2-6 雑談と勇者たちの目的
(略しすぎています)
どうも、女子高生の勇者さん3人と共に学園の食堂で午後のティータイムをしている銀髪ロリエルフになった者です。今は放課後ではないので、授業中ティータイムです。暖かな日差しが差し込み、防音魔法で騒音は遠く、植物のパーテーションで人目を気にしなくてもいい心地よい空間にいます。そんな素晴らしい場所でゆったりとした時間を過ごしたいところですが、女子高生の勇者3人組がいるのでそうもいきません。自分自身の正体がバレないか心配で、背中に冷や汗が伝っているところです。どうか失言しませんように。
勇者となった転生前のクラスメイトである、藤本、坂本と吉本の女子3人組を連れて、学園内をさっくりと案内した。その時に坂本がテンションぶち上げ状態だったのでコントロールするのに疲れた。藤本と坂本に普段はどうコントロールしているのか聞いたところ、時には諦めが肝心とのことだったので自分は頑張った方なのだろう。多分そう。
そういう経緯で疲労が溜まって休みたくなった。そういう時にはソロお茶会を開くに限る!という安易な発想でソロお茶会をすることにした。だが、うっかり口を滑らせてしまった。そんな発言を暇あるJKたちが拾わないはずもなく、ソロお茶会に参加する流れとなった。もうそれ、ソロお茶会じゃなくて普通のお茶会なのよ。まあ、しゃーなし。ということで、気持ちを切り替えて普通のお茶会をすることにした。
お茶だけというのも何なので、ケーキも用意してみた。人数分の紅茶とケーキのセットを用意するとかなりの金額がするが、例によって学年1位の戦闘能力であることの特典なので財布に痛みはない。ん~学園最高!
「ん!ここのケーキ美味しい!」
「それそれ!甘いのに重くなくて無限に食べれそう!」
「食堂でこんなケーキを食べれるなんて、高校の食堂と比べると雲泥の差があるね~」
「「ね~」」
確かに高校の食堂にはお茶とケーキのセットなんて洒落たものは置いていなかったな。あるとすれば唐揚げやフライドポテトなどのホットスナック類だ。全く品揃えが違うのだ。
そんな感じで転生前の記憶を持つ者だけに今の会話を流してしまいそうになるが、自分が誰であるかをバレてはいけないのでこの世界の住人に成り切る必要がある。だけど、めちゃくちゃ馴染んで生活しているから余裕だな。
「高校?とはどんなところだったんですか?」
「あ~、カオリちゃんはこの世界の人だもんね~」
「高校はみんなが勉強をするところだよ!」
「付け加えると、私たちみたいな年齢の子が通う学校で一般教養を学ぶところなの」
勇者3人組には今の自分がこの世界の住人として認識されているようだ。まだボロ出していないのが確認できていいなうん。安心する。
「こっちの世界というのはわかりませんが、皆さんは高校の生徒さんだったのですね」
「そうなの~。私たちはこの世界とは違う世界で女子高生だったの~」
「そうだったんだけど、この世界に飛ばされちゃったんだよね」
「この世界に来た時はかなり焦ったわ」
「「わかる~」」
「森の中だし」
「目の前に武器持った人居るし!」
「魔物が出たし」
「「「大変だったね~」」」
いやー、マジでわかる。自分の場合、人はいなかったけど目の前からウルフが現れたしな。あの時はマジで焦った。正直、転生して即終わったかと思いました。はい。
「それは大変でしたね...(遠い目)」
「本当マジ大変だったんだから!ワンちゃんが襲いかかってきたと思えば、武器持った人は火の玉放つし、マリオかって思った!」
「確かに~魔法も私たちの世界にはありませんでしたからね~」
「でも、魔物もいないし私たちの世界平和だったんだ」
うんうん。魔物も出なければ魔法もない世界だった。家が魔物の大群に襲われることもないし、肌を焼くような極太のビームを間近で見ることもなかった。そこを基準にすると確かに平和だ。
「この世界にはいろんな種族の子がいるよね!可愛くてモフモフでいい!それだけでこの世界に来て良かったって思う!」
「そうね~獣耳つけた子がいるからびっくりしたわね~」
「フサフサの尻尾とかいつか触ってみたいかも」
「「わかる~」」
「そういえば、カオリちゃんって人族?」
「私たちと違って耳が尖ってるから違うんじゃない?」
「多分、エルフ族なんじゃないかな~」
「吉本さんの言うとおり、エルフ族ですよ」
そう言うと、3人組のテンションが目に見えて上がった。なぜエルフだとテンションが上がるんだ。耳が多少長いくらいで外見上の変化はないと言ってもいい。それに比べて、亜人族のケモみみは最高だぞ?兎人族のリナとか猫族のシルフィアとか見ているだけで癒されるぞ?フッサフサに揺れて、ふわふわだぞ。
「エルフ族なんだ!初めてみたかも!耳もっと見せて」
「本当、耳が長くて尖ってる~」
「その耳って動かせるの?」
「ちょっとやってみますね」
耳を意識して動かしたことなんてないから動かし方がわからないな。適当に力を入れてみるか。あっ、なんか動いているかも?案外可動域あるな?
「あっ動いてる!動き方可愛い」
「ピクピクしてる~」
「(触りたい触りたい触りt)」
どうやら自分の耳は割と動くようだ。初めて知ったぞ。そう言う耳って、イメージ的にうさ耳のような気がするのだが、エルフのイメージとは違う気がするんだよなぁ。どちらかというと動かない方がイメージと合う気がする。ほら、なんかエルフってクールキャラじゃん?あっ、違うかも?ドジっ子エルフとかだと耳が動きまくってる気がする...。つまり、自分はドジっ子エルフということか?
それはそれとして、マジマジ観察されると恥ずかしくなってきた。3人組はテーブルに身を乗り出して観察しているのだ。あまりの熱量が視線を介して伝わってきてめっちゃむず痒い。ヒートアップする前にこの辺でやめてもらうか。
「とまあ、こんな感じです」
「「「え~、もうやめちゃうんですか?」」」
「恥ずかしくなったので終わりです」
言葉だけではやめてくれそうにないと感じた自分は両耳を手で隠してみた。
「「「え、なにそのポーズ可愛い。しかも若干困り顔とか可愛さの権化じゃん」」」
観察をやめてもらうための仕草が、逆に火に油を注いでしまったようだ。解せぬ。
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自分の観察タイムが落ち着いたので再びケーキとお茶を楽しむ時間になった。無言と言うのも何なので、適当な話題を投げてみた。
「そういえば、勇者さんって何をなされるんですか?あむっ」
「一応、世界の平和を乱す者をやっつけることみたいです。あむっ」
「そうアステラ国の人が言ってましたね~。でも具体的な相手は教えてくれませんでした~。あむっ」
「魔王をぶっ倒すみたいな感じじゃないよね。あむっ」
ん?勇者としての目的が明確になっていないのか?勇者は正義を掲げて行動に移すというイメージがあるだけに、シンプルに謎だ。定番でいけば、「この世界は危機に瀕しておる。魔王を倒すのじゃ」とか言われて明確な目的の元で動いてそうなものだ。アステラ国ならば、魔物の大群を消しかけてきたマニューヴェが属する集団を叩きのめそう!という目的を掲げていてもおかしくないのにな。
「それに初めの頃はアステラ国の人たち、なんか混乱してた感じするよね」
「なんかアポ無しでやってきて大騒ぎ感じ~」
「「それそれ」」
「私たちもやって来たはいいものの、いざ何をするのかわからないから困るのよね」
「「わかりみが深い」」
勝手に進行している話から察するに、今の勇者の状況は超弩級能力者がアポ無し訪問してきたので扱いがわからないから、とりあえず状況を知ってもらおうというフェーズなのだろう。そして、いい感じに慈善活動してもらうという流れに持っていく感じだ。多分そう。
ここまで漠然としすぎているあたり、アステラ国は目的があって勇者を召喚すると言った感じではないようだ。むしろ、勇者を召喚したのではなくて、異世界から飛ばされてきた勇者を受け入れたという感じが正しいのかもしれない。そう考えると、いまだに目的が定まっていない点と初期対応で慌てるということに納得がいく。
一体、3人組を転移させてきた存在は一体何を目的として転移させたのだろうか。あっ、手が滑って転移させることになってしまったわ。許しててへぺろ。という感じか?神は気まぐれと言うし、有り得る話だな。
だが、自分は転生する際に女神と出会い、ワンチャン世界を救ってほしいと目的を与えられた。異世界から飛ばされてきた人たちのうち、自分だけが比較的明確な目的を持ち、転生体として行動している。そんな状況だと自分の存在が勇者よりも特異な存在であることを認識しないわけにはいかない。女神さんは自分を何に巻き込んだというんですか...?考えても答え出ないし、お茶でも1口啜るとしよう。うん、香りも高いし嫌な渋みもなくて美味しい。greatですよ。
「とりあえず、みんなで力をつけようってことに決めたんだよねっ」
「そうですね~でも、戦闘訓練をつけてくれた人は倒してしまいましたし」
「最後の方には教えることはもうないって言って、相手にしてくれませんでしたね」
おお、これはすごく頼もしい勇者さんだ。何か問題が発生したとしてもそれだけの実力があれば勇者3人組で解決することができるだろう。頼もしい限りだ。この際に自分は隠居して、のんびり学園生活と行きたいところだ。
「そう言えば、なんか動きたいよね」
「そうですね~」
「糖分が回っていい感じかも」
「「「チラッ」」」
「ん!?」
あの...会話の主導権を放棄して考え事をしていた所で申し訳ないのですが、謎に話題が急カーブした上に、一斉に自分を見ないでもらえますか?怖いですよ?それで、何の御用でしょうか?ご隠居の案内ならいつでも大歓迎ですよ?
「「「お相手、していただけませんか?今から」」」
「今から!?ですか?」
おいおいおい、お茶会で落ち着いた後に運動したくなるって普通逆じゃない?自分的にはバトルジャンキーと言っちゃうよそれ。このままだと、勇者さんは最強を求めて世界を彷徨う存在になりそうだけど、それでいいんですかい?転移させた存在さんよ??




