2-1 魔族についての認識と判別方法
(略しすぎています)
どうも、学園で頬杖をつきながら授業を受けている銀髪ロリエルフになった者です。魔物騒ぎで色々ありましたが、すぐに学園が開始されるとは思っていませんでした。学園の先生方の対応力がマジ頼もしいな?
一部の生徒は魔物騒ぎのショックから立ち直れておらず登校してない生徒がいるとの事だ。だが、それ以外の生徒は何らかの心配を感じつつも普通に登校してきているようで魔物騒ぎの影響はそこまで大きくないようだ。
情報通の兎人族であるリナがウサミミをぴょこぴょこさせながら話すところによると、学園の中で同じ状況になったらメンタルやられるけど、森の中だし魔物に絡む事件が発生するのは普通だと思っているんじゃないかとのことだ。
ついでに、学園で最近持ちきりの話とかない?的なことを聞いてみたりした。自分のギルドランクがプラチナランクに上がったことで、学園では大騒ぎになると思っていたからだ。だが、リナの話は特にないよという事だった。大騒ぎになってほしくはないが、そうなってもおかしくない事を成しているだけに、不思議が大爆発だ。みんなギルドランクとか興味ないのかな?それか、まだ公表されていないとかかな?後で新聞でも買ってみるとしよう。
そんなこんなで、今受けている授業は魔族の内容だ。以前に図書館で魔族について調べたときには軽く触れるくらいだったので、まとまった話を聞けるのはありがたいな。魔族的な身体的特徴が能力使用時に現れる自分のためにもしっかり聞いておかないと。
「魔族には特徴的な器官があります。それがわかる人はいますか?」
「はい」
そう答えたのは猫人族のシルフィアだ。今回の問いには自信があるのだろう。フサフサの尻尾が少し揺れ動いており、チャーミングな耳を先生の方に向けている。うん。今日も可愛い。
「シルフィアさん、どうぞ」
「魔力器官です」
「正解です。よく勉強されていますね。シルフィアさんが答えてくれものの別名は魔臓と呼ばれています」
ん?この魔力器官とやらは気になるところだな。
「魔族が有する魔力器官は人族の心臓に類似した役割を担っています。魔力器官は血液と魔力エーテルが混じった液体を全身に行き渡らせるポンプの役割だけでなく、魔力貯蔵庫としての役割を果たしています」
と、先生が懇切丁寧に説明してくれている話を聞き流し、教科書に視線を落とす。
魔力器官という名がついている通り、魔力の生成と貯蔵、循環を担う器官で魔族にとって重要な器官の1つのようだ。魔力器官の内部には魔力でできた結晶が存在しており、結晶から魔力を引き出すことで瞬時的に自身の魔力保有量を超えた魔力を放出できるらしい。魔族は魔力器官があるためにMSDを必要とせず、自由に魔法を使うことができると教科書に書いている。かなり一般的な内容の様だ。
疑問となるのは、魔力器官があるからMSDなしで自由に魔法を使うことができるというところだ。逆にいうと魔力器官がない者たちはMSDなしでは魔法を扱うことが出来ないということだ。
MSDはMagic Support Deviceという名前の略称で、魔法発動や行使の補助を行ってくれるものだ。自分も使用しているが、魔法発動に必要な情報を漠然としたイメージ情報から必要な要素を抽出・補完してくれるので超絶便利なものだ。そのため、この世界の住人たちはMSDを使って魔法を発動している。
MSDが魔法を補助できる理由はMSDの中にある核に秘密がある。核は魔力が多く含まれたものでできており、核には魔法魔法固有の魔法陣が書き込まれている。核に書き込んだ魔法以外の魔法は発動することができないデメリットがあるが、何も考えずとも魔力さえ上手く流すことができれば発動できるという強力なメリットがある。もちろん、魔法のイメージが強いほど、良い魔法になるけどね。
まとめると、MSDはあくまで魔法発動や行使の補助であるという話だ。だが、そうなると、魔力器官があるからMSDなしで自由に魔法を使う事ができるという話はおかしいことになる。補助しなくとも魔法発動に必要な完璧な情報を与えてやると魔法は発動するからだ。
さらにもう一つの問題もある。MSDの補助はあくまでも核に書き込まれた魔法陣に対応する魔法のみとなる。これは、核に書き込めるサイズが有限だからだ。それから考えると、自由に魔法を扱える魔族の魔力器官には無限の魔法陣があることになる。それは盛大な矛盾だ。
うーん。おかしい事だらけで、自分の面倒事回避センサーが激しく突っ込んではならないとアラームを鳴らしている。だけど気になるなぁー。
「カオリさん、何か考え込んでいる様ですが何かありましたか?」
ほ、ほぇ?名指し?ピンポイントで話を振ってくるあたり、先生も心をスキルがある様ですね??でも、いい機会だ。自分的誰もが思う疑問No.1を聞いてみるとしよう。
「で、では...。MSDを用いた魔法発動はMSDに書き込まれた魔法に限定されています。魔力器官はなぜ自由に魔法を発動できるのでしょうか?器官に無数の魔法陣が書き込まれているとかでしょうか」
その質問を聞いた先生の反応は特になかった。本当によくある質問なんだろう。
「いい質問です。ですが、それに対する明確な答えは今のところありません。今後の調査に期待したいところです。もしかするとカオリさんが言ってくれた様に、無数の魔法陣が書き込まれているかもしれませんね」
「先生、ありがとうございました」
「では、授業を続けますね」
MSDを作る技術があれば魔力器官を調べる技術も揃ってそうなんだけどな。でも、現段階で分からないならば図書館とかで調べても追加情報を得ることはできないだろう。今はそれが分かっただけでもいいか。少しスッキリしたぞ。
「魔族と人族の外見は紅く光る瞳を除いてそう大きく変わりません。そのため、伝承にあるような角や尻尾、鱗があるから魔族と言ったものは当てはまりません。ですが、彼らが持つ魔力は私たちのものとは異なることはわかっています」
「はい」
「サリアさん、どうぞ」
「私たちが魔族かどうかを見分けるためにはどうすれば良いでしょうか」
エルフ族であるサリアは真剣にそう質問した。普段はほんわかした雰囲気を放っているサリアだが、今は気合が入って少し固いものになっている。ギルドに所属しているサリアにとっては気になるところなのだろう。
「明確なものは魔力器官の有無、それ以外は専用のMSDを用いた反応を見ると言ったところでしょうか。専用のMSDは魔族が持つ特定の魔力に反応する魔法陣が書き込まれたものであったり、魔力器官の働きを抑え込むものであったりとさまざまなものがあります」
「よくわかりました。ありがとうございました」
なるほど、魔族かどうか判別するには解剖という手段を使わない場合は、魔力器官に関わる反応をみるか、特有の魔力を検出するしかないようだ。魔族と面と向かってMSDを発動するなんて面倒すぎる手段だが、わかりやすい外見がない以上仕方のないことか...。というか、その時点で魔族かどうか分かってもどうしようもないんじゃ...。考えるのはよしておこう。
そう思ったとき授業の終わりと昼休み開始を告げチャイムが鳴った。ついでに自分のお腹も少し鳴った。頭を使っていたからしょうがないけど、恥ずかしさあるなぁ。
「キリがいいのでここまでにします。各自復習してくださいね」
そう言うと、授業の担当だった先生が出て行った。教室は次第に賑やかになり、複数の男子生徒はダッシュで教室を飛び出して行った。購買に目当ての品を買いに行くのだろう。元気なことだ。サリア、リナ、シルフィアのいつものメンバーも立って自分のところへやってきている。自分もお昼ご飯の準備をするとしよう。
今日の昼は唐揚げとオムライス、サラダが付いた弁当だ。今日は気合いを入れて作ったから完璧な仕上がりだ。これに国旗を立てたらお子様弁当となりそうだけど、そんなものは関係ないよね。美味しいものの詰め合わせこそが正解よ!




