」


 静かにドアを開け入室する。執務室は豪華絢爛というわけでもなく、かといって質素というわけではない雰囲気だ。壁側には腰の高さ位の棚が並び部屋の中央には応接用のテーブルとソファーがある。部屋の奥には執務用の長い机があり、その背後には窓ガラスがある。うわまぶし。逆光で何も見えない。これがバルスか。

 目がつぶされている中、声がかかる。


「話は少々長くなるだろうから、そのソファーに座っておいてくれ。」

「では、遠慮なく。」

 

 革で作られたソファーに座る。地味に高級そうなだけあって座り心地がいいな?だってこれまで丸太の上に座ってたからね?反発係数高いよ?お尻痛かったよ?でも、このソファーはお尻が痛くない。とても素晴らしい品だ!感動した!


 ソファーの座り心地に感動していたので気づかなかったが、ギルド長はテーブルを挟んだ対面側に腰掛けていた。早すぎる。この方、瞬間移動のスキルをお持ちの方ですか?

 落ち着いてギルド長の面立ちを見る。引き締まっているが柔和な印象を受ける顔である。ただ、それに反して体つきは幾千の戦場を駆け抜けてきたかのような迫力が感じられるほど筋肉が締まっている。これはどこからどう見ても頼もしいリーダーという感じだ。よかった温厚そうな人だ。


「まずは、自己紹介というか。私は、キース・シング・ハーマードだ。よろしく頼む。」

「自分は、カオリと言います。こちらこそよろしくお願いします。」

「最初にまずはお礼をさせてくれ、未然に魔物のラッシュを食い止めてくれてありがとう。」

「いえいえ、成り行きでしたのでそこまでの事は」

「それでもだ。魔物注意報が出たときには、万が一の魔物ラッシュに対応するために魔物の数を詳細に調査する必要がある。そのため、衛兵と組んで森へ向かってはいるが、毎回怪我人が絶えない上に、稀に死者も出る。そんな危険な時に魔物を大量に討伐して数を減らしてくれて、ラッシュも未然に防いだんだ。当然、お礼もする。」

「それでですか。確かに、あの数は厄介でした...」

「さらに、オーガの討伐も行ってくれた。オーガに出会う度毎回苦汁を飲まされてきている。被害にあって死んだギルドメンバーもいた。その仇も打ってくれた。礼を言わないわけがない。オーガや魔物ラッシュを防いでくれた礼としては何だが、魔石買取の金額に1500万プラスして支払うことにしている。どうか受け取ってくれ。」


 確かに、魔物の数は脅威であった。周囲からともなくとも現れる魔物に囲まれれば、魔力切れや体力切れで戦闘不可となる人が増えてくるため、戦力が薄くなる。だが、やってくる魔物の数は変わらないからたとえ雑魚な魔物でも大きな被害を受けることは想像しやすい。また、オーガについても中々の脅威だ。機動力と連携が良いため大人数のパーティーを組んだとしても、弱いところから切り崩されることは想像できる。

 自分はチート級能力のおかげで乗り越えられたものの、一般的な能力だったら間違いなく死んでいただろう。女神様、いい感じの能力を授けてくれてありがとうございます。お金の面では苦労しなさそうです。


「魔物の件はこれで終わりだが、もう一つ話す内容がある」

「と言いますと?」

「カオリちゃんのギルドランクについてだ。ギルドランクについて知っているか?」

「いいえ、何も知りません。自分は現在最低ランクである事はわかりますが」

「では、その説明からしていくか。」


 と、キースさんが説明をしてくれた。

 それによると、ギルドランクは世界共通のランクで5階級に分かれており、下からブロンズ、シルバー、ゴールド、ダイア、プラチナとなっている。各階級の中にも細かい階級があるが、気にする必要はないらしい。

 階級は個人の戦闘能力を表し、魔物襲撃から街を守る戦闘などで戦力の把握に使うこともあるとのことだ。そのため、ギルドランクは個人の適切な戦闘能力を反映している必要があるとか。


「それで、カオリちゃんのギルドランクであるけれど、最低でもゴールドランクで通常だとダイアランクになるんだ。」

「ランク違いで何か問題が?」

「ああ、ギルドからはゴールドランクの範囲までしか昇格させることができない決まりとなっているから、それ以上のランクに昇格するとなると国からの承認が必要となる。その承認を受けるときには、特例を除き、国が管理する施設に出向きその力を証明する必要があるんだ。」


 なにやら、不穏な単語”証明”が出てきてしまった。自身の持つ能力はこの世界の能力基準から考えると並外れており、理解されるものではない。そのため”証明”するためには、この世界に沿った能力である必要がある。今の時点では、世界の能力基準が分からないため”証明”することができない。つまり、ダイアランクまで昇格するとなると、自身が異常な能力を持つ可能性があることを露見させるリスクがあるだけで何もメリットがないということである。であるならば、自分のランクはゴールドランクまでにとどめておくのがいいだろう。


「カオリちゃんが望むランクによって今後の手続きが変わるから、望みを聞こうかと思ってな。」

「私はまだゴールドランクでよいと考えていますので、その方向でお願いします。」

「わかった。ではそのように進めるとする。手続きが完了したらゴールドランクのギルド証を交付するから、また今度取りにきてくれ。」


 こうして、ゴールドランクに昇格したのであった。昇格したのはいいけど、昇格したことで何か得られる特典とかあったりするんだろうか?一番考えやすいことが、適切なランク帯の依頼は優先的に受けられるようになるとかかな?魔物をぽこぽこ狩りまくる自分からするとあまり縁がなさそうだ。


______________________________


 無事ギルド長との面会が終了し、ギルド1階に降りてきた。昼時なので、ギルド内併設の食堂では人がそれなりの人数がおり、にぎやかさが増している。こんなににぎやかなギルドは初めて見たかもしれない。一方で、カウンター前にはほとんど人がおらず暇しているギルド職員が大勢いる。ミカさんもその一人だろうか、知らない若い女性と時折笑顔を交えつつ話している。

 そんな歓談をチラ見しながら、出口に向かって歩いているとミカさんに呼び止められた。


「カオリさん、こちちらにきてくださーい」


 何の用だろうか?手招き付きで呼ばれたのでミカさんと知らない女性の下へ向かう。


「サティー、こちらが例の物件購入希望のカオリさん。」

「この可愛いらしい方がカオリさんですか。どうも初めまして、物件の案内を務めるサティーです。今後ともどうぞお見知りおきを。」

「自分はカオリと言います。よろしくお願いします。」


 そういえば、物件の管理人さんと物件の内見を行う日取りが今日だったか。装備をそろえたり魔物ぽこ祭りと大忙しだったのですっかり忘れていた。危うくすっぽかすところだった。

 物件の案内をしてくれるサティーさんは背の高さはミカさんと同じくらいで、どこか働きすぎた会社員にも似た雰囲気を感じる女性である。やっぱりどこの世界もブラック企業ってあるのだろうか?


「カオリさんがかなりお若いとミカから聞いていましたが、失礼ながらここまでとは思っていませんでした。」 

「そうでしょうね。私も同じ状況ではサティーさんと同じ反応をすると思います。」

「物件の購入を前向きに考えるとの事でしたが、カオリさんは現在定職についていらっしゃいますでしょうか?それか、支払いをしてくれる方などはいらっしゃいますか?」


 当然の疑問が飛んでくるが、ここはミカさんが食い気味に説明してくれた。


「それが今ゴールドランクに昇格した冒険者さんです。さらに、ついさっき魔物の討伐の終えたところでお金にかなり余裕があるようですよ。」

「そんなところです。」

「ゴールドランクでしかもお金に余裕があるとは...やっぱり見た目ってあてにならないですよね...勉強になります。これから案内の方をしていこうかと思いますが、今すぐで大丈夫ですか?」


 すぐに物件の案内をしてくれることには助かるが、全くご飯を食べていないのでお腹がすいている。待たせてしまうのは少々申し訳ないが、ギルド内の購買で携帯食でも買っておくとするか。


「3分くらい待っていただけますか?ちょっと買っておきたいものがあるので」

「問題ないですよ。では、ギルドの外でお待ちしています。」


 とりあえず、購買へ向かいカロレーメイト的な何かを駆っておく。味は色々あったがメープルを選んでおいた。たぶん外れではないと期待したい。

 

とりあえずは、レッツゴー!内見!夢の快適生活へ!

_______________________


 サティーさんが所有している魔力を動力とした自動車で移動している。この魔力を動力とした自動車は運転手の魔力を消費するわけではなく、魔石を液体化したものを使用しているとのことで、非常に静かだった。魔法関連技術の粋を凝らしているとこことで、MSDの技術の応用で複雑な魔法のスキルは必要ではないとのことだ。恐るべし、魔法関連技術。


 外を眺めていると、景色が変わって林の中といった雰囲気に変わる。同時に、山道に入ったようでカーブも多く、舗装も荒くなってきた。ほんとこんなところにあるんだろうか?


「カオリさん、もうそろそろ物件に到着します。ちょっと乗り心地が悪いとは思いますが、もうしばらくの辛抱をお願います。」

「わかりました。」


 と、その時である。車が行く道の先に狼の魔物が飛び出してきたのである。


「わわわ!どうしてこんな昼間に~」 


 驚いて急ブレーキをかけた関係でタイヤはロックし制動力が失われたようで、大きな音を立てながら滑っているようである。さらに、舗装されていないフラットダートの上を走行しているため、ハンドルによる制御も失われている非常に危険な状況みたいだ。狼の魔物はかなりの重量だったように思うし、正面衝突するとただでは済まないだろう。


「わわわ止まって~~!」

「ハンドルは正面でブレーキは離してください。魔物は何とかします。」


 車の姿勢を安定させるための指示通りにしてくれたおかげか、車の挙動は安定し、まっすぐ魔物の下へ向かう。魔物を見据えてMSDに魔力を流し、アイスニードルを発動する。車外に生成された氷柱は一直線に魔物の下へ向かい魔物を穿った。そして、何事もなかったかのように車は通過した。


「ふぃー。一時はどうなるかと思いました。適切な指示ありがとうございます。」

「いえいえ、おっしゃるほどの事は。」

「そうでもないですよ。状況を正しく把握できて素早く指示を出せる人ってそういませんから。さすが、ゴールドランクですね」

「そう言ってもらえると嬉しいです。この辺では魔物の出没が多いと聞いていましたが、今回のように昼間でも出会うことがあるんでしょうか。」

「この付近は魔物発生が多いとはいえ、昼間に出会うケースは稀ですね。恐らく、昨日の魔物注意報の関係でしょう。だとしても、夜間はかなりの頻度で出没するみたいですよ。」

 さすがいわくつき物件といったところだ。どれほどの魔物がいるのかは推測しかねるが、敷地内の建物に対して頻繁に被害があったという話があったことから、森の中ほどではないにしてもちょっとした数はいそうである。


「あ、ゲートが見えてきました。やっと着きましたぁ~やっぱりこの道は疲れますね~。」

「運転お疲れ様です。」


 石づくりの門柱と鉄の扉がつけられているゲートが見えるが半壊しており、ゲートとしての機能が失われているように思う。魔物侵入防止用であることを考えると、その機能はなくなっているため、メインの館にも被害が及んでいそうではある。ちょと考えるのをやめたくなってきた。


 石と石の隙間から雑草が生えた石畳の上を通り、メインとなる館にたどり着いた。サティーさんはちょっとぐったりしており、さすがに運転が応えたようだ。お疲れ様だな。一足お先に車の外に出て館の外見を眺める。


 石造りの2階建ての洋館といった感じで想像していた通りのザ・ヨーロッパ建築である。ただ、その作りはゴシック建築でやたらと飛び梁や尖塔群が見える。いかにも凝った作りではあるが、これまで見てきた建物のどれよりも古く感じるのは石造りだからだろうか。それとも、ヒトの手入れが行き届いていないからだろうか。広さは一人で済むには広すぎるものがある。少なくとも横幅が30mは優に越している。これは掃除をするにも骨が折れるだろう。ただ、予想外な点は魔物が館を襲った形跡がほとんどないということだ。窓ガラスも割れていないところを見るに売りに出されてすぐという感じだろうか。


 サティーさんがいつの間にか復活したようで運転席から出てきた。

「すみませんカオリさん。もう大丈夫ですので、案内をはじめましょうか?」

「ぜひよろしくお願いします。」


 サティーさんの案内の下、館を見回った。家財道具類はそろっており、すぐ住むことはできるようだ。埃もそれほどなく、カビも見当たらない。状態としてはかなりいい部類だろう。床や天井、壁の至る所に断熱材が仕込まれているらしく快適に過ごせるようだ。さらに、館から湖が望めるため眺めも抜群にいい。もうここに住むしかないな。悩みは後から考えよう。


 一通り見終わって玄関ホールまで戻り、館についての質問タイムとなる。


「一通りご案内いたしましたが、何か気になる点はございますか?」

「そういえばこの建物って前のオーナーさんが手放してからどれくらいたっているんですか?随分と綺麗だったもので」

「2か月くらいですね。前の前のオーナーがこの屋敷を建ててから100年くらいたちますが、前のオーナーさんが2年ほど前にリフォームを行ったんです。」

「道理で内装や家具がきれいな状態だったんですね。魔物による建物の被害が少なかったのは、結界が機能していたからですか?」

「前のオーナーさんが結界装置を改修しまして、人による魔力供給から液体魔力駆動になっています。ただ、燃費は改修前と変わらず悪いためかなりお金がかかったみたいです。」

「それだと、前のオーナーさんが売ってから今まで結界を維持する事ってかなりお金がかかったんじゃないですか?」

「人がいない時は燃費がいい魔除けモードに設定していましたので、それほどお金がかかっていません。ただ、このモードに設定したまま館に人いる場合だと、結界が機能していないも同然のように魔物現れて館を襲うみたいです。」

「それじゃあ、やっぱり住むとなるとお金がかかってしまうんですね...」

「はい。残念ながら...。色々と魔物関連によるデメリットはありますが、カオリさん。この物件は買われますか?」

「かなり気に入っているので買います!」

「ええ、買いませんよね...え?買います?!お買い上げを申し上げになりに候でいらっしゃいますか??」

「はい、お買い上げちゃいます。」


 この物件は金銭的なデメリットが多く、魔物による被害も多いことから、よほど魅力的ではないものとして周知されている。だからこその、破格の1000万ゴールド物件なのだろう。破格の値段を付けざるを得なくなった最大の問題が結界の維持にお金がかかることだが、この問題は自身の能力を使ったエネルギー魔力変換により解消することができる。結界が貼り放題となれば魔物による被害も受けないと思うから館を維持していくにもお金がかからずに済むだろう。となれば、内装も綺麗であり、ロケーションも素晴らしいこの物件は買い一択というわけです。物件見る前から買う気満々だったけど、俄然買う気になりました。はい。


「それでは購入の手続きを行いますので、私の事務所まで移動しましょう。」


 帰りの移動中は魔物の出没もなくすんなり物件から離れることができました。まる。

_____________________________


 サティーさんと車で20分程度移動して彼女が運営する事務所にて購入手続きを済ませた。ギルド証に紐づけられた口座にはちゃんと1000万ゴールドあったため、一括で支払うことができた。一括で支払う旨を伝えたときの、サティーさんは半分白目を剥いて私も冒険者になろうかなと言っていた。やっぱり会社員(?)だとあまり儲けが出ないのだろうな?この物件の売り上げでちょっと豪勢してもろて。


 何はともあれ、無事物件を手に入れることができたので夢の快適生活に一歩近づいたわけだ。これからは、自身の能力で物件の修繕・改修をしていくつもりである。まずはどこを改修しようか?やっぱり門?崩壊して全く役目果たしてないし。


「あれ?」


 これからの改修計画に心躍っていたが、あることに気づいてしまった。


「ここからどうやって家まで行こうか?」


 とりあえず、行脚僧となるしかあるまい(白目)。

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