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2-24 人気者になってしまったので対応を話し合う会

(略しすぎています)

どうも、食堂にある特別個室でサリア、リナとシルフィアとお茶をしている銀髪ロリエルフになったものです。今は放課後の練習が終わった後で、日は大きく傾いて窓から見える人影はかなり長くなっています。そんなエモーショナルな場面ですが、この場にいる人はすっかり疲れ切って机の上に伸びていたりします。


「今日も疲れたねー」

「わかるー。体動かすより疲れるとは思わなかったよー」

「気分転換になるかもと思いましたが...そんなこともなかったですねー...」


 帝国勇者との模擬戦が終わってからというのもの、自分だけでなくサリアたちまでも話しかけられたり、色んな場所から視線が飛んで来て落ち着かない毎日を送っている。そのためみんな疲れているのだ。

 休んでいる食堂の特別個室は防音だし、視界を遮るものもあって落ち着ける環境だ。それに許された人しか入室許可を下せないので実質専用スペースになっていて人に疲れた時の天国みたいなスペースでもある。逆にいえば、この場所くらいでしか休むことができない状況だ。そんな状況に中指立ててあげますわ?


「そもそもどうしてこうなった...」


 突っ伏しているサリアが自分の問いに答える。


「それは帝国勇者さんに余裕で勝っちゃったからじゃないかなー?」

「あー、それもあるね」

「ほんとー?いつもみたいに模擬戦しただけなのに?」

「そう、それですよ...いつもみたいなのが余計に拍車をかけているんですー...」


 反応を見る限りサリアたちはわかっているようだ。となると、模擬戦の時に起こった衝撃的なことなのだろうが...。帝国勇者がゲスかったことか?うーんそれって別に驚くことでもないし、自分たちに関係ないことだ。違うか...。


「あー、わからないって顔してるー」

「カオリちゃんらしいねー」

「可愛らしいですー...」

「揶揄ってないで説明してよー」

「それじゃ、私がやるよ」


 どうやらリナが説明してくれるようだ。ありがたい。

 リナは机に伏せた状態から起き上がると、机の上に置いてあるクッキーに手を伸ばす。糖分補給して頭を働かせる作戦のようだ。自分もそうしよう。体を起こして目の前のクッキーを食べてっと。うん、美味しい。これで3分くらいは起きていられそうだ。


「カオリちゃんも知ってると思うけど、この学園では魔法の規模が大きくなるほどいい成績をつけられやすいの」

「実際そうだよね。先月あった戦闘能力評価でもそんな感じの評価項目が多かった気がする」

「それに模擬戦や魔物狩りでは大規模魔法や高火力魔法で瞬殺できるから、戦術とか戦いの組み立てが見逃されてる。先生もあまり見てないっていってたし」

「それだと評価に響かないスキルだからって、その辺のスキルを磨くのが後回しになっちゃうね」

「実際、カオリちゃんの言う通りのことが起こっていて、戦闘演習では大規模魔法や高火力魔法の練習をする時間になってるみたい。しかも全学年で。その結果、生徒の間では魔法の規模や威力が戦闘能力の高さを示す基準になったみたい」

「なるほどね。それじゃ、最初から勇者たちへの人気が高かったのは、勇者同士の模擬戦で使った魔法の規模や威力がすごかったからって理由?」

「私はそう見てるかなー」


 そういう背景があったなら、帝国勇者と自分の模擬戦を見ていた生徒たちは、その模擬戦がかなり異質なものに映ったに違いないな。だって、自分は基礎的な魔法である単一放射魔法のアイスニードル、身体強化魔法、魔力刀しか使っていない。帝国勇者たちはバンバン派手な魔法を使っていたので、自分の闘い方は対照的と言える。


「その上で自分が派手な魔法を使う帝国勇者に勝った。しかも基礎的な魔法で...。見てる子はかなり衝撃的だったんじゃない?」

「私の知り合いの子曰く、衝撃的すぎて八百長かって思ったみたいよ」


 八百長って今日日聞かないな?今日日という言葉もどこぞの死に戻りする物語でしか聞かない気がするが...。何にせよ、見ている生徒たちにとって受け入れ難い光景だったみたいだ。


「さらに驚いたって言ってたのがあって、1対4での模擬戦かつ、相手が張った結界を破ったっていうのが驚きだったみたい」

「そうなの?負ける手札しかない最悪の状況下で、勝っちゃったから?」

「そう!まさにその通りで、私たちは物語に出てくる1シーンに出会ったんじゃないかって興奮してた。そんな戦い方ができる凄い子が居たんだって。その話が大きく広がった結果、今の状況になったみたい」

「それはとても納得だ...」


 そんな衝撃的な勝利を収めた人がいるならどんな人か気になるよね。自分でも気になるところだ。どんな人なのか、普段の戦い方はどんな感じかなど、質問はいくらでも思い浮かぶ。想像しやすすぎて納得しかない。


「それじゃ、みんなが疲れているのって自分関係だったんだ。それだと、とても申し訳ないんだけど...ケーキ1ヶ月分要る?」


 そんな言葉に説明してくれていたリナだけでなく、机に伏せっているサリアとシルフィアも反応する。


「大丈夫だよー」

「全然大丈夫ですー」

「大丈夫大丈夫、全然気にしなくていいよ!あっ、ごめん。ちょっとケーキ欲しいかも」

「「いやもらうんかい!」」


 サリアとシルフィアはむくりと体勢を起こすと、リナへツッコミを入れた。サリアとシルフィアは机の上で伸びて完全オフモードかと思っていたけど、ツッコミを入れるあたりまだ余力はあるようだ。ヘロヘロって感じだったから大丈夫かなって心配していたけど、思うほどではなかったようだ。ちょっと安心。

 その2人からツッコミを受けたリナはテヘッと舌を出しながら冗談だと示した。そして、紅茶を1口飲んでから話を始める。


「実際のところ、私たちが疲れているのってカオリちゃんに起こっていることが私たちにも起こっているからなんだよね」

「どういうこと?」


 そう疑問を返すと、リナとシルフィアがクッキーをつまみながら答えてくれた。


「リナちゃんの言う通りで、私たち自身にも質問や視線が飛んで来たりしてるの。どうやら魔物狩り演習の戦績がそうさせてるみたい。その時のカオリちゃんはその時の成績って覚えてる?」

「確かパーティーで50体くらい狩った?他のパーティーは1桁くらいだったと思うけど、それって凄いの?」

「そうなんです。その数字が歴代を見ても突出しているみたいで...かなり話題になっているんです...」

「しかも、あの時はカオリちゃんは魔物を狩っていない上に、実質1日だけの戦績だから、私とリナちゃんとシルフィアちゃんの戦績が凄いってなっているの」

「なるほど?」


 それは良い評価されていい感じだと言いたいところだけど、そうじゃないんだよな。実際困っているわけだし。でも、自分が話題になっているからってサリアたちの戦績が話題になるか?リナ、ちょっと説明頼む。そんな感じに、リナへ視線を送ると説明してくれた。


「カオリちゃんは魔物狩り演習でインストラクターをしてくれてたよね」

「そうだね。もしかしてそれ繋がりで、みんなの戦績が話題になってるの?」

「そうだよー。カオリちゃんの周りにも凄い子がいるぞー!って感じに話がすごい広がってる。おかげでひっきりなしに人が来て対応で大変だよ」


 その言葉を聞いたシルフィアが嫌な何かを思い出したようで、再び机の上にぐったりとする。


「休み時間や昼休みは色んな視線がやってきたり...うぅ...」

「シルフィアちゃんは人見知りだから余計に辛いよね」

「人見知りを治したいんですけど...ここまでくると辛すぎて無理です...」


 確かに人見知りだとその状況は辛いよな。しょげているシルフィアにみんなで頭を撫でたり、肩をポンポンして励ます。そんなことをしている最中に、リナが何気なく呟く。


「最初は対岸の火事って感じだったんだけど、いざ自分のこととなると大変だーって感じだよー」

「「リナちゃん、それ言っちゃダメなやつ」」

「それってもしかして模擬戦前の話?」


 呟いたリナだけでなくサリアやシルフィアまでもがちょっと慌てて自分の様子を伺う。さては魔物狩り演習が終わって自分に人気が出てきた時に、対応でうへーって疲れていた様子を見て楽しんでたなー?とりあえず、抗議の意味を込めてジトーっとした視線を向けるとしよう。


「「「カオリちゃん、ごめーん!」」」


 3人は素直に謝ってくれたが、その時は面白がっていたようだな。いい友達を持ったものだ。とはいえ、今はサリアたちも自分と同じ状況にある。我は寛大故許そうぞ?自分のキャラ迷子か?


「うそうそ、気にしてないよ。でも、これからどうする?何もしないで放置っていうのはないよね?」


 そうだねと3人は同意の意を示す。だけど3人は首を傾げていて、これといった対応は思い浮かばないようだ。

 実際のところ、自分たちに関心がある人たちは戦闘面から関心を持っている人が多いように感じる。話すきっかけが戦闘面くらいしかないのもあるだろうが、戦闘面のスキルアップに関する質問が多い。となると、それを伝えてあげる機会があれば少しは今の状況がマシになるのかな?戦闘面と言えばギルド関連だ。何か関連した情報があるかサリアに聞いてみるとしよう。


「サリアに聞くんだけど、ギルドで人気のある人に戦闘面のノウハウを教えてもらう機会ってあるの?今の状況と似たようなものかなって思ったんだけど」

「言われてみれば...そうかも?私が知ってるアンバーさんや他のギルドメンバーはよく講習会的なものを開いてるよ。講習会はギルドが主催をしてて、戦闘面の質問は活動の邪魔にならないように講習会に参加して聞いてみてってアナウンスしてるかな」

「確かにそんな会があれば...休み時間に聞きにくる人減っていいかもです」

「それに、タイミングも自分たちで決めれるし、それ以外は対応しないって言い切ることもできる。いい案かも!」

「なら、一回そうしてみる?」

「「「さんせーい!」」」


 こんなとんとん拍子で決まってしまったがいいのだろうか?結果は講習会的なものを開いてからわかる事だ。とりあえず試してみるとしよう。少なくとも、今の状況よりかは良くなると思う。いざのんびり学園生活の実現へ!ってこれフラグか。今のなしで!

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