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2-12 新調したMSDと魔法の練習と対抗意識

(略しすぎています)

 どうも、模擬戦の合間でのんびり休憩中の銀髪ロリエルフになった者です。自分とサリアたちは地面に座って足を伸ばして演習場の壁に背中をあずけ、ゆったりした体勢でのんびり駄弁っています。休憩と言うには長い時間を過ごしているような気がしないでもないですが、これは休憩です。サボりではないです。はい。


「そういえばカオリちゃんのナイフ型MSDが...黒に戻ってますね」

「「言われれば確かに!」」

「あ、これ?前の黒いMSDが壊れたから昨日買ったんだ。みんな、使ってみる?」

「「「そうする!」」」


 白い軍服ワンピースの裾が少し捲り上がる感じになりつつ、太もものホルダーから黒いナイフ型MSDを取り出す。その際に、ワンピースの裾で隠された太ももの際どいラインが見えてしまい、クラスメイトたちからの何というか...湿った視線を感じる。変態さんは目潰しの刑に処しますわよ?

 そんなクラスメイトたちに少し冷ややかな視線を送りつけると、視線を逸らしたが何やら口角が上がってしまった。どうやら、期待する効果の真逆の効果を発揮してしまったらしい。


 クラスメイトたちに呆れながら、サリアたちに黒いナイフ型MSDをサリアに手渡す。するとリナとシルフィアはサリアの前に移動して、どのようなMSDか観察に入った。


「このMSD、手に馴染むし軽いね。エンチャント系はどうかな?カオリちゃん、このMSDに書き込まれている魔法って何があるの?」

「このMSDは魔力刀だけだよ」

「わかった、ちょっと発動してみるね」


 そう言うと、サリアはナイフ型MSDに魔力刀を発動させようと魔力を送った。ナイフの表面に薄く魔力の膜が張られていく様子が感じ取れる。魔力刀が発動しているようだが、サリアの表情は疑問に満ちたものになっていた。


「ん?んんん?」

「どうしたんですか...?」

「どしたの?」

「なんかこう、私が使っている魔力刀と違くて?違わないんだけど、状態が安定しないかも?」

「多分、核に書き込まれている魔法陣が違うからだと思う。自分の魔法陣は補助機能があんまりないはずだからそのせいかな?ナイフ表面に張る魔力について具体的にイメージするといいかも」

「そうしてみる!薄い魔力の膜のイメージ...。あっ、安定した!それにナイフからすごい感覚を感じる!」

「「どんな感じ!?」」

「えっとね...」


 発動のためのコツを知ったサリアたちは新しいMSDの調査に夢中になったので、新調したナイフ型MSDを模擬戦で使った時のことを思い出してみる。

 サリアたちと数回ほど模擬戦を行ってまず最初に感じたことは、魔法を発動した時の違和感がなくなっていたことだ。これまでは発動するまでにほんの僅かなタイムラグや魔法から帰ってくる感覚がぼやけるのを感じていたが、新しいMSDではそれらがなくなっていた。ダイレクト感のアップで結構使いやすくて、飛んでくる魔法を弾くためにMSDに送る魔力量を調節するのが楽になってgoodだ。

 魔法を弾く時といえば、魔力刀の発動中の安定度も抜群だった。シルフィアのフォトンレイを魔力刀でぶった斬ってもナイフ表面に展開された魔力の膜が揺らぐことはなく、安心感もあった。これなら、模擬戦で即死級の魔法が飛んできても安心して弾くことができるというもの。素晴らしく安心だ。

 発動する魔法に影響があったってことは、MSDの核への蓄積ダメージがかなり多くなってたのだろう。核が壊れてMSDとしての機能が失われるのも時間の問題だったかもしれない。今度から定期的に点検しておこうかな?そのほうが安心してMSDを扱うことができそうだ。


「カオリちゃん、ありがとうございました...!」


 シルフィアはそう言いながら貸していたナイフ型MSDを差し出してきたので、それを受け取る。サリア、リナ、シルフィアの順でナイフ型MSDを使ったみたいだな。それぞれの表情を見ると物は悪くないけど、使い易くもないといった感じだろうか。そうなったのは十中八九、書き込まれている魔法陣がレスポンス重視のために補助機能を削ぎ落としているのが原因だろう。自分に最適化した結果、他の人が使いにくくなると言うのはよくある話だ。でも、使いやすさがわかってもらえないのはちょっとだけ寂しいな。

 そう思っていると、ふと純粋な疑問が頭をよぎった。


「あれ?シルフィアって魔力刀の使い方知ってたっけ?」

「普段使いませんし...知りませんでした。でも...サリアちゃんやリナちゃんの魔法を真似てみたらできちゃいました」


 シルフィアはサリアやリナが発動した魔力刀を見て、短時間のうちに発動に必要な魔力の流し方や魔力のイメージを会得したと言うのか...。それは驚きだ。魔法としてはかなり初歩的な物だが、初めは手こずるのが当たり前。それをすぐにできたのはシルフィアが並外れた魔法技術を持っていることの証となる。

 そのことはサリアやリナもわかっているようで、かなり驚きながらシルフィアに言葉を返す。


「シルフィアちゃん、それ本当にすごいからね!」

「いいなぁ、私もそれくらい魔法の扱い上手くなりたいかも」

「あ、私も!」


 サリアとリナはシルフィアの意外な特技?に感化されたな?めちゃめちゃテンション上がってきてシルフィアに向かって前のめりになっているぞ。


「シルフィアちゃん、何かいい練習法知らない?」

「練習法ですか...?魔法使う時のイメージをもっと具体的にすること...くらいでしょうか?」

「シルフィアちゃん、それだけ?何か隠してない?」

「本当に本当?」

「リ、リナちゃん、それにサリアちゃんまで!?そのワシワシしたは手なんですか...?怖いです、隠してることはないんです...!だから、その手をやめっ」

「「とりあえずワシワシする!」」

「たすけて~っははは、そこっ、弱いのっははは」


 シルフィアよ。南無三。

 シルフィアは魔法技術を磨く術についてはあまり思い当たる節がないようだ。でも、よくよく考えると、模擬戦という動的な中で複雑な魔法であるフォトンレイを狙った場所とタイミングで放つには精密な魔力制御が必要だ。シルフィアはそれを幾度となくこなしてきた結果、知らず知らずのうちに魔力制御が磨かれていったのかもしれないな。もし、フォトンレイじゃなくてもっと低級の魔法を扱っていたら、シルフィアがここまで成長することはなかっただろう。


「ぷははっ、カオリちゃんも考えてないでっ、たすけてっぷはははは」


 シルフィアの声に思考から現実に戻されて、シルフィアを視界に捉えると笑いすぎて目尻に涙を浮かべていた。こりゃ限界だ。シルフィアがどうして強くなったのかわかったし、サリアとリナに魔法技術を上げる練習法を教えるとしよう。そうしたら、シルフィアをくすぐる手も止まるだろう。


「サリアとリナ、上手くなる練習法、知りたい?」


 そう発すると、サリアとリナのシルフィアを弄んでいた手がピタッと止まった。そして、興味津々な視線を自分へ向けると、ワシワシしていた手をこちらへ向ける。

 想像通りになったのはいいけど、この感じじゃ変なこと言ったらシルフィアと同じ目に遭わされそうな気がするな...。

 僅かな間、2人から目を逸らしてシルフィアの方を向くと、くすぐられて上った息を落ち着けるようにゆっくり呼吸していた。目が少し惚けたようになっていて、ちょっとだけイケナイものを感じちゃう姿になっていた。おいおい、これがベッドの上とかだったら完全アウトなシーンだぞこれ。いや、どこでもアウトか。


 そんなピンクな想像が捗る姿のシルフィアからサリアとリナの方に視線を戻して、練習法を言う。


「それはできるだけゆっくり魔法を発動することだよ」

「できるだけ?」

「ゆっくり?」

「そう。魔力を制御する技術が鍛えられるから面白いくらい魔法を扱えるようになるよ」

「「何それやりたい!」」

「どうぞどうぞ」


 ハングリー精神溢れるサリアとリナに勇者たちに出した課題と同じことをするように促したところ、2人は早速魔力壁に向かって魔法を放ち始めた。なかなかに行動が早いな。


「カオリちゃん...見てないでもっと早く助けてほしかったです...。ぷぅ」

「ま、まぁ自分も色々やられてたからその仕返しと思って、ね?」


 そう返しつつも、シルフィアのあざとい仕草に心臓を鷲掴みされていた。猫耳が萎れて上目遣い、しかも目尻に涙を浮かべた「ぷぅ」は反則だろ。一発レッドカード級で病院へ直行コースだ。シルフィアがおこ状態で申し訳ないけど、その姿を見れたのだから助けが遅れたことに後悔はない。そう思うのであった。

___________

 サリアとリナの特訓開始から少し経過すると、復活したシルフィアも同じ練習をし始めた。途中、何かを話し始めたと思えば、


「「「目指せ、カオリちゃんレベルの魔法!お~!」」」


 と一致団結していた。めちゃ気合いが入ってるな。それぞれ、魔法の発動に関して思うところがあったのかもな。


 実際のところ、魔法技術に関して3人は学園1年生としてはトップクラスの実力がある。サリアはもしかすると3年生レベルなのかもしれないと思うこともあるほどだ。学園の生徒のレベルとしては申し分なく高い。

 だが、魔法発動までの時間はそこまで短くなく、魔法自体の精度もまだまだ向上する余地が残されていると感じたのだろう。そう感じさせたのは、自分が原因で間違いない。自分が放つ魔法はアイスニードルだけだが、3人と比べるとブレない魔法を放つ上に、発動までの時間がめちゃ短い。そんな魔法を普段から模擬戦をして体験しているからこそ、まだまだだと気づいたのだろう。


 サリアたちの特訓を見守っている最中、クラスの女子生徒がリナに駆け寄って耳打ちしているのを見かけた。話が終わると、その女子生徒は手を振りつつ演習区画の外に向かって走って行った。それを手を振って見届けたリナはニヤニヤしながら自分とサリアとシルフィアを集めた。この感じ、何か新しい情報が入ったな?


「今、新しい情報が入って、アステラ国の勇者が演習場で練習しているみたい。しかも、外から覗けるところ!今から行ってみない?」

「え、気になるかも!」

「私も気になりますね...!」

「カオリちゃんはもちろん行くよね?」


 自分は勇者たちを知っているので行く必要はないのだが、誘われたのもあってついていくことにした。ついでに、勇者たちがちゃんと自分が指示した練習をしているのか確認するとしよう。

____________

 お手洗いに行くといってクラスの戦闘演習を離脱した自分とサリアたちは、勇者たちがいる場所へと向かった。その場所に向かうと、ガラス張りで演習場内が見えるようになっている区画の内側で、勇者たち3人がデコイに向かって魔法を放つ練習をしていた。

 既に生徒に広く知れ渡っていたのか、区画の外には多くの生徒がいてガラスの向こうにいる勇者に釘付けとなっていた。勇者たちが魔法を放つたびに感嘆の声をあげていたり、会話が弾んだりと活気な様子だ。


「おー既にいっぱいいるね~」

「見れるところあるかな?」

「あの辺とか...良さそうじゃないですか?」

「「「グッジョブ!」」」


 シルフィアが見つけた位置に移動した一行は区画内で魔法を放っている勇者たちを見る。


 藤本は魔法でできた風属性の矢を飛ばす練習、坂本は一直線に雷を放つ魔法の練習、吉本はフォトンレイっぽいものを放つ練習をしていた。どれも魔法が発動するまでの時間が気持ち長く、発動後のスピードもそれほど早くないものとなっていた。そこから察するに以前よりも魔力制御は上手くなっているようだ。ちゃんと特別メニューをこなしているようで安心したぞ。


 そんなふうに思っているところ、勇者たちが放つ魔法を見たみんなが喋り始める。


「すごい雰囲気あるね。魔力すごい持っていそう」

「魔法の威力もすごいです...。それを何発も...」

「それにみんな可愛い子だね!可愛くて強い勇者って反則だよ!」

「「「(リナちゃんだけ、どこか視点が違うような...)」」


 確かにサリアたちの言うとおりで、魔法が目標に命中した時の威力は凄まじく、轟音がガラスごしに響いてきている。いささか発動する魔法の威力が高すぎやしませんかね?あんなの模擬戦で使われたら一目散で逃げちゃうよ?と思ってしまうほどの魔法を放ちまくっている。そこから勇者の魔力保有量を推察すると少なくとも並の20倍以上はあるだろう。まじ半端ないな。

 勇者ってやっぱすごいんだなと小並感を抱いていると、勇者たちの魔法を観察していた3人が小声で話し始めた。せっかくなので聞き耳を立ててみようと思う。


「少し魔法が不安定ですね...」

「確かにシルフィアちゃんの言うとおりだね」

「どこか魔法発動できるかできないかギリギリを攻めているみたいに見えるね」

「「わかる」」

「それに、魔法の発動まで時間があるように感じるし、この練習法はどこかで...」

「「「あーー!さっきしてたのと同じだ!」」」


 あ、みんなにとうとう気づかれたか。自分も輪の中に入るように手招いている。逃れる事はできそうにないな。

 それに、サリアたちが自分に言われて行った特殊な練習法が勇者たちもやっている。他の先生方が同じ練習法を取り入れたなんてことは聞いていない。となりゃ、誰が言い始めたか自明で言い逃れる事なんて不可能だ。これは素直に答えて情報通であるリナの情報交換カードになるほかなさそうだ(白目)。


「ねっ、ねっ、カオリちゃん?」

「はい、リナさん。なんでしょうか?」

「この練習法、カオリちゃんが教えたんだよね?」

「はい、そうです...」

「あっ、もしかして学園長からのお願いってこの事?」

「サリアさん、そうです...」

「それじゃ、カオリちゃんは勇者さんの先生って事ですか...?」

「シルフィアさん、そうなります...ね...は、ははは」

「「「それと何で敬語?」」」

「何となく!」


 ハモるとは仲良いな!全くもう、どうにでもなれ。こうなりゃ、戦闘に関わることは喋っちゃうとしよう。


「それじゃ、勇者と戦ったってことある!?」

「一度だけ。結構勢いがあったかな...。連携もそれなりにできてたよ」

「カオリちゃんがそう言うなら、かなり強そうだよね」

「カオリちゃんから見て...私たちって勇者さんに勝てそうですか...?」

「今の勇者ならいけるかな。でも、勇者は一発の威力が高いから、少しのミスで形勢逆転されちゃうかも。そこを穴埋めできる特技があれば大丈夫だと思う。例えば魔法発動を早くするとかかな」

「直接相手したカオリちゃんにそう言われると、魔法を何とかしないとだね!」

「そのためにも先ずは魔法制御の練習かな?」

「それがいいとおもいます...!」

「当然カオリちゃんも付き合ってくれるよね?」

「もちろん」

「「「やったっ!」」」

「そうと決まれば、みんなで一緒に、負けないぞ~!」

「「「「えいえいお~!」」」」


 ゆるい掛け声とともに自分、サリア、リナとシルフィアは拳を天に掲げ、魔法に関する練習に気合いを入れた。自分だけだと場が締まらない言葉も、みんなで言うとちゃんと締まるんだなと雑に感じたのであった。

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