104 ランクアップ式典と答え合わせ
(略しすぎています)
どうも、王都にある国王の謁見の間で膝をつき、緊張でガクブルしながら首を垂れている銀髪ロリエルフになった者です。粗相がないかどうか心配で、王都へ向かう魔動車の中でしか眠ることができませんでした。あ、でもギルドでどんちゃん騒ぎをした朝に出発したのでそんなものですかね?ギルド長さんよ。はしゃぐのは分かるけど、王都に移動する事はもうちょっと早く言ってほしかったな?
端的に謁見の間に居る理由が2つある。1つ目は自分のギルドランクがプラチナランクへランクアップした事。2つ目は魔物狩り演習期間で発生した広域魔物災害関連で活躍したことへの褒美...だそうだ。全て王都へ向かう魔動車に同乗した街のギルド長であるキースさんから聞いた。言うのが遅いよ??
ギルドランクの最高位であるプラチナランクは世界でもトップクラスの実績と実力を有する人が授かるランクで、現在は世界で12名しかいない。プラチナランクへ昇格する事を認めるためには3カ国以上の国家の承認が必須であり、承認への審査は非常に厳しいらしい。それだけにとても価値のあるもののようだ。
一方でアステラ国の視点でプラチナランクの承認を見ると、優秀な人材を輩出したと言う実績を示すことができる。それは、魔法技術の高さで世界をリードしているアステラ国にとって、技術者を集める良い宣伝材料になるだろう。
実際、謁見の間に入った時には複数国家の国旗のバッジを身につけた人や獣人、エルフまでいた。恐らく外交官レベルの人たちなのだろうが、各国の要人を集めて広く知らしめることが目的にあるのだろう。「こいつは俺の国が育てた。どうじゃ?ええやろ?此奴がいる魔法学院に留学とかしてみないか?ンンンン?」的な感じだろうか...。なんか言葉がゲスいな...。
まあ、魔法学院がある街では魔物騒ぎが頻発して色々やらかしているし、悪評を塗り替えるための話題作りといった側面もありそうだ。でも、自分は安寧が欲しいのよ?知らないところで騒ぎ立てないでよ?アステラ国王よ我が望みを叶えたまえ?
望みといえば、何を褒美として欲するかだな。衣食住は今の所問題ないし、お金に関しても不足分はない。うーん、考えても何も出てこないし...どうする?
首を垂れながら褒美に何をもらうか考えまくっている自分、強欲すぎだな?そう思っていると、国王様が動いた。
「カオリさん、表を上げても良いぞ」
さん!?どう言うこと??王様が敬称をつけるとか個人的前代未聞事件大勃発なんだけど!?言いづらいレベルですけど!?と、とりあえず、驚いたのを押し込めて顔を上げるとしよう。
「我は第52代アステラ国王、ジェームス・キャンベル・アステラスである」
見上げると、金髪の50代くらいのイケおじが瞳に映った。国王は煌びやかだが品を感じさせる格式高い衣服を身に纏い、その姿からは服装に相応しい厳かなオーラを感じる。ジェームズ国王の瞳は自分の思考が見透かされているのかと思うほど鋭く、一国の王であることを実感する。
「貴女は複数の広域魔物災害において数多くの魔物を討伐するなど特筆すべき実績を上げた。さらに、数多くの人命を救うというギルドメンバー本来の責務を果たしてみせた。その実績をもってプラチナランクに昇格させることとする」
おお、クソ亀を討伐しただけじゃなく人命救助も評価されるのね。単に力だけでプラチナランクへ昇格したと言うわけではないのか。
よく考えてみれば、力だけの評価では暴力的で傲慢な行動をしている奴でもプラチナランクへなれることになる。そんな奴の昇格を認めてしまっては国の品位を落としかねない。だからこそ、力以外の評価があるのだろうな。とは言え、自分は基本的に自分本位で動いていたような気がしないでもないが...。自分のことは気にしないでおこう。
「ありがとうございます」
「さらに貴女の広域魔物災害での活躍は素晴らしいものであった。特に、第一魔法学院の魔物狩り演習地で生じた広域魔物災害では無数の魔物が蔓延る中から留学生を含む生徒の救助を行った。それは対応しきれない程の魔物を前にしながら簡単に取れる行動ではない。よってその行動は褒美に値する」
なるほど行動をとったことへの褒美ね。なるほど?でも、なんか留学生っていう単語が引っかかるな。単に国外から来ている学生を救助したということだが...。
そもそも論として、国家としては要人を含む留学生の安全をある程度保証しなければならない。だが、残念ながら警備の目が届きにくい状況下で留学生を危険に晒す大規模な問題が発生した。救出が無理そう?マジ万事休す?外交問題ムカ着火しちゃう?そんな状況で、自分が助けたというわけだ。
自分の行動によりアステラ国はこの問題を通じて、問題が生じても状況を打開するだけの警備力や治安維持能力が十分にあると示した。そのため、諸外国はイチャモンをつけることが難しくなったはずだ。極め付けは、今回の問題を災害と言う事にすることで、生じた問題に対して受動的に動いたことを咎めることをできないようにした。外交問題に発展させない完璧な布陣をとることができたのだ。
以上をまとめるに、自分が人命救助したことで本来噴出するはずの外交問題がなくなり、アステラ国は大助かりした。めっちゃ助かるー褒美やるーというところか。うんうん。今の状況に納得だ。
脳内での仮説に納得していると、国王はそれを感じ取ったのかウィンクをしてきた。ジェームズ国王さんは案外お茶目だな。なになに?「その話は多分正しいから、この場で言うでないぞ??????」圧が強すぎるんよ!!言わないYO!
「褒美にはカオリさんが望むものを与えるものとする。申してみよ」
さて、問題の褒美だ。
現状欲しいものは安寧。ほのぼの暮らす生活といったところだ。だが、これらの実現は難しいだろうな。お金を渡されて終わりという線もある。となれば、今の自分が実現できない事やアクセスできない事について望むのがいいだろう。
今思いつく実現できない事については世界平和。仲良くしろ!そしてちょっかいをかけて来るな!という願いだ。まあ、無理だな。
アクセスできない事については、古代の魔法関連だろうか。学園の図書館には隠された空間にめっちゃ参考になる古書があった。それに、今はマニューヴェたちが扱う闇魔法について情報を得ることができていない。それらについて知ることは今後にも役立つはずだ。決まりだな!
「自分が望むものは古代の魔法技術に関する書物です」
「ほう、魔法技術とな。それは学園に所蔵する図書よりも古いものという理解で良いか?」
「はい。学園で得られる知識よりもさらに昔の技術を知り、よりよい魔法の扱い方を模索したいと考えております」
「なるほど。では、古代の魔法技術に関する書物閲覧権を与えるとしよう。詳細は話し合いを経た後に決めることとする」
「ありがとうございます」
やったぜ。普通に嬉しいな。これで闇魔法の情報を多少なりとも知ることができるようになるだろう。それがきっかけとなって、マニューヴェが率いる集団の目的も知ることができるかもしれない。目的が知れたら、関わらないように行動することもできるということ!?。これは閲覧できる時が楽しみだ。レッツ平穏な日常!
そのためにも、まずは国王さまとの話し合いだ。
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謁見の間での行事が全て終わり、別室に移動してジェームズ国王と詳細な内容を話あう流れとなった。豪華絢爛な別室の中央にあるテーブルを挟んで、ジェームズ国王と自分は向かい合うように座っている。豪華すぎてちょっと落ち着かないな...。それに国王と面と向かって話し合いとか緊張しまくる。あわわわわ...。
そんな感じで自分がソワソワしていている中、落ち着いているジェームズ国王は話を切り出した。
「早速で申し訳ないが、カオリさんの望みは一部叶えられそうにない」
な、なんですとおおおおおお????why??夢の平穏な日常が急に遠ざかっていったよ?緊張とかすっ飛んでいったよ!?
「理由を聞いてもよろしいでしょうか?」
「無論だ」
ジェームズ国王はティーカップを持ち上げて紅茶を一口啜った後に、真剣な表情で話し始めた。
「実はカオリさんが望むものは学園内の図書館に所蔵されていたのだ。MSDを使わずに発動できる魔法は術者のレベルが未熟だとかなり危険なため、ある場所に保管していた。だが、テロリスト集団が保管場所を襲撃して大半の書物を持ち去ったそうだ」
ん?もしかして、保管場所って図書館にあった隠し部屋のことかな?それに、テロリスト集団?もしかしてマニューヴェが率いる集団の事か?名言しないあたり、ジェームズ国王はそれらを隠しているようだ。ならば知っているかどうか確認するために、少し遠回しに聞いてみるとしよう。
「もしかして巨大な亀の魔物が出現したときに襲われましたか?」
「そうだ。だが、どうしてそう思ったのだ?申してみよ」
国王は自分の言葉に何かピンと来るものがあったようで、共に部屋にいたメイドを部屋の外に出させた。この反応はビンゴだ。この国王は一連の事件について何か知っているのは間違いない。自分の持論を話して正解かどうか確認してもらうとしよう。
「一連の広域魔物災害はある集団によって引き起こされた人災によるものと考えています」
「ほう。続けてくれ」
「その集団は街の郊外の森で魔物騒ぎを生じさせました。森の中の複数箇所で異常な発達をした植物群が円状に確認されています。さらに、その中心地は更地になっていました。自然に発生する現象と考え難いため、人為的に引き起こされたものと推測されます」
ジェームズ国王はポーカーフェイスを貫き通しているが、漏れ出る魔力がわずかに揺らいでいる。自分が言っていることは正解に近いようだ。
「では、次の事件であるエンシェント・タートルを含む魔物災害はどう考える」
「同じく人為的にもたらされたものであると考えています。森の中では調査していませんが、おそらく街の郊外の森で生じている現象が確認されているでしょう。その上、魔物の集団は統率を持つように街へ向かう行動をとっていました。ランダムに動き回る魔物の性質上、考えられない事です」
「つまり、カオリさんは何者かが手を引いていたと考えるのだね?」
「はい。その集団に属すると推測される人に絡まれましたので。名前はマニューヴェ...」
「おいおいおい、カオリさんはそこまで知っているのかね?」
ジェームズ国王が慌てている感じからして自分の話が正解と言っているようなものだな。なら、マニューヴェが率いる集団について最後まで情報を言うとしよう。
「ついでに、学園で習う属性にはない属性の魔力を扱う集団であることは分かっています。おそらく、エンシェント・タートルは陽動作戦で本来の目的は街中で起きたこと。先ほどの陛下のお話から、学園の図書館の襲撃が本来の目的であると見ています」
「うむ...。これは隠し通しても無駄のようだ。カオリさんが話した事は我の耳に入ってきた話と相違ないことを認めよう」
これでマニューヴェの集団に関連した魔物災害について、自分の説が全て正解とお墨付きをもらった。やったね。
一方のジェームズ国王は一気に疲れた表情となり、肩の力を抜くと大きなため息をついた。国王としてのオーラが半減したぞ。大丈夫か?
「この話は機密事項に該当していて情報管理も徹底していたんだがな。どうしてわかったか我に聞かせてはくれないだろうか?」
「それは簡単です。全ての事件に巻き込まれたからです」
「そうか...それは大変だったな...。それならばわかって当然だ...な?それでは、我は情報統制について考えなくても良いのか?」
「この件は全て誰にも話していませんので大丈夫です」
「そうかぁ...それなら良いのだがな。近頃は情報の取り扱いについてあれやこれやと言われて頭痛の種になっておったのだ。許してくれ」
ジェームズ国王は再びティーカップを口元に運んで紅茶を1口飲むと、短い息をついた。今回の件で大分気を揉んだのだろうな。お疲れ様です、陛下。
「話を戻すと、学園の図書館を襲撃したのはその集団で間違いないだろう。その集団は古い魔法技術が書かれた書物を集めているとの情報が上がっている。今回襲撃したのも古書の奪取が目的だろう」
「そこまでして価値のある物なのでしょうか...」
「我も分からない。その件で今も頭を悩ませているところだ。だが、その集団は勇者たちが召喚されてから動きが活発化してきている。なんの関連があるか不明だが、警戒しておいて損はないだろう」
「自分もそのように思います」
「全く...勇者たちが諸外国から来るというのに困ったものだ」
むむ!?勇者たちがやって来るとな!?勇者というからにはめっちゃ強い力とか持ってそうだ。これは自分が活躍しなくとも全て勇者が問題解決してくれる未来が見える。問題を全て勇者に投げつけ、自分は夢ののんびりライフにまた一歩近づくことができるということか!やったね!
「その件で我から依頼を出すかもしれない。すまないが...ってどうした?急に正気が抜けおって」
すみません。急に遠くを見たくなっただけです。自分の望むのんびりライフは遠そうだなと思っただけです。
「もう大丈夫です。他に依頼先がないようであればお受けします...」
「そ、そうか?ならば我としても助かる。それで、褒美の件についてだが」
その後もジェームズ国王と少し話し合った結果、褒美についてはとりあえず現存する古い魔法技術に関連した書物を読む権限を得るということで決着を得た。学園だけでなく王都で保管している書物も読むことができるように取り計らってくれるそうだ。マジ助かる。結界魔法に次ぐ新しい魔法で生活を豊かにするぞおお!おー。
だけど、勇者関連の面倒事を押し付けて来るのは本当に勘弁願いたいところだ!碌でもない勇者だったら手が滑ってコロコロしちゃうかもね!
これにて第一章完結になります。
ここまで読み進めてくださった方に感謝を。
次話は新規で読んでくれている方向けの(という名の自分向けですが)第一章のあらすじとなります。




