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100 森の中での人命救助

(略しすぎています)

 何もしないという選択肢は宿舎で防戦をしている人たちに申し訳ないので、魔物が大量に発生した森の中で逃げ遅れた人がいないかどうか探すことにする。とりあえず、逃げ遅れた人を救助することでゴールドランクとしての責務を果たすことにしよう。いい感じに勘違いしてくれているし、人目がない森の中で行動する理由にもなって一石二鳥でお買い得だからな。


 とう言うことで、宿舎からほどほどに距離をとって能動探知を行う。薄く魔力を空間に飛ばし、返ってきた魔力の反応を脳内で可視化する。


「うぇ...やっぱ魔物多すぎる」


 魔物が発生しやすい夜というのもあるのだろうが、魔物の元となる魔素が広範囲にばら撒かれていており、異常なまでに魔物が多くてゾッとする。前に探知した時と同様に魔物の大群は街の方へ向かっているようだ。その進行スピードは早くないが、2時間もあれば街を取り囲む巨大な壁に辿り着くかもしれない。その壁には巨大な掃討兵器っぽいやつがあるとはいえ、この魔物の数を凌ぐことは容易ではないだろう。それだけに、街の中は魔物の大軍への対策に慌ただしいことになっていそうだ。 

 だがそれ以上に学園で魔物狩り演習に来ている宿舎周辺の状況は悪い。街へ向かう魔物の集団の一部が宿舎を通るルートとなっている。今はギルドメンバーたちで防戦できているが、救援や物資が届く見込みがなく継戦能力に疑問が残る。マジでこの状況が改善してくれることを祈るばかりだ。最悪、自分がヘルプに入る事も考えなきゃな。


「っと、生存者の確認しないと」


 人らしき魔力反応のみに絞って脳内に描画する。すると、演習区域内で5点ほど散り散りに存在していた。そのどれもが純粋な魔力反応ではなく、紙越しに聞いた音のように何かのフィルターを通った反応だ。もしかすると、結界を発動して助けが来るのを待っているのかもしれないな。


 まずは魔力反応が1番微弱で状態がひどそうな状況にあるところから助けに行くとしよう。宿舎から北方面に1km程度の位置だ。雨がひどく生い茂った下草がある森の中を通るが、能力を発揮できる今の自分なら3分以内には着けるか。


 身体強化魔法に加えて、自身の慣性を制御して縦横無尽に走る。側から見れば進路上の魔物や障害物が勝手に消えていっているように見えていることだろう。だが、実際はそうではない。加速した思考が足場に適した場所を見つけ、進路上の魔物を屠るかそうでないかを瞬時に判断する。そして、ある時は地面を走り、ある時は木の枝を足場にしながら進路上の魔物をアイスニードルで的確に屠っているのだ。地道に道を開いているのですよ。面倒です。ええ、とても。視界の先の魔物が氷柱で的確かつ瞬時に倒せるのはいい。だけどね、自分が進むのが速すぎてドロップする魔石が地面に落下するよりも先に体に当たるのよ。体に当たりそうな魔石をナイフで弾いているけど、数が多くて捌ききれないよね。地味に痛いし、いっそのこと魔石ごと消してやりたい...。ちまちま倒すのじゃなくて、シルフィアが放ってたフォトンレイとかをぶっ放しまくったら少しはマシになるのだろうか...?


 そんな感じにブツクサと脳内で呟きまくっていると目的地が見えてきた。そこには小さな結界が展開されていて、結界中には1人の女生徒が血を流した状態で眠っていた。結界のおかげで魔物からは守られているものの、腹部からの出血が地味にあるように見える。早く治療しないと。まずは結界を破るところから始めないとな。


 結界を破るためにナイフ型MSDに魔力を流して魔力刀を発動し、結界にナイフを突き立てる。耐魔力壁をも簡単に切ることができる切れ味を有するナイフに、結界はなすすべもなく切り裂かれる。切り裂かれたことでできた結界の傷により、結界の自動修復の限度を超えて結界は破られ光の粒となって周囲に散らばった。


 これで自分の侵入を退けるものは無くなったが、魔物を退けるものもなくなった。それはそれで問題だな。治療中は少しの間でも隙ができる。魔物の数も多いし結界を展開しておくか。展開する結界は家に施した結界のスケールダウン版を展開するとしよう。結構複雑な気がするが、自分の能力である再構成さんがなんとかしてくれるだろう。


 脳内で魔法陣を思い起こしつつ、自分の魔力に情報を加えて体外へと放出する。自分の体から出た光る魔力の粒が集まって半円状の膜を作ると瞬時に強固な結界へと変わる。生まれた結界に早速魔物が攻撃を放ってきたが、そこに侵入不可能な場所があったかのように攻撃を弾いた。

 成功だ。記憶の魔法陣を元に発動したが、意外となんとかなるもんだな。流石は再構成さん、素晴らしい仕事をしてらっしゃる。それに攻撃を喰らった時の結界の揺らぎからして、かなりの強度が期待できる。なんならオーガがぶん殴ってきても問題ないような気もしてくる。さすがは再構築さんだ。魔力の消費も思った程大きくもないし、開眼を気にしなければ1日中発動できそうだ。greatすぎる。


 結界が十分に機能していることを確認できたし、女生徒の容体を見るか。


 女生徒に視線を向けると、腹部には鋭い爪で引っ掻かれた跡があり、その周囲が血で染められている。だが、装備の防御力が高いのが幸いしたのか思ったほど出血はひどくなく傷口も深くない。呼吸も安定していて腕や顔の血色も悪すぎることもない。これなら大丈夫そうか。


 軍服ワンピースのポケットから回復ポーションを取り出し、ポーションの栓を開けてポーションを腹部に垂らしていく。すると最初に垂らした数滴で出血が止まり、さらに垂らすと傷口は徐々に小さくなっていく。回復ポーションの小瓶が空になるまで垂らし続けると、傷口が完全に塞がった。見た感じはもう大丈夫だな。


 感動的な回復の速さだが、そこまで早く回復するのは普通に考えておかしい。治癒したように見える組織の状況をちょっと見てみるか。

 そこで、自分の能力を使ったMRI的な何かで確認をする。


「完全な治癒ではないか...」


 治癒したところが組織が魔力の網のようなもので補強されている状況だ。普通は再生時に組織と組織の間がしっかり結合するが、急速な回復に正常な結合ができていないのだろう。それを補うために魔力の網で補強していると思われる。その感じからして、無理をしてめっちゃ動くと傷口が開くこと間違いない。前に予想した通りだな。でもまあ、瞬時にここまで傷口が回復するポーションの力は半端ないこと間違いない。


 治った傷口を見ながらそう考えていると、女生徒は目が覚める直前になったのか体を僅かに動かした。やべ、起きちゃうか?結界等々を発動している姿を見られるのも困るし、魔法で眠らせるか。


「まだ起きちゃダメだよ~」


 MSDを解さずに睡眠状態にする魔法を女生徒にかける。その時、女生徒の瞼が僅かに開いたような気がしたが...夢かなんかと勘違いしてくれることだろう。きっとそう。だって、自分の体から放出している魔力の粒が光って周囲に漂っていて幻想的すぎるからね。


 ほっぺをペチペチしても反応なし!しっかり睡眠状態でgoodだ。さて、眠らせた女生徒を背負って傷口が開かないように気を使いながら宿舎へと送り届けるとしよう。

__________________________

 そんなこんなで、残りの反応があった場所にも向かい、そこで負傷して倒れて眠っていた人を宿舎へと送り届けた。全員が女生徒であったのだが、そこそこいい装備を使っていた。装備が充実しているあたり、きっと貴族系の人たちなのだろう。

 だが、1人で倒れている状況には不思議が残る。結界という緊急事態にはチート級のアイテムを所持していながらも、何故1人だけの状況になったのかというところだ。考えられるのは、回復に時間がかかる負傷を負ったために置いて行かれたと言う線だが...。そこは考えても仕方のない事か。

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