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2-3 サリアたちへの視線と高い魔力密度が引き起こす現象

(略しすぎています)

 どうも、学園の演習場の隅っこで体育座りをしながら模擬戦を眺めている、銀髪ロリエルフになった者です。あっ、怪我をしたり具合が悪いわけじゃないです。深い理由なんてものはないです。見てくる人を見ているわけでもないです!ただ単に模擬戦の相手がいないとかそんなことじゃないです。ないです!


 そんなことを思いながら、目の前で繰り広げられているサリアvsリナとシルフィアの構図で激しい模擬戦を見ている。3人の戦い方は物理的な攻撃と魔法攻撃が組み合わさっており、より実践的な模擬戦内容となっているように思う。初めのころと比べるとかなり戦闘スキルが向上していると感じる。

 サリアはリナとシルフィアの攻撃を短剣で捌きながら、時折効果的な魔法を放つ戦法をとっている。受身な戦い方だが危なげなく攻撃を捌き切っているあたり、すごいと思う。ギルドで対魔物の戦闘をこなしてきただけあるな。

 リナはサリアから時折放たれる攻撃を俊敏さで回避しつつ、重そうな大剣をブンブン振り回しながら攻撃をする戦法を取っている。サリアに比べるとかなり大雑把な攻撃方法だが、それでも以前に比べるとかなり精度が上がったように思う。日頃の模擬戦の賜物だろう。

 シルフィアは短剣を使って、リナが行った大雑把な攻撃の隙を埋めるような攻撃を放っている。完全にサポート的な動きに徹しているのだが、なかなか様になっている動きだ。

 元々は魔法攻撃のみの戦闘をするタイプなのだが、今は魔法を封印している。と言うのも、シルフィアが持つトラウマの問題で人に対して攻撃魔法を放つことが困難であるからだ。自分相手だと即死級の高火力魔法を放てるようになったのだが、サリアやリナ相手だとまだ無理みたいだ。本人曰く、自分は100%避けてくれるかららしい。そりゃ避けないと死んじゃうし死ぬ気で避けるよ?と思わなくもない。

 そんなシルフィアの剣の扱いは初心者そのものだが、シルフィアが持つ戦況を見極める力で隙を突くような攻撃を放っている。これには正直驚いて、後衛の魔法師だけでなく、サリアのようにオールラウンダーになれる素質があるのではないかと思い始めてきたところだ。


 こうして3人の模擬戦を見ているのも、今日は何故か3人だけで模擬戦をやってみたいとの申し出があったのだ。さらに、今日は気合いが普段よりも入っているようにも感じている。だが、その理由は何も見当がついていない。頭にハテナが大量に浮かんでいる状態だ。ワケワカメ。


 そんなハイレベルで気合いの入った3人の模擬戦をクラスメイトたちはどこか雲の上の人を見るような目で眺めている。この目をどこかで感じたなーと思ったら、自分がサリアたちと模擬戦をしていた時に感じていた時のものと同じだった。どうやら、クラスメイトたちにとってサリアたちはめちゃすごい存在になっているようだ。サリアたちよ、こちら側にようこそ。といったところだろうか?

 でも、時折意味合いが異なるような視線がサリアたちに飛んでいるような気もしたのでこれまた謎だ。視線を辿ってみると女子生徒がほわわーって表情で見ていたりするので、悪いことではないことはわかる。だけど、謎だ。


 サリアたちの行動や一部クラスメイトたちが送る視線に謎が多いが考えようがないな。それに自分に向けられる視線の謎もわかってないし...。謎だらけで考えるのが面倒になってきたな。


「ここは気分を変えて実験してみようかな」


 今回実験するのはMSDで魔法を発動する時に流し込む魔力の密度を高くするとどうなるかだ。魔族の話で全身を魔力が巡っているという話だったので、それを部分的に再現してみようと言う動機だったりする。ちょっとやってみよー、レッツゴー!


 座り方を体育座りから正座に変えて、白いナイフ型のMSDを右脚につけたホルダーから取り出して右手に持つ。準備万端だ。

 まずは、魔力を普通に流し込んでみる。いつもと変わらず、ナイフの刃表面に薄く魔力が伸びていく感覚がある。魔法の発動時間は変わらないようだな。


「普通だ。切れ味はどうかな?」


 生地された土の地面に軽く刃を突き立ててみると、抵抗がありつつも刃が地面に埋まっていく。土を切り裂くシャリシャリ感を感じるが、いつも通りになかなかな切れ味だ。ナイフを引き抜いてブンブンと腕を振ってみても特に変わらないところはない。ナイフの表面に張った魔力の膜も安定している。


 次に、流し込む魔力の密度を上げてみる。流れ込む魔力が同じになるように流量を制限してみる。すると、魔力がナイフの表面に薄く伸びていく速さが若干早いような気がした。魔法発動までの時間は若干速くなる感じだ。


「これいいかも?次に切れ味はどうかな?」


 地面に刃を軽く突き立てると、普通に魔力を流し込んだ時と同じように埋まっていく。だが、ナイフ側から伝わってくる反応はどこか鈍いものがある。MSDの核で処理する魔力操作が多くなってダイレクト感がなくなったかな?魔力の膜も先ほどよりかは安定していないようにも思える。


「ならこれはどう?」


 MSDに流し込む魔力に魔力刀発動のための詳細な情報を加えてみると、ナイフ側から伝わってくる反応のダイレクト感が戻ってきた。さらに、その感覚は普通に流し込んだ時よりもダイレクト感が強い。シャリシャリとジャリジャリしている感じ?他には例えになるかわからないけど、引っ張った輪ゴムを弾くのと、金属製の弦を弾くくらいの差がある。この感じだと、MSDに流し込む魔力密度が高い方がより魔法の詳細な情報を得ることができそうだ。

 その状態で、ナイフを持った腕をブンブン振ってみる。すると、いつもよりも腕が軽く感じる。腕にいつもの時と同じ負荷がかかるまで振ってみると、ブンブンブンブンくらいできる。2倍くらいかな?


「なにこれ面白い」


 ナイフ型MSDを持たずに腕に流れる魔力の流量を変えずに密度だけを上げて、腕を振ってみた。


「おー」


 と言うのも納得で、2倍くらいブンブンできた。消費した魔力まではわからないけれど、身体強化魔法を使わなくとも身体強化できるんだな。新たな知見だ...!どうしてこうなるのか確証がないけど、多分魔力の方に腕をブンブン振ると言う情報が載ってしまって筋肉がそれに反応したんだと思う。


「ん?それって魔法陣なしでも魔法が発動したことになる?」


 午前中に聞いた魔族の話を思い出す。魔族はMSD無しで魔法が発動できるとされ、それが魔力器官によるものとされていた。魔力エーテルが体内を流れているところを察するに体内を巡る魔力の密度が高いのだろう。

 先ほど自分が魔力密度を高めたところ、MSD無しで魔法発動っぽいことができた。その事を考えると、もともと魔力密度が高い魔族が自由に魔法を扱うことができても違和感はない。多分、魔力密度さえ高ければMSDなんてなくともイメージから発動しやすくなるためだ。そりゃ抽象的な情報を補完する魔法陣なんてなくともなんとかなるはずだ。


 そうなれば、実験だ!とりまアイスニードルを発動して...みるとできるのは間違いないな。冷静に考えてみると自分はMSDなしでも発動できている。とはいえ、異能な力を持つ自分ではサンプルにならないから、機会があれば魔法が得意なサリアかシルフィアあたりにお願いしてみようかな?

 今回の実験から新たに分かったことと言えば、魔法発動の根幹であるとされる魔力器官がない人間でも、MSDなしで魔法が発動できる可能性があることだ。となると魔族と人間の本質的な違いは魔力器官という臓器の有無だけではなく、魔力を扱う力量あるいは魔力密度の有無になってくる。その違いは案外、魔法発動のために世間で魔力密度を高める流れが生まれた結果、魔力使用に適応して進化しただけだったりしてな。


 そう思っていると、サリアたちが近寄ってきて声を掛けてきた。


「カオリちゃん、どうかした?」

「カオリちゃん...大丈夫そう?」

「何かあったら言ってね?」


 やめろ、そんな明らかにやばい行動しているやつ的な視線を向けないで!いや、確かに地面にナイフを突き刺したり、腕をブンブン振りまくったかと思えば、止まって考え込んでいたけど!側から見ればやばいやつだけど!そうなんだけど!!


「大丈夫、大丈夫だからそんな視線を向けないでーーーー!」


 今だけは向けられた視線の意味がちゃんとわかるんだけど、もっといい視線を向けてほしいものだ。まあ、今回は無理があるか。だが、気持ち的には解せぬ...。

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