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101 新たな敵

(略しすぎています)

 今は宿舎に貼られている結界の外でやってくる魔物を間引いている、銀髪ロリエルフになった者です。際限なくやってくる魔物の群れに辟易しています。はい。アイシクルストームで一帯の魔物を凍てつかせることができるけど、目立ちまくるので避けたいのです。そういうお年頃なのです?


 元々、森の中で人助けをしていた理由は開眼状態が落ち着くまで時間を潰すことだった。


「でも、もう助けが必要な人いないよね...」


 先ほど救助が必要な人は全て救助し終わったため、森に帰る理由がなくなってしまったのだ。なので、理由もなく森に帰ってはゴールドランクでありながら防戦に加わらないのは何故だ等々、問題が出ること間違いなし。ということで、宿舎の結界周辺でボチボチ魔物を狩っている。とりあえず視界に入った魔物に向かってアイスニードルを放つ程度の雑さ加減だが、今のところ文句言われていないし問題ないよね?


 救助から帰ってくると休憩なしで魔物を処理するストイックな行動をとっていると、モリスさんが気遣って声をかけてくれた。

 自分はやってくる魔物と戦いながらモリスさんの方向をチラ見すると魔物を倒しながらだった。他者を気遣いながらも戦闘継続できているとは、流石だ。長年ギルドで活躍しているだけある。それをみるとなんか自分も対抗心が芽生えてきたので、自分も指輪型MSDを使ったアイスニードルとナイフでやって来る魔物を倒しながら答えるとしよう。


「カオリちゃんよ、そろそろ戻って目の治療してきたらどうだ?それだけ動いてりゃ疲れも出るだろうに」

「魔物の群れが片付いたらそうしますよ」

「本当かぁ?片付いたらとか言って最後までいる気だろ?」

「バレちゃいました?」


 そう茶化してみる。正直なところ、そろそろ宿舎で休憩を取りたいところだ。身体強化しまくった影響で疲労が溜まっている。優雅に紅茶の一杯でも飲みながらサリアたちと無事の再会を祝いたいところだ。ダージリンがいいかな?なんか戦車の音が聞こえてきそうだ。


 だが宿舎で休憩しない理由は開眼している以外に理由がある。自分が宿舎に張られている結界をくぐると問題があるためだ。さっき気づいた。

 結界はその者の魔力に含まれる固有の情報を確認して通行の許可を判定している。なので、自分が結界を通過している最中は常に確認から許可のプロセスが踏まれていることになる。普通の人では個人の持つ魔力量が知れているので判定時の結界を展開しているMSDへの負担は少ない。魔力量を人数で例えた場合、駅の改札を1人が通過するようなものだ。瞬時に通過できることが容易に想像できる。

 だが、自分はそうはいかない。開眼して魔力補充を行ったりしたため、現在の魔力量は軽く30人分を超えており、下手すると百数十人分にのぼる。例えるなら修学旅行生が集団で改札へ向かうようなものだ。当然渋滞になるし、それを捌くのは大変だ。無論MSDへの負担が大きくなる。

 通常時ならば問題にならないと思うが、今は押し寄せる大量の魔物への対応でMSDに大きな負荷がかかっている状況になる。事実、宿舎を守る結界を流れる魔力には少し揺らぎが見えている状況だ。そのような時に自分が結界を通過すれば過負荷になって結界が破られるだろう。マジで気づいてよかった。危うく宿舎に集まっているみんなを危険に晒すところだった。ふぃー。


 だが、自分がそんな状況でここにいると知らないモリスさんは、休むように勧めてくる。どうしたものか。


「いくらカオリちゃんとはいえ、限界が来るってもんよ。ここは俺たちに任せて休んできな」


 モリスさんの言葉に加えて、周囲にいる戦闘中のギルドメンバーも同調する。


「そうだぞ、ここは俺たちでも大丈夫だ!」

「だから、今は休んで目を治してもらってきな!」

「カオリちゃんの力当てにしてるからよ!キラッ」

「おい馬鹿!カッコつけたいからってよそ見すんなって」

「うおっ、あぶねー。サンキューな!そいっ!」

「だから発言するたびに謎のポージングするのやめろって!」


 こんな人たちで大丈夫だろうか。少し不安になってきた。特に、幼女の力を当てにする青年の人。逆に格好がつかないような気がするぞ?

 とはいえ、むむむ。自分を休ませる流れが形成されている。このままじゃいけないな。なんとかして回避する方法を探さねば。とりあえず、何かのイベントがあればそれに乗じることができるんだが...。


 そう考えはじめた時、山の方で閃光が生まれたかと思うと、闇の魔力を含んだ強大な魔力の波が自分を襲った。その強大さに自分の体が揺さぶられたのかと錯覚する。天変地異かと思うほどの出来事にギルドメンバーだけでなく、魔物たちもが行動を止めて魔力がやって来た方向を向いた。その全員に、遅れてやってきた衝撃波が自分たちを駆け抜けていく。


 受動探知による解析では、ここから3kmほど離れた場所から発せられたようだ。何が起きたのか不明だが、森の中で雲隠れしに行くちょうどいいタイミングだ。ミッション、謎の強大な魔力波の原因を探せ的な感じだ。生じた魔力から強い魔物が生まれたかもしれない。斥候部隊として自分が行く。いい感じじゃん?このプランに乗るとしよう。


「どうやら、休むことができなくなったようです」


 これで森の中に進む理由が生まれた。みんなは納得してくれたかな?

 反応を確認するべく、周囲を見渡してみるとモリスさんをはじめとするギルドメンバーは魔力波が来た方向を向いていた。ここから3km先の出来事は見えないだろうに。何事?

 確認しようとしたその時、大地が揺れた。比喩ではなく間違いなく地震だ。今度はなんだ?


「おいおいおい...!」

「なんだあれ」

「こいつぁ、やべーな...」

「やばいですね...!」


 何がやばいんだ?と疑問に思ってモリスさんと同じ方向を向いた。すると、木々の隙間から巨大な亀がこちらを向いているのが見えた。

 亀?おかしいな?結構離れていると思うんだけど、それなりに視認できるサイズだ。それに異常なほどの威圧感を感じる。キングオーガとかそんなレベルではない。かなり接近した時には失神する人が出てくるかもしれない。これってもしかして...やばいやつ...?


 脳内の記憶を辿って思い当たるものを探してみると、案外早く見つかった。


「エンシェント・タートル...」


 ぶっ飛んだサイズ感的に思い当たる節はそれしかない。図書館にあった書物では、物理魔法耐性の両方がぶっ飛んでいたはずだ。さらに巨体からくるHPの高さもあるため、アイスニードルなどの攻撃は有効打にならないと思った記憶がある。間違いなくやばいやつだった。

 うおおおおお!?なんか自分これからあの魔物に立ち向かいます的な感じで言っちゃったけど???大丈夫ですかね自分???言ってないことにならない???


 内心焦りながらエンシェント・タートルを見据え、思考を巡らす。


 魔力波から感じた闇の魔力からして、マニューヴェ率いる集団の仕業であることに間違いないだろう。それにマニューヴェ本人がやることあるとか言って行方を暗ませていた。それはエンシェント・タートルを召喚?することだったのかもしれない。予想通り面倒なことをしてきたな。やっぱあのときにぽこぽこしていたらよかったかな?

 とはいえ、その集団はクソデカ魔物の召喚?だけでなく、街の内外の魔物異常発生も引き起こしていたはずだ。だが、集団が一連の行動を起こした理由が謎だ。一体何を考えているんだ?街を陥落させるというのなら、街の中で魔物の異常発生を引き起こしまくればいいものだ。しかし、そうなっていない。利害関係で直接の攻撃が難しいか?それもあるだろうが決め手にかける。

 事件の発生順序の流れからして、最初は街での魔物の異常発生、そして街の外での魔物の異常発生だ。街での魔物発生で街の中に関心を集めておき、街の外での作戦準備を容易に進めたと考えられる。ならば今回は?突如街の外で魔物がやってきたらそっちに注意が向くことになる。それにエンシェント・タートルも出現した。街の中なんて注意が向かないだろう。

 ん?むしろ狙いがそれか!。街の中での作戦行動を行いやすくするための陽動作戦か!


 その考えに至った時、エンシェント・タートルは口を開くとそこに光が生まれた。そしてその光は段々と強力なものになり、そこから感じる魔力も同様に大きなものとなった。


 それを見たモリスさんが張り詰めた声を出す。


「やべぇ!伏せろ!!!」


 周囲のギルドメンバーが伏せる中、自分は突っ立って状況を見ていた。伝わってくる魔力からして、この攻撃は伏せてどうにかなるものじゃない。それに、陽動作戦ならば狙いは自分たちではなく街でもないはずだ。あくまで脅しの一撃。強力な一撃を放ち、エンシェント・タートルへの注目度を上げて街中の戦力をできるだけ外に引き出すのが狙いだろう。


 そう思った次の瞬間、エンシェント・タートルから白い極光が放たれた。目を焼くほどに眩い極光は轟音と熱線を振り撒きながら自身の上空を通過する。その極光は触れたものはもちろん、周囲にあるものも熱で灰に帰っていく。

 そんな極光は直線上にあるものを無に返しながら、街の方へと向かった。まばゆい光が街の方から発せられたかと思うと次の瞬間、極光は空へと進路を変えた。そして、地を揺るがすほどの轟音が自分たちがいる地へと伝わってきた。


 街の方が光った時に感じた魔力反応からして、街に展開している結界で極光を弾き、軌道を変えたのだろう。それに弾かれた極光の軌道からして、街の結界の縁を狙ったものだ。とりあえず予想通りだ。エンシェント・タートルへの注目度が上がったのは確実だろう。となれば、次にどんな攻撃をしてくるか分からないな。

 

 極光を弾く結界はこの地には無い。あるのは大量にやってくる魔物の侵入を防ぐのに精一杯な能力の結界だけだ。なので、エンシェント・タートルが自分たちに攻撃を放ってきた時が最後となる。自分も結界魔法が使えるが、あの攻撃に耐えられるか疑問が残る。そのため、サリアたちがいる宿舎の安全を確保するには、エンシェント・タートルを無力化または注意を宿舎から逸らすことが必要となってくる。

 それを実行するには、桁外れな物理と魔法耐性を超える程の攻撃を叩き込む必要がある。アイスニードルなどの並大抵の魔法では有効なダメージが通らない。例え、シルフィアのフォトンレイを全力で放ったとしても、与えられるダメージはほぼ0と言ってもいいかもしれない。それほどまでに防御力とHPが高いとの情報だ。

 だが、今知り得る戦力で有効打を叩き込める人がいる。


「まあ、やるしか無いよね...」


 それは自分だ。

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