2-18 学生派閥の対立
(略しすぎています。この話は後で修正するかもしれません)
教室から声がした廊下へ出てみると2つの集団が言い争っていた。おおよそ男子生徒と女子生徒の構図になっている。何が起きているんだ?そう思って聞き耳を立ててみる。
「学年1位になって調子に乗ってホラ吹いてるだけだろ」
「だから言ってるじゃん!カオリ様はそんなんじゃないって!あなたも学年トーナメントで見たでしょ?エリートゴブリンを1人で倒す実力だってあるのよ!」
「それがなんだってんだ!単なるゴブリンじゃねぇか!俺たちでも倒せたっつうの!」
「そんな事言って怖気ついて真っ先に逃げてたんじゃないの?見る目ないんだしありそうだよね〜」
「こんにゃろう!」
と言った感じにお互いの集団を煽りあってヒートアップしている。内容を少し聞いた限り、勇者が最強と主張する集団とカオリ様とやらが最強と主張する?集団が言い争っている。疑問符がついているのはそこまで最強だと崇めていると言うわけでもなく、単に慕っているようにも聞こえるような感じだからだ。
なんにしても、ここで放置をするとヒートアップして大ごとな事に発展してしまいそうだ。何故か自分の名前が聞こえている以上、人ごとでは済まなさそうなので止めに入るとするか。めっちゃ嫌だけど!
「はい、そこまで。何かは知らないけど、その辺にしとかないとお互いに怪我しちゃうよ」
自分を慕っている集団は自分が声をかけると振り向いて驚いていた。そして、駆け寄ってきて色々と話しかけてきた。
「カオリ様!?」
「なんでカオリ様が?」
「なんでってここカオリ様の教室の前だよ?」
「「あっ」」
「あの、カオリ様!あの人たちがカオリ様を貶そうとしてるんです!」
「なので、反論していたんです!カオリさんからも何か言ってください!」
うーん。そんなこと言われても...状況が読めないし、何が問題なのかわからないしでどう言葉を返すべきかわからないな。それに、この問題に深入りするとややこしいことに巻き込まれるのは間違いない。だが、問題を起こした集団は自分に何か言って欲しいと真剣に訴えている。どうやら何も考えずに首を突っ込んだのが最後だったようだ。確実に問題に巻き込まれちゃったよ。なんとかするしかないけど、どうしようかな...。
少し考えている最中、勇者最強と主張する集団はカオリ様が自分だとわかったみたいで、自分にも聞こえるような声で何か話し始めた。
「ああ?、こいつがカオリってやつか?線も細ぇし弱っちぃじゃねぇか」
「ゴブリンにヤられるのが精々だろ」
「って言うかヤっちゃう?勇者を貶した奴は人権ねぇし」
「「上玉だしありだな」」
なんか、どこかで経験した流れになってきた。どうしてこう毎回テンプレートな感じで煽ってくるのかね?もうちょい捻りが欲しいよ?
そう考えていると、廊下の先から大柄な態度で歩いてくる数名の集団がこちらへ向かってきているのが見えた。って、あれは勇者ことクラスメイトたちじゃん!確か...名前は田川、西村、瀬賀、井上だ。いつも連んでやんちゃなことをしていた奴らだ。こんな奴らに絡まれた日には問題回避してきたことが全て水の泡だ。と言うか、現在進行形で水の泡になっているけど!
自分が心の中で頭を抱え始めると、勇者たちが最強と主張する集団は勇者の集団の方へ駆け寄り声をかけていた。声は自分の方まで聞こえては来ないが、彼らは多分言い争っていた内容を勇者側に伝えているのだろうな。これはもう腹を括って問題にぶち当たっていくほかない。がんばるぞい。
内心涙を流しつつ、彼らの行動を観察していると、勇者集団は話が終わったのかこちらの方を見てきた。すると、自分の視線に気づくやいなや、目線だけでなく蔑みの感情が汲み取れる表情で話しかけてきた。
「おい、こいつか?ふっ、そこら辺よりガキじゃねぇか。おめえらこんなのがいいのか?」
「戦えるようには見えねぇな」
「でも、可愛いじゃん」
「えっ瀬賀お前ロリコンか?」
「ウルセェ、可愛いものはやらねえと損ってもんよ」
「瀬賀の言うとおりだぞ、向こうの常識は通じねぇんだやっちまおうぜ」
ウェーイって感じの軽いノリでさらっと酷い発言してんな...。元々デリカシーのない奴らだったけど、この世界に来て力に溺れたのかさらに拍車がかかっている。できればそのままどこかに行って欲しいレベルで関わりたくないところだ。
「おい、カオリ。このままじゃ俺たちは引っ込みがつかねぇんだわ。後で俺たちのところに来て誠意を見せてくれたら考えなくもねぇ」
田川はおどけた感じにそういった。言われた通りにしたところで事態は悪化するだけだろう。第一、誠意を見せろと言ったって元から素行の悪い奴らのいうことだ。誠意を見せたところで碌なことにはならない。それならば、いっその事正面からバチバリにやり合う方がいい。
「それは遠慮しておきます。彼女たちが言っていたものは事実ですので」
「笑わせてくれるじゃねぇか。じゃあどう引っ込みつけるってんだ?俺たち、帝国の勇者だぞ?ん?」
「何を言っているのか分かりませんが、実力を見せれば良いのでしょう?戦って決着をつけましょう」
「ぷっ、ハハハハハ!正気か?考え直した方がいいんじゃねぇか、ハハハ!その体でどう戦うってんだよっハハハハ!」
「これでもすごいみたいですよ、自分。ですので、勇者が4人でかかってきてください。明日、演習場用意しておきますのでそちらに来てください」
「プハハハハ!はいはい、勝ったつもりでいるとするわ。おい、勝ったぞオメェら、行くぞ!」
なんか勝手に勝った気でいるけど、胡座をかいてると寝首を掻いちゃうよ?でもまあ、この場が収まったようでよかった。うんうん。
そう勝手に思って周りを見てみると、自分が思っているようにはなっていない様子。どうしたよ?と首を傾げていると、言い争っていた女子生徒の数人が声をかけてきた。
「カオリ様、それはいくらカオリ様でも...」
「何かの考えがあるようですが...」
なんでカオリちゃん応援軍団的な人たちはそんなにしょげているの?そう疑問に思っていると事態を見守っていたサリアが加わって声をかけてきた。
「カオリちゃんの身が心配なんだと思う。あんな態度だけど勇者だし、まさかの事態になれば只事では済まされないから」
なるほどな。単純な心配から彼女たちはそういう反応をしていたのか。だけど、もう引くつもりはない。とりあえず、彼女たちには強気な自分を見せるとするか。
「大丈夫、自分は強いから。安心してて」
「カオリ様がそう言うなら」
「信じてます!」
なんかこういう反応されると少しむず痒くなるな。少し照れて頬を指でぽりぽり掻いていると、サリアが小さな声で話しかけてきた。
「だいぶ自信たっぷりだね。何か秘策でもあるの?」
「何も。単純に魔物を倒すノリで戦うだけだよ?」
「そうなの?自信たっぷりだからてっきり何かあるもって思ってた。もしかして何も考えないで喧嘩売ったりした?」
「そ、ソンナコトナイヨー」
サリアの言葉を受け流しつついつも通りな会話をしていると、自分に話しかけてきた女子生徒は安心した様子で元の集団の方へ帰って行った。自信満々作戦は効果はあったみたいだな。greatですよ。
ひと段落ついて少し安心していると、リナがテンション高く話しかけてきた。
「カオリちゃん、やってくれたね!これは楽しいことになると思うよ!カオリちゃんはもちろん勝てるよね?」
「もちろん。負ける気はないよ」
「それじゃ、広めてOKだね。あ、あと場所決まったら教えてね!」
そういうと、リナは廊下を走って去っていく。何を考えてるんだ?と首を傾げていると、その答えが聞こえてきた。
「あの勇者さんたちはいい噂聞かないし、戦いのこと広めてお仕置きしちゃおっ」
あの、リナさん?それって自分が負けること全く考えてないセリフだよね...。半ば諦めた表情になっていると、リナを静止していたと思われるシルフィアが肩に手を乗せてきた。そして、シルフィアの方を振り向くと自分と同じ諦めの表情で頷いていた。




