11 オーガ出現とMSDを使った魔法
どうも、銀髪ロリエルフになったものです。
ただいま、未来で支払うお金が多すぎてお金を稼ぐため、魔物狩りをするために森の拠点に来て歩き回っております。空はすっかり暗くなりこれから魔物が増えてくる時間に突入した頃と思うけれど、一向に魔物の数が増えておらず何かがおかしい。いつもであると、虫やフクロウなどいろんな生物の鳴き声が聞こえるが、今はほとんど聞こえてこない。昨日の夜も魔物はいなかったが動物の鳴き声までも聞こえてこないことはなかった。しかも雰囲気がどこか重苦しい感じもある。
街を出る前に、すっかり顔を覚えてしまった門番の人であるザックさんが何か言っていたことを思い出す。
「カオリちゃん、今日はやめといたほうがいいんじゃないか?」
「え、それはどうしてですか?」
「なんか魔物注意報が発令されてて、魔物が発生しやすい状況なんだ。」
「魔物狩り放題ってことでしょ?それならいいじゃないですか。何かあった時も自慢の逃げ足で何とかなりそうな気はしますが。気には留めておきます。」
「こんな時に魔物狩りだなんて物好きだねぇ。まあ、気いつけてな。命大事にだぞ。」
「ザックさん、ありがとう。」
とまあ、こんな会話を繰り広げただろうか。ザックさんは何かと門付近で出会うガタイが良く覇気のある人で、魔石をいっぱい詰めたリュックを背負って街へ入るときも持ち物検査とかでも出会う。そんなザックさんによると魔物注意報はこの街の防壁に組み込まれた魔素濃度検知システムで得られたデータをもとに発令されるらしい。データをもとに魔物が発生しやすい場所を予測して、街の付近でその領域が一定領域以上になると発令されるとか。
魔素の濃度が測れることや発生まで予測できるとはすごいシステムだなぁとか、よく作ったなーとか小並感してた。よくよく考えたら1年ごとに魔物大襲来が来るらしく、予測がなかったら戦線の構築が大襲来に間に合うことはないだろう。だからすごく需要はあっただろうし、すごくいいシステムになるのは必然といったところだろう。
そんな魔物注意報が発令されているわけではあるが一向に魔物の数が増えていない。魔物が発生しやすいとは何だったのか。ただ、森の状況が普段とは違うことから発令された注意報が外れてはいない可能性はある。
自分は魔法の不完全発動時に出る黒い靄を”魔素”と名づけてていた。この”魔素”の濃度が魔物の発生に直接的な関係がある事が森の中で行った実験で分かっていた。このことから”魔素”は、魔素濃度検知システムで扱われている魔素と同じものではないかと思っている。それを裏付けるかのように自身が感じる魔素の濃度はこれまで感じたことのないレベルで濃く感じられるからだ。これだけ高いと魔物も発生しやすいだろう。だが、魔物数はほとんどいないに等しいので、矛盾が発生している。
魔物注意報が発令されていると聞くと魔物が発生して見渡す方向すべてに魔物がいて狩り放題で儲け放題だ~とか思っていた。たけれども今は、ほとんど魔物がいないため拍子抜けである。このままでは森の中にハイキングに来ただけになってしまう。何としても夢の快適生活のためにも魔物を狩らねば。
ただ、あまりにも魔物に出くわさないので、だんだんと白けてくる。
「暇だし、このリングタイプのMSDでも試しに使ってみるか?」
MSDの使い方はよくわからないけれど、魔法の発動のためにはイメージと魔力が必要になるはずだ。MSDは魔法の補助をしてくれるはずであるのでここに魔力を流し込まないといけないはずである。あとは、発動する魔法の具体的なイメージであるが、このMSDはアイスニードルしか補助されないのでこれまで通りの氷の氷柱が出現してから発射するイメージをしながらMSDに魔力を流すとしよう。魔力を流した後はこのMSDが何とかするだろう。
リングをはめた手を伸ばし、イメージとともにMSDに魔力を流し込むと、リングに埋め込まれた核が淡く光り出した。核からあふれ出た魔力は手の先の1か所に集中し、氷柱を形作ると音もなく氷柱が飛翔した。ただ、魔法を使った時の感覚が違う。何と言ったらいいだろうか?MSDまでは明確に魔力がつながっている感じがするけれど、それ以降はかなり希薄な感じである。通常であると、魔力の粒を集まらせてそこで氷の粒を生成して~といった感覚があるのだが、MSDを使うとどうもその感覚が無に等しい。
さらに気になる点もある。
「?発動とか発射が遅い上に、発射速度も遅い?」
MSDを使わない場合の魔法発動スピードを1とするとMSDを使うと5かそれ以上のように感じる。さらに、氷柱が飛翔するスピードもMSDを使わない場合と比較して10倍くらい遅く感じる。確実にデバフされている。単純な威力も100分の一くらいになっているだろう。
「うわっ...私の魔法、弱すぎ...?」
思わずつぶやいてしまうレベルで弱いので、使い方が違うのだろうか?魔力を流し込むところは間違ってはいないと思うから、あとは魔法のイメージだろうか?試行錯誤してみよう。
発射タイミング
①氷柱の発射が氷柱生成直後。
結果:氷柱生成後、ワンテンポ待ってから発射。
②氷柱の発射が氷柱生成してから3秒後のイメージ。
結果:3秒後くらいに発射
③氷柱の発射タイミングのイメージなし
結果:①と同じ
氷柱の飛翔スピード
①氷柱の飛翔スピードが歩くスピードくらい
結果:イメージ通り
②氷柱の飛翔スピードが新幹線並みのスピード
結果:目に見えるスピードくらい?150km/hくらい?わからないけど
③氷柱の飛翔スピードが目に見えないくらいに速いスピード
結果:②と変わらず。
④氷柱の飛翔スピードをイメージしない
結果:90km/hくらいのスピード?よくわからない。
この結果から思うに魔法発動までの時間や氷柱発射タイミングはMSDに依存するのだろう。MSDが処理する時間以上に短くなることはないと思う。また、飛翔スピードはMSDに書き込まれた元となる魔法自体の問題だろう。飛翔スピードの上限はそれほど速いものではないが、それより遅いスピードで飛翔させることができる。
この結果から思うにMSDを使うメリットは詳細なイメージをせずに曖昧なイメージでも魔法を発動できることだろう。ただメリットが生きてきそうなところは、詳しいイメージが思い描けないような不意を突かれたときや状態異常か何かで意識が朦朧とする時くらいか?なんにせよMSDを使うメリットがかなり弱いように感じる。何でこんなものが売られているんだ?初級用は魔法練習とかに使われるのかもしれないが、なぜハイエンドなものまで売られているのだろうか。使わない方が戦闘もやりやすいと思うが、売っているからには使われる理由も多くありそうだ。今はわからないだろうけど、魔法学院に入って魔法を基礎から学んだらわかるようになるんだろうな。
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MSDを使った魔法練習も大体コツをつかんできて、今は改善できそうにないとわかったら急につまらなくなってきたので歌でも歌うことにする。何でかって?暇なので。よくわからないミテリアスな女子は急に歌うからしょうがないね?(謎)
「魔物さんはどちらにー?。私はこちらにー。返事をしたらぽこぽこ祭り。隠れていても背後に居り~」
自分で歌っておいては何だけど、返事したらぽこぽこ祭りってなかなか怖いこと言ってんな?というか何なんだこの歌詞?
「はぁ~暇だなぁ。」
少し立ち止まり、空を見上げる。空は晴れており満点の星空が広がっている。転生前では夜遅くのバイト帰りに見た夜空は明るい星以外は全くと言っていいほど見えなかったものだ。たまたま目に留まった星が気になってちょっと調べたっけ?名前はスピカだったかな?おとめ座の一番明るい星で、星言葉?は抜群のセンスと直観力らしい?そんなスピカがありそうな星座を探してみるものの見える星空にはそれらしきものはないようだ。それもそうか、異世界だし。
「知らないところでも、星はきれいだなー。」
そう呟いて、真上を見上げて誰もいないところに声をかける。
「そう思わない?」
顔正面に戻したとき視線のだいぶ先には筋骨隆々のゴブリンに角が生えた奴がいる。オーガだろうか。
「っ!!」
一気に心拍数が上がり臨戦態勢の準備を整える。棒立ちスタイルから体勢を低くしいつでも動けるようにする。木々が生い茂って月光が届かない場所にいたことが幸いして、オーガはこちらに気づいておらず、視界の右方向に向かって歩いているようである。落ち着くために深呼吸をし、改めてオーガをとらえる。オーガとの戦闘は初めてなので、勝率を上げるためにも先手を打って優位に立つ必要があるな。
魔法を放つ準備をする。先ほど、MSDを使った魔法発動の練習した甲斐あって発動までの流れがスムーズになり最初に比べたら魔力の消費量も抑えられている。リングについている核が輝き、氷柱を生成する。
その直後である。オーガはこちらに気づいたかと思うと、すぐさま飛び退いて飛翔する氷柱をよけたのである。そして、大音響の咆哮をしたかと思うとこちらに向かってくるしぐさをする。
明らかにオーガの戦闘能力を見誤っていた。森にいた魔物はどれも低速で単調な動きしかしなかったので、どうせ今までと変わらないだろうと思っていた。しかし、実際は違った。魔法の発動を感知し、すぐさま避けているところを見るに勘が鋭く相当戦い慣れているように感じる。
「やばっ」
さらに、確実に自分の居場所がオーガに把握されている。動かずに、地理的に優位な位置を取られて劣勢になるのだけは避けたい。今は地理的にも状況的にも劣勢だともう。おそらく、あの咆哮は仲間を呼ぶためのもので、こちらへ向かう仕草をしているのは仲間が集まるまでの時間稼ぎだろう。
「とりあえず逃げよう」
オーガが進んでいた方向とは逆の方向に移動するとする。この方向は街の方面なので何かあっても最悪街のギルドか衛兵に協力してもらえるだろう。
ブーツの靴底で柔らかな森の地面を踏みこんで大地を駆りながらもオーガへの視線をそらさないよう気を付ける。すぐに追いつかれないよう、時折木の枝に飛び移り、土を巻き上げ、小枝を気にせず突っ込み逃げる。しかし、オーガは上手に魔法を使いながら自身が進む道を確保することで自分が逃げるよりも速く、こちらへ迫ってくる。オーガは骨のあるやつを見つけたといわんばかりに歪んだ笑みを浮かべており、嬲って楽しもうとしている感じ満載である。
「これは逃げきれないか?」
逃げている最中も視界に捉えているオーガとは別に前方、左右から個所から草木がなぎ倒される音がする。完全に囲まれている。完全にまずった気がしないでもない。魔物注意報もポンコツ注意報ではなかった。普段は雑魚しかいなかったので、雑魚がいっぱいいるのかなと思ってたのに猛者が複数体いるって想像と全然違ってるじゃん。
どうしようか。逃げの一手では包囲されてより厳しくなるだろう。守るか?自身には守る魔法も楯もない。であるならば、自身の能力でもって受けて立つのみ。
逃げることをやめ、若干開けた場所に立ち止まる。
「向かってきたら、反撃、です!」
目の前には自分に向かって走りこんでくるオーガがいる。オーガはこちらに何かの魔法を放とうとしている。自身は放たれた魔法に対して対処できるよう、いつでも岩を生成して防御できるようにしておく。もちろん物理である。MSDを使わずにアイスニードルを発動する。氷柱のサイズはそこそこだが、とっておきのスピード感満載の品をお送り致します。受け取ってね?
生成された氷柱は衝撃波をまき散らしながら飛翔しオーガへ向かって進む。オーガは考える暇もなく氷柱に貫かれ大穴を開けて消滅する。まずは1体である。あれ?これはいけるのでは?ちょっと余裕出てきたな?
「お次はどちら様へのおとどけですか?」
背後を振り向くと、追ってきたオーガが手に持ったこん棒に風の魔法を纏いつつ振り下ろさんとしている。恐らく、範囲魔法か、直線上に効果がある魔法だろう。大きく振りかぶっているので、逃げるよりも突っ込んでいった方が逆に安全であろう。
自分の体に能力でブーストを施し、迫る敵に向かって瞬時に移動する。オーガは焦った顔になったが、オーガの腕はまだ頭の上にある。一方、こちらはオーガの足元に迫りブーストされた拳でオーガの腹をなぐる。
「直接の受け取りありがとうございますうう!」
かなり速い拳であったのか、オーガは小気味よい破裂音とともに四散した。いやーここまで派手にぽこれるとすっきりするな?恨みはないがトイレ問題でたまった鬱憤を晴らさせてもらおう!さてお次はどなた様ですか?!
今度は左右から挟み撃ちで来た。両方のオーガとの距離は10歩ほどあるものの、左右どちらともに手に持つこん棒には風魔法がかけられており絶対殺すマンとなっている。咆哮でよびよせるなど連携が取れているところを見るにこの攻撃は範囲系ではないのだろう。範囲魔法系だと突っ込んできているオーガ両者ともに被害が及ぶため、ただでは済まないだろう。なので、こん棒にかかっている魔法は直線上に効果があるものか、防ぐことが難しいものと思われる。なので単純にオーガたちが来た方向とは異なる方向に逃げても魔法が襲い掛かってくるだろう。ましてや、飛び上がって上空へ逃げることは悪手で魔法の的になるだけだろう。
ならば、オーガの攻撃が届く前に叩く。自分の周辺に地面から逆さに生えた氷柱を生み出す。向かってくるオーガは急には止まれずに地面から急速に生えてくる氷柱に串刺しとなった。
「2名様お受け取りありがとうございますうう!!」
ラッシュが収まったのか、一瞬の静寂が森を訪れる。虫の鳴く音さえ聞こえない無音の中では微かな音でさえも大きく聞こえる。耳を澄ますと周囲には少なくとも4体くらいいるようだ。仲間が4体も瞬殺されたことで相手の評価を変えたのだろう。襲ってくることはなくその場にとどまり、どうしたものかと様子を見ている。とりわけ一番存在感が大きい魔物はこちらを注視しており、些細な行動でさえも見逃さんとしている。こいつがこの群れの長であろうか。敵意はあるものの、こちらを襲ってくる気配はないようである。今は気分がいい。見逃してもよいぞ。この森の頂点はこの私だ。ガハハ。
今は気分がいいので見逃すといわんばかりに目をつぶる。すると、オーガたちは自分の気が変わる前にいち早く離脱しようと、全力で森の奥へ逃げていく。さすがは猛者たちである。引き際が分かっているように思う。だけどおかしいなぁ?目をつぶっているのにオーガのシルエットが見えるなんて。
目を開くと、魔力の流れや魔素の濃さが視覚的にわかるようになっている。どうやら何かしらのスキルを得てしまったのだろうか?目の付近に妙な熱を感じるところから目の使いすぎだろうか?たまたまポケットに入っていた鏡を取り出して顔を確認すると、目の色が透き通った水色から透き通った赤色(しかも光っている)に変わっていた。
「開眼してる!」
これが厨二病患者ならば狂喜乱舞の嵐で、世界が簡単に滅ぶ勢いであろうことは間違いないのであるが、患者でない自分でもテンションは上がっている。だって、よくあるバトル者だと本気出すと目が光り出すじゃん?ロマン感じるじゃん?
「とうとう封印されし魔眼が解き放たれてしまった...。死にたくなければ...俺から離れろ...ッ!」
とか言ってみたりして。ただ迫真の演技であっても、幼女なので雰囲気はお遊戯会の演劇レベルな気がする。
オーガたちが逃げたことで再び辺りは静寂に包まれる。虫の鳴き声もせず、動物の気配や魔物の気配すらない静かな世界である。ただ、時折風が通り過ぎるときに枝葉がこすれる音がする程度である。そんな静かで穏やかな世界を壊すのは気が引けるというもの。
「フッ...我に恐れをなして逃げおったわ。だが、封印が説かれた今、この魔眼がもたらす救済から逃れることはできないのだ...!」
雰囲気ぶち壊しな気がしないでもない。
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「まんぞく。」
厨二病設定を堪能して満足したので、戦利品の回収に向かう。オーガたちを倒した付近は魔法の影響で大きな破壊の痕跡が残っていて見つけやすい。とりあえず一番近い自身の足元に落ちている魔石を回収する。
「今まで見てきた魔石よりも大きいな?あと、見た目の透明感が違う?」
一番最初に拾った狼の魔物を基準に考えると、大きさは2倍程度で透明度は3~4段階上といったところだろうか。中々に高く買い取ってもらえそうな魔石な気がする。これは夢の快適生活にぐっと近付けたように思う。
周囲にあるであろう残りの魔石も拾い集めて拠点に持って帰るとしよう。まだまだ夜は長く、あたりの魔素の濃度もまだそこそこに高い。今夜もぽこぽこ祭り開催です。そう思うと決意がみなぎった。
森の中の拠点に戻り謎に頑丈な豆腐ハウスに魔石を置いたのち、夜空を見て休憩していた。魔眼のような光る赤い目はいつの間にかいつもの青い目に戻っている。どうやら再封印されてしまったようだ。何をタイミングに封印解除されるのだろか...?
などと考えていたら静寂な森から、だんだんと騒がしい森に変わっていっている。感じ取れる魔素も薄くなってきたことからだいぶ魔物が生成されているはずである。どうやらこの先、祭りの時間のようだ。
「ぽこぽこ祭り開幕」
だが、謎の決意は想像以上の雑魚魔物の大量発生によって揺らぐことになった。
「ぽこぽこしてもキリがない~~~~」
豆腐ハウスの上からアイスニードルを打ちまくるだけの祭りとなっている。魔物は雑魚ばかりであるのでMSDを使ったアイスニードルでも難なく倒せてしまうが、魔物が絶え間なく押し寄せてくるので単発で発動が遅いMSDを使った魔法ではうち漏らしが多く発生してしまう。しょうがないので、緊急的にMSDを使わずに魔法を連続で放っているが、あまりに連射間隔が短いためすぐに魔力切れになってしまう。なので、適宜物質を魔力に変換して戦闘を継続している。
戦闘の訓練でもなければ魔物との戦闘というわけでもなくそこにあるのは虐殺であり、的に向かって魔法を放つ作業でしかない。途中から嫌になってきたが、絶え間なく魔法を放ちながら魔力の補給を行う練習と思えばまだ何とか気力が持ちそうな気はする。倒した魔物の跡には魔石が山積みになっているものお、その上からさらに魔物が押し寄せてくるので魔石の数が増える一方でどう運ぼうか考え物のレベルである。
魔眼も開眼しているようで、魔物の輪郭が暗い森の中でも視覚的にとらえることができるようになり、周囲にどの程度の魔物がいるのか把握することができる。そのおかげで、魔法を放つ方向が一方向であってもなんとか対応することができている。ただ、解せないのが、どこからともなく、魔物が集まってくるということである。少し戦闘をやめて観察してみるか?。
魔法を使うのをやめて息を殺して周囲と同化することに努める。すると、脅威がいなくなったと感じた魔物はある行動に出た。
「魔物が魔石を食べている?」
森の中でよく見る狼タイプの魔物が魔石を食べているのが見える、あたりを見ると他の魔物も同様に食べているため、魔石を食べることは魔物の習性のようである。魔石は、魔力の結晶体であるので、魔物が糧としているのも魔力となる。魔物が人間を襲うのも、人間の魔力を糧にするためと考えると納得がいくな。成歩堂。
さらに、魔物のサイズは魔石を食べるごとに大きくなり、魔物の存在感も上がっているように思う。単純に言い換えるならば魔物が強くなっている感じだ。
「あのオーガたちは雑魚の魔物を食べて強くなったのだろうな。とすると、昨日や今日、森の中に魔物がいなかったのは、オーガが森の中にいる雑魚魔物を食べていたからなのか。納得」
観察をしばらく続けていると、たらふく魔石を食べた魔物の一部がその場で眠りに落ちた。死んだ?わけではなさそう。魔石にならないし。そして、その魔物は周囲の魔素を取り込みつつ体つきが大きく変化した。
「これが魔物の進化?魔物にとっては魔石は食糧であり経験値ってことか」
魔物の謎の生態が分かったところでひとつ思いついた。魔物たちが落ちている魔石を綺麗に食して最強の1体が生まれてくれたなら、魔石が1個になって運搬が楽になるな?これはいいアイデアでは?と思ったが、魔石を持ち逃げしようとしたり、たらふく食べて満足だから帰りますという魔物もいるおかげで、魔石が1つになることはなさそうだ。根気よく魔物を倒していくほかなさそうである。まだ、固定砲台役を務めないといけないのか...。まだまだ夜も長そうだし?
「もーーーー面倒くさいーーーーー!」
銀髪ロリエルフが発狂する声が騒がしい森の中に響き渡るのであった。
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