12 魔石買取とお昼寝
(略)稚拙な表現等々、目をつぶっていただけると幸いです。
「アッシャシターオツカレッッシャー」
最後の魔物を狩り、極めまくったコンビニアルバイトのような呟きとともに朝日を迎える。もはや作業ゲート化していたので、脳死で周囲の魔物をぽこす祭りになっていた。ただただ暇であったので精神の疲労が地味にある。MSDを使った魔法も発動の遅さや効果の弱さから、自身の能力を使った魔法を使うことになった。だって狩るのが楽なんだししょうがないよね?
最後の方になると魔物の数が減ってきたので魔法を使う機会も少なくなり、気づいたときには魔眼?も再封印されていた。一連の魔眼の発動した状況から、自身の能力を使いまくった時に発動と推測することができる。便利すぎる能力なので世界の常識から逸脱した力になっているに違いない。多分。
周囲に積まれた魔石をとりあえず豆腐ハウスに投げ入れつつ、この魔石をどう運ぶか考える。量が問題で、3畳程度のハウスの中に1mくらいぎっしりと魔石が詰まっている。どう考えても生身の体では持って帰ることができないだろう。
「ほんとどうしたものよ。放置するにも魔物が寄ってくるし、持って帰ろうにも重すぎてどうにもならないでしょ?」
途方に暮れていると何やら物音がするので傾注してみる。地響きとはいかないもののそれなりの数がこちらに向かってきているかのような足音が聞こえる。魔物とは違う軽い足音で時折カチャカチャといった金属音が聞こえる。ここから察するに、街のギルドの人たちだろうか。
もしそうなら都合がいいな?この人たちに持って帰らせるか。そうしたら楽でいいな?もし運んでくれたならば、お礼に宴でも開くか?
ただ、この堅牢豆腐ハウスは無いほうがいいので消しておくか。手をかざし、豆腐ハウスを消滅させると中に詰まっていた魔石が崩れ落ちて壮大な音がする。それに反応してか、足音は次第に大きくなり近くまで近づかれたところで集団の中から飛び出してきたであろう人から声がかかる。
「おい、そこで何をしている!」
どうも剣呑な声色である。声をかけえ来た人の服装を見るに門兵に似た服装であるので、不審な魔力反応を追ってきた衛兵といったところであろうか?。とりあえず素直に答える。
「魔石をどう持って帰ろうか悩んでいたところです。」
「嘘をつけ、確かにここに強い魔力反応があった!」
「どうもなにも来てみればわかりますよ」
実際に見てもらうのが早いだろうが、声をかけてきた人からは森の草むらのおかげで自分の足元に転がっている魔石の山を見ることができない。近づいてこれを見てほしいが、警戒心が強すぎてそうならないのが現状だ。困ったものだ。
一人の衛兵は距離を保ちこちらへ問いかけてくる。
「目的はなんだ。この街のせん滅か?国家転覆の準備か?」
面倒くさい人だ。自身の先入観にとらわれその見方しかできない人になっている。こんな人には素直に説明するだけ無駄な気がするので他の人に出てきてもらおう。門兵っぽいし、その長っぽい人もいるだろ。
「魔物を狩っただけです。それより、ザックさんはいますか?」
「は?ザック隊長だと?」
「呼んだか?」
「うわああああああ!!」
コントかな?素っ頓狂な声を上げた衛兵は盛大に驚き尻もちをついたが、魔物ぽこぽこ祭りによって精神が死んでいるので何の反応もする気に起きない。今はすぐに寝たい。ただそれだけ。
「ザックさんどうも、カオリです」
「ああ、カオリちゃんか。それにしてもどうしてここ...って大量の魔石だなおい。」
「魔物ラッシュが止まらなかったもので。逃げようにも逃げれませんでした」
「だから言ったじゃねーか、やめておいた方がいいって。」
「やめておいた方がよかったかもしれませんねぇ...地獄を見ました。」
さすがザックさん。話が早い。
「それにしてもやるじゃねぇか、毎回魔石を大量に持って帰ってきてそれなりの戦闘能力があることはわかっていたが、まさかこれほどとはな。うちの隊の示しがつかんな。」
「何とかさばき切りましたが、もうやりたくはないですね?魔石も多すぎて一度に運べませんし」
「何事も過ぎたるは猶及ばざるが如しだ。次からはラッシュになる前に引くことだな」
「そうします。(多分?)」
「この山になっている魔石はうちの隊が運んでおくから安心しな。何か強すぎる魔物が発生したと思ったが、そうでなくてよかったわガハハ。」
気前のいいひとである。
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そういうわけでザックさん率いる衛兵のおかげでギルドの中まで運ぶことができた。早朝ということもあり、人目に余りつかずにギルドまで運ぶことができて良かった。人目に付くと絶対まともなことが起こらないだろうし。
ザック隊の全員にお礼の言葉を言い、ザックさんには後でお礼をする旨を伝えるが断られた。これが仕事だと。かっこいいねぇ。自分もこんなイケおじになりたかったものだ...。このままだと、頭が上がらないので、ひと段落ついたら菓子折りでも詰め所に持っていくか。
さて、大量の魔石はギルドの中にあるわけで、偶然居合わせたミカさんはその光景に目を見開いている。とりあえず、正直に話したら買い取ってもらえるよね?
「ミカさん、この魔石の買取できます?」
「ああ、私がデザインした装備着てるかわいい(血涙)」
さすがはミカさん。ブレない。せっかくなので乗っておこう。
「結構動きやすいですし、デザインも気に入ってるんですよ。今日の戦闘でだいぶ痛んじゃって残念です」
「お気に召してくださっている!カハッ(吐血)天使よ...」
装備自体は結構気に入っているのでほめまくりたいところであるが、ミカさんが瀕死になって魔石の買取をやってくれそうになくなるのは避けたい。とりあえず、血を吐きながらも自分の言葉は聞こえているようなので再度魔石を買い取ってもらうようにお願いする。今度は、ミカさんに近づいてあざとい表情で魔石に指をさしながら言う。多分即答してくれるはずだ。耐えろ、精神!
「ミカさん、あの魔石、買い取ってくれます、よね?」
「天使様、喜んでお受けいたしますわ。」
素晴らしく穏やかな表情で口元から血を垂らしつつ優雅な仕草で魔石の下へ向かう。ミカさんが仏になってしまった。もしかして色々と精神的に浄化されてる?あと、天使って自分のこと?腹は黒いよ多分。
「天使様。手に持っていらっしゃる魔石も買取でよろしかったでしょうか」
「そうですね、お願いします。数も多いですし手伝いますよ」
「恐れ入りますが天使様。こちらの作業は我がギルド職員で行います。疲れておいでとお見受けいたしますので、ごゆるりとなさってください。」
もうここまで来ると完全にその手のキャラであるが。いつまで続けるのだろうか。少々むずがゆくなってきた。
「手が空いてない人もこれ運ぶの手伝って、天使様が買い取りをお望みよ!」
ギルドの奥からぞろぞろと職員がやってきて魔石の量を見てはぎょっとした顔になるものの、謎の納得があったのか素直に流れ作業で買取が行われるのであった。普通に怖いな?自分はギルドに内にある待機所的なところで仮眠をとるとしよう。さすがに徹夜なので頭が回らない上に、精神HPが瀕死レベルではどうすることもできないだろう。防犯面的なところは...まあミカさんたちを信じるとしよう。
そうして、自分は異世界でほとんど発動することのなかった睡眠スキルで机の上に突っ伏した。
おやすみ。
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「ん。どれくらい寝た...?」
ギルドの壁に備え付けられている時計を見る限り午前11時くらいだ。おおよそ5時間くらいは寝ただろうけど、まだまだ寝たらない。かけられている布団を被りなおす。ギルドの中なのに静かで寝やすいな。...ん?昼間のギルドなのに静か?さらに布団?どういうことだ?
謎に思ってあたりを見渡すと、積まれたテーブルがパーテーションの役割をして半個室的な領域になっている。寝ていた人がいても放置が当たり前であるのに、わざわざ個室を作る気の使いよう。尋常じゃない。どのみち正体はわかっているんだ。ミカさんですよね?間違いない。
「カオリさん起きられましたか?」
「おかげさまで。いい睡眠が得られました。ありがとうございます。」
「いえいえ、つい良い寝顔だったもので壁を築いちゃいました。”ギルドの皆さん”も協力してくださったんですよ。」
「え”」
ミカさんだけでなくギルドにはロリを愛する民が大勢いるというのか...。単純に怖さを感じるが、実害がないので問題はないだろう。というか、いつの間にギルドの人に存在を知られたんだ?無人買い取り機を使ったり、早朝に来たりして人との接触はあまりなかったように思う。全くの謎である。
「それと魔石買取の件ですが、買取作業が終了しましたが、買取金額が大きいため、全額の振り込みはできませんでした。すみません。とりあえず、口座の方には買取金額の一部として1200万ゴールドを振り込んでいます。」
「いえいえ、大丈夫です。ざっとで構いませんが買取金額はいくらほどになりましたか?」
「そうですね...およそ4500万ゴールドでしょうか。」
「4500万...!」
あまりの額の多さにびっくりしたけれど、かなり魔石が転がっていたしそれくらいはするだろうな?これで物件の購入も余裕でできるなガハハ。
「それと、倒した魔物の件と追加報酬の件についてギルド長からのお話があるようです。もしこの後時間があるのでしたら、面会の方をしていただくとこちらとしても助かります。」
「わかりました。自分としては今すぐの面会でも大丈夫です」
「では、ギルド長にそのように伝えてきます。面会の準備が整うまでしばしお待ちください。」
さてはて、ギルド長に呼ばれるとは予想にしていなかった。呼ばれるにしても、魔物の大量虐殺で魔石の価値がピンチだからしばらくは売らないでくれという件くらいだろう。魔物関係で思い当たることと言えば、一番記憶に残っているオーガだろう。明らかに森にいた魔物たちとは格段に戦闘能力が高かったし、連携もとれていたのでとても脅威だと思う。そんなオーガを倒したことに対して礼を受けるのかもしれない。知らんけど。
でもまあ、とても上の立場の人と話すのは緊張するな。人の字書いて飲み込んでおこう。自己催眠じゃい。
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(2022/06/04投稿分からやっと入学編に入るはずです。)




