2-8 転校生の噂2と図書館の状況
(略しすぎています)
魔法の技術に関して不安しかない勇者3人組に対して、授業で習う程度の簡単な課題を課してみた。それは、出来るだけゆっくり魔法を発動するものだ。言うのは簡単だけど、ゆっくりと魔力をMSDに送らないと魔法がすぐに発現してしまったり、効果が現れなかったりする。魔力を制御できるようになるまでは結構難しいのだけど、それができるようになれば魔法の技術はグンと上がるはずだ。諸々の問題もクリアできるだろう。それは魔力のゴリ押しでMSDに書き込まれている魔法を捻じ曲げなかったらの話だが...。変な方向に伸びない事を期待しよう。
そうして抜け出していた授業に戻ってきた。戦闘演習の授業はもう終わりかけのようで、魔力を使い切るような大技大会が行われていた。とりあえず連発しておきますと言う感じだったり、規模の大きい魔法を使ったりと派手な魔法を景気よく放っている感じだ。
「みんなストレスでも溜まってるのかな」
そんな呟きもクラスメイトが放つ魔法の轟音にかき消される。監督してくれているエルバ先生はのんびりした表情で放置気味だ。それもそのはずで、扱っている魔法は初級魔法に毛が生えた程度のものだからだ。おそらく、上級生の派手な魔法を目にしたことがある先生だからその程度の反応なのだろう。実際、勇者たちの高火力魔法を目の当たりにしたら、今の状況には可愛らしさを感じてしまうところだ。
そんな軽い気分でサリアたちの元へ向かうべく、演習場の隅を歩いて行く。不自然に誰も居ないけど、他の子の模擬戦に気を使う必要ないから気楽でいいな。さて、サリアたちは今どんな感じだろう?終わりかけだしゆっくり駄弁ってそうな気もするな~。
そう思ってサリアたちのいる方向に視線を向けた時だった。視線を向けた先から猛スピードのウィンドニードルが自分に向かって飛んできた。ウィンドニードルに余分な魔力が含まれていると言うこともなく、魔法の状態としては申し分ない。うんうん。魔法と言えばこんな感じ。勇者たちとは大違い...。
「じゃない!」
とっさに身を捻って回避する。すると、高速で飛来したウィンドニードルは自分の脇腹をすり抜けると耐魔力壁に衝突し、軽い音を立てて消滅した。
少し気を抜いていたら直撃コースの魔法が飛んでくるとか魔境過ぎる場所だな?耐魔力壁との衝突音からは手加減された魔法であることがわかるとはいえ、高速で飛来するだけに怖さを感じるところだ。直撃しても怪我すらしないだろうが全力で避けたくなるぞ。
「カオリちゃん、ごめーん!」
サリアの声が聞こえてきたので、手を振って無事を伝える。
多分サリアたちの激しい模擬戦の流れ弾がかなり多いのだろう。不自然に誰もいないことに納得だわ...。
サリアたちの模擬戦はちょうど決着がついて終わったようで、サリア、リナとシルフィアの全員がこちらに駆け寄ってきた。そして最初にリナがテンション高く声をかけてきた。
「カオリちゃん、おかえり!学園長に呼ばれてたみたいだけど何してたの?」
「学園長からの依頼について聞きに行ってた」
加えてサリアが質問してくる。
「それって、噂の人たちに関係することだったりする?」
「噂って?」
疑問を返すと、シルフィアが捕捉説明をしてくれた。
「えっと...お昼休みに話してたやつです」
「あ~、この学園に1クラスくらい転校してくる、やけに身分が高い人たちの話で合ってる?」
「「「そうそう!」」」
「関連しているか考えるから、ちょい待ってね...」
学園長の依頼に関連しているのは元クラスメイトであるアステラ国の勇者3人だ。噂話ではクラス単位でやってきて身分はかなり高い。身分は合致するけど、人数が3人だけだもんな...関係ないか...?
でも、ちょい待てよ?転生するときにクラス全体がわちゃわちゃなってたよな...。自分という例外がいるけど、3人は目の前に現れた。ということは、他の元クラスメイトたちもこの世界にやってきていて、それがこの学園にやって来てもおかしくないのか????あわわわっわわ!!
「いきなりどうしたの!?顔真っ青だよ?」
「大丈夫ですか?」
「とりあえず、深呼吸、深呼吸」
「すーー、はーーー」
おいおいおい、これはもしかしなくとも全自分の危機が始まろうとしている。なんとかして、隠し通さないとな。そのためには勇者関連の話は全力でお断りしないと自分の行動が全部クラス中に筒抜けになっちゃう。そうなったら銀髪ロリエルフの中身が自分だって気づく人も出てくる...ってダメだ!さっき学園長から引き受けたばっかじゃん!うわああああ!
「カオリちゃんがこの反応してるってことはクロ濃厚?」
「でもそうなら真っ青になる理由ないよね?」
「全然違うものを想像したんでしょうか...?」
いやでもちょい待てよ?前の世界では授業中寝まくっていたし、喋る機会もほとんどなかった。わかる奴なんていないんじゃない?そうだよ!考えてみれば自分を知る存在なんてほとんどいないじゃん!気負う必要なんてないじゃん。これはいけるぞガハハ!
「いや、勇者関連で合ってるよ」
「「「合ってるじゃん!!!」」」
「は、はいぃ!」
「じゃあ、あの青ざめたのなんだったの?」
「えっと、別件の話が頭に浮かんで...」
「急用...ですか?」
「色々急といえばそうかも?」
「でも、今はカオリちゃん、なんか一転して調子良さげだよね?」
「「「怪しい...」」」
「あ、アヤシクナイデスヨ...」
いくら心を許しているサリアたちとはいえど、銀髪ロリエルフの中身が本男子高校生だということは言えないだろう。墓場まで持っていくぞ。自分は!
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「なんにしてもこれは特大ネタだね!カオリちゃんにお礼と言ってはなんだけど、良いこと教えたげる」
「良いこと?」
「カオリちゃん、よく図書館に出入りしてるでしょ?実はあの図書館に隠し部屋があるみたいなの」
「そんな所あるんですね...」
「わたしも初めて聞いたかも」
お?隠し部屋?自分が結界に関する知識を仕入れたところの話なのかな?とうとう見つかった?というか、リナよ。この話はサリアやシルフィアまで共有してるけど良いことなのか?深く考えたら負けってやつ?
「おっ?カオリちゃん何か引っかかってる~?」
「そ、それで続きを聞かせて」
「隠し部屋につながる扉が木っ端微塵になったみたいなの。それで、隠し部屋につながる場所がわかったんだって」
「木っ端微塵って...ちょっと物騒ですね」
「誰かが押し入った感じなのかな?」
「図書館の正面玄関も大きく壊れてたしそうだと思う」
多分この話は、街の外に大量の魔物が発生した時に押し入った例の集団による痕跡だな。国王さんがそう言っていたし、間違いないだろう。
「そんな場所、カオリちゃんは気にならない?」
「気になるといえば気になる。中に何があるんだろうって思うし。でも、どうしてそんな話を自分に?」
「カオリちゃんなら警備の目を掻い潜っていけそうかな~って」
リナは視線をちらっと自分の方へ向けた。2回ほど。
「そ、そんな目を向けられても行かないからね?警備も厳重でしょ?」
「それが、今日から図書館が通常営業に戻ってるの」
「なら行けそうだよね」
「カオリちゃんなら...できそうですね」
リナをはじめとして、サリアとシルフィアよ。自分はそんな万能人間じゃないぞ?それに、その隠し部屋の図書を読むには本来閲覧権が必要であり、学生に周知されていないことからその入手難易度はかなり高いと思われる。そんな場所が周知されれば秘匿性の確保のために警備員がマシマシで配置されていてもおかしくない。そうなりゃ目が光っていない場所なんて皆無だ。それは侵入するにも無理ゲーというものですよリナさん。蛇食べて美味すぎるというオッサンもアラート全開の中、ゴリ押しして進みそうだ。
「(部屋の前には警備員いるけど)」
「リナ、それ聞こえてるから...」
それ、駄目な奴じゃん。




