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103 討伐後の出来事と嬉しい出来事

(略しすぎています)

 どうも、快晴の朝に森の中で不自由な生活を行なっている銀髪ロリエルフになったものです。絶賛お花摘みの最中で素晴らしい程の開放感を感じています。何故か体から出ていった液体から甘い香りを漂わせていますが、病気ではありません。謎仕様です。


 以前の反省を活かしてお花摘み場を作ったけど、地面に木の杭を突き刺して地面に穴を掘っただけの素晴らしく大自然を感じさせるものとなっている。天井の視界は最高で風通りも抜群、大自然と一体になりながらお花摘みができる最低な場所です!今すぐ家に帰りたい!


 生成しておいた布で清潔を確保した後、使用済みの布を掘った穴に入れる。物理的に「分解」して周囲に甘い匂いが漂わないようにしておく。


「ふぃー、これでよしっと。それじゃ、食料確保の旅へ向かいますか~」


 と言う名の散策である。先日の魔物騒ぎによって鹿や猪といった動物は全ていなくなった。なので悲しいことにお腹を満たすものは森の中にいない。別に食べていなくてもなんともないし?学食のケーキ食べたいとか思ってないし?思い出したらよだれ出てきたし?


 以前に訪れた時の様子と変わらない森の中を歩きながら、暇なのでエンシェント・タートルを倒してからの状況を時系列順にまとめてみる。


 エンシェントタートル討伐後、危なかったら適当に助太刀するつもりで遠くの森の中から宿舎周辺の様子を伺うことにした。

 宿舎にいる人たちが危なげなく防戦している様子を見守ること数十分後、大きな魔力反応を伴う近代的なロボット?が10体ほど王都の方からやってきた。そのロボットは森の木を薙ぎ倒しながら大量の魔物を狩りまくって宿舎を守る行動をとっていた。どうやら援軍のようだけど遅すぎだよ?来るとわかってたら最高に働かなかったのに...(白目)。


 そんな感じで白目を剥きながら受動感知で様子を観察していると次第に魔物が少なくなっていき、朝には宿舎周辺の状況が落ち着いた。その後、ロボット的な奴は王都の方へと帰投していった。その時にエンシェントタートルの魔石を回収したようで、再び訪れた時には魔石がなかった。回収して売るなり焼くなりしてもいいけど、どうか自分が倒した事がバレませんように...。


 その後、能動探知で直後のサリアたち学園生の生存の確認を行なった。点の数は防戦を始めた時と同じで死者なく防戦を乗り切った模様だ。もちろん、サリアたちも無事だ。とてもgoood。それに加えて、宿舎に向かっている50人規模の集団の反応があった。タイミングからして街からの救助隊だろう。もう危険な状況に陥ることはないと判断して宿舎の様子観察を切り上げ、森の中の実家?へと移動した。


 そこから2日ほどのんびりした原始生活を送って今に至るというわけだ。時折能動探知でマニューヴェたちの行方を広範囲に探ってみたもののそれらしい反応は得る事ができなかった。エンシェント・タートルを発生させた時点で離脱して再度戻ってきていないことを考えると、集団の目的は達したようだ。なんというか、最後までよくわからない集団だったな。次会うことはないと願いたいね。


「そんな感じで街に平和が戻りましたとさって感じ?街の様子とかわからないけどどうなってんだろう?って、考えても仕方ないか」


 思考を止めたことで、視界で認識していなかった事が見えるようになる。それによって、視界の中に明らかに自然ではない木の倒れ方をしている場所があることに気が付いた。木だけに...。


「ん?ここの辺は確か...」


 始まりの地だ。転生してこの世界に生まれ落ちた場所。何らかの物体が当たって気が折れた後がある木と、その木の根がある。突如ウルフが現れたのに驚いて小石を思いっきり投げたっけ?それか能力を試すために投げまくった跡のようにも見えるな?どっちにしても懐かしいな。この世界に転生してほぼ2ヶ月くらい経つことになるか~。


 懐かしい記憶を思い出しながら当時歩いた経路を辿ってみる。あの時は体の使い方もわからなくて歩くのに苦労した記憶があるけど、今はそんなことはなくスムーズに進んでいる。それに、魔法の使い方も分からなかったっけ。けど今では不自由なく使えている。すごい成長をしたな自分。


「けど体の方は何も成長していない...」


 たかが2ヶ月での変化といえば筋肉くらいなものだが、自分の体は細く、腕なんてぷにぷにのままだ。その転生前から大きく異なる身体に初めの方は驚いたけど、今では悪くないと思っている。

 真下を見下ろして自身にある慎ましやかな双丘(?)を眺める。うーん。すごく足元が見える。こちらの方も変化はないな。いいのやら悪いのやら複雑な感じはあるが、そのスレンダーな体は動きやすくて気に入っているからgoodってことで。それに、出るとこが出ていない貧相な体つきだがスタイルのバランスは取れていてめっちゃいいのだ。おかげで戦闘服が軍服ワンピースとかいう前の世界ではあり得ない選択をしてしまったくらいだしな!


「はっ、毒されるな自分!正気を保て!」


 頭を左右に振って変な方向に発想しそうな思考を飛ばす。精神は男子高校生!今はいくつもの修羅場を潜り抜けし者!間違いなくそう!?

 その時ふと、転生時に出会った女神様の言葉を思い出した。


――あなたには世界を救ってもらうわ。とはいってもその世界で人生を謳歌してくれればいいから――


 そういえば転生時に女神様から与えられた目的だったな。世界は救ってない気がする。けど、みんなと過ごした時間は楽しかった。そういう意味では謳歌できた気がする。


 見上げると、樹木の葉の隙間から暖かな陽の光が差し込み、風に揺られた葉が陽の光を見え隠れさせている。のどかだなぁ。マジで、こんな感じのスローライフを送って人生を謳歌したいな。


「ふああ、なんか眠たくなってきた」


 木の根もと付近の地面を整えて横たわり、目を静かに閉じた。葉が擦れる音しかしない静かな空間で...よく眠れそうだ。そう思いつつも一抹の寂しさを覚えながら意識を手放した。

_____________________

 聞こえてくる騒がしさに意識が浮上する。おっさんたちの喋り声だけでなく、女性の声まで聞こえてくる。難にせよどちらも楽しげそうにしていて、危険そうな状況ではないな。でも、一体こんな森の中に何事よ?


 それに、頭が柔らかいものの上に乗っかっている?適度に張りがある感じは太もも!?それに、この落ち着くいい匂いといい魔力反応といい...。思い当たる人は...。


「サリア...?」


 小さく呟きながら目を覚ます。見上げた先には静かに寝息を立てて眠っているサリアの顔があった。目の下に濃いクマがあるものの、その表情はとても幸せそうに見える。

 視線を動かして周囲の様子も探ってみた。自分の近くではリナやシルフィアが寝ており、さらに遠くではギルドで見かけたことがあるおじさんたちが座って歓談していた。


「思ったよりも近場で見つかってよかったぜ」

「ああ、まったくだ。これでギルドメンバー全員の無事が確認できた」

「とは言えよ?まさか迷子になっているなんて思いもしなかったぜ。あんたもだろ?」

「ああ、ほぼ毎日森の中に魔物狩りに行ってたのを見ているんだぜ?こんなことになるとは思いもしねぇよ。ただまあ、少しくらい抜けてる方が可愛げがあるってもんよ」

「違いねぇな」


 おいおい、こりゃ自分を探しに森の中に入ってきていた感じか。そりゃ大所帯にもなるし、自分を見つけた場所で休憩をとっているわけだ。あと、サリアがクマを作っていたのは睡眠時間を割いて探してくれていたからだろうか。自意識過剰すぎるような気がするが、そんな気がする。マジで申し訳ない限りだ。


「エンシェント・タートル倒しちまうとか天使ちゃんマジで最強だな」

「噂でオーガをソロで討伐したと聞いた時も驚いたが、あのクソでかい亀を討伐だろ?しかもクソ硬いらしいじゃねぇか。天使ちゃんはどんな攻撃したんだ?」

「俺っちは直接見てねぇが、バカほど強烈な光線で一撃だったな」

「そりゃまじか?信じらねぇ」

「そう思うだろうがこりゃマジだ。結界の外にいた何人かは攻撃の余波で漏らしたくれぇだからなガハハ」

「ああ、それであいつら凹んでたのか。天使ちゃんの攻撃で漏らすたぁだらしねぇな?」

「いやいや、それほどに魔力反応がでかいし余波もやばかったんだ。俺っちがいた宿舎からでも濃密な魔力を感じて震えたくらいだ」

「そりゃ俺でもぶるっちまうかもな」

「抜かせ、漏れてるの間違いだろ!ガハハ」

「そうだな!ついでにママーと叫んでるかもしれねぇ!ガハハ」


 ...楽しそうで何よりだ。

 

 と、それはそうと!やっぱりエンシェント・タートルを倒したことが自分だってバレてるじゃん!隠し通すのは無理だったか...。よくよく考えてみると、クソでかい魔石になる段階で自分が放った攻撃に使われた魔力が混じることになる。宿舎まで感じるほどの魔力を放っていたらそうなるわな。そんなに魔力放出したつもりはなかったんだが制御をまずったか?うわ~これどうするよおおお?!今からでも逃げるか?でもこの感じ逃げたら全力で追ってきそうだな。

 だが、どの人からも嫌な感じや刺々しいものは感じられない。少なくともこの人たちは純粋に自分が心配で探しにきてくれたのだろう。自分が危惧していた常識外の力を放った人への排他的対応がない以上、自分が森の中で隠れて生活をする必要も無くなった。力を示した以上今まで通りには行かないだろうが、自分を受け入れてくれた人がいることがめっちゃ嬉しい。やさしい世界だ。うーん泣けてくる。


 というか、何気に聞き流していたけど天使ちゃんって自分のことだったのか!確かにギルドやら街中で天使ちゃんなる言葉が聞こえてたから、なんか雑誌に出てくるキャラクターの名前とかかと思ってた。二つ名が天使ちゃん...。激辛麻婆豆腐を何食わぬ顔で食べたり会長やら呼ばれてそうな名前だ...。それに、天使ちゃんなんて言われると恥ずかしくてしょうがないんだが、街中に広がっているとなると止めてもらうのはムリなんだろうなぁ...。


「天使ちゃん...むにゃむにゃ...」


 眠っているサリアがそう言いながら頬を緩ませる。

 それを見ながら天使ちゃんの二つ名は変えられそうにないと悟り、そんなことを考えている今の状況が何だか微笑ましくて自分も頬を緩ませた。

_____________________

 その後、起きた自分に気づいたサリアやリナ、シルフィアが自分に泣きついてきた。もちろん受け止めたのだが、思いのほど抱きしめる力が強くて困ったりした。そして、落ち着いサリアたちにオーガ、エンシェント・タートルを倒した事やその後の話をしながら捜索隊のみんなと街へ戻ってきた。もちろん、エンシェント・タートルを倒したのは無属性魔法(大嘘)と言ったり、そこから離れたのは純粋に迷ったから(大嘘)と言っている。その辺は抜かりないように色々頭をフル回転させながらボロが出ないように頑張ったぞ。


 街に着くと、流れるように自分と捜索隊一行はギルドへ向かった。

 そこで初めに待っていたのはミカさんの胸で窒息しながらのだいしゅきホールドだったりして、街に帰って早々に死にそうになったりした。もちろん助けを求めたりしたけど、みんなはエンシェント・タートルを倒した少女が胸で窒息しながら助けを求めている状況が面白いのかめっちゃ笑っていた。それを見て面白いならまあいいかと思ってしまったりした。

 自分が無事に帰ってきたことにギルドメンバーたちは食堂で祝いの会を開いた。主役である自分はもちろん、サリアやリナ、シルフィア、ミカさんを始めとするギルド職員さんたち、予想外にもギルド長であるキースさんも参加する盛大な会となっていた。みんな揃って困難を乗り越えたことを分かち合いながら騒ぎまくるカオスを感じながら自分も楽しんでいた。

 みんながノリに乗ってきたところで、ギルド長のキースさんから一言あるとの前振りがあった。みんなに聞こえるような声で、


「ゴールドランクであるカオリちゃんはこの未曾有の事態に対し、人命救助や強大な魔物への対処を行い多大な貢献を行った。その件でこの度アステラ国王から正式にランクアップの知らせがあった。なんと、プラチナランクへの昇格だ!」


 なんてさらに焚き付けるような事を言うものだから、みんなの収集がつかなくなったりした。そんな光景でも、異常な力を持つ自分を受け入れてくれるみんなが優しくて、仲間たちと騒がしい毎日がこれからも送れることが嬉しくて少し目が潤んでいたのは内緒だ。

 自分もそんなみんなに感謝したいと、一言感謝を述べたりしたがさらに火に油を注いだようでテンションぶちあげのまま夜を通して会が行われた。そんな状況にハイテンションなミカさんだけでなく、サリアやリナ、シルフィアからも襲われたのは言うまでもない...。誰かサリアたちにお酒を入れたんじゃないか?と見渡してみると、食堂のおばちゃんがサムズアップしていた。おばちゃん何しているん???コンプラはどうしたコンプラは!え?お酒じゃないからセーフ?ならいいか。なんかよくわからんが、ありがとう食堂のおばちゃん!

 そんなことをしながら楽しい会を過ごしたのであった。女神様、まだまだ人生を謳歌できそうです。

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